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3. 王都にて
しおりを挟む出発の日は、よく陽光が届き、気持ちのいい快晴だった。
使者たちは、ソルの応じに無言で頷き、村人達は、彼を祝福して応援した。まるで勇者の出征を祝うように、「旅のお共に」といろいろな物を持たせてくれる。
それから、村の他の青年達もソルについていくことにした。自分達も、少しでも役に立とうと、そして王都にて鍛えようと。それは、彼の不安をいくらか和らげ、勇気づけた。
「……『アルヴィーンより、カッコいいわよ、ソル』」
別れ際、母はいつかソルの言った言葉を繰り返し、見送る。ルナは不安と期待の入り混じった、複雑な顔をしながらも、わざと強い口調で言った。
「ソル兄、あたしの占いを裏切ったら、許さないから!」
「ああ、約束だ」
ソルはニカッと笑って見せ、迷いを消すように一歩を踏み出す。温かい太陽の光に包まれながら、彼らは村を出発した。
王都は、ブラン村とは何もかも違った。街は賑わい、まるで祭りの日のように人々で溢れかえっている。
「うっわー。俺ら、所詮田舎もんだったって思い知らされるな」
「あんまはしゃぎ過ぎると、馬鹿にされそー」
「つーか、美人多すぎ」
「おいおい、何のためにここに来たんだよ」
そんな仲間の軽口に笑いながら、青年達は王都に入る。それからすぐに、軍の下で魔王討伐のための訓練をすることになった。
ブラン村では魔族との戦闘経験がなかったため、最低限の力を身につけるためだ。
「ほお……その剣、見覚えがありますな」
ある日、皆の訓練を静かに見守っていた、1人の老練な騎士がソルに言った。彼は微かに目を見開く。これは、戦場から持ち帰られた父の形見であり、光を宿す特別な剣。
「これは、父の—————」
「ああ、ヴァン・ルークの光の剣じゃ。それにお前さんの太刀筋、やはり似ておる」
老騎士は、シュナイゼンと言って、父と肩を並べて戦ったそうだ。もう前線からは引退していたが、ソルは、未だ衰えていない強さを彼から感じ取った。
「稽古を、つけてくれませんか」
ソルは思い切って、彼に申し入れていた。
「父のようになりたいのかね?」
その瞳が、まるで彼を試すように鋭く光り、ソルは一瞬躊躇ったが、その決意は変わらなかった。
「……わかりません。でも、今のままじゃ、足りない」
その日から、シュナイゼンとの特訓が始まった。ソルは元々鍛えていた身体で、剣術を見る見るうちに上げていった。
周りの兵士や、集まってきた勇者達は、そんなソルを見て、嫉妬混じりの陰口を叩く。
「なあ、あいつブラン村からやって来たらしいぜ」
「田舎臭さが滲み出てるよな」
「つーか、陽光の印を受け継いでるくせに、太陽の力は全く使えないらしいぜ」
「期待はずれの肩透かしってやつ?あれで勇者なんて言えんのかよ」
しかし、ソルは気にしなかったし、ブラン村の仲間達が逆ギレしたときも、冷静に止めた。
「気にするな。俺は今までもずっと、身体ひとつでやって来た。太陽の力なんて、頼ってない」
ソルは文字通り、魔力に頼らず物理的な戦闘力を上げた。演習として、少し南の森へでかけ、本物の魔物と対峙した。
「いいか、ソル。魔物は、全て邪悪なる獣。一切の慈悲も、躊躇いも要らん。迷えば、奴らは狡猾につけ込んでくる。獣は狩るのみだ」
シュナイゼンの、そんな厳しい言葉を自分に言い聞かせながら、ソルは次々と魔物を討伐して行った。
彼の言葉通り、やはり魔物はただの邪悪な獣だった。言葉を交わすこともできず、本能に突き動かされて襲いかかってくる。
ソルはそれを次々に切り伏せていった。もう、迷いはなかった。魔王もきっと、ただの獣だ。王位継承なんて言ってるが、それは見せかけに過ぎないだろう。眷属たちを束ねるボスを討てば、魔物たちは力を失う。
「俺がやる。1人でも、身体一つでも」
ブラン村からの仲間は王都には一緒についてきたが、ソルは最初から、単独で討伐に行くことを決意していた。
彼の足を引っ張りたくなかった仲間たちは、ソルの意思を尊重して、力強い抱擁を交わして見送った。
「ソル、さっさと魔王討伐して帰ってきて、あんな奴ら見返してやろうぜ。お前はブラン村代表だからな!」
「ああ!」
その数ヶ月後。彼は南へと旅立った。勇者パーティが気まずい顔をして諦めて帰ってくる、そんな一団とすれ違いながら、ソルは歩みを止めない。
「待ってろ、魔王……!!!」
———今の、ちょっと厨二っぽかたったか?いや、雰囲気って大事だろ。気合入れだ。
独りで旅立ったため、そんなツッコミは心の中でする。討伐、それしか考えていなかった。
魔王の城に、着くまでは。
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