邪神を喰った少女は異世界を救済します

犬社護

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5章 レーデンブルク 悪魔討伐編

スフィアタリアの歴史-3

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ここから女神サリアの話が聞けるのね。

「デモゴルゴン様が封印されて以降、スフィア様とサリア様はシステムの復旧に力を注いだのは良いのですが、スフィア様自身がサリア様と殆ど遊ばなくなりました。当初、サリア様も我慢していたのですが、精神年齢がずっと12歳でストップしている事もあって少しずつストレスが溜まっていきました」

「システム復旧以降、邪王が現れるまでは平和だったはずよ。その時はどうしていたの?」

「スフィア様はデモゴルゴン様との死闘とシステムの復旧の疲れのため、殆どの期間を寝ていましたね。サリア様は、システムの内部を弄れるマニュアルスキルを持っていないので、設計図を見て何か作業を行っていました。何をしていたのかは、当初私にもわかりませんでした」


まあ、スフィアとデモゴルゴンの実力はほぼ互角だから、力もかなり消耗した。その後、システム復旧に全て力を注いだとしたら、深く眠るのも当然か。そういえば、サリアが管理システムで出来るのは、システムのエラー調整など限れらものだけだったわね。設計図を見て、何を企んでいるのかが気になるところね。


「サリア様に関しては、スフィア様がずっと寝ていたので、システムの補助精霊であるテイルと話し合ったり遊んだりもしていましたよ」

システムの補助精霊、テイルか。
現在の管理世界にはテイルとサリアの2人がいるのね。


「スフィア様は、邪王が目覚める数年前に目覚めたので、ストレスはかなり軽減されていました。邪王が誕生しても冷静な判断が取れたという事です。ただ、邪王システムはデモゴルゴン様が無理に導入したものなので、邪王がスフィアタリアに復活している間に限り、システムに過大な負荷が掛かっていました。スフィア様はその負荷を抑える作業にずっと没頭していたため、サリア様が当初邪王を討伐してくると提案したのですが、スフィア様は『スフィアタリアにいる人達に退治させれば良い』と言って、その提案を却下しました」

デモゴルゴンもスフィアも、やけにサリアの意見を否定するわね。邪王が目覚めたのなら、まずサリアが降り立って邪王を討伐する。邪王システムのことを打ち明け、それ以降の討伐に関してはスフィアタリアの人達に任せれば良い。そうすれば50年という歳月があるんだから準備も整って、当初の被害を最小限に抑えれるわ。多分、サリアはそう提案したんじゃないかな?

「スフィア様は邪王システムの改良も試みましたが、厳重なロックがかかっている所為で、手も足も出ない状況がずっと続いていました。結局、邪王は討伐されましたが、総人口の3割が死ぬという甚大な被害が発生しました。邪王討伐後、死んだ大勢の人々が転生システムに組み込まれた事で、システムの負荷は3割程しか軽減しませんでした。この悲惨な状況を見て、サリア様はシステムの内部の改良案を提案しました。しかし、スフィア様はそれを軽く見ただけで却下しました」

あー、設計図を見ていたのは、システムを改良するためか。

「あのさ、さっきから気になるんだけど、デモゴルゴンもスフィアも、どうしてサリアの意見を却下するのよ。改良案というぐらいだから、きちんとまとめているはずよ。それを碌に見もしないで却下するっておかしいでしょう?」


「私に言われてもわかりません。デモゴルゴン様もスフィア様も内情を吐露していませんので、心情がわからないのです」

うーん、確かにドミトリアスは、あくまで見ているだけだものね。彼に文句を言っても仕方ないわね。


「これ以降、50年周期に邪王が復活するので、ずっと同じことを繰り返していますね。ただ、邪王の復活しない時期が続いてからは、2人とも不振に思いました。スフィア様は、もしもの時を考え、ある秘策を開発しておきました。それが異世界召喚です。そして、200年という歳月をかけて邪王が復活した時、これまでにない負荷が襲って来ました。スフィア様も予期していた事なので驚きはしなかったのですが、邪王が想定以上の力を持っていたので、やむなく神託で異世界召喚を各国に伝えました」


スフィアは、どうあってもサリアに頼らないのね。サリアに任せれば、一撃で終わらせるのにね。なぜ異世界の人間を頼るかな?


