邪神を喰った少女は異世界を救済します

犬社護

文字の大きさ
90 / 149
4章 ガルディア帝国 闘技会編

邪族乱入とあっけない幕切れ

しおりを挟む
○○○ シュリ視点

皇帝の胸が何者かに刺し貫かれた。

「があ、何奴?!この、腕、邪族----か」

『あはははは、さあ皇帝は殺したぞ。チ、邪魔だな、ほらよ!』
《ドサ》

場外に皇帝が投げ捨てられたのを見計らい、俺は瞬時に次の作戦に移った。

「皇帝~~~!」

俺は、うつ伏せ担っている皇帝のところに行き、赤い血のような液体(赤色の調味料を薄めただけ)を皆に見えない様に皇帝の胸に大量にかけた。

小声で、
「空間魔法で、腕で身体を貫かれたようにしました。しばらく死んだふりをしていて下さい」

とだけ言っておいた。邪族が皇帝を殺す時、国民に強烈な衝撃を与える必要がある。その場合、こうくると予想していた。貫かれた後は、俺が空間魔法で邪族の腕に合わせて、邪族が皇帝を振り落としたかのように見せた。そして、今、赤い液体をかけた。

観客から見たら、胸を貫かれ大量出血したかのように見える。

よし、これでいい。貴賓席の腕だけが生えている場所を見た。腕だけとはいえ、かなりの邪力を感じる。こいつが親玉か。だが、

「あれ~~、スオウ皇子、どうして気持ち悪い笑みを浮かべているの?皇帝が殺されたんだよ。そこの腕だけ出ている邪族を見ても驚いていないし、もしかしてこうなる事を知っていたの?」

リッカがとんでもない事を突如言い出した。スオウの方を振り向くと、まるで

【計画通り】

と言わんばかりの気持ち悪い笑みを浮かべていた。こいつはアホか。それじゃあ、自分がやりましたよて言っているようなものだぞ。観客も気付いたようだ。

《なんだよ、あの気持ち悪い笑み。この状況でするか?》
《スオウ皇子が邪族を組んだ噂は本当だったんだ》

ここビルブレムに来てから、信憑性を持たせるためにスオウの事をあくまで噂として広めておいたんだが、こいつがここでこんな笑みを浮かべるのは想定外だ。スオウに問い詰めてみるか。

「スオウ皇子、どういう事ですか?その笑みの説明をしてもらいましょうか?」

スオウもハッとして、すぐに表情を戻した。

「笑みとはなんのことだ?ただ、驚いただけじゃないか?」

「ここにいる全員が目撃者ですよ。皇帝が殺されたのに、そんな笑みを浮かべるのは普通じゃない。まさか」

【あははははーーーー、そうだその通りだ。そこのスオウは、俺達と手を組んだんだよ。お喋りはどうでもいい。今、ここで全員死ね。おい、お前ら出てこい】

おい!なんで、ボスがいきなりバラすんだよ!

片腕だけが出ている邪族が喋りだすと、武舞台の上空20m付近に空間の裂け目が現れた。そして、数百体の邪族達が姿を現そうとしていたのだが、


---------これは選手達全員いや、ガルディア帝国自体を侮辱しているのだろうか?


そう、確かに数百体の邪族達が出現したのは間違いない。だが、上下逆さまで顔だけが出てきて、そこで全員驚愕の表情をしながらストップしたのだ。ボスらしき片腕だけの邪族も巨大な左半身だけ出して、同じ表情となっていた。騎士団や観客達も、これには驚いていた。

《え、どうしたのかしら?顔だけ出てきて、そこから動かないわよ》
《俺達を馬鹿にしているのか!》
《ふざけないでよ!顔だけで勝てると思ってるの!》
《スオウ皇子の近くにいる邪族は左半身だけだぞ!》


まさか、こんな事になるとは。サーシャやリッチから聞いてはいたが、この顔だけや左半身だけの状況は完全に想定外だ。サーシャを見ると、《あちゃー、やってしまった》という感じで、右手で顔半分を覆っていた。おいおい、サーシャとリッチが言っていた考えより斜め上の状況になってるぞ。


このまま、あの技を使ってしまって本当に良いのだろうか?


