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4章 ガルディア帝国 闘技会編
武器部門予選開始
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今日は、武器部門予選開始日だ。
召喚部門本戦や魔法部門の日程でも、邪族は出現しなかった。そうなるとシュリ達が出場する武器部門において、必ず現れる。スオウも動いてくるだろう。この3日が勝負だ。ただ、シュリから聞いた限り、スオウは慎重な性格でなかなか尻尾を出さないそうだ。今回、邪族が現れ討伐したとしても、スオウを裁けない可能性もある。どうせなら邪族が現れた時点で、何か決定的なヘマをして欲しいところだ。
「サーシャ、俺はシルバー闘技場に行ってくるよ。さっさと、予選を終わらせてくる。」
「そうね、殺して失格にならないようにね。」
「そんな馬鹿なことはしないよ。」
そう言って、ゴールド闘技場から離れていった。
シュリなら問題を起こさず、サクッと予選を通過するでしょう。問題はリッカの方ね。この子は、何かやらかしそうで怖いのよね。
「リッカ、体調の方はどうなの?」
「バッチリです。誰が来てもぶっ飛ばします。」
調子は良さそうだ。
「お姉様、リッカさんに絡んできた貴族はどうなったのでしょうか?リッカさんといる時、妙な視線を感じていたんですが、2日前からなくなりました。」
「そいつらに関しては、私は無視していたわよ。」
「我が主よ、そのもの達は儂が処分致しました。いわゆる裏の世界に生きる暗殺者という奴らでしたよ。1人は1流、残り3人は2流でしたな。儂が魔力を少し出しただけで失神しました。正直興醒めですな。誰もいない場所に瞬間移動して、目覚めてから誰の差し金か拷問したんですが、1流のものだけは最後まで口を割りませんでした。奴は中々の暗殺者でしたよ。残りの者達は、拷問を開始して1分もしない内にペラペラと話しましたね。やはり2流ですね。そいつらを始末した後、依頼人の頭上に丁重に送り返しましたよ。ああ、【次は、お前とその息子だ】というメッセージも付けておきました。」
おお、リッチも中々やるわね。
「ふふ、手間が省けたわ。ありがとう、リッチ。」
「お姉様、貴族というのは、みんなあのような者達ばかりなんでしょうか?」
「さあね、私自身、あまり貴族と関わってこなかったからわからないわ。フィンなら知っているんじゃない?」
「多少のことなら知っています。私の知る限り、3割の貴族は欲の塊ですね。相手を蹴落とす事しか考えていません。差別意識も激しいです。」
学園の貴族と、リッカに絡んだ貴族は、その3割に入るのか。
「まあ、そんなアホ貴族のことなんて、どうでもいいわ。リッカ、あと10分程で予選が始まるわよ。」
「サーシャ様、受付に行ってきます。私の試合観ていて下さいね。全員ぶっ飛ばしてきますから!」
リッカは、完全に楽しんでいるわね。どんな試合展開にするのか楽しみだわ。
○○○
観覧席に行くと、召喚や魔法部門と同じくらい大勢の人々がいた。武器部門、中には体術だけで参加する人もいるらしい。お、選手が出てきたようね。あ~あ、冒険者ギルドや闘技ギルド、召喚部門の予選試合の中断の件もあって、殆どの選手がリッカを睨んでいるわね。その中に、アホ貴族の息子もいるわ。リッカが自分よりも強いから、全員で一気に攻める算段かな。
《それでは、武器部門予選試合バトルロイヤルを始めたいと思います。---試合始め!》
