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日常系 ※R-18
星の涙、静寂に秘めた光 4
しおりを挟む下着とTシャツだけを身につけて、棗に縛ってもらうプレイは初めてではない。棗には裸も見せたことがあるが、綺麗な夜空と蛍を見たあとにするプレイにしては、朋志にとって充分刺激が強いことだった。
そんな顔と言われても、どんな顔をしているのかなんて朋志にはわからない。
でも棗が言うなら、言わなければ。コマンドを守りたいと思いながら、恥ずかしさで棗の方を見ることができない。なぜなら、ちょっと普通じゃないことをしてしまっていることに目眩がしそうだ。少なくとも、出発前には思いもしなかったことだ。なのに、棗とならそれもしていいことだと思った。今は、もっと見てほしいとまで思っている。普通じゃない姿をしていても、それも棗だけに…。
棗は朋志の言葉を待っている。
「俺…、もう、…とんでもないことをしている気分です」
「ええ」
「恥ずかしくて、どうしてしたいって言っちゃったんだろう…って思ってしまって…家でしても恥ずかしいのに、こんなこと…でも、恥ずかしいのに、棗さんに見て欲しくて…俺…」
狭いテントの中で、縛っている方の手に触れて握ってくれる。伝わる温かさに勇気づけられる。
「でも俺は…、なにをしても棗さんに褒めてほしいです…」
ああ…、と棗から声にならない声を聞いた気がした。朋志があっと思ったときには棗に抱きしめられていたので定かではない。棗を近くで感じられることが嬉しかった。
「あなたが僕のわがままを受け入れてくれること、とても感謝しています」
「…本当ですか?」
「僕が調子に乗るのは、朋志さんがなんでも受け入れてくれるからですよ」
「なんですか、それ…」
こんな場所で、こんな格好をしているのは棗の趣味なのにと思いながら、そんな甘えたことを言う棗も嫌ではないし、可愛く思えてきたりもする。そう思えば、確かに朋志のせいかも知れないと思い至る。
ーーー 棗さんってやっぱり変な人…。
朋志は、棗からGood Boyと褒めてもらえるだけでも嬉しいのに、まさかSubの自分がDomから、Subがなんでも受け入れるからDomが調子に乗るのだと、甘えて詰られる日が来るなんて思いもしなかった。
いつか棗が”Subの許可がないと何もできないのがDomだ”と言っていたのを思い出した。今もそう思っているのだろう。そういうことを自然に言えるところも好きなのだ。
棗が好きだとふわふわした気持ちになって、朋志は一人で悦に入っていたところで、足先から足首へと体温を感じて棗を見る。裸足の足を大きな手が包むように触れながら上がり、棗の整った顔が近づいてくる。あ、と無意識に開いた唇が重なり、朋志の全身に震えが入った。唇が離れ、また重なる。
「このまま、触ってもいいですか」
「はい」
もう好きにしてほしいという気持ちだ。朋志はもともとDom依存が強いSubなのだ。Domの要求を受け入れることが喜びだ。それが棗ならなにも言うことはない。
幾度となく角度を変えて重なる唇に、太腿から足の付け根へと上がってくる温かい手。だんだん汗ばんでくる体を変わらず撫でられて羞恥が増す。羞恥が増せば増すほど声を抑えることも難しくなっていった。もう手は立てた足の隙間から付け根を通り抜け、奥まったところを行き来していて、恥ずかしさでどうにかなりそうだった。
「…ぁっ…ん…っ」
「朋志さん…、大きな声を出したら、外に聞こえてしまいますよ」
「え…ぁ…ん」
「可愛い声が漏れないようにしましょうね」
びっくりして上を向いた唇をまた塞がれる。外に声が聞こえたら、こんな淫らなことをしているってバレたら…。棗の手は朋志の際どいところばかり撫でていく。恥ずかしいのに止めてほしくない。辺りは静寂に包まれ、朋志が羞恥とジレンマの涙を流すまでそれは続けられた。
次の朝、大変なことをしでかしてしまった…と頭を抱える朋志をよそに棗の表情はホクホクとしていて、今にも崩れ落ちてしまいそうだ。
ーーー 心臓が強いな、棗さんは。
一夜明けて、外でのんびり朝食を摂り、帰り支度を済ませて車に乗り込んで帰路に向かっている今も朋志は、昨夜のことを引きずって反芻し、赤くなったりぼーっとしたりと、心ここにあらずの状態だった。
そんな朋志をあえて刺激せず、密かに堪能している棗は強心臓というよりも変態なのだが、泣かされる目にあってもこれを『忘れられない特別な思い出』と思っている朋志が気づくはずがなかった。
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