「私は左半身邪族を討伐するから、シュリは上空にいる首だけ邪族数百体を討伐してね」

「え、あ、わ、わかった。」

ここで、本戦出場の選手達も我に帰った。

「シュリ、俺達も手伝うぞ!」

俺は観客席まで伝わる軽い威圧を放った。もちろん、敵意や殺意はない。威圧には、安心感を入れた。

「こ、こ、これ程とは、わかった。お前達に全て任せる」

「邪族達に侮辱されたのはここにいる全員なのに申し訳ない。スオウに関しては、俺の手で始末したいんだ。理由は、後でわかる」

全員から了承の返事を貰い、俺は愛剣アブソリュートゼロを抜いた。首だけ邪族の中にはSクラスもいる。ここは全力でいく!

「アブソリュートゼロ【氷円斬】」

俺は、絶対零度となる液体を作り薄く直径5m程の円形にし、高速に回転させた。そして、それを全力で放った。放たれた氷円斬は、次々と首だけ邪族の首を跳ね飛ばしていき、首と胴体が切断された邪族は重力のまま武舞台やその周辺に次々と落ちていった。観客席には、マジックシールドがあるから落ちても問題ない。全ての邪族の切断が終わり、左半身邪族を見ると---

「ねえ、いつまでそうしているの?どうせなら、邪族と関与している人達を全部話してよ。さもないと、あの方が怒るよ。邪王がどうなっても知らないよ」

「は、は、はい!喋りますから許して下さい」

「おい、バルバリン!お前、何を言っているのかわかっているのか!」

「スオウうるさい!お前はシュリのところに行ってろ」

リッカはスオウの腕を握り締め、俺の方へ思いっきり投げた。勢いが強過ぎるぞ!

「え、うわ!ひぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃーーー、た、た、たす」
《キイーーーーーーーン、ドカン》

あ~あ、スオウが頭から武舞台に突き刺さった。死んでないな。よし!

バルバリンとかいうS級邪族は、巨大な身体と頭に巨大なツノが生えていて全身硬い毛で覆われた二足歩行の獣か。リッカに脅され、ペラペラとこれまでのことを話し出した。ここにいる観客と選手全員が目撃し聞いているので、スオウはもう逃れようがない。あ、用が済んだのか、リッカがバルバリンを縦に切断した。

こんなあっけない幕切れでいいのか?まるで台本通りに事が進んだかのようだ。仮にもS級だろ!俺自身が強くなり過ぎたの一言で片付けられるのだろうか?


○○○


この光景が、正直信じられない。ここにいるサーシャ達を除いた全員が傍観している。武舞台やその周辺には、至る所に首と胴を切断した邪族達が転がり積み重なっている。ボスであるバルバリンは、リッカに自分達が加担したスオウとの悪事を怯えながら話し、最後には爪で斬り裂かれ絶命した。そこに、左半身が転がっている。邪族達が現れ討伐されるまで、約10分間の出来事だ。邪族達全員Aクラス以上の猛者どもが、一瞬で討伐されたんだ。この状況に頭がついていけないのだろう。一番の黒幕であるスオウは、未だに武舞台に頭から突き刺さっている。そろそろ、問い詰めるか。

まず、バルバリンが進めていた悪事はこんな感じだ。

1) 独占欲、支配欲の強いスオウと契約を結ぶ。契約内容は、皇帝にするよう取り計らう代わりに、全世界に戦争を仕掛けろだ(スオウは喜んで契約したそうだ。元々、世界征服が目的だったらしい)。手始めに、邪魔な存在であるキース皇子(俺)を始めに暗殺する。

2) 闘技会武器部門本戦で皇帝を殺し、周辺にいる住民達を惨殺しまくる。

3) 住民達が絶望に浸っている中にスオウが登場し、Sランク邪族と戦い勝利させる(八百長)。その後、適当なところで邪族を撤退させ、スオウが邪族を撤退させたと住民に思わせ、高々と皇帝に就任する事を宣言させる。

4) 皇帝就任後、軍事力を強化させ、諸外国に戦争を仕掛ける。軍隊の中に人間に変装した邪族達を忍ばせ、絶望した魂を邪王の元へ運ぶ。それを繰り返す事で、全世界を支配する。途中で邪王が復活したら、スオウは用済みなので始末する。


スオウはアホだ。完全に利用されてるじゃないか。そろそろ起こすか。スオウの頭を引っこ抜き、ビンタしてやった。

「おい、スオウ、そろそろ起きろ。いつまで寝ているつもりだ」
《パン、パン、パン》

「ひ、ひたい、誰だ、ほへは皇子だぞ!」
「やっと目を覚ましたか」

こいつ、顔がボロボロで、歯が何本か折れてるぞ!