そう、それは一瞬の出来事であった。審判が試合開始を言った瞬間、リッカ以外の選手全員が場外に吹き飛んだのだ。別に魔法を使ったわけではない。リッカが両腕に少量の風属性の魔力を込めて軽く横に振っただけだ。それだけで強風が発生し、選手が吹き飛んだのだ。リッカの勝ちなんだけど、面白味や期待感がゼロだ。観客達も何が起こったのかわからないでいる。会場全体が《シーーーン》となっていた。
「審判、全員場外に吹き飛ばしたから私の勝ちだよ。」
《え、いや、その》
「ちょっと待て。お前、魔法を使っただろ!」
選手の1人がリッカに文句をつけてきた。馬鹿だなあ、そのまま負けとけばいいのに後悔することになるよ。他の選手も起き出して、全員文句を言っている。
「えー、なんで文句言うの。こんな風に、腕に魔力を通して軽く振っただけだよ。これも魔法に入るの?」
リッカがゆっくりと実演させたのに、全員納得しなかった。まあ、見せられても、普通納得しないか。普通の人間が、魔法なしであんな簡単に強風を起こせるわけないからね。
《再試合を行います。リッカ選手、先程の風は魔法か技かの判断が微妙なので、次からは使ってはいけません。》
「えー、技だよ。仕方ないな~、面倒くさいけど普通に戦おう。」
リッカの奴、その言葉が相手を挑発している事に気付いてないんだろう。みんな目付きが変わったよ。この調子だと、再試合の時、攻撃がリッカに集中するだろうな。
《それでは、再試合、始めて下さい。》
「「「「うおおおーーーーー」」」」
予想通り、全員がリッカに向かって行った。リッカは、欠伸をしながら1人1人を一撃で沈めている。
「くそ!なんなんだよ、お前は。ギルドでの報告は、やはり本当だったのか!があ!」
「おい、もう子供とかどうでもいい。この子を倒すために、全員協力してくれ。悔しいが強過ぎる。」
「ああ、それしかない。このまま負けたんじゃあ、惨め過ぎる。」
「「「「うおおおおーーーーー」」」」
お、全員の動きが、さっきより機敏になった。個々でリッカに挑むのは愚策と考え、協力して挑むか。その方が、まだ戦えるでしょ。周りの観客達も、リッカが強過ぎると理解したようだ。次第にリッカの声援がなくなり、リッカ以外の選手達を応援し始めた。
リッカに協力して挑むものの、1人また1人と崩れ落ちていった。中には、プライドを捨てて、リッカの悪口を言い怒らせる事で隙を見つける選手もいたが、逆にボコボコにされた。リッカ、ごめんね。私も応援したくなってきたよ。だって、あそこまで必死の形相で、リッカに一矢報いようとしているんだよ。選手達があまりにも悲惨過ぎる。そんな中、リッカただ1人が汗1つ垂らさず、笑顔で屠っている。どんどん人数が減っていく。選手達よ、せめてリッカに一撃入れてよ。ああ、自分の力が全く及ばず、泣き出す人も現れた。
みんな色取り取りの剣技や体術を用いて、リッカに挑んでいるけど、ことごとく潰されている。リッカ以外の選手にとったら、この時のために力を磨いてきたんだから、簡単に負けを認めないか。場外に出なかった者達は、倒されても倒されてもリッカに挑み続けている。そんな選手達をリッカは笑顔で屠り続けている。
「お姉様、リッカさんに挑み続けている選手達を応援したい気分なんですけど。」
「あの光景を見てたら誰だってそう思うわ。せめて、一撃入れて欲しい。」
「師匠、それは無理なんじゃないかと。」
うん、わかってる。わかってるんだけど、そう思わずにはいられない。
結局、全員が武器を破壊され戦意喪失し、誰1人リッカに挑まなくなった。心が折れたか。みんな、よくやったよ。選手達は、号泣しながら場外へと歩いて行った。
試合開始からここまでで、約15分程だった。武舞台に立っているのは、リッカ1人となってしまった。こんな終わり方でいいのだろうか?
