邪神を喰った少女は異世界を救済します

犬社護

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4章 ガルディア帝国 闘技会編

イリスがやっちゃいました

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○○○  イリス視点

フィン姉がやっちゃいましたね。フォローを入れたけど、まだ少し落ち込んでいます。まあ、お互い名乗ってないし大丈夫と思うのですが。もう少し休憩したら、訓練場に戻って格闘用の機材にパンチを入れてみよう。今の私の基礎能力値だと、多分全力でやれば4万くらいは出せるはず。あの場でそんな数値を叩き出すわけにはいかないから、1万にして試してみよう。

「クンクン、むむフィン・イリス、周辺に邪族がいる。私が討伐してくる。」
「え、リッカさん待って下さい。」

「あはは、大丈夫だよ。討伐したら散歩してから戻ってくるね。」
「えー、行っちゃいました。フィン姉、どうしますか?」
「仕方ないよ。2人で訓練場に戻ろう。はあ~、目立たないようにしよう。」

まあ、リッカさんなら大丈夫ですよね。

それにしてもお姉様の言う通り、邪族が入り込んできましたか。洗脳以外の進入方法を聞いた時は「まさか、そんな簡単な方法で」と驚きました。その方法とは、人に偽装後、外側に漏れる邪力を魔力に変換する魔導具を使うことだったのです。私達人間側からしたら、どうして今までその方法で進入してこなかったのだろうと不思議に思いました。お姉様に尋ねると、

【多分、邪族側からしたら、自分達と敵対する人に偽装するだけならいいかもだけど、邪力でなく魔力を出すのだけはプライドが邪魔をしたのでしょう。だから、今まで使わなかったか、もしくは開発してこなかったのでしょうね。】

と言っていました。どの種族にも、プライドがあるんですね。そういえば、リッカさんはここ最近獣人の形態をとっていたから、元はグリフォンだったことをすっかり忘れていました。もう本能は完全に消失していますね。あれは、お姉様の料理が間違いなく影響を与えています。あ、そろそろ30分程経過しましたか訓練場に戻りましょう。

「フィン姉、そろそろ訓練場に戻りましょう。フィン姉は横で見ていて下さい。」
「そうするよ。」

訓練場に戻ると、模擬戦の場所は綺麗になっていました。あの貴族もいません。というか貴族があんな醜態を晒したのだから、当分外に出てこれないでしょう。なんというか気の毒です。目当ての格闘用の魔導具には、人が多く集まっていました。

「うわあ、これはかなり待たないといけませんね。」
「そうだね、みんな楽しそうにしているね。闘技会は学生にとっては、お祭りなのかな。」

「フィン姉、あの看板。」
「え?」

私達が並んでいる格闘用の魔導具の横に看板が置いてあり、こう書かれていました。

【12歳以下限定  1000ポイントを超えた方には、素敵な景品を用意してあります。】

「---イリス、やるの?」
「うーん、年を13歳にします。それなら問題ありません。」
「そうかなあ?」

きっと大丈夫です。私の前にいる4人の男の子達は、あの景品目当てに盛り上がっているみたいですね。


「おい、ここで1000ポイントに近い点を出したら注目されるぜ。」
「どうせなら1000ポイント超えて、景品をあの子に送りたい。」

「おい、ハンス。お前は誰か送りたい女の子はいないのかよ?」
「え、僕はいないよ。それ以前に、1000ポイントは無理だと思うよ。」

「ハンス、もっと自信出せよ。お前そんなんだから、ゾイの奴にも馬鹿にされるんだぞ。」

「あはは、わかっているんだけどね。どうしても人を殴るとなると、力が入らないんだよ。」

「あ、やべえ、ちょっとトイレに行ってくる。ハンス、順番確保しといてくれ。」
「「俺も」」
「ああ、わかったよ。」

そう言って3人の男の子は列を離れた。

このハンスという人は優し過ぎるんですね。でも、それじゃあ好きな女の子を守れませんよ。

「すいません、さっきの話を聞いてしまいました。私はイリスと言います。」
「え、あはは、聞かれちゃったか。僕はハンス、宜しくね。」

「人を殴る行為は苦手ですか?」
「恥ずかしいんだけど苦手だね。どうしても、無意識に力を緩めてしまうんだよ。」

「それだと大切な人を守れませんよ。人間優しいだけじゃ駄目だと、時として親や親友を殴ってでも止める強い心を持たないと、危機に直面した時、何も出来なくなると私のお姉様が言っていました。」

「え!」

「あなたは優し過ぎるんです。それだと、いつか好きな女性から愛想を尽かされますよ。今回の魔導具に憎い相手を思い浮かべ、精神を抑えず自由に解放しなさい。そうすれば、あなたは一段階強くなれます。魔導具は絶対に壊れません!魔導具を憎い相手と想定して、全ての魔力を拳に纏い放って下さい。」