「ほ前か、不敬罪だぞ!」
「く、くく、お前はアホか。周りをよく見てから言え」

くそ、目の前の顔を見たら笑っちまう。今、笑ったらダメだ。皇帝も殺されている状況で、笑うのは不自然過ぎる。

「なんだと!」

スオウが周りを見渡すと小刻みに震え始めた。

「ほ、ほんな---全員Aランク以上のひゃぞくなんだぞ。ひ、ひったい誰が?」

ここは我慢だ。心を鬼にして我慢するんだ!

「俺だよ、ボスのバルバリン以外、全て俺がやった。お前の悪事も、バルバリンがペラペラと話し出してくれたぞ。お前、完全に利用されている事を理解しているのか?」

「ほんな事は、ふぁいしょからわかっている。さっきから、ほ前ほ前と貴様は何者なんだ!」

「いい加減気付けよ。髪の色を金髪にしただけだぞ。偽装解除」

偽装解除した事がキッカケとなったのか、ようやく観客達も我に帰り話し出した。

《キース皇子よ。キース皇子が私達を助けてくれたのよ》
《スゲー!邪族達が急に立ち止まったのも、キース皇子が威圧してくれたんだよ》

なんか、いいように解釈してくれたな。その方が都合が良いので、そのまま推し進めよう。

「ほんな馬鹿な!兄上は遺跡に転移しゃれ死んだはずひゃ」
「ほう、どうして俺が遺跡に転移した事を知っているんだ?」

「う、あ、それは---」

おかしい、なんだこの違和感は?
スオウも、さっきから簡単に喋りすぎだ。。

「さっき言ったろ。バルバリンが全てを白状したんだ。お前が皇族の暗殺の黒幕である事も判明した。処分は皇帝にお任せします。もう、起き上がってもいいですよ」

「はは、兄上、ひゃにを言っているんですか?皇帝は胸を貫かれたんですひょ。生きている----」

《ムク》

皇帝が普通に起き上がったところで、スオウは絶句した。これには、観客達も驚いているようだ。

「全く、いつまで私に死んだふりをさせるつもりだ」
「申し訳ありません。いくつか想定外の事があったもので」

「スオウ、全て聞かせてもらった。お前の悪事を全てな!」
「ほょんな馬鹿な、皇帝はひゃしかに胸を貫かれたはずだ。ひゃぜ生きている?」

それにしても、なんなんだろうか。この妙な感覚は、俺だけが感じているのか?まるで三文芝居を見ているかのようだ。とにかく、話しを続けよう。

「簡単な話だ。俺が師と仰ぐ先生に頼んで、絶対防御の魔法を事前に頼んでおいたのさ」

「絶対防御!ひょんな魔法、存在するわけが---」

「存在するから、皇帝は生きているんだよ」

「スオウよ、残念だ。ガルディア帝国では力こそ全てと言っているが、お前が実行しようとしている行いは力ではない。ただの暴力だ。そんな息子に育てた覚えはないのだがな。スオウ、もはや言い逃れは出来ん。お前を--」

「ひゅそ!俺は皇帝になる器を持っているんだ。ひょうだ、今ここで2人を殺せば、何も問題ないじゃないか!」

そう言うや否や、俺に斬りかかってきた。これは、もうダメだな。皇帝を見ると頷いたので、俺は自分の弟であるスオウの首を刎ねた。クソ、肉親を斬ることになるとはな。

これで、全ての決着がついた。

そう、決着がついたはずなのに違和感が拭えない。簡単に行き過ぎている。そう、まるで俺にとって都合の良い展開になるように仕向けられているみたいだ。思えば、スオウもあそこまで馬鹿じゃない。あいつは、かなりの慎重派だ。現に皇宮にいる時、なかなか尻尾を出さなかった。それじゃあ、どうして皇帝が胸を貫かれた時、あんな明らさまな笑みを浮かべたんだ?バルバリンもそうだ。あそこまで計画を練っているのに、スオウや観客達がいる目の前で普通バラすか?仮にもSランクだぞ、明らかにおかしい。まるで結末を予想して、そうなるように捻じ曲げられたかのようだ。