「今度こそ、私の勝ちだよね。魔法も武器も魔力も何も使ってないんだからさ。」
なんという言い方をするの。リッカ、あんた観客全員を敵にしたわよ。まずい、なんとかリッカだけでなく、選手達もフォローして上げよう。
「う、うう、うああ、くそ、なんなんだよ、あの化物じみた強さは!こっちは全力で戦ってるのに、欠伸しながら往なされるし、反則だろ。おまけに汗もかいてないし、息も乱していない。俺達のこれまでの修行はなんだったんだよ。」
選手達全員が、同じように文句を言っていた。
《リッカ選手、本戦入り決定です。正直、こんな展開になるとは思いませんでした。》
リッカが素の状態で全員を屠ったんだから、審判としては反論のしようがない。
「サーシャ様~、やりましたよー、全員ぶっ飛ばしましたー。」
笑顔で、手を振っておいた。
リッカ、ぶっ飛ばし方法に問題があるんじゃないかな?
「師匠、選手の人達が可哀想になってきました。」
「この日のために、強くなるためにガムシャラに修行を続けた選手達に申し訳ない気分です。」
「フィン、イリス、奇遇ねー。私も同じ事を思ったわ。」
ここで、選手達をフォローしてあげよう。
「リッカ、よくやったわ。そして、リッカに挑んだ選手の皆さん、リッカの外見に惑わされず、全員で協力するスタイルは見事でした。あなた達の修行は決して無駄ではありません。私達観客は、あなた達がプライドを捨てでも強大な敵に立ち向かう勇気を見させてもらいました。胸を張って下さい。負けはしましたが、心に残る良い試合でした。」
私が言い終わり拍手を始めると、他の人達も拍手し始め、会場は盛大な拍手に包まれた。
《そうだぞー。この女性の言う通りだ。下を向くな、胸を張れー。全員、カッコ良かったぞー。》
《そうだそうだー、全員で協力して、強大なリッカちゃんに立ち向かう勇気を見させてもらったぜー。上を向いて歩いていけー。》
この歓声を聞き、選手達全員が号泣し晴れ晴れとした顔で、武舞台を去っていった。
「ふ~、なんとかフォロー出来たわね。」
「お姉様、さすがです!私も感激しました。勝ったリッカさんだけでなく、負けた選手も労わる心、参考にさせてもらいます。」
「師匠、私もです。あのフォローは見事でした。」
「リッカも喜び、負けた選手も納得させる、サーシャ様お見事です。」
「さすがは、我が主です。」
なんか、全員が褒めてくれた。その後も、他の観客達が私を褒めてくれた。あまりの試合展開に全員言葉を失くしていたようで、私の言葉で目が覚めたらしい。そんな中、審判がある一言を言った。
《皆さん、帰らないで下さい。本戦出場枠は、あと1人残っているんです。お願いですから帰らないで下さ~~い!》
あ、忘れてた。
リッカの試合が終わり、観客も含め一時全員が帰ろうとしてしまった。審判が一言言ってくれたおかげで、まだ残り1人が決定していない事を私を含め全員が気付いた。昼13時から、リッカを除いたバトルロワイヤルが行われることが決定した。そう決定したのはいいが、選手達全員が満身創痍だったので、私が全員を回復してあげた。こうなった原因はリッカにあるからね。まさか全員全回復するとは思わなかったらしく、大歓喜していた。ただ、さすがに武器までは用意出来ない。まあ、まだ時間もあるし、自分達で調達出来るでしょう。
私達は、集合場所である広場に来ていた。
「リッカ、お疲れ様。」
「はい!全員をぶっ飛ばしました。」
《ガン》
あ、ジンがリッカにゲンコツで頭を殴った。
「痛い!何するんだよ~ジン。」
「何するんだよ、じゃない。お前な、なんであんなぶっ飛ばし方法を選んだんだ?」
「始めは風圧だけで全員を吹き飛ばしたけど、みんな納得しなかったもん。どうやって納得させるかを考えたら、魔力も武器も体術も何も使わず戦ったら納得するんじゃないかと思ったの。全員が私に敵意向けてきたから、それに対応しただけだよ。途中から面白くなって、場外に出さず気絶させずにしておいたんだ。みんな色々な戦法を使って立ち向かってくるから、次はどんな戦法でくるのかワクワクしたよ。あー、面白かった。」
