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第2章・邂逅
#4
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ロビーの方から歓声が上がる。
披露宴を終えた新郎新婦が、招待客を送り出しているようだった。
その様子を、野崎は微笑まし気に眺めた。
宇佐美はずっと黙っている。それを見て野崎は、「もっとも……」と呟いた。
「これは先生が勝手に決めたことだと思う。宇佐美さんには、なんの許可も取ってないようだし……」
でしょう?という目をして尋ねる。
「……」
「協力するかしないかは宇佐美さん次第ですよ。俺も、あなたが嫌だと言えば強制はしない」
黙っている宇佐美に、野崎は「どうします?」と聞いた。
宇佐美は前屈みになり、両手を顔の前で組んだまま、じっとテーブルの上を見つめていた。
勝手なことを……
腹立たしく思う反面、この男を信じてついていけば、何か変わるかもしれない――という微かな希望もあった。
でも……
「あなたは俺を知らない……それでも俺を信じるってことですか?」
「……」
「俺にどんな協力が出来るかも分からないのに。信じてくれるってことですか?それなら俺は、あなたの何を信じればいいの?」
野崎は、そっと宇佐美の方へ身を乗り出した。
「今は信じて欲しいっていう言葉を、信じてもらうしかないな」
野崎はそう言った。
宇佐美は視線を上げた。
「さっきも言ったけど、俺は基本見えるものだけを信じる。ここを始点に俺は動いているから……多分それは、今後も変わらないと思う」
「……」
「でも、もし宇佐美さんの力が本物なら――それを見せて欲しい。あなたの力を……俺に信じさせてよ」
宇佐美はじっと野崎を見つめた。
「その自信が宇佐美さんにあるなら……だけど」
「……希望的観測だね」
「初めは誰だってそんなもんだろう?」
「――」
宇佐美は黙って野崎の目を覗き込んだ。
その目から、先程までの強い警戒心の色が消えている。
そのことに気づいて、野崎はハッとなった。
(――?なんだ……こいつ)
網膜を通して何かを見られている―――
そんな気がして、ほんの一瞬眉をひそめた。
恐怖とは違う。何か得体のしれない感情が沸々と湧いてきて、野崎は心がザワつくのを感じた。
「――」
相手の僅かな感情の変化を見て、宇佐美の口角が上がる――が、それはほんの一瞬で、すぐに消えた。
「分かった。協力します」
驚くほど軽い調子で宇佐美は言った。
「え?」
あまりに急激な態度の変化に、野崎は驚いて再度「え?」と聞き返した。
「あなたを信じます」
「あ…あぁ……」
ありがとう……と、咄嗟に礼を述べた後、
「俺も、宇佐美さんを信じるよ」と慌てて付け加える。
(なんだよ、急に――)
戸惑いを隠せず、コーヒーを口に運ぶ野崎を見て、宇佐美は楽しそうに目を細めた。
(こいつの情緒、どうなってる?)
複雑な表情を浮かべている野崎に向かって、宇佐美は言った。
「宇佐美でいいです」
「え?」
「俺の事。宇佐美でいいです。宇佐美さんだとウサギさんって言われてるみたいだから」
「――」
野崎は一瞬キョトンとしたが、不覚にも声を出して笑ってしまった。
笑いながら、「分かった」と頷く。
「じゃあ俺の――」
「野崎さんのことは、野崎さんで」
「……」
「俺はそう呼ばせて下さい」
野崎は肩をすくめると、「どうぞ……お好きなように」と言って笑う。
「君、変わってるな」
思わず口をついて出てしまったが、宇佐美は少しも気を悪くした様子はなく、むしろ面と向かって言われたことを喜ぶような素振りで言った。
「ありがとう。直接言ってくれて」
その台詞に野崎は内心、嫌味かよ……と突っ込みを入れたが、表面上はあくまでも穏やかな笑顔を浮かべていた。
その時、再びロビーで賑やかな歓声が上がる。
互いに腹を探り合ったまま。
2人はその、新たな門出を祝う集団の声をただじっと聞いていた。
披露宴を終えた新郎新婦が、招待客を送り出しているようだった。
その様子を、野崎は微笑まし気に眺めた。
宇佐美はずっと黙っている。それを見て野崎は、「もっとも……」と呟いた。
「これは先生が勝手に決めたことだと思う。宇佐美さんには、なんの許可も取ってないようだし……」
でしょう?という目をして尋ねる。
「……」
「協力するかしないかは宇佐美さん次第ですよ。俺も、あなたが嫌だと言えば強制はしない」
黙っている宇佐美に、野崎は「どうします?」と聞いた。
宇佐美は前屈みになり、両手を顔の前で組んだまま、じっとテーブルの上を見つめていた。
勝手なことを……
腹立たしく思う反面、この男を信じてついていけば、何か変わるかもしれない――という微かな希望もあった。
でも……
「あなたは俺を知らない……それでも俺を信じるってことですか?」
「……」
「俺にどんな協力が出来るかも分からないのに。信じてくれるってことですか?それなら俺は、あなたの何を信じればいいの?」
野崎は、そっと宇佐美の方へ身を乗り出した。
「今は信じて欲しいっていう言葉を、信じてもらうしかないな」
野崎はそう言った。
宇佐美は視線を上げた。
「さっきも言ったけど、俺は基本見えるものだけを信じる。ここを始点に俺は動いているから……多分それは、今後も変わらないと思う」
「……」
「でも、もし宇佐美さんの力が本物なら――それを見せて欲しい。あなたの力を……俺に信じさせてよ」
宇佐美はじっと野崎を見つめた。
「その自信が宇佐美さんにあるなら……だけど」
「……希望的観測だね」
「初めは誰だってそんなもんだろう?」
「――」
宇佐美は黙って野崎の目を覗き込んだ。
その目から、先程までの強い警戒心の色が消えている。
そのことに気づいて、野崎はハッとなった。
(――?なんだ……こいつ)
網膜を通して何かを見られている―――
そんな気がして、ほんの一瞬眉をひそめた。
恐怖とは違う。何か得体のしれない感情が沸々と湧いてきて、野崎は心がザワつくのを感じた。
「――」
相手の僅かな感情の変化を見て、宇佐美の口角が上がる――が、それはほんの一瞬で、すぐに消えた。
「分かった。協力します」
驚くほど軽い調子で宇佐美は言った。
「え?」
あまりに急激な態度の変化に、野崎は驚いて再度「え?」と聞き返した。
「あなたを信じます」
「あ…あぁ……」
ありがとう……と、咄嗟に礼を述べた後、
「俺も、宇佐美さんを信じるよ」と慌てて付け加える。
(なんだよ、急に――)
戸惑いを隠せず、コーヒーを口に運ぶ野崎を見て、宇佐美は楽しそうに目を細めた。
(こいつの情緒、どうなってる?)
複雑な表情を浮かべている野崎に向かって、宇佐美は言った。
「宇佐美でいいです」
「え?」
「俺の事。宇佐美でいいです。宇佐美さんだとウサギさんって言われてるみたいだから」
「――」
野崎は一瞬キョトンとしたが、不覚にも声を出して笑ってしまった。
笑いながら、「分かった」と頷く。
「じゃあ俺の――」
「野崎さんのことは、野崎さんで」
「……」
「俺はそう呼ばせて下さい」
野崎は肩をすくめると、「どうぞ……お好きなように」と言って笑う。
「君、変わってるな」
思わず口をついて出てしまったが、宇佐美は少しも気を悪くした様子はなく、むしろ面と向かって言われたことを喜ぶような素振りで言った。
「ありがとう。直接言ってくれて」
その台詞に野崎は内心、嫌味かよ……と突っ込みを入れたが、表面上はあくまでも穏やかな笑顔を浮かべていた。
その時、再びロビーで賑やかな歓声が上がる。
互いに腹を探り合ったまま。
2人はその、新たな門出を祝う集団の声をただじっと聞いていた。
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