「サリア様もフォローしていましたが、さすがに限界に近かったようです。時折、

【どうして、こんな事ばかりしないといけないのよ!自分が自由に操作すれば、もっと効率良く出来るのに、毎回毎回邪魔臭い方法でシステム維持をしないといけないの。自分がやれば、スフィアタリアをもっと平和に出来るし、邪王をすんなりと討伐出来るのに!腹たつわね~~!それに、あの人は私のことを何だと思っているのよ!】

とブツブツ呟いていました」


なんか、サリアの気持ちがわかるわ。何を言っても、碌に聞きもせず、見もせず否定される。昔の私の家庭もそうだった。父も母も共働きで、帰って来ても疲れて碌に話もしない。意見を言ったら殴られりもしたわね。

だから、私は考えた。言うだけじゃダメだ。家庭を改善するために、自分から何かを始めないとダメだ思った。近所に住んでいる友達の母親に相談して、掃除・洗濯・料理など自分で出来る範囲で多くの物事を教わった。そして、それを次々と実行していった。1週間程して、2人は家の中が住みやすくなっている事に気付いた。そこで、私が全ての内情を吐露した事で、2人は泣いて自分達の抱えている問題を話してくれた。そこ以降は、弟の面倒や家事に関しては全て私が補う事で、家族の平和が保たれたのだ。


母親のために、良かれと思ってしている事が全て否定される。精霊のテイルという相談役がいても 、サリアにとっては厳しい環境下にいるわね。

これは、サリアにも意見を聞いた方がいいわね。
討伐するかどうかは、その話次第ね。


「邪王を封印する事で、システムの負荷もある程度抑える事に成功しました。その後あの4人のメンバーがシステム管理を任されるようになったんです。スフィア様はメンバー達に、サリア様と同等の仕事が出来るように教えた後、サリア様にこう言いました。

『もう仕事をしなくて良いよ』

思えば、サリア様がおかしくなったのも、この言葉がキッカケですね。スフィア様をここから追い出すため、4人のメンバーに事情を説明し、計画を練っていきました」


サリアは、スフィアが自分のことを用済みだと勘違いしたのね。システムのことを熟知しているサリアに向かって、『仕事しなくて良いよ』というのはおかしいでしょう。完全に言葉の使い方を間違えている。そのせいで、サリアが勘違いしたんだ。なるほどね、サリアがスフィアを追い出した理由がわかったわ。自分の意見をまともに聞いてくれず、人数が揃ったら『用済み』にされた。そのせいで、母親への思いが憎しみに変化して追い出す計画を立てたってところか。なんか、デモゴルゴン、スフィア、サリアともに悲しい結末になっているわね。


「4人ともサリア様の計画に賛成し、わざとエラーが起こるようにしました。この際、スフィアタリアに影響が出ないように考慮して行なっています。それらのエラーの数を徐々に増やしていき、スフィア様への負荷を増大させていきました。この途中で、東吾佐江・森本努の2名はスフィア様の仕事ぶりを見て間違いに気付き、サリア様の説得を何度も試みました。しかし、何度説得しても、サリア様は首を縦に振らなかった。結局、喧嘩別れとなってしまい、2人はハイエルフへと姿を変化させ、エルフのシルフィーユ王国に現在も潜伏しています。喧嘩別れする何日か前に2人のハイエルフが病気で亡くなるのを確認していましたので、同じ姿になって仮死状態にする事で病を克服したとでっち上げて、現在も普通に暮らしています」

「後ろの飛んでいる虫から、私達を観察しているんでしょう」

「ええ、そうです。あの2人は、今後どう行動するかが問題ですね。サーシャ様の敵に回れば一瞬で討伐されます。たとえ逃げたとしても、サーシャ様は魂の気配を覚えていますので、瞬時に転移で移動可能と、要するに逃げ場がないですね。どう行動するかが楽しみですよ」