「あのな、サーシャ様がフォローしてくれたから良かったが、下手したら観客全員を敵に回していたぞ。」
「別に良いんじゃないかな。だって、私本戦でシュリに負ける予定でしょ。本戦でシュリと戦う時、序盤でシュリをボコボコにして、中盤あたりからシュリが進化して、良い気になってる私をボコボコにする予定だったの。」
へー、一応考えて、あの行動を取っていたのか。確かにそういうストーリーもありね。
「お前、考えての行動だったのか。意外だ、賢くなったな!」
「まあ、考えての行動ならいいわ。ただし、そういう行動をとる時は、前もって相談すること!全員が想定通りの動きをとるとは限らないからね。」
「あ、そっか。試合直前で思い付いたから、試しにやってみようと思いました。これからは相談します。」
おいおい、直前で思い付いたのか。
あ、シュリが来たわね。
「シュリ、結果はどうだった?」
「全く問題なく、本戦出場だ。ただ、優勝候補の奴がいたらしくてな。俺がそいつを一撃で場外の壁に吹き飛ばしたら、選手全員が俺に向かって来たんだ。始めは1人1人を場外に飛ばしていたんだけど、途中で面倒になってきて剣圧で全員を吹き飛ばした。」
やってることが、リッカと似ている。
「よく文句を言われなかったわね。」
「ああ、腕を振っても同じ事を出来たんだけど、それじゃあ魔法と疑われて失格になる可能性があるからな。剣圧で吹き飛ばした事をわからせるように、ゆっくりと剣を抜き魔力を通し、素早く振ったんだよ。そこで、全員が納得した、本戦出場決定だ。」
ああ、それなら剣圧で吹き飛ばされたと、審判を含めた全員が認識するわね。そして、自分の力では勝てないと思わせ納得させるわけか。
「おー、シュリさん、さすがです。リッカさんの考えを一段も二段も超えています。」
「リッカも思い付くのはいいけど、深く考えないといけないね。」
「むー、わかった。」
イリスとフィンに言われて、むくれながらでも納得したようね。これで2人とも予選を突破したから一安心ね。いよいよ2 日後の本戦、邪族との戦いが始まるか。さあ、邪族達はどういう手段をとってくるかな?
召喚部門本戦や魔法部門の日程でも、邪族は出現しなかった。そうなるとシュリ達が出場する武器部門において、必ず現れる。スオウも動いてくるだろう。この3日が勝負だ。ただ、シュリから聞いた限り、スオウは慎重な性格でなかなか尻尾を出さないそうだ。今回、邪族が現れ討伐したとしても、スオウを裁けない可能性もある。どうせなら邪族が現れた時点で、何か決定的なヘマをして欲しいところだ。
「サーシャ、俺はシルバー闘技場に行ってくるよ。さっさと、予選を終わらせてくる。」
「そうね、殺して失格にならないようにね。」
「そんな馬鹿なことはしないよ。」
そう言って、ゴールド闘技場から離れていった。
シュリなら問題を起こさず、サクッと予選を通過するでしょう。問題はリッカの方ね。この子は、何かやらかしそうで怖いのよね。
「リッカ、体調の方はどうなの?」
「バッチリです。誰が来てもぶっ飛ばします。」
調子は良さそうだ。
「お姉様、リッカさんに絡んできた貴族はどうなったのでしょうか?リッカさんといる時、妙な視線を感じていたんですが、2日前からなくなりました。」
「そいつらに関しては、私は無視していたわよ。」
「我が主よ、そのもの達は儂が処分致しました。いわゆる裏の世界に生きる暗殺者という奴らでしたよ。1人は1流、残り3人は2流でしたな。儂が魔力を少し出しただけで失神しました。正直興醒めですな。誰もいない場所に瞬間移動して、目覚めてから誰の差し金か拷問したんですが、1流のものだけは最後まで口を割りませんでした。奴は中々の暗殺者でしたよ。残りの者達は、拷問を開始して1分もしない内にペラペラと話しましたね。やはり2流ですね。そいつらを始末した後、依頼人の頭上に丁重に送り返しましたよ。ああ、【次は、お前とその息子だ】というメッセージも付けておきました。」
