義理のきょうだいのありかた?R18

みずき

文字の大きさ
11 / 14

はじめましておにいさん11

しおりを挟む
少しだけ開けて聞いてみようかな……
ゆっくりとドアノブを回してほんの数センチだけ開けて耳を澄ました

お兄さんの声がはっきりと聞こえる

「申し訳ないですが、おかえりいただけませんか?」

「帰りません、中に入れてください」

この声は……
おねえさんの声?

「何度も言わせないでもらえますか?弟は家にはいませんので中に入れる必要もありませんのでおかえりください」

「嘘よっ!わかってるんですよ?入らせてもらいますね」

「いい加減にしてください?警察を呼びますよ?」

「夫婦の事なんです、お兄さんにはわからないと思いますけど?」

「あなたも言うようになりましたね、残念ですがあなたが何言おうと俺は絶対にあなたを家の中に入れません」

「お兄さんがなんと言おうと私は中に入らせてもらいますね」

「ちょっ……!!」

大きな物音が聞こえて思わずドアを閉める

「おにいさんっ……おねえさんがっ……」

「来たんだな……みずきはキッチンのところに隠れててくれる?」

「えっ……でも……」

「大丈夫だから」

私はまっすぐにおにいさんの目を見て頷くとキッチンに行き奥の方で座った、その後すぐドタドタと足音が聞こえてきてドアが開く音がした

「ねぇっ?いるんでしょ?」

勢いよくおねえさんが入ってきた、隠れているのでどうなっているのか見えないので耳を澄ます

「あなた……会いたかった……」

「俺は会いたくなかった」

「どうして……?私はあなたの事愛してるのにっ!!」

「俺はもう愛してない」

「なっ……なんで……!!」

「おまえが俺を裏切ったんだろ?」

「私……でもっ……あなたの事も愛してるの」

「都合のいい事を言うな、おまえは弟と仲良くしてればいいだろ、もう帰れ」

「ひどい……そんな言い方……」

確かに少しひどい言い方かもしれない、おにいさんっていつも優しいからなんだか驚いちゃう……でも仕方ないよね、おねえさんはそれぐらいの事をしたんだから……

「ねぇ、あの子は?昨日一緒にいたって聞いたんだけど、どこにいるの?」

「あの子って?」

「とぼけてるの?みずきよ、みずき!!なんで一緒にいたのよっ!!」

「それはもときくんに聞いたんだな、今はもう一緒にいない、どうしたのかも知らない」

「嘘よ、あの子はいやらしい子だからきっとあなたをたぶらかしてるに違いないわ!!」

「なぁ、もういい加減にしてくれよ、出て行け、警察を呼ぶぞ」

「呼べばいいじゃない?私は帰らないわよ」

「わかった」

おにいさんがそう言ってしばらく沈黙が続いた後ピピッと音がした、きっとおにいさんが電話をかけたんだろう、本当に警察を呼ぶつもりなのかな?また一大事になっちゃうの嫌だなぁ……

「どこにかけてるのよっ!?本当に警察を呼ぶつもりなのっ!?」

「あっ、もしもし俺です、先日は黙って帰ってしまってすいませんでした、それでなんですが、娘さんが実家に押しかけて来て困ってまして、引き取りにきていただけませんか?もし無理なのであれば警察を呼ぶつもりなのですが」