まさかとは思うが、これも邪神の加護が影響しているのか?
俺はサーシャを見ると、俺に両手を合わせ『ごめんなさい』のポーズをとっていた。


おいおい、サーシャも想定外の事だったのか?
しおりを挟む
感想 446

あなたにおすすめの小説

凡人がおまけ召喚されてしまった件

根鳥 泰造
ファンタジー
 勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。  仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。  それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。  異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。  最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。  だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。  祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。

神の加護を受けて異世界に

モンド
ファンタジー
親に言われるまま学校や塾に通い、卒業後は親の進める親族の会社に入り、上司や親の進める相手と見合いし、結婚。 その後馬車馬のように働き、特別好きな事をした覚えもないまま定年を迎えようとしている主人公、あとわずか数日の会社員生活でふと、何かに誘われるように会社を無断で休み、海の見える高台にある、神社に立ち寄った。 そこで野良犬に噛み殺されそうになっていた狐を助けたがその際、野良犬に喉笛を噛み切られその命を終えてしまうがその時、神社から不思議な光が放たれ新たな世界に生まれ変わる、そこでは自分の意思で何もかもしなければ生きてはいけない厳しい世界しかし、生きているという実感に震える主人公が、力強く生きるながら信仰と奇跡にに導かれて神に至る物語。

1000年生きてる気功の達人異世界に行って神になる

まったりー
ファンタジー
主人公は気功を極め人間の限界を超えた強さを持っていた、更に大気中の気を集め若返ることも出来た、それによって1000年以上の月日を過ごし普通にひっそりと暮らしていた。 そんなある時、教師として新任で向かった学校のクラスが異世界召喚され、別の世界に行ってしまった、そこで主人公が色々します。

幼女と執事が異世界で

天界
ファンタジー
宝くじを握り締めオレは死んだ。 当選金額は約3億。だがオレが死んだのは神の過失だった! 謝罪と称して3億分の贈り物を貰って転生したら異世界!? おまけで貰った執事と共に異世界を満喫することを決めるオレ。 オレの人生はまだ始まったばかりだ!

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

【完結】異世界に召喚されたので、好き勝手に無双しようと思います。〜人や精霊を救う?いいえ、ついでに女神様も助けちゃおうと思います!〜

月城 蓮桜音
ファンタジー
仕事に日々全力を注ぎ、モフモフのぬいぐるみ達に癒されつつ、趣味の読書を生き甲斐にしていたハードワーカーの神木莉央は、過労死寸前に女神に頼まれて異世界へ。魔法のある世界に召喚された莉央は、魔力量の少なさから無能扱いされるが、持ち前のマイペースさと素直さで、王子と王子の幼馴染達に愛され無双して行く物語です。 ※この作品は、カクヨムでも掲載しています。

いきなり異世界って理不尽だ!

みーか
ファンタジー
 三田 陽菜25歳。会社に行こうと家を出たら、足元が消えて、気付けば異世界へ。   自称神様の作った機械のシステムエラーで地球には帰れない。地球の物は何でも魔力と交換できるようにしてもらい、異世界で居心地良く暮らしていきます!

パーティーを追放されるどころか殺されかけたので、俺はあらゆる物をスキルに変える能力でやり返す

名無し
ファンタジー
 パーティー内で逆境に立たされていたセクトは、固有能力取得による逆転劇を信じていたが、信頼していた仲間に裏切られた上に崖から突き落とされてしまう。近隣で活動していたパーティーのおかげで奇跡的に一命をとりとめたセクトは、かつての仲間たちへの復讐とともに、助けてくれた者たちへの恩返しを誓うのだった。

処理中です...