私の言葉が効いたのか、ハンスさんは拳を深く握り締めた。

「あいつにだけは、絶対に嫌われたくない!魔導具を憎い相手と思え。全魔力を拳に纏い放つ。---わかったよ、イリス、やってみるよ。ありがとう、何か吹っ切れた気がする。」

その後、友達が戻ってきて、他愛ない話が続きました。

「ふふ、イリス、さすがね。彼の弱い所をピンポイントに突いたね。」
「雰囲気がアレイルさんやシュリさんに似ていたんです。放っておけませんでした。」

あ、ハンスさんの番がやってきました。

「おい、ハンス、頑張れよ。」
「そうそう、あいつだと思って思いっきり殴れ。」
「そうだそうだ、頑張れ!」

ハンスさんは息を吸い込み、私の言った通り全魔力を拳に集中し纏いました。ふふ、魔力纏いが出来ていますね。あとは、彼の心次第です。そして---

《ドオ~ン》   

周りがシーンとなりました。なんと数値が4000となっていたのです。凄いです。

「はあ、はあ、はあ、どうよ!」

「ハンス、すげーぞ!」
「お前、4000だぞ、4000」
「ハンス、やれば出来るじゃないか!」

《おおおお~~~》

凄い盛り上がりです。
ハンスさんがこっちに来ました。

「イリス、ありがとう。君のおかげで吹っ切れたよ!」

「いえいえ、ハンスさん、ステータスを見てください。『魔力纏い』を身に付けたはずです。それで、彼女さんを守ってあげて下さい。」

「え、あ!本当だ。あの時の感覚が魔力纏いなのか、イリス、ありがとう!」

ハンスさんは、友達と一緒に帰って行きました。



次は、私の番です。ハンスさんには悪いですが、私も確認しないといけません。

《ドゴーーーーーン》

「よし、予想通り10000ポイントだ。」

周りを見ると、全ての人が口を大きく開けていました。
あれ?なんで?学生さんが来ました。

「お、おめでとう?あの景品いる?」
「あ、私は13歳なので貰えません。」
「君、ここの学生じゃないよね?凄いね。」

「いえ、私はお姉様にコツを教えてもらい、実践しただけなんです。さっきのハンスさんにも教えましたので、彼に言えばスキル『魔力纏い』が手に入りますよ。『身体強化』スキルがなくても、あのスキルは簡単に手に入ります。鍛えれば、基礎能力値の数倍の力が出せるようになるはずです。魔法使いには必須スキルです。」

「「「「なんだって~~~、そんなスキルがあったのか~~~!」」」」

そういうと、学生達はハンスさんの所に一目散と向かっていった。

「イリス、違う意味で騒ぎを起こしているよ。さっきのハンスて男の子が気の毒になってきた。イリスも師匠に似てきているよ。」

あれ?そんな騒がれるとは思いませんでした。そういえば、お姉様もスフィアートで似たような騒ぎを起こしていたっけ。

「えへへ、やってしまいました。どうしますか?」
「う~ん、ここから逃げよう。」

「え、リッカさんはどうしますか?」
「リッカなら、すぐに気付くよ。」
「それもそうですね。」


こうして、私達は学園から逃げました。ハンスさん、すいません、あとはお任せします。


広場まで戻って来ました。

「お互い、もう学園に行けませんね。」
「そうだね、でも十分堪能したからいいかな。」
「そうですね、学園面白かったです。」

「こら~~、フィン・イリス~~!なんで、学園離れているんだよ~~。」

「あ、リッカさん。すいません、私もちょっと騒ぎを起こしてしまったんで逃げて来ました。」

「全く~、私が邪族退治している時に何やってるんだよ~。」
「リッカ、邪族はどうなったの?」

「もちろん討伐したよ~。なんか10体くらい今後の相談していたから、面倒だから全員討伐した~。」

え、今後の相談!

「リッカ、邪族達はどんな相談していたの?」
「知らな~い。」

え、それはまずいのでは?

「あのリッカさん、それは不味いのでは?お姉様が聞いたら、【なんで聞いてから討伐しないの~】とか言いながら、グリグリがくるかも?」

「あ」

リッカさんの顔がどんどん青くなってきました。

「イリス~、どうしよう~。」
「う、フォロー出来ません。」
「もう、私達全員、お仕置きでいいんじゃないかな?」

何を言っているんですか!嫌ですよ!

「そうだ、イリス、これらがお仕置きに値するか、リッチさんに聞いてみよう。」
「そうですね、早速通信してみます。」

リッチさんに通信したところ、下っ端邪族は重要な情報を持っていないから問題ないと言ってくれました。むしろ、討伐したことを褒めてくれるだろうと言ってくれました。それを聞いた私達は、ホッと胸を撫で下ろしました。
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