……

「わかりました、それではお願いします」

「もしかしてうちの実家にかけたんじゃ……」

「そうだ、おまえに言ってわからないなら親を呼ぶまでだ、迎えに来てくれるそうだ、外で待ってろ。じゃぁな、今度はちゃんとした場で会いましょう」


「ひどいっ……!!もときも外に来てるんだから連れてくるわ!!」

「それはちょうどいい2人とも連れて帰ってもらえるからな」

「あなたってそんな人だったのね……やっぱりもときと関係を続けていて正解だったわ」

「結局そうなんだろ、都合の悪い事があれば他の男に行くんだろ?愛してるのはもときくんだけなんだろう」

「もういいわ、その事は。あなたは私の事愛してるのよね?好きなのよね?私ともときとあなたで3人で仲良くしましょうよ?」

「おまえ何を言ってるんだ……」

「さぁ?もときも呼んであなたの部屋で交わりましょう?」

「もう限界だ、こんな最低な女だとは思ってなかった……残念だ……」
 
足音が聞こえてドアの開く音が聞こえてすぐ足音が増えてまたドアの開く音が聞こえた

「兄貴、俺はもうこの女と話すのが限界なんだ、代わりに説得してくれ」

「あぁ、しばらく待ってやったが俺も待つのも限界だな、我が弟をここまで困らせる奴は……」

「そいつの親が迎えに来るんだ、どうやら外にはそいつの弟も来てるらしい」

「はぁ、そうなんだな。なんならそいつの弟も中に入れたらいいんじゃないか?外で変な事言いふらされても困るし」

「まあ、確かにそうだな。呼んでこいよ?」

「なっ……わかったわ、中に入れるなら入らせてもらうわ」

バタバタと足音がしてドアの開く音、どんどんと足音が遠ざかって行く。リビングは物音ひとつしない、ドキドキしながらキッチンの奥からリビングを覗く、誰もいないみたいだ。みんなで玄関の方まで行ったのかな?

音を立てないようにドアの方へと行くとドアに耳をつけて音を聞く

ガチャっと玄関のドアが開く音が聞こえてそのまま閉まる音が聞こえて鍵を閉めた様な音が聞こえる、玄関の鍵を閉めたの?誰が?なんで?みんなで外に出て防犯の為に鍵をかけたの?それとも誰か中に残ってて他の人が入れないように鍵をかけたの?