「あなたも、とことん傍観者ね」

「ええ、話は戻りますが、喧嘩別れした後、丁度サーシャ様達が召喚されるまで、ずっとスフィア様はシステムの維持に没頭していました。サーシャ様以外の人達をスフィアタリアへ送った後に限界が訪れ、別の異世界へ逃げ出しました。どこに逃げたのかは観測外のためわかりません。サーシャ様に関しては、サリア様が送ったのですが、-----自分より可愛い顔をしていたという理由で、適当なステータスとユニークスキルを付与しスフィアタリアへ送っていますね。涼見に関しては、以前から勝手に仕事を放り出して、ゾンビハウスを作ったりしていましたね。秒寺に関しては、サーシャ様達の召喚の4ヶ月前に悪魔召喚を実行に移しました。その後、管理世界から姿を消しています。以上が、現在までの歴史ですね」


長い話がやっと終わった。


「デモゴルゴン、スフィアは、悲惨な末路になったわね。私がデモゴルゴンを喰ったし、スフィアは別の異世界へ逃げ出した。現在のサリアはどうしているの?」

「それなんですが、現在非常に危険な状態に陥っています」

「危険な状態?」

「はい、秒寺が召喚した悪魔の所為で、システムに過大な負荷が掛かっているのです。トイフェルベリーの時は、まだ大丈夫だったのですが、ここ最近になって急速に人に乗り移り一体化していく悪魔が激増しているせいですね」

「もしかして、サリアが私に何も言ってこないのは-----」

「サーシャ様の力が大幅に増加されたので、存在隠蔽自体がフルに発揮しているのもありますが、サーシャ様の予想通り、悪魔召喚によるシステムエラーの修復作業に没頭しているため、存在を完全に忘れています」

「私の力はシステムの負荷になってないの?」

「サーシャ様だけは例外です。地球という場所からの召喚者、デモゴルゴン様の力を取り込んでからの低レベルスタート、地球やスフィアタリアの人達の感謝や崇拝など、数多くのイレギュラーが発生しました。通常なら、初期の段階でシステムが暴走しています。しかし、デモゴルゴン様の力を取り込んだ事でサーシャ様の身体自身がそれに耐えうるものに進化しました。サーシャ様の身体自体が1つのシステムみたいなものになっているんです。心当りはあるはずですよ。新スキルや合体魔法、加護、称号の付与----、それらは全てサーシャ様が負担しています」

全然気付かなかった。全て心当りがあります。

「あはは、私自身がシステムみたいなものなった----か。心当りがありまくるわ。まあ、そのおかげで、この力を手に入れたのか」

「このままでは確実にシステムが壊れ、スフィアタリアが消滅するでしょう。救う手立てはただ1つ。サーシャ様がスフィア様の力を受け継ぎ、管理システムと接続すれば、サーシャ様自身の力がそのままシステムの処理能力となりますので、エラーなども数日中に消えるでしょう」

確かに、それをするしかないわね。

「その前にサリアをどうするかね?今は、サリアとテイルで維持しているの?」

「ええ、そうです。サーシャ様は、これからどういった行動を取りますか?」

次の行動か。

「ねえ、力を受け継いだら、邪王とかもすぐに消せるんじゃないの?」
「悪魔は無理ですが、今のサーシャ様なら、邪王がスフィアタリアにいようといまいと関係なく、邪王システムを簡単に消せますね」

そうなると優先順位は
1位 サリアと和解し、協力してシステムの応急処置を行う
2位 悪魔を全て討伐するか元の次元の狭間へ送還する
3位 佐江と努を討伐するか、または和解する
4位 邪王システムを破壊し、それに補う物を作製する
5位 勇者達を地球に戻す

こんなところか。

今のスフィアタリアの人達は邪族を解体し、食べ物として扱っているからね。迂闊に全部消すと大変な事になる。

「話は簡単ね。スフィアの力を受け継ぐわ。そうすれば、システムの操作方法もわかるのね?」

「はい、それでは壁画の奥にある部屋に行きましょう」


ふう、これで今後の見通しがたってきたわね。
まずは力を受け継いで、サリアと和解しましょう。
さすがに討伐は---ちょっとね。
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