12 / 25
11. 溶けて【R18】
しおりを挟むソルの手は、ゴツゴツした見た目の割に、柔らかかった。それが、自分の頬を撫でる度たびに、まつ毛に縁取られたオレンジの瞳が、こちらを求めて煌めくたびに、心臓が高鳴った。
また唇が重なる。ゆっくりと確かめるように、大切にするように。
「ん……」
何だこれ、温かい————心臓の鼓動がうるさくて、でもそれさえ心地いい。
段々と、それは深く熱くなっていき、その柔らかい舌が、ふとアルガの薄い唇をなぞった。びくり、と肩が震える。
「は、ぁ……、ソルっ…」
一瞬、口を開いた隙に、それはするりと滑り込み、ゆっくりと口内を愛撫していく。余すことなく知りたい。そんな熱情に動かされるように、角度を変えて、ぐいぐいと深く潜る。
「ふっ…、んんッ———!♡」
思考も息も奪われ、身体の奥がじんじんする。足が震えて、縋るように、ソルのシャツを掴んでいた。
……キスなんて、今までにもされてきた。でもそれは、与えられるよりも、奪われることに近かった。無理やり押し込まれるようなキス、貪欲な舌に容赦なく犯されて、息を呑まれていった。
なのに、なのに—————
ソルの舌は、どうしてこうも熱くて、柔らかくて、包み込むようでいて、全身が沸き立つのだろう。
「ッ……!」
ふわりと、敏感な角部分を触られ、身体がビクつく。でも、ソルは逃がさないと言ったように首後ろを支えながらも、なおも深く舌を入れてくる。
やば、い、息が—————!
「ん、んん!」
思わず、ソルの胸板を、軽く叩くと、彼はハッとしたように唇を離す。お互いに、プハッと息を吸い込んだ。透明な糸を引きながら、荒い息を吐いて見つめあう。
ソルの瞳は濡れていて、頬も唇は赤い。普段の爽やかな顔とは違って、どこか危険な色気を孕んでいた。
「やっべ、これ……止まんなくなりそう」
すでに理性を失っているような、余裕のない掠れた声に、身体がゾワリと疼く。
ゆ、……勇者がこんなに積極的なんて聞いてない!ってか、止まんないって————
瞬間、ふわりと身体を持ち上げられた。
「え……」
重力が消え、一瞬何が起こったかわからなかったが、すぐ耳元で、驚いたような声が落ちる。
「軽っ!お前、ちゃんと食べてんの?」
「子供扱いするなっ……!」
ジタバタしたが、その逞しい腕はびくともしない。
「ハイハイ。でも、甘やかしてもいいよな?」
は……?
気づけば、柔らかいベッドのシーツに、沈み込んでいる。ギシッと、微かな軋みとともに、上に覆いかぶさってくる大きな身体。サラリ、と、短く編まれたそのオレンジの三つ編みがこちらに落ちてきて、微かに目の前で揺れる。
ソルの顔がゆっくりと近づいてきた。また、キスをされると思いぎゅっと目を瞑ったが、それは唇ではなく顔横に寄せられる。
「なあ、お前の好きなところ全部言って?」
耳元で低い声で囁かれ、思わず変な声が出た。
「身体だけじゃなくて、好きな食べ物とか、好きな場所、魔物じゃなくて、動物とかさ」
「闇の領土に、そっ、んな、たくさん、選択肢あるかよ……」
「でも、お前にはあると思う。好きなものは、ちゃんと大切にしてそうだから」
ニコリ、と笑いかける笑顔が、どこまでも優しくて、包み込むようで。不覚にも、キュンとしてしまう。だめだ、こんなの、おかしくなる、綿飴みたいにフワフワに————
そのまま、頬に手が添えられたかと思えば、流れるように顎を上に向かされ、また唇が重なる。
「んんッ……」
ぎゅっと、優しく手首を握る手に固定されて、なぜか安心感が生まれてしまう。
「ソルッ————」
「やっと、名前呼んでくれた」
耳に響く声が、どこまでも甘く、満足げで、思わず顔が火照る。
「ちが、それは、呼びやすいからッ—————」
「素直じゃねえの。耳、弱かったよな?」
カプ、と甘噛みをされていた。魔族の耳は細長く、そして、一段と敏感だ。
「ふああッ」
身体がビクビクと震えて、沸き立つ。
「全部、上書きしてやる。もう、あんなの永遠に忘れるくらい、俺が満たしてやるから」
そんな囁き声に、もう、逃げられないことを悟る。
「なぁ、言えよ————首筋?耳?上半身?腿?」
「ぜ、全部やるつもりかよ……!」
「そのつもりだったけど。でもお前が保たなくなったら、今度にお預けしてやる」
「そんなの……」
そっちの方が生殺しだよ!!
心の中で叫んだのを、まるで見透かすように、ふっと細められる目。それを見ると、自然と顔が赤くなるのを感じて、シーツを手繰り寄せて隠そうとするが、静かに退けられた。
「お前のこと知りたいって言ったじゃん。お前のいろんな顔が見たい」
「お前、よくもそんな恥ずかしげもなく……!」
こいつ、ピュアなふりして、実はとんだプレイボーイだったのか?村で侍らせてたのか?
「ごめん、俺真っ直ぐだから」
「自分で真っ直ぐって言うな」
「でも、お前のせいで今まさに歪みそう」
「は?」
「ちょっと虐めたりとか、もう後戻りできないくらい、蕩けさせたいとか、そんなこと考えた」
「っ……!」
「でも今は—————全部甘くなぞって、上書きしてやりたい」
こいつ、やっぱり、初めて会った時とは、なんか違う……!
言葉通り、彼の舌と指は、アルガの身体を優しく甘く、そして温かく包んでいった。
先ほどまでの緊張や恐怖、違和感とはまるで違う。羽のように柔らかくて、湯船に浸かるように温かくて。「安心しろ」と言っているような手と、あちこちに優しく落とされる口づけ。
段々と、境界が曖昧になっていく。夢の中にいるみたいだった。ぼうっとして、全てを預けてしまいたくなる。
ただの快楽じゃない。これは、多分きっと———————壊れて、空っぽだった俺に、注がれる温かい何か。
20
あなたにおすすめの小説
[BL]憧れだった初恋相手と偶然再会したら、速攻で抱かれてしまった
ざびえる
BL
エリートリーマン×平凡リーマン
モデル事務所で
メンズモデルのマネージャーをしている牧野 