恐怖で心臓がドキドキしてしまう

玄関の方から足音が聞こえる

私は慌ててキッチンの奥へと戻りしゃがみこんだ

リビングのドアが開く音がやけに大きく聞こえた

ドアの閉まる音が聞こえた

足音がまっすぐにキッチンの方へと近付いてくる

怖くてぎゅっと目を閉じる

足音が近付いてきて、すぐ近くで止まる

「みずき……?」

「大丈夫……?」

おにいさんの声だった

私は力が抜けてその場にしりもちをついた

「おにいさんっ……」

「大丈夫?怖がらせちゃったかな?」

「すごく怖かったの………1人にしないで……」

「ごっ、ごめんね」

おにいさんは私の手をとって引っ張り上げると強く抱きしめてくれた

「そうだよな……みずきは1人でこんなところで何も見えないで待ってたんだもんな、怖かったよな……」

「うん……」

「大丈夫、今うまくアイツを外に出したから。玄関の鍵を閉めたからもう入ってこられないよ」

「えっ?だってさっきの話だと……」

「兄貴って何を考えてるかわからないけどまぁ悪知恵はすごいんだ、弟を呼んでこいって言って外に出したら鍵を閉めたんだ、俺も驚いちゃったよ」

「そうなんですね、よかったです、本当に連れてきたらどうしようかって思ってたんです……」

「まあ、もうすぐ鬼の様にチャイムが鳴るだろうけどな」

「えっ……そうですよね、大丈夫ですかね?」

「まぁ、あんまりにひどければ今度こそ警察を呼ぶさ」

「お兄さんはどうしたんですか?」

「あぁ、今上で親父たちに連絡してくれてるよ。兄貴は気が効くから、早くみずきのところに行って安心させてやれって言ってくれたんだ」

「そうなんですね……やっぱり私……」

「みずき?何を考えてるかわかる、だけど気にする事はない、みんな迷惑なんて思ってない」

「でも……」

「ここまできたら、何があっても俺がみずきを守る、何があってもみずきを幸せにするから」



「はい……でも無理しないでください、おにいさんにもしもの事があったら私悲しいですから」

「わかってる、でも俺はみずきに何か起こる方が怖いんだ、怪我したりしたら大変だろ?女の子なんだから男の俺が守るのは当たり前の事だ」

「ありがとうございます」

キッチンから出てソファーに座り、体の緊張感を解きほぐす、しばらくゆっくりしているとドアが開いてお兄さんが入ってきた

「おっ、みずきちゃん。大丈夫だった?」

「はい、私は大丈夫です。すいません……なんだか大変な事になってしまって……」

「みずきちゃんは真面目なんだなぁ?もういいんだよ、大丈夫だ。俺たちはみずきちゃんの味方だって言ったろ?」

「はい……でも……」

「遠慮する必要はない、これ以上謝るとキスしちゃうよ?」

「えっ……あっ……わかりました」

「それでいいんだよ、まぁでも罰としてでもいいからみずきちゃんとキスしてみたいけどな?」

お兄さんは笑っている

こんな状況だからこそお兄さんはこんな冗談を言ってみんなをリラックスさせてくれるんだろう

「まったく、兄貴は……まぁ、みずきが約束守ればみずきの唇を守れる訳だから頑張れば大丈夫だな?」

「もー2人して……」

おにいさんも笑ってる

わたしもつられて笑ってしまう

このままうまく行けばこんなの楽しい毎日が楽しい手に入るんだ、頑張らなきゃね

楽しい雰囲気で話している、その時

とチャイムが鳴った

最初に口を開いたのはお兄さんだった

「あいつらかな?とりあえず俺が見てくる」

「あぁ、すまん兄貴……」

「気にすんな」

そう言うとドアを開けて玄関の方へと歩いて行った
 
「みずき?怖くない?大丈夫?」

「怖いです、すごく怖いです。でもみんながそばにいてくれるから頑張れます」

「耐えられなくなったら俺の後ろに隠れていい、アイツらにみずきが泣いてるところ見られたくない」

「わかりました、ありがとうございます」

リビングのドアが開いてドアの方を見る

そこにいたのはお兄さんだけだった

「兄貴、どうだった?」

「あぁ、アイツらだったからインターホン越しに怒鳴りつけたらビビったのかどっか行ったわ」

「さっきはあんなに強気だったのに、弱いんだな」

「まぁ、さっきはまだちゃんと対応してたからな。急に変わったから怖くなったんじゃないか?」

お兄さんはニヤニヤしている

「でも、兄貴ありがとう。助かりました」

「いいんだよ、大事な弟の為ならな?まぁ、本当はみずきちゃんの為に頑張ったんだからな?」

「兄貴は……」

「お兄さんありがとうございます、私の為に……私、お兄さんの事も好きになりそうです」

「ちょっ……みずき……」

「ハハッ、みずきちゃんも言うようになったね?ありがとう、嬉しいよ」

「はい、お兄さんは本当にいい人なんだってわかって、なんでも言っても大丈夫かなって思って……」

「心を開いてくれたって訳だな、そりゃ良かった。俺もどんどんオープンにしていかなきゃな?」

「兄貴もみずきも……でも2人が仲良くなってくれたら俺も嬉しいよ」

「感謝しろよ?優しいお兄ちゃんにな」

「はい、はい、感謝してますよ」

「全く我が弟君は照れ屋なんだから」

お兄さんはそう言うとおにいさんの背中に乗っかった

楽しそうにじゃれ合っている2人はまさに本物の兄弟だ

旦那も最初はこうゆう感じのちゃんとしただったんだよね、何があって、どうしてこんな事になったんだろう……

どうしてそんな風になってしまったのかもし聞いたとして、それで許せる訳じゃない、同情なんてする訳じゃない、だけど私達にはわからない辛い事があったりしたんだろうか……