おお、リッチも中々やるわね。
「ふふ、手間が省けたわ。ありがとう、リッチ。」
「お姉様、貴族というのは、みんなあのような者達ばかりなんでしょうか?」
「さあね、私自身、あまり貴族と関わってこなかったからわからないわ。フィンなら知っているんじゃない?」
「多少のことなら知っています。私の知る限り、3割の貴族は欲の塊ですね。相手を蹴落とす事しか考えていません。差別意識も激しいです。」
学園の貴族と、リッカに絡んだ貴族は、その3割に入るのか。
「まあ、そんなアホ貴族のことなんて、どうでもいいわ。リッカ、あと10分程で予選が始まるわよ。」
「サーシャ様、受付に行ってきます。私の試合観ていて下さいね。全員ぶっ飛ばしてきますから!」
リッカは、完全に楽しんでいるわね。どんな試合展開にするのか楽しみだわ。
○○○
観覧席に行くと、召喚や魔法部門と同じくらい大勢の人々がいた。武器部門、中には体術だけで参加する人もいるらしい。お、選手が出てきたようね。あ~あ、冒険者ギルドや闘技ギルド、召喚部門の予選試合の中断の件もあって、殆どの選手がリッカを睨んでいるわね。その中に、アホ貴族の息子もいるわ。リッカが自分よりも強いから、全員で一気に攻める算段かな。
《それでは、武器部門予選試合バトルロイヤルを始めたいと思います。---試合始め!》
そう、それは一瞬の出来事であった。審判が試合開始を言った瞬間、リッカ以外の選手全員が場外に吹き飛んだのだ。別に魔法を使ったわけではない。リッカが両腕に少量の風属性の魔力を込めて軽く横に振っただけだ。それだけで強風が発生し、選手が吹き飛んだのだ。リッカの勝ちなんだけど、面白味や期待感がゼロだ。観客達も何が起こったのかわからないでいる。会場全体が《シーーーン》となっていた。
「審判、全員場外に吹き飛ばしたから私の勝ちだよ。」
《え、いや、その》
「ちょっと待て。お前、魔法を使っただろ!」
選手の1人がリッカに文句をつけてきた。馬鹿だなあ、そのまま負けとけばいいのに後悔することになるよ。他の選手も起き出して、全員文句を言っている。
「えー、なんで文句言うの。こんな風に、腕に魔力を通して軽く振っただけだよ。これも魔法に入るの?」
リッカがゆっくりと実演させたのに、全員納得しなかった。まあ、見せられても、普通納得しないか。普通の人間が、魔法なしであんな簡単に強風を起こせるわけないからね。
《再試合を行います。リッカ選手、先程の風は魔法か技かの判断が微妙なので、次からは使ってはいけません。》
「えー、技だよ。仕方ないな~、面倒くさいけど普通に戦おう。」
リッカの奴、その言葉が相手を挑発している事に気付いてないんだろう。みんな目付きが変わったよ。この調子だと、再試合の時、攻撃がリッカに集中するだろうな。
《それでは、再試合、始めて下さい。》
「「「「うおおおーーーーー」」」」
予想通り、全員がリッカに向かって行った。リッカは、欠伸をしながら1人1人を一撃で沈めている。
「くそ!なんなんだよ、お前は。ギルドでの報告は、やはり本当だったのか!があ!」
「おい、もう子供とかどうでもいい。この子を倒すために、全員協力してくれ。悔しいが強過ぎる。」
「ああ、それしかない。このまま負けたんじゃあ、惨め過ぎる。」
「「「「うおおおおーーーーー」」」」
お、全員の動きが、さっきより機敏になった。個々でリッカに挑むのは愚策と考え、協力して挑むか。その方が、まだ戦えるでしょ。周りの観客達も、リッカが強過ぎると理解したようだ。次第にリッカの声援がなくなり、リッカ以外の選手達を応援し始めた。
