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5章 レーデンブルク 悪魔討伐編
最下層に到着、スフィアタリアの歴史-1
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私は、ジンとリッカが悶え苦しむところをセキュリティーバードを介して見ていた。うーん、リッカはともかく、まさかジンがお仕置きを受けるとはね。新たな称号を追加しておいて正解だったわ。あなた達の食欲を考えたら、絶対ラーメンを試食とか適当な理由を付けて食べることは明白だったからね。これに懲りて、今後は我慢するでしょう。
----攻略を再開し、ついに地下50階層へと到達した。
デュラハンの話だと、地下50階層には、ロングの金髪の男が1人いるだけで、壁画へと案内してくれるらしい。通路を歩いて行くと、扉があった。ここに、その男がいるのね。一応、ノックしておこう。
《コンコン》
「どうぞ、お入りください」
部屋に入ると、聞いた通りの男がいた。歳は20前後かな。
「サーシャ様、お待ちしておりました。私はオリュンプス遺跡のダンジョンマスター、ドミトリアスと申します」
「私を知っているの?」
「サーシャ様というより、デモゴルゴン様とスフィア様を知っています。これまでの経緯も、ここから見ていました。ユニークスキル【存在隠蔽】もデモゴルゴン様から聞いていましたので、私には効果がないのですよ。ですから、あなたがデモゴルゴン様の力を取り込んだ事も知っています」
2人の知り合いで、ダンジョンマスターか。
私がデモゴルゴンを取り込んだ事も知っているとなると-----
「なるほど、ここからスフィアタリア全体を監視していたのね」
「その通りです。私に与えられた任務は2つ、1つ目はスフィアタリアの監視、2つ目は最下層到達者にスフィアタリアの全知識とシステムマニュアルを授与する事となっています。本来なら、アイリス様がスフィア様の残したメッセージ10個全て聞き終わった後に、ここに訪れる予定でした。-----しかし、想定外が発生しました。それがサーシャ様です」
「こらこら、違うでしょう。確かに私の存在が想定外というのはわかるわ。でもね、スフィア自体がおかしくなったせいで、ただのオリハルコンの剣を渡されるし、涼見凌一の始末をアイリスに任せるし、やっていることに穴があり過ぎるのよ!あなたも見ていたのならわかるでしょうに」
「その通りです。サリア様と召喚者達のせいで、スフィア様がおかしくなってしまった。実はメッセージに関しても、後半は殆ど愚痴になっているんです。一応全て聞けば、【オリュンプス遺跡に全てがある】ということは伝わる仕組みになっていたんですがね」
本来なら、アイリスにスフィアタリアの全知識とシステムマニュアルを授与する事で、新たな女神を誕生させる予定だった。でも、想定外の私が邪神から女神になってしまったわけだ。それに、あのメッセージは最終的にここに来るように仕向けてあったのか。うーん、物凄く過程を飛び級したような感覚ね。あ!
という事は、管理世界の座標もここでわかるわけね。良かった!手間が省けたわ。せっかくだから、色々と聞いておきましょう。
「スフィアとデモゴルゴンは、自分達がどうなるのかを予知していたの?」
「いえ、あの2人にそういった力はございません。ただ、今後予期せぬ何かが起きた場合に備えての保険として、ダンジョンマスターである私とダンジョンを作っておいたのです」
この言い方だと、まるでスフィアとデモゴルゴンが協力して、ここを作ったということになるんだけど?
「ねえ、女神サリアは、ここを知っているの?」
「いえ、オリュンプス遺跡については知っていますが、最下層にいる私の存在を知りません。当初の予定では、スフィア様の力をサリア様が受け継ぐはずだったのです。まあ、サリア様や召喚者に関しては順を追って説明しましょう。まずは、こちらへ来て下さい。壁画を見て頂きましょう。数ある壁画の中から、出発点となるものを選んで下さい」
ドミトリアスの部屋を出て、案内された場所は大きな空間だった。周りの壁は、数多くの壁画と化していた。こうやって全体を見ると、平和・戦争・旅立ち、様々な壁画があるわ。-------なるほど、歴史を現しているのね。そうなると、出発点は------ここか。
「お見事です。数ある壁画の中から、瞬時に気付くとは、そこが出発点の【無】です。それでは、スフィア様とデモゴルゴン様から教わったスフィアタリアの歴史をお話ししましょう」
○○○
「そもそも、この空間には、当初何もありませんでした。しかし、ここから近い場所に1つの異世界があり、そこで神と魔を含めた大きな戦争が起こりました。その戦争は1000年間続きましたが、勝敗は異世界の崩壊という最悪な結果となりました。当然、神も魔も生きとし生けるもの全てが死んだのです」
いきなりバッドエンドからスタートするのね。
「その異世界が崩壊した結果、周辺の空間には残骸が漂っていました。その残骸が少しずつこの空間に集まっていき、理由はわかりませんが、大きな爆発が発生しました。その爆発で発生した異世界がスフィアタリアです。スフィアタリアは何億年という長い歳月をかけて、少しずつ今の形をとっていくようになりました。地面が形成され、水も生まれ海となり、それが次第に大きくなっていく。そこから、様々な地殻変動が発生した事で、いくつかの大陸が形成されました」
「なんか、私のいた地球の誕生と似ているわね」
「ええ、ほぼ一緒ですね。ただ、1つ違う事があります。それは、魔素の存在です。地球には魔素が存在しないため、魔力を持つ生物は発生しません。ですが、ここスフィアタリアは誕生の時点で、魔素がありました。ですから、誕生する生物は皆、魔力を持っています。人間までの誕生も地球と似ているので割愛します」
まあ、人間の誕生までの歴史は必要ないわね。
「初めての生物が発生し、人間やエルフ、獣人が誕生するまで、約5000年の歳月がかかりました。人類は少しずつ数を増やしていき、文明を築いていきました。そして、人間が生まれてから4000年経過する頃には、スフィアタリアは今の地球を超える高度な文明を築いていました」
当然、何か大きな問題が発生しているんでしょうね。
「ここに到るまで、スフィアタリアには、ある1つの大きな問題が発生していたのですが、どの国も目先の利益に走り、問題解決を先延ばししたせいで、スフィアタリアは崩壊の危機に陥りました」
うーん、とことん地球と似ている。
「それで、その問題というのは?」
「魔素の不足です。魔素はスフィアタリアの地面から常に放出されていましたが------」
「なるほど、供給が需要に追いつかなくなったのね」
「はい、各国の学者達がこれまでのデータに基づいて再三注意喚起していたのですが、どの国も【魔素が無くなるわけがない】と楽観的に考えていたんです。確かに魔素は無くなりません。ですが、あまりにも文明が発達し、魔素の消費量が莫大になったせいで、大気中の魔素濃度が徐々に薄まっていきました。そして、先進国で大きな事件が発生しました」
「大きな事件?」
「はい、先進国の中でも特に文明が発達している都市で、数万人の人達が呼吸困難となり死んだのです。調査の結果、大気中の魔素濃度が極度に低下している事がわかりました。ここ以降、各地で同じ事件が発生し、人口が少しずつ減少してきました」
「スフィアタリアの人類は、生きていく上で魔素も必要だったのね。まあ、なんの対処もしていないのだから、死ぬのは当然の結果ね。対処方法としては、魔素の消費量を抑えればいいはずだけど」
「はい、その通りです。しかし、彼らの考えた方法は違ったのです。当初はサーシャ様の方法を採用したんですが、医療・建築・農業・スポーツあらゆる分野で暴動が発生しました」
なぜ暴動?大都市で大勢の人々が死んだんだから、そこは全員が一致団結するところでしょ!
「全ての分野において、魔素は必需品となっています。消費量を抑えるという事は、全ての 分野の機能が一部損なわれてしまうのです。それが我慢出来なかったのでしょう。そこで世界会議が行われ、ある1つのプロジェクトが立ち上がりました」
1つのプロジェクト?
「それは、別の異世界への移動です」
「はああぁぁぁぁーーーーー!なぜ、そうなるのよ?文明が発達していたんでしょう!地球より高い技術レベルがあるのなら、魔素を人工的に作るとか色々あるでしょう!」
「言いたい事はわかります。魔素を基にした物を作る上では、高い技術レベルを持っていましたが、魔素がない状態での技術レベルは0に近いのです。それに、彼らは今の生活レベルを落としたくなかったのです。もっと魔素に頼った贅沢な生活を求めていたのです」
どれだけ魔素に頼っていたのよ。そして、人類絶滅の危機になっているのに、どれだけ欲望があるのよ。完全に自分達の欲望を満たすために、突っ走っているわね!
「結局、魔素の消費を基に戻し、各国が協力し合って20年という歳月をかけて、異世界間へ渡る船が完成しました。その頃になると、人類の全人口は20年前の約半分に減少していましたが、その反面、さらに文明が発達し、サーシャ様が求める管理世界、人工異世界を作ることに成功したのです。しかし、作製出来た管理世界は縦・横・高さが各々1000mと非常に狭いものでした。その結果、人工異世界作製は断念し、殆どの人々が別の異世界へと旅立ったのです」
ここまでの話でスフィアとデモゴルゴンが一切出てこないんだけど、そろそろ登場かしら?
「しかし、この世界に留まる人達が100名いました。その中にスフィア様とデモゴルゴン様がいたのです」
やっと登場してくれた。
「残った100名は、故郷であるこの世界を復活させるという選択肢を選びました。魔素を消費し過ぎたせいで、世界のバランスは崩れてしまい、いつ崩壊してもおかしくない状況でした。そこで、崩壊が起こる前に、全ての技術を管理世界に避難させる事にしました。避難を済ませてから10日後、ついに大きな地殻変動が発生し、これまで築いてきた建物全てが崩壊し、誕生した当初のスフィアタリアに戻りました。これを見届けた100名のうち、スフィア様とデモゴルゴン様以外の98名は、管理世界でコールドスリープの状態に入る事を選択しました。残ったスフィア様とデモゴルゴン様はその行く末を見守るため、あらゆる技術を集結させ生体改造を行い、強靭な身体と不死の力を身に付けました。そして、スフィアタリアの方では数万年という歳月をかけて、以前のような魔素に満ちた世界に戻りました。ただ、以前は6つの大陸が存在していましたが、現在はサーシャ様も知っているように、巨大な大陸1つだけとなっています。大気中の成分、海、陸、それぞれにおいて綿密な調査を行い、問題なしと判断し、コールドスリープさせていた人達を解凍し、スフィアタリアへ移住させました。当然、いくつかの技術を持たせています」
うーん、そんな歴史があったのか。2人とも、苦労したんだね。でも、どこかでおかしくなるんだろうね。デモゴルゴンが邪神になるんだから。
「今のスフィアタリアのシステムの原型は、お2人が作成しています。今後、文明を崩壊させるような大きな地殻変動を起こさせないために、98名の人々が眠っている間に作り上げたものです。崩壊前のスフィアタリアには、魔法というものは存在しませんでした。魔素を用いたもの全てが科学に集中していたんです。この新しい世界において、科学技術に集中させると、また崩壊が起こる危険性もあります。そこで、魔素を用いたステータス・スキル・魔法のシステムを開発しました。このやり方なら、魔素を使いはしますが、崩壊前と比べると1人あたりの魔素消費量は格段に減少しますので、人類が増加したとしても、需要が供給を上回ることはないでしょう。完成したシステムをお2人を含めた全員に導入後、コールドスリープを解きました。目覚めた98名は驚きはしたものの、人の強さを示すステータス、スキル、魔法とわかりやすかったので、皆喜んでいました。そのお礼として、この世界の名前を【スフィアタリア】と名付けられる事となったのです。デモゴルゴン様は恥ずかしいという事で、デモゴルゴン様の母であるタリア様の名前が入りました」
うんうん、ここまでは良い話ね。
「98名の人々は、各種族に別れた後、それぞれが新天地へと移動し、そこで国を築きました。エルフ族は元々出生率が低いので、国ではなく街を作りましたね。今の原点を築き出してから、しばらくの間は平和な世が続きました。スフィア様とデモゴルゴン様も、仲良く管理世界から皆を眺めていました。その側には、お2人の子供である【サリア様】も笑顔で皆を眺めていました」
えええーーー!!!今、さりげなく、サリアの名前が出たよね。
「女神サリアって、スフィアとデモゴルゴンの子供なの!」
「はい、98名を見送った後、お2人とも子作りに励んだのです。そして生まれたのがサリア様ですね」
まさか、2人の子供とは思わなかった!これは予想外だわ。
「話を再開します。コールドスリープで目覚めた人達も、2度とあのような崩壊を起こさせないために、新たに生まれた子供達に伝承として、これまでの歴史を聞かせていました。その子供が成人し、新たな子が生まれた際にも、伝承を語り続けました。そうやって、伝承聞かせ楔を打ち込む事で、過剰な欲は身を滅ぼす事を言い聞かせてきました。しかし、年数が過ぎてゆくと同時に、文明も少しずつ進化してきました。伝承を伝える人達も少しずつ少しずつですが減っていき、それと同時に人々の中のあらゆる欲が少しずつ目覚め始めてきたのです」
あー、ここから悪い流れになっていくのね。
----攻略を再開し、ついに地下50階層へと到達した。
デュラハンの話だと、地下50階層には、ロングの金髪の男が1人いるだけで、壁画へと案内してくれるらしい。通路を歩いて行くと、扉があった。ここに、その男がいるのね。一応、ノックしておこう。
《コンコン》
「どうぞ、お入りください」
部屋に入ると、聞いた通りの男がいた。歳は20前後かな。
「サーシャ様、お待ちしておりました。私はオリュンプス遺跡のダンジョンマスター、ドミトリアスと申します」
「私を知っているの?」
「サーシャ様というより、デモゴルゴン様とスフィア様を知っています。これまでの経緯も、ここから見ていました。ユニークスキル【存在隠蔽】もデモゴルゴン様から聞いていましたので、私には効果がないのですよ。ですから、あなたがデモゴルゴン様の力を取り込んだ事も知っています」
2人の知り合いで、ダンジョンマスターか。
私がデモゴルゴンを取り込んだ事も知っているとなると-----
「なるほど、ここからスフィアタリア全体を監視していたのね」
「その通りです。私に与えられた任務は2つ、1つ目はスフィアタリアの監視、2つ目は最下層到達者にスフィアタリアの全知識とシステムマニュアルを授与する事となっています。本来なら、アイリス様がスフィア様の残したメッセージ10個全て聞き終わった後に、ここに訪れる予定でした。-----しかし、想定外が発生しました。それがサーシャ様です」
「こらこら、違うでしょう。確かに私の存在が想定外というのはわかるわ。でもね、スフィア自体がおかしくなったせいで、ただのオリハルコンの剣を渡されるし、涼見凌一の始末をアイリスに任せるし、やっていることに穴があり過ぎるのよ!あなたも見ていたのならわかるでしょうに」
「その通りです。サリア様と召喚者達のせいで、スフィア様がおかしくなってしまった。実はメッセージに関しても、後半は殆ど愚痴になっているんです。一応全て聞けば、【オリュンプス遺跡に全てがある】ということは伝わる仕組みになっていたんですがね」
本来なら、アイリスにスフィアタリアの全知識とシステムマニュアルを授与する事で、新たな女神を誕生させる予定だった。でも、想定外の私が邪神から女神になってしまったわけだ。それに、あのメッセージは最終的にここに来るように仕向けてあったのか。うーん、物凄く過程を飛び級したような感覚ね。あ!
という事は、管理世界の座標もここでわかるわけね。良かった!手間が省けたわ。せっかくだから、色々と聞いておきましょう。
「スフィアとデモゴルゴンは、自分達がどうなるのかを予知していたの?」
「いえ、あの2人にそういった力はございません。ただ、今後予期せぬ何かが起きた場合に備えての保険として、ダンジョンマスターである私とダンジョンを作っておいたのです」
この言い方だと、まるでスフィアとデモゴルゴンが協力して、ここを作ったということになるんだけど?
「ねえ、女神サリアは、ここを知っているの?」
「いえ、オリュンプス遺跡については知っていますが、最下層にいる私の存在を知りません。当初の予定では、スフィア様の力をサリア様が受け継ぐはずだったのです。まあ、サリア様や召喚者に関しては順を追って説明しましょう。まずは、こちらへ来て下さい。壁画を見て頂きましょう。数ある壁画の中から、出発点となるものを選んで下さい」
ドミトリアスの部屋を出て、案内された場所は大きな空間だった。周りの壁は、数多くの壁画と化していた。こうやって全体を見ると、平和・戦争・旅立ち、様々な壁画があるわ。-------なるほど、歴史を現しているのね。そうなると、出発点は------ここか。
「お見事です。数ある壁画の中から、瞬時に気付くとは、そこが出発点の【無】です。それでは、スフィア様とデモゴルゴン様から教わったスフィアタリアの歴史をお話ししましょう」
○○○
「そもそも、この空間には、当初何もありませんでした。しかし、ここから近い場所に1つの異世界があり、そこで神と魔を含めた大きな戦争が起こりました。その戦争は1000年間続きましたが、勝敗は異世界の崩壊という最悪な結果となりました。当然、神も魔も生きとし生けるもの全てが死んだのです」
いきなりバッドエンドからスタートするのね。
「その異世界が崩壊した結果、周辺の空間には残骸が漂っていました。その残骸が少しずつこの空間に集まっていき、理由はわかりませんが、大きな爆発が発生しました。その爆発で発生した異世界がスフィアタリアです。スフィアタリアは何億年という長い歳月をかけて、少しずつ今の形をとっていくようになりました。地面が形成され、水も生まれ海となり、それが次第に大きくなっていく。そこから、様々な地殻変動が発生した事で、いくつかの大陸が形成されました」
「なんか、私のいた地球の誕生と似ているわね」
「ええ、ほぼ一緒ですね。ただ、1つ違う事があります。それは、魔素の存在です。地球には魔素が存在しないため、魔力を持つ生物は発生しません。ですが、ここスフィアタリアは誕生の時点で、魔素がありました。ですから、誕生する生物は皆、魔力を持っています。人間までの誕生も地球と似ているので割愛します」
まあ、人間の誕生までの歴史は必要ないわね。
「初めての生物が発生し、人間やエルフ、獣人が誕生するまで、約5000年の歳月がかかりました。人類は少しずつ数を増やしていき、文明を築いていきました。そして、人間が生まれてから4000年経過する頃には、スフィアタリアは今の地球を超える高度な文明を築いていました」
当然、何か大きな問題が発生しているんでしょうね。
「ここに到るまで、スフィアタリアには、ある1つの大きな問題が発生していたのですが、どの国も目先の利益に走り、問題解決を先延ばししたせいで、スフィアタリアは崩壊の危機に陥りました」
うーん、とことん地球と似ている。
「それで、その問題というのは?」
「魔素の不足です。魔素はスフィアタリアの地面から常に放出されていましたが------」
「なるほど、供給が需要に追いつかなくなったのね」
「はい、各国の学者達がこれまでのデータに基づいて再三注意喚起していたのですが、どの国も【魔素が無くなるわけがない】と楽観的に考えていたんです。確かに魔素は無くなりません。ですが、あまりにも文明が発達し、魔素の消費量が莫大になったせいで、大気中の魔素濃度が徐々に薄まっていきました。そして、先進国で大きな事件が発生しました」
「大きな事件?」
「はい、先進国の中でも特に文明が発達している都市で、数万人の人達が呼吸困難となり死んだのです。調査の結果、大気中の魔素濃度が極度に低下している事がわかりました。ここ以降、各地で同じ事件が発生し、人口が少しずつ減少してきました」
「スフィアタリアの人類は、生きていく上で魔素も必要だったのね。まあ、なんの対処もしていないのだから、死ぬのは当然の結果ね。対処方法としては、魔素の消費量を抑えればいいはずだけど」
「はい、その通りです。しかし、彼らの考えた方法は違ったのです。当初はサーシャ様の方法を採用したんですが、医療・建築・農業・スポーツあらゆる分野で暴動が発生しました」
なぜ暴動?大都市で大勢の人々が死んだんだから、そこは全員が一致団結するところでしょ!
「全ての分野において、魔素は必需品となっています。消費量を抑えるという事は、全ての 分野の機能が一部損なわれてしまうのです。それが我慢出来なかったのでしょう。そこで世界会議が行われ、ある1つのプロジェクトが立ち上がりました」
1つのプロジェクト?
「それは、別の異世界への移動です」
「はああぁぁぁぁーーーーー!なぜ、そうなるのよ?文明が発達していたんでしょう!地球より高い技術レベルがあるのなら、魔素を人工的に作るとか色々あるでしょう!」
「言いたい事はわかります。魔素を基にした物を作る上では、高い技術レベルを持っていましたが、魔素がない状態での技術レベルは0に近いのです。それに、彼らは今の生活レベルを落としたくなかったのです。もっと魔素に頼った贅沢な生活を求めていたのです」
どれだけ魔素に頼っていたのよ。そして、人類絶滅の危機になっているのに、どれだけ欲望があるのよ。完全に自分達の欲望を満たすために、突っ走っているわね!
「結局、魔素の消費を基に戻し、各国が協力し合って20年という歳月をかけて、異世界間へ渡る船が完成しました。その頃になると、人類の全人口は20年前の約半分に減少していましたが、その反面、さらに文明が発達し、サーシャ様が求める管理世界、人工異世界を作ることに成功したのです。しかし、作製出来た管理世界は縦・横・高さが各々1000mと非常に狭いものでした。その結果、人工異世界作製は断念し、殆どの人々が別の異世界へと旅立ったのです」
ここまでの話でスフィアとデモゴルゴンが一切出てこないんだけど、そろそろ登場かしら?
「しかし、この世界に留まる人達が100名いました。その中にスフィア様とデモゴルゴン様がいたのです」
やっと登場してくれた。
「残った100名は、故郷であるこの世界を復活させるという選択肢を選びました。魔素を消費し過ぎたせいで、世界のバランスは崩れてしまい、いつ崩壊してもおかしくない状況でした。そこで、崩壊が起こる前に、全ての技術を管理世界に避難させる事にしました。避難を済ませてから10日後、ついに大きな地殻変動が発生し、これまで築いてきた建物全てが崩壊し、誕生した当初のスフィアタリアに戻りました。これを見届けた100名のうち、スフィア様とデモゴルゴン様以外の98名は、管理世界でコールドスリープの状態に入る事を選択しました。残ったスフィア様とデモゴルゴン様はその行く末を見守るため、あらゆる技術を集結させ生体改造を行い、強靭な身体と不死の力を身に付けました。そして、スフィアタリアの方では数万年という歳月をかけて、以前のような魔素に満ちた世界に戻りました。ただ、以前は6つの大陸が存在していましたが、現在はサーシャ様も知っているように、巨大な大陸1つだけとなっています。大気中の成分、海、陸、それぞれにおいて綿密な調査を行い、問題なしと判断し、コールドスリープさせていた人達を解凍し、スフィアタリアへ移住させました。当然、いくつかの技術を持たせています」
うーん、そんな歴史があったのか。2人とも、苦労したんだね。でも、どこかでおかしくなるんだろうね。デモゴルゴンが邪神になるんだから。
「今のスフィアタリアのシステムの原型は、お2人が作成しています。今後、文明を崩壊させるような大きな地殻変動を起こさせないために、98名の人々が眠っている間に作り上げたものです。崩壊前のスフィアタリアには、魔法というものは存在しませんでした。魔素を用いたもの全てが科学に集中していたんです。この新しい世界において、科学技術に集中させると、また崩壊が起こる危険性もあります。そこで、魔素を用いたステータス・スキル・魔法のシステムを開発しました。このやり方なら、魔素を使いはしますが、崩壊前と比べると1人あたりの魔素消費量は格段に減少しますので、人類が増加したとしても、需要が供給を上回ることはないでしょう。完成したシステムをお2人を含めた全員に導入後、コールドスリープを解きました。目覚めた98名は驚きはしたものの、人の強さを示すステータス、スキル、魔法とわかりやすかったので、皆喜んでいました。そのお礼として、この世界の名前を【スフィアタリア】と名付けられる事となったのです。デモゴルゴン様は恥ずかしいという事で、デモゴルゴン様の母であるタリア様の名前が入りました」
うんうん、ここまでは良い話ね。
「98名の人々は、各種族に別れた後、それぞれが新天地へと移動し、そこで国を築きました。エルフ族は元々出生率が低いので、国ではなく街を作りましたね。今の原点を築き出してから、しばらくの間は平和な世が続きました。スフィア様とデモゴルゴン様も、仲良く管理世界から皆を眺めていました。その側には、お2人の子供である【サリア様】も笑顔で皆を眺めていました」
えええーーー!!!今、さりげなく、サリアの名前が出たよね。
「女神サリアって、スフィアとデモゴルゴンの子供なの!」
「はい、98名を見送った後、お2人とも子作りに励んだのです。そして生まれたのがサリア様ですね」
まさか、2人の子供とは思わなかった!これは予想外だわ。
「話を再開します。コールドスリープで目覚めた人達も、2度とあのような崩壊を起こさせないために、新たに生まれた子供達に伝承として、これまでの歴史を聞かせていました。その子供が成人し、新たな子が生まれた際にも、伝承を語り続けました。そうやって、伝承聞かせ楔を打ち込む事で、過剰な欲は身を滅ぼす事を言い聞かせてきました。しかし、年数が過ぎてゆくと同時に、文明も少しずつ進化してきました。伝承を伝える人達も少しずつ少しずつですが減っていき、それと同時に人々の中のあらゆる欲が少しずつ目覚め始めてきたのです」
あー、ここから悪い流れになっていくのね。
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