まだ旦那を信じようとしている自分が憎らしい、どんな事があっても浮気はいけない事だ例え相手が身内だったしても……

このまま避け続けてもいつかは真実を知らなければいけない時が来るんだ、その時私はどう思うのかな、どう感じるのかな……

もしかして許してしまうのかな…… 



それは本当の事だ

一度でも好きになって
にどこまで冷静でいられるんだろう……

目の前に現れて、優しくされたら……

ううん……
ダメ、ダメだよ……

旦那はが好きなんだ
だから……だから身体を重ねてお互いを求めてたんだ……

だから……
これからもその方がいいんだ……

私が何をしてもおねえさんよりも上になれる事なんてないんだもん

旦那の中で一番はなんだから……

「みずき……?ねぇ?大丈夫?」

「は、はいっ……ごめんなさい」

「なんで謝るの?なにも怒ってないよ?」

「はい……」

「大丈夫じゃなさそうだね……兄貴、ちょっと上で休んできてもいいかな?」

「あぁ、いいぞ。少し休んで落ち着いたら降りてこい」

おにいさんが手を引いて立たせてくれた、そのままおにいさんに引っ張る形で二階の部屋へと連れていかれおにいさんが手を離した

「大丈夫?」

「はい……」

「どうした?みずき……心配だよ」

「大丈夫です……」

「嘘だ、見てわかるさ、辛そうだ」

私はおにいさんに抱きついた

「私……」

「いいんだよ、何も言うな。わかってる」

おにいさんが優しく耳元で囁いた

「おにいさんはさっきおねえさんが来た時どう思いましたか?」

「どう思ったって?」

「だから、その……やっぱり好きだなとか……許そうかなとか……」

「ないよ、ある訳ないだろ」

「本当?」

「あぁ、本当だ。どうしてそんな事を聞くんだ?」

「ん……その……」

「みずきはまだ若いもんな、まだ迷ってるんだろ?いいんだ、仕方ないさ。でも俺は一度決めたら迷わない」

「うん……」

「少し1人になるといい、寝てもいいし、ゆっくり考えてごらん?」

「はい……ありがとうございます。そうさせてもらいますね」

おにいさんはドアを開けて部屋を出て行った

「ふぅ……まだまだダメだなぁ……顔にも態度にも出ちゃうなんて……こんな時にまで気を使わせるなんて……はぁ……」

声に出しても気分が晴れるどころか、もっとどんよりしてしまう

気分悪くさせちゃったかな……
悪くさせちゃったよね……

私はベッドに横になって目をつむる……

私が旦那と出会ったのはそう……
数年前、たまたま私が1人で旅行に行った先で同じ様に1人で旅行をしていた旦那に声を掛けられたのが出会いだった

出会った時はまさか付き合うだなんて全く考えていなかったし、物静かで紳士的な人だなぐらいにしか思っていなかった。

今思えばなぜ話し掛けられたのかわからない

1人旅している女性にわざわざ話し掛ける必要があったのか、たまたま同じ様な境遇だったのか……

歩いているところに後ろから声掛けられて振り返ると優しそうな顔で微笑んでいた、チャラそうでもなかったからつい話を聞いてしまったのが間違いだったのかもしれない……

あの時は想像もしてなかった、こんな事になるなんて

あの時優しく微笑んでいた旦那が私を裏切るだなんて……

声を掛けられる事なんてなかった、今ならナンパかもって疑って無視したのに

「すいません、あの……少しお時間いいですか?」

そう、丁寧に話し掛けてきた旦那

私は戸惑いながらも返事をした

「はい、なんでしょうか?」

「実はその……先程見かけた時からどうしてもあなたの事が気になってしまって……」

「私の事が気になるって……?もしかして私なにか変ですか?」

「いえっ……その気になるっていうのはその服装とかが変で気になるんじゃなくて、その……とてもお綺麗だったのでこのまま声を掛けないであなたが行ってしまうのはもったいないなと思ったので声を掛けてしまいました」

「はっ……そうなんですね……」

「すいません、ご迷惑だとわかっていたのですが……」

「別に構いませんよ、特に急いでもいませんし」

「それはよかったです、もしよろしければどこかでお茶でもしませんか?」

「私今、1人で旅行に来てまして立ち話程度なら時間はあるのですが出来れば観光もしたいのでお茶はご一緒出来ません」

「あっ、そうなんですね。僕も1人で旅行に来てるんです、もしよかったら一緒に行きませんか?」

「そうなんですね、でも先程会ったばかりなのに一緒に観光って言われても……」

「大丈夫です、何もしませんし、1人よりも2人の方が絶対に楽しいと思いますよ?」

「まぁ、そうですよね。でも、もし少しでも嫌だと思ったらすぐにどこかへ行ってくださいね」

「わかりました、僕は話してみて更にあなたに惹かれてしまいましたので嫌がる事はしません、さぁどこに行きましょう?近くにお城がありますけどそこにしましょうか?」

「そうですね、そうしましょう」

横に並んで歩き出した、お城に着くまでたわいもない世間話をしながら歩いた

お城に着いていろいろと見て回った後連絡先を交換して別れた後、お互いの住んでいるところが遠い事がわかったけれど旦那からの猛烈なアプローチもあり付き合う事になって……

そして流されるままに結婚が決まっていつの間にか平凡な毎日を送っていた

もし、あの出会った時にすでにおねえさんと関係を持っていたとしたらいくら私がタイプだとしてもわざわざ声を掛けてくるものだろうか?

