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気が付けば、辺りは少し暗くなり始めていた。
海の上のパーキングエリア。
エンジンをかけたままの車内で。
男が男に告白するという珍事。
まさか自分の人生に、こんな日が訪れようとは想像もしていなかった……と。
倉見は思ってじっと綾瀬の目を見つめていた。
思いもよらない告白を受けて、綾瀬も驚いている。
2人はしばらく無言で見つめ合っていたが、倉見の方が先に我に返って照れ笑いを浮かべると、言った。
「ただあの……この気持ちが綾瀬さんと同じレベルかどうかは自信がないんだよね……」
綾瀬は小さく笑った。
「だってほら。俺、男にこんな気持ちになったことないし――これが愛なのかなんなのか、よく分からないし」
「……」
「ゲイだってカミングアウトされる前から、少し気にはなってたけど……でもそれって恋愛感情とは違う気もするし」
必死に言い訳する倉見が面白くて、綾瀬はクスッと笑った。
「自分でも不思議なんだけどさ。綾瀬さんにキスされた時も不思議と嫌じゃなかったんだよね。満更でもないっていうか……他の男とならゾッとするけど、綾瀬さんならいいかなって」
「ほんと?」
「――」
期待するような綾瀬の視線に、倉見は慌てて手を振ると、「あ、でも」と言った。
「キス以上の何かをする気は今のところないっていうか――」
「あははは」
堪え切れずに綾瀬は声を出して笑った。
「大丈夫だよ。いきなりそんなことしないって」
「そんなこと……?」
倉見はそう呟くと、思わず照れて俯いた。綾瀬はそんな倉見をじっと見つめた。
その気がない倉見が、ここまで赤裸々に自分の気持ちを打ち明けてくれたことが嬉しくて仕方なかった。
どれだけ勇気がいっただろう。
自分なんかより、はるかに悩んだのではないか?
(それでも逃げずに向き合ってくれた――)
綾瀬は嬉しそうに目を細めた。
倉見は照れながら頭をかくと、「少し時間はかかるかもしれないけど。綾瀬さんが望むような形にはなれないかもしれないけど……とりあえず友人からスタートしてみるっていうのはどうですか?」と聞いた。
倉見のその言葉に、綾瀬は満面の笑みを浮かべると、「もちろんですよ……ありがとう」と言って頷いた。
涙で濡れた頬を見て、倉見はハンカチを差し出した。
「これ。しばらく貸しておくよ」
「……」
綾瀬は黙って受け取ると、嬉しそうに笑った。
「もう一生返さないかも」
そしてふと、呟くように言った。
「本当はね……あの日、駅までの用なんてなかったんです」
「え?」
倉見は驚いて聞き返した。
綾瀬は悪戯が見つかった子供のような顔をすると、「倉見さんを駅まで送った時だよ」と言った。
「倉見さんと話がしてみたくて……用があるって嘘ついて、仕事、中抜けしてきたんです」
「マジで?」
心底驚いたような顔をする倉見を、綾瀬は楽しそうに見た。
「だってあの時は、あのチャンスを逃したら次いつ会えるか分からなかったし」
「凄い……行動力だな」
「でも、結果オーライだったでしょう?名刺も貰えたし。それで連絡先も知ることが出来たし」
「……」
「どうしても2人っきりで話してみたかったんだ」
倉見は黙って綾瀬を見つめた。
何処までも無邪気に、無防備に、自分を晒す綾瀬が何故だか眩しくて仕方がなかった。
海の上のパーキングエリア。
エンジンをかけたままの車内で。
男が男に告白するという珍事。
まさか自分の人生に、こんな日が訪れようとは想像もしていなかった……と。
倉見は思ってじっと綾瀬の目を見つめていた。
思いもよらない告白を受けて、綾瀬も驚いている。
2人はしばらく無言で見つめ合っていたが、倉見の方が先に我に返って照れ笑いを浮かべると、言った。
「ただあの……この気持ちが綾瀬さんと同じレベルかどうかは自信がないんだよね……」
綾瀬は小さく笑った。
「だってほら。俺、男にこんな気持ちになったことないし――これが愛なのかなんなのか、よく分からないし」
「……」
「ゲイだってカミングアウトされる前から、少し気にはなってたけど……でもそれって恋愛感情とは違う気もするし」
必死に言い訳する倉見が面白くて、綾瀬はクスッと笑った。
「自分でも不思議なんだけどさ。綾瀬さんにキスされた時も不思議と嫌じゃなかったんだよね。満更でもないっていうか……他の男とならゾッとするけど、綾瀬さんならいいかなって」
「ほんと?」
「――」
期待するような綾瀬の視線に、倉見は慌てて手を振ると、「あ、でも」と言った。
「キス以上の何かをする気は今のところないっていうか――」
「あははは」
堪え切れずに綾瀬は声を出して笑った。
「大丈夫だよ。いきなりそんなことしないって」
「そんなこと……?」
倉見はそう呟くと、思わず照れて俯いた。綾瀬はそんな倉見をじっと見つめた。
その気がない倉見が、ここまで赤裸々に自分の気持ちを打ち明けてくれたことが嬉しくて仕方なかった。
どれだけ勇気がいっただろう。
自分なんかより、はるかに悩んだのではないか?
(それでも逃げずに向き合ってくれた――)
綾瀬は嬉しそうに目を細めた。
倉見は照れながら頭をかくと、「少し時間はかかるかもしれないけど。綾瀬さんが望むような形にはなれないかもしれないけど……とりあえず友人からスタートしてみるっていうのはどうですか?」と聞いた。
倉見のその言葉に、綾瀬は満面の笑みを浮かべると、「もちろんですよ……ありがとう」と言って頷いた。
涙で濡れた頬を見て、倉見はハンカチを差し出した。
「これ。しばらく貸しておくよ」
「……」
綾瀬は黙って受け取ると、嬉しそうに笑った。
「もう一生返さないかも」
そしてふと、呟くように言った。
「本当はね……あの日、駅までの用なんてなかったんです」
「え?」
倉見は驚いて聞き返した。
綾瀬は悪戯が見つかった子供のような顔をすると、「倉見さんを駅まで送った時だよ」と言った。
「倉見さんと話がしてみたくて……用があるって嘘ついて、仕事、中抜けしてきたんです」
「マジで?」
心底驚いたような顔をする倉見を、綾瀬は楽しそうに見た。
「だってあの時は、あのチャンスを逃したら次いつ会えるか分からなかったし」
「凄い……行動力だな」
「でも、結果オーライだったでしょう?名刺も貰えたし。それで連絡先も知ることが出来たし」
「……」
「どうしても2人っきりで話してみたかったんだ」
倉見は黙って綾瀬を見つめた。
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