リッカに協力して挑むものの、1人また1人と崩れ落ちていった。中には、プライドを捨てて、リッカの悪口を言い怒らせる事で隙を見つける選手もいたが、逆にボコボコにされた。リッカ、ごめんね。私も応援したくなってきたよ。だって、あそこまで必死の形相で、リッカに一矢報いようとしているんだよ。選手達があまりにも悲惨過ぎる。そんな中、リッカただ1人が汗1つ垂らさず、笑顔で屠っている。どんどん人数が減っていく。選手達よ、せめてリッカに一撃入れてよ。ああ、自分の力が全く及ばず、泣き出す人も現れた。
みんな色取り取りの剣技や体術を用いて、リッカに挑んでいるけど、ことごとく潰されている。リッカ以外の選手にとったら、この時のために力を磨いてきたんだから、簡単に負けを認めないか。場外に出なかった者達は、倒されても倒されてもリッカに挑み続けている。そんな選手達をリッカは笑顔で屠り続けている。
「お姉様、リッカさんに挑み続けている選手達を応援したい気分なんですけど。」
「あの光景を見てたら誰だってそう思うわ。せめて、一撃入れて欲しい。」
「師匠、それは無理なんじゃないかと。」
うん、わかってる。わかってるんだけど、そう思わずにはいられない。
結局、全員が武器を破壊され戦意喪失し、誰1人リッカに挑まなくなった。心が折れたか。みんな、よくやったよ。選手達は、号泣しながら場外へと歩いて行った。
試合開始からここまでで、約15分程だった。武舞台に立っているのは、リッカ1人となってしまった。こんな終わり方でいいのだろうか?
「今度こそ、私の勝ちだよね。魔法も武器も魔力も何も使ってないんだからさ。」
なんという言い方をするの。リッカ、あんた観客全員を敵にしたわよ。まずい、なんとかリッカだけでなく、選手達もフォローして上げよう。
「う、うう、うああ、くそ、なんなんだよ、あの化物じみた強さは!こっちは全力で戦ってるのに、欠伸しながら往なされるし、反則だろ。おまけに汗もかいてないし、息も乱していない。俺達のこれまでの修行はなんだったんだよ。」
選手達全員が、同じように文句を言っていた。
《リッカ選手、本戦入り決定です。正直、こんな展開になるとは思いませんでした。》
リッカが素の状態で全員を屠ったんだから、審判としては反論のしようがない。
「サーシャ様~、やりましたよー、全員ぶっ飛ばしましたー。」
笑顔で、手を振っておいた。
リッカ、ぶっ飛ばし方法に問題があるんじゃないかな?
「師匠、選手の人達が可哀想になってきました。」
「この日のために、強くなるためにガムシャラに修行を続けた選手達に申し訳ない気分です。」
「フィン、イリス、奇遇ねー。私も同じ事を思ったわ。」
ここで、選手達をフォローしてあげよう。
「リッカ、よくやったわ。そして、リッカに挑んだ選手の皆さん、リッカの外見に惑わされず、全員で協力するスタイルは見事でした。あなた達の修行は決して無駄ではありません。私達観客は、あなた達がプライドを捨てでも強大な敵に立ち向かう勇気を見させてもらいました。胸を張って下さい。負けはしましたが、心に残る良い試合でした。」
私が言い終わり拍手を始めると、他の人達も拍手し始め、会場は盛大な拍手に包まれた。
《そうだぞー。この女性の言う通りだ。下を向くな、胸を張れー。全員、カッコ良かったぞー。》
《そうだそうだー、全員で協力して、強大なリッカちゃんに立ち向かう勇気を見させてもらったぜー。上を向いて歩いていけー。》
この歓声を聞き、選手達全員が号泣し晴れ晴れとした顔で、武舞台を去っていった。
「ふ~、なんとかフォロー出来たわね。」
「お姉様、さすがです!私も感激しました。勝ったリッカさんだけでなく、負けた選手も労わる心、参考にさせてもらいます。」
「師匠、私もです。あのフォローは見事でした。」
「リッカも喜び、負けた選手も納得させる、サーシャ様お見事です。」
「さすがは、我が主です。」
