薔薇を抱いて眠れ

sorarion914

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第8章・バラの花

#2

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 深夜。
 江戸川は目を覚ますと、静かに身を起こして時計を見た。

 午前2時過ぎ。すでに日付は変わっている。
 たまたま目が覚めた――という感じではなかった。予定通りの行動だ、というように江戸川はベッドから起き上がると、上着を掴んでルームキーを取った。
 さり気なく隣のベッドで眠る唯人の様子を伺い、完全に寝ていることを確認すると、そのままそっと部屋を出る。

 一度眠ると、唯人は朝まで目を覚まさない。

(大丈夫だ……)

 江戸川は自分にそう言い聞かせて深夜の廊下を歩いた。
 ――でもこの時。
 江戸川が部屋を出たのとほぼ同時に、唯人が薄く目を開けたことは……さすがの江戸川も気づかなかった。


 そのままエレベーターに乗り、ひとつ上の階を目指す。あらかじめ指定された部屋の前までくると、江戸川は躊躇いがちに小さくノックした。

 程なくしてドアが開き、江戸川を招き入れる白い腕が伸びてきた。

「待ってたのよ」

 そう言って、円香は嬉しそうに江戸川に抱きついた。
 シャワーで少し濡れた髪と、香水の匂いが鼻についた。

「あの子は寝たの?」
「ええ」
「大丈夫?」
「1度寝たら朝まで起きません」

 だから大丈夫――と言って、自分を抱き寄せる江戸川に、円香は笑って言った。

「子供のお守りも大変ね」

 2人は唇を重ねたまま、ベッドの上に倒れ込んだ。
 円香はバスローブ一枚まとっただけの裸身だった。その腰は服を着ていた時よりもずっと細く、しなやかで肉感的な弾力があった。
 白く盛り上がる胸の双丘もまた、柔らかくて張りがある。大きくもなく、小さくもなく、掌で感じるその感触は、でも決して悪いものではなかった。

「脱いで……」

 囁く円香の声に、江戸川は自らも服を脱ぎ捨て、その体の中へと深く沈み込んだ。
 ゆっくり――断続的に繰り返す体の動きと、時折漏れるため息のような声。ベッドの軋む音。
 混濁した意識の底で、江戸川は駒を並べていた。

 清宮の孫。
 咲屋の娘。
 麻生の息子――と。

「あぁ――」

 仰け反る円香の白い首筋に顔をうずめて、尚も繰り返す。

 清宮の孫。
 咲屋の娘。
 麻生の息子。

「もうダメ……お願い早く」

 身をよじる円香を抑えつけ、深くその中へと楔を打ち込みながら、

(見えるか?)

 と、江戸川は闇に向かって問いかけた。


 お前の娘は今、あの男の残滓ざんしに汚されているんだぞ――と。


 清宮の孫。
 咲屋の娘。
 麻生の息子。

 カエルの様に両足を広げ、歓喜に喘ぐ円香を冷ややかに見下ろしながら、江戸川は笑った。
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