まともに出会いがなく、尚且つ私とならおねえさんとの関係を続けながら仮面夫婦としてやっていけると思ったのかな……

そう思われていたのなら悔しい

私だって人並みに旦那の事を好きだったのに私を隠れ蓑にしてこそこそとおねえさんとの関係を続けてたなんて……

私を抱きながら旦那の頭の中にはおねえさんがいたのかもしれない……

おねえさんはおにいさんに抱かれながら旦那の事を考えていたのかな……

お互いにそんなに好きなら周りがどう言っても一緒になればいいだけの話なのに
義母も知っていたなら尚更、義母が世間体を気にして旦那とおねえさんに結婚しろって言っていたのかな……

隠し事があるからやましい事があるからいつも私に優しかったのかな?

都合のいい奴って思われてたのかな……

私は本当の親の様に義母を大切にしていたし、大事に思っていたのに……

旦那は私の事、私の親の事なんてなんとも思ってなかったんだよね……
私だけならまだ許せるけど、親まで騙してたなんて人として最低……

ふぅ……

もーこんなに悩むような私じゃなかったのになんでこんな風になっちゃったかな、悩んでばっかりでおにいさんに嫌われたくないし……

かと言ってそんな割り切れる事じゃないし、あーもう!!

やめた、やーめた

パンッとベッドを叩いて気合を入れてベッドから立ち上がる、そのままの勢いで部屋から出て階段を降りてリビングのドアの前まで来た

ドアを開けようとドアノブに手をかけると中から話し声が聞こえてきた、どうやらおにいさんのようだ相手の声が聞こえないので電話で話しているようだ

私は中に入るのをためらってしまう、おにいさんが誰と電話していても別に気にしないでそのままドアを開けて入ればいいのに、なぜか動きが止まってしまう。

でも、ドアの前に立って話を盗み聞きするのもイヤだ 

心を落ち着けてゆっくりとドアノブを下げてドアを開ける、キッチンの奥でおにいさんが電話しているのが見えたけど邪魔する必要もないからなるべく話を聞かないようにソファーの方へと行き静かにソファーに座っておにいさんの電話が終わるのを待った、座ってすぐ電話が終わったのかおにいさんがゆっくりとこちらに来た

「もう大丈夫?」

「はい、大丈夫です。心配させてばかりでごめんなさい……」

「いいんだよ、大丈夫ですって胸を張って言う人よりはマシだと思うからな」

「まぁ、そうですよね。こんな状況でも強靭なメンタルな人の方が少ないですよね」

「まあ、そう言う事だな。そういえば今から俺の携帯に電話があったんだ」

「えっ?なんでおにいさんに?」 

「さあ?それでがみずきの実家に連絡を入れたそうだ」

「私の?」

「そうだ、みずきが何も伝えてないのをいい事に散々俺やみずき事悪く言ったってわざわざ伝えてくれたよ。最悪だな?まだ俺はみずきの両親に会った事もないのにダメなイメージを植え付けられちゃったな……」

「えっ……どうしよう……私は心配かけないように黙ってたのに……そこまで考えてなかった……」

「今からみずきの実家に行かないか?」

「今から?」

「そうだ、だって今更みずきが電話で何を言ったって仕方ないだろ?それにこうゆう大事な話は直接の方がいいだろ?」

「そうですけど……」

「怖いか?」

「そりゃ怖いです、自分が悪くなくてもこんなショッキングな事親に話すなんて……」

「そうだよな、うちの親もかなりショック受けてたもんな……」

「それに遠いですよ?新幹線で3時間とか……」

「いいじゃん?みずきとの初めての旅行だ」

「ポジティブですね、おにいさんは。そういうところも私好きです」

「おっけーじゃぁすぐに行こう」

「あっ、でもお兄さんとかお父さんたちには?」

「兄貴には今伝えて、親父には電話するよ。さぁ、行こう?準備して。タクシーも呼んでおく」

「はい、わかりました」

私は急いで二階に行くと私はおにいさんの部屋に戻って出かける準備をした準備が終わって部屋から出るとおにいさんがお兄さんの部屋から出て来た、目を合わせて頷いてすぐ家を出てタクシーを待った

「なぁみずき、みずきの家に行って話が上手くまとまったらどこかホテルにしばらく泊まってのんびりしないか?うちの家だとみずきあんまり休めてないだろ?」

「おにいさんの家にいるって言ったじゃないですか?」

「あぁ、言ったけどみずきの親も心配だろうし、こっちまでなら誰も追いかけては来ないだろう?」

「そうですかね……?」

「まぁ、予定は未定だからな?その日のうちにこっちに帰って来たっていいわけだしな?」

「わかりました、やんわりとした予定でいきましょうか」

家の前にタクシーが来たので2人で乗り込む

「すいません、近くの駅までお願いします」

お兄さんがそう言うとはいと運転手さんが返事をしてタクシーが走り出した

「とりあえず大きい駅まで行って新幹線に乗らないとなぁ」

「そうですね、ここからだと新幹線乗るまでどれぐらいかかりますか?」

「そうだなぁ、1時間ぐらいかな?」

「新幹線まで1時間、新幹線に乗ってうちの最寄まで3時間ぐらいかぁ……」

「まあそのうち着くさ、あんまり深く考えなくてもなんとかなるさ」

「まあそうですよね、今はこのお兄さんと初めての小旅行を楽しむ事にしますね」

私はそう言うとお兄さんの肩にもたれかかった

「そうこなくっちゃな」

お兄さんは私の手を引き寄せると指を絡めて強く握った

唇が触れ合いそうな程顔を近づけて私達は微笑みあった

最寄り駅に着くとタクシーを降りて手を繋いだまま駅の中に入り切符を買って目的地までの電車を待って乗り込んだ

2人で並んで座る

私の胸はドキドキと音を立てている

きっと周りの人から見たら私たちは恋人又は夫婦に見えている

でも本当は



そう
そんな事言われなければ誰にもわからない

もし、今お兄さんの知り合いに会ってしまったらどうしよう……

そんな不安を覚えた

またお兄さんは

と言ってくれるのだろうか?


気にしすぎだと自分でも思うけど気にしないでって言われて本当に気にしないなんて無理だよね

2人で電車に揺られる
何も話さない

でも、嫌な沈黙じゃない

心地の良い時間だ

ふと隣のお兄さんを見ると優しい顔で眠っていた

本当にスヤスヤと音が聞こえてきそうなぐらい気持ち良さそうに眠っている

ふふっと笑って私はお兄さんの肩に頭をのせて目をつぶる

すぅすぅとお兄さんの寝息と私のドキドキしている鼓動と電車の走る音だけが聞こえる

目をつむる

いろいろな思い出が浮かんでくる、おにいさんと初めて会った日のこと

あの日はお姉さんが結婚を前提にお付き合いしている恋人がいて義母に紹介したいと言ってお姉さんがおにいさんを家に連れて来た、失礼な話だけど初めて見たおにいさんは体が大きくてデカイなぁと思った、歳もかなり上でもしこの人が義理の兄になるんだと思うと少しがっかりした

やはり一応家族になるんだったら多少かっこいい人の方が嬉しいよね?
ほとんど私には関係ない人だけど、たまに来て目の保養になったらいいなーって勝手に思ってた

あの時は嫌悪感しか感じなかったけど今はなんであんな風に思ったのか思い出せない
結局その後、お姉さんとおにいさんは結婚した

そう一年の間に二人に会うのは数回

そう、おにいさんが私に抱きついて来た時から世界は一瞬して変わってしまった

人間なんて大切にしているものを手放す事は簡単なのかも知れない

自分という人間が怖くなった

旦那との生活に満足してたのに

他の人に好意がある事を伝えられると簡単に流されてしまう

まぁ、旦那にもお姉さんにも落ち度というか悪い事をしていたのだから仕方ないと言えば仕方ないと思いたい

目をつむっていても確かに感じるおにいさんの温もり

このまま実家に帰ったとしてうちの親はなんて言うのかな‥‥
おにいさんのお父さんお母さんみたいに理解してくれるとは思えない‥‥

もーストレスばっかりだな‥‥

でも、自分の親だもんしっかり説明してわかってくれなかったら諦めるしかないよね

車内アナウンスが聞こえてくる

次で降りないと新幹線に乗り換えられない

私はおにいさんの耳にふぅと息をかける

一度では起きなかったのでもう一度勢いをつけて耳に息を吹きかけた

おにいさんはビクッと動くと驚いた様子で周りを見渡している

私と目が合うと力が抜けたように背もたれにもたれかかった

「もー何かと思った‥‥」

「うふふ、起きてくれましたね?次の駅で降りますよ?」

「あぁ、そうか‥‥俺寝ちゃってたんだな‥‥ごめん‥‥でももっと普通に起こしてくれると嬉しいんだけど」

「油断しましたね、私やっぱり人にイタズラするの好きです」

私はにっこりとおにいさんに笑って見せた

おにいさんは困ったような顔をしたけど優しい笑顔になった


「まったく‥‥みずきは‥‥油断できないなぁ、まぁそれも楽しいけどな」

そう言いながらおにいさんは私の頭を撫でてくれた、まわりの人がチラッとこちらを見たけど恥ずかしさはなくむしろ自慢気にさえ思えた

車内アナウンスが流れてしばらくして電車が止まった、わたしとおにいさんは席から立ち上がると扉の前まで歩いて扉が開くのを確認してから電車を降りて改札を抜けてわたしの地元までの新幹線の切符を買い新幹線に乗り込んだ

隣同士で席を取ったので着くまでずっとおにいさんの手を握っていた、肩に首をもたれさせて二人で仮眠を取った

地元の駅に着くまで約3時間はかかったけれど二人とも目覚める事はなかった

もうすぐ目的の駅に着く頃わたしは目覚めた

隣にいるはずのおにいさんの方を見る、でもそこにはおにいさんの姿はなかった
あれ?おにいさんどこに行ったんだろう?トイレかな?
わたしはしばらく待って見る事にした、しばらくするとおにいさんが戻って来た

「あっ、みずき起きたんだね、もうすぐ降りるよ?これ飲み物、買って来たよ」

おにいさんの手にはお茶のペットボトルが一つ

「あっ、ありがとうございます。そうですね、もうすぐですね、降りる準備しなきゃですね」

「そうだな、荷物を持つよ」

「ありがとうございます」

車内アナウンスが流れて新幹線が止まり、扉が開きホームに降りる

「ふぅーやっと着いたな、体が固くなっちゃうなぁ‥‥」

「そうですね、長時間座ってるのは辛いですよね。さあ最寄り駅まで行ける電車に乗り換えましょう」

わたしはおにいさんの手を握り歩きはじめた、ホームの景色もこの賑やかな雰囲気もこの匂いもなんだかみんなが懐かしく思えて心地いい、そういえば結婚してから地元に帰るのは久しぶりだった、旦那はいい顔をしないのでなかなか帰る事が出来なかった

「懐かしいなーそうだ、両親にお土産買っていこうかな?」

「いいんじゃないか?」

「うん、買って帰る。おにいさんも買いますか?」

「あぁ、そうだな、賞味期限もあるしうちに買って帰るか」

二人でお土産屋さんでお土産を色々見てから最寄り駅まで行ける路線に乗り換えて電車に乗る、最寄り駅までは約1時間、電車の中は空いており二人で座った、わたしもおにいさんも緊張してしまって会話らしい会話をする事なく最寄り駅に着いた

「んーやっと着きましたね、田舎で驚きましたか?」

「長かったけどみずきとなら楽しいよ、そんなに田舎じゃないんじゃないかー?緑が多くていいよ」

改札を出て手を繋いで家までしばらく歩く

家の前につく、チャイムを鳴らす必要はない、だって自分の家だから

でも‥‥

今日はなんだか胸が苦しい‥‥

「やっぱり帰りませんか?」

「みずき‥‥俺だって怖い、怖いよ。でも頑張ろう?」

わたしは深呼吸をして頷く

ゆっくりと玄関のドアを開ける、玄関のドアを開けるとすぐに台所があってその隣が居間だ
勇気を出してただいまーと大きい声を出して帰って来た事を告げる

居間の奥の方から音が聞こえて居間のドアが勢いよく開く

お母さんだ

「みずき‥‥あんた‥‥どうしてここに?」

「お母さん‥‥ごめんなさい‥‥わたし‥‥」

お母さんはわたしを抱きしめてくれた

わたしは安心して涙が出てしまった


どうしても泣くのをやめられない、久しく会っていないのもあるけれどやっぱりお母さんに会うと今までの辛かった事を思い出してしまう

嗚咽をしながら大粒の涙を流す

お母さんは何も言わないでわたしの
背中を優しくゆっくりとさすってくれる、なんだかあったかくて余計に涙が出てしまう

しばらく泣き続けて落ち着いて、わたしはお母さんに全てを話そうと心を決めた

先に口を開いたのお母さんだった

「ねえ?みずき、あなた、なんでここに?」

「あっあの……」

「まあいいのよ、早く家なのかに上がりなさい?その後ろの人もきっと連れなんでしょ?どうぞ」

わたしは大きく頷いて後ろを振り返りおにいさんの手を握ると家の中に入った

家の中にはお母さんしかいなかった

わたしはリビングの椅子に座る、おにいさんも隣の椅子に座った

お母さんは何も聞かないでお茶を出してくれた、実家のお茶はわたしが小さい頃から飲んでいた濃いめの烏龍茶

わたしはこのお茶が大好きだ

嫁いでからは旦那の家族に合わせて違う種類のお茶を飲んでいた、自分では気にしていなかったつもりでもやっぱり慣れ親しんだ物の方が体に合う様な気がする

「おにいさん……いいんですよね?」

「ああ、いいよ。俺から話そうか?」

「いえ、それはわたしから」

おにいさんは強ばった顔で頷く

お母さんは自分の飲み物を持ってわたしの前の席に座る

わたしはチラチラとお母さんを見る

お母さんは目を閉じて何かを考えているようだ

「お母さん……」

「どうしたの?急に帰ってきて」

「あのね……」

「回りくどいのはお母さんは嫌いだからはっきり言わせてもらうわね?」

「う、うん……」

「もときくんから電話があった、あなたの事をすごく悪く言っていた、私はあなたを信じています、大事な娘ですから」

「は、はい」

「大体の話は理解してる、わたしはあなたたちを応援する、わざわざ来てくれたのは直接話に来てくれたのよね?」

「う、うん」

「そこのあなた?みずきを守る覚悟はあるのかしら?」

お母さんは
目線をおにいさんにうつす

おにいさんは体をビクッとさせた

「はっ、はい、もちろんです」

「合格」

「えっ、あっ、へ?」

「あはは、もうそんなにふたりとも緊張しないで?」

「お母さん……?」

「大丈夫よ、みずき、私ね最初からあなたの結婚には反対だったのだってもときくんは絶対にいい人じゃないって思ってたもの、今度あなたが連れてきたこの人はとても優しそうで頼り甲斐のありそうな人ね」

「えっ?」

「まあ、まあ、ゆっくりしてて」

そう言うとお母さんはリビングを出てどこかへ行ってしまった
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

娼館で元夫と再会しました

無味無臭(不定期更新)
恋愛
公爵家に嫁いですぐ、寡黙な夫と厳格な義父母との関係に悩みホームシックにもなった私は、ついに耐えきれず離縁状を机に置いて嫁ぎ先から逃げ出した。 しかし実家に帰っても、そこに私の居場所はない。 連れ戻されてしまうと危惧した私は、自らの体を売って生計を立てることにした。 「シーク様…」 どうして貴方がここに? 元夫と娼館で再会してしまうなんて、なんという不運なの!

【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜

来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、 疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。 無愛想で冷静な上司・東條崇雅。 その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、 仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。 けれど―― そこから、彼の態度は変わり始めた。 苦手な仕事から外され、 負担を減らされ、 静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。 「辞めるのは認めない」 そんな言葉すらないのに、 無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。 これは愛? それともただの執着? じれじれと、甘く、不器用に。 二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。 無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。 ※この物語はフィクションです。 登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。

ヤンデレにデレてみた

果桃しろくろ
恋愛
母が、ヤンデレな義父と再婚した。 もれなく、ヤンデレな義弟がついてきた。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

バッドエンド予定の悪役令嬢が溺愛ルートを選んでみたら、お兄様に愛されすぎて脇役から主役になりました

美咲アリス
恋愛
目が覚めたら公爵令嬢だった!?貴族に生まれ変わったのはいいけれど、美形兄に殺されるバッドエンドの悪役令嬢なんて絶対困る!!死にたくないなら冷酷非道な兄のヴィクトルと仲良くしなきゃいけないのにヴィクトルは氷のように冷たい男で⋯⋯。「どうしたらいいの?」果たして私の運命は?

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

王妃そっちのけの王様は二人目の側室を娶る

家紋武範
恋愛
王妃は自分の人生を憂いていた。国王が王子の時代、彼が六歳、自分は五歳で婚約したものの、顔合わせする度に喧嘩。 しかし王妃はひそかに彼を愛していたのだ。 仲が最悪のまま二人は結婚し、結婚生活が始まるが当然国王は王妃の部屋に来ることはない。 そればかりか国王は側室を持ち、さらに二人目の側室を王宮に迎え入れたのだった。

処理中です...