なんか、全員が褒めてくれた。その後も、他の観客達が私を褒めてくれた。あまりの試合展開に全員言葉を失くしていたようで、私の言葉で目が覚めたらしい。そんな中、審判がある一言を言った。
《皆さん、帰らないで下さい。本戦出場枠は、あと1人残っているんです。お願いですから帰らないで下さ~~い!》
あ、忘れてた。
リッカの試合が終わり、観客も含め一時全員が帰ろうとしてしまった。審判が一言言ってくれたおかげで、まだ残り1人が決定していない事を私を含め全員が気付いた。昼13時から、リッカを除いたバトルロワイヤルが行われることが決定した。そう決定したのはいいが、選手達全員が満身創痍だったので、私が全員を回復してあげた。こうなった原因はリッカにあるからね。まさか全員全回復するとは思わなかったらしく、大歓喜していた。ただ、さすがに武器までは用意出来ない。まあ、まだ時間もあるし、自分達で調達出来るでしょう。
私達は、集合場所である広場に来ていた。
「リッカ、お疲れ様。」
「はい!全員をぶっ飛ばしました。」
《ガン》
あ、ジンがリッカにゲンコツで頭を殴った。
「痛い!何するんだよ~ジン。」
「何するんだよ、じゃない。お前な、なんであんなぶっ飛ばし方法を選んだんだ?」
「始めは風圧だけで全員を吹き飛ばしたけど、みんな納得しなかったもん。どうやって納得させるかを考えたら、魔力も武器も体術も何も使わず戦ったら納得するんじゃないかと思ったの。全員が私に敵意向けてきたから、それに対応しただけだよ。途中から面白くなって、場外に出さず気絶させずにしておいたんだ。みんな色々な戦法を使って立ち向かってくるから、次はどんな戦法でくるのかワクワクしたよ。あー、面白かった。」
「あのな、サーシャ様がフォローしてくれたから良かったが、下手したら観客全員を敵に回していたぞ。」
「別に良いんじゃないかな。だって、私本戦でシュリに負ける予定でしょ。本戦でシュリと戦う時、序盤でシュリをボコボコにして、中盤あたりからシュリが進化して、良い気になってる私をボコボコにする予定だったの。」
へー、一応考えて、あの行動を取っていたのか。確かにそういうストーリーもありね。
「お前、考えての行動だったのか。意外だ、賢くなったな!」
「まあ、考えての行動ならいいわ。ただし、そういう行動をとる時は、前もって相談すること!全員が想定通りの動きをとるとは限らないからね。」
「あ、そっか。試合直前で思い付いたから、試しにやってみようと思いました。これからは相談します。」
おいおい、直前で思い付いたのか。
あ、シュリが来たわね。
「シュリ、結果はどうだった?」
「全く問題なく、本戦出場だ。ただ、優勝候補の奴がいたらしくてな。俺がそいつを一撃で場外の壁に吹き飛ばしたら、選手全員が俺に向かって来たんだ。始めは1人1人を場外に飛ばしていたんだけど、途中で面倒になってきて剣圧で全員を吹き飛ばした。」
やってることが、リッカと似ている。
「よく文句を言われなかったわね。」
「ああ、腕を振っても同じ事を出来たんだけど、それじゃあ魔法と疑われて失格になる可能性があるからな。剣圧で吹き飛ばした事をわからせるように、ゆっくりと剣を抜き魔力を通し、素早く振ったんだよ。そこで、全員が納得した、本戦出場決定だ。」
ああ、それなら剣圧で吹き飛ばされたと、審判を含めた全員が認識するわね。そして、自分の力では勝てないと思わせ納得させるわけか。
「おー、シュリさん、さすがです。リッカさんの考えを一段も二段も超えています。」
「リッカも思い付くのはいいけど、深く考えないといけないね。」
「むー、わかった。」
イリスとフィンに言われて、むくれながらでも納得したようね。これで2人とも予選を突破したから一安心ね。いよいよ2 日後の本戦、邪族との戦いが始まるか。さあ、邪族達はどういう手段をとってくるかな?
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