T.M.C ~TwoManCell 【帰結】編

sorarion914

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第3章・遭遇

#1

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 てん、てん、てん――

 水滴が落ちる音がして、宇佐美は目を開けた。
 室内はまだ暗い。
 スマホを見るとまだ夜明け前だった。
 (クソ……)
 なかなか寝付けず、ようやく眠れそうだと感じた寝入り端に、突然叩き起こされたようで、宇佐美は布団を被った。
 てん、てん、てん――と、また水滴の音がする。気づかぬ振りして、このまま眠ろう……そう思うが、どうにも気になって眠れない。
 再び水滴の音。
 宇佐美は「うーん……」と唸ると、勢いよくベッドから身を越した。
「……」
 じっと耳を澄ます。
 暫くするとまた、てん、てん、と聞こえてきた。
 どこだ?台所?浴室?
 仕方なく起き上がり台所の明かりをつける。流し台に寄って見るが濡れていない。蛇口も締まっている。
 するとまた、水滴の音が聞こえてきた。
 (浴室か?)
 シャワーの蛇口の締め方が緩かったかな?
 宇佐美は浴室の明かりをつけた。
 壁に掛けられているシャワーヘッドを見上げるが濡れてはいない。床も。
 (?)
 変だな……というように首をかしげると、どこからかまた水滴の落ちる音がした。

 それは――

 自分の、すぐ背後で聞こえたような気がして、瞬間、体が硬直した。
「⁉」
 ――背中が濡れる。
 てん、てん、てん……と上から水滴が落ちてくる。
 雨漏り?
 (いや……違う)
 首筋に生ぬるい感触があり、宇佐美は手で触れた。
 その指先が赤く染まっているのを見て、振り向き天井を見上げる。
 そこには一面、真っ赤な血溜まりがあり、赤い水滴がゆっくり糸を引きながら、てん、てん、てん――と床に落ちている。
「うわ!」
 思わず声を上げて宇佐美は後ずさった。
 なんだ⁉これ――
 後ずさりしたまま、台所の流しで手を洗おうとして蛇口をひねるが水が出ない。
「え?」
 なんで⁉
 焦って何度も蛇口を動かすが出てこない。
 どうして?
 水が出てこない!
「――!!」
 宇佐美は目を閉じた。
 (落ち着け!落ち着け!)
 目を閉じたまま流しに両手を置いて、必死に深呼吸を繰り返す。
 (大丈夫――これはきっと幻覚だ)
 (大丈夫だから。落ち着け)
 (落ち着け……)

「……」
 何度か呼吸を繰り返すうち、いつのまにか水滴の音はやんでいた。
 代わりに、開いた蛇口から水が出てきて宇佐美は我に返ると、慌てて蛇口を締めた。
 僅かに残るしずくが、ステンレスのシンクを叩く音だけが室内に響く。
 宇佐美はゆっくりと自分の手を見た。
 何もついていない。
 恐る恐る、浴室の天井を見に行くが、やはりなにもなかった。
 (なんだったんだ……?)
 夕べ野崎から、凄惨な事件現場の話を聞いたせいだろうか?
 だとしても……
 背中と首筋に感じた、生ぬるい感触――それはまだハッキリと残っている。
「はぁ……」
 宇佐美はため息をつくと、重い体を引きずって、そのままベッドに倒れこんだ。
 (ただの夢だ――そう……ただの夢――大丈夫…)
 自分にそう言い聞かせながら――

 いつのまにか、宇佐美は深い眠りに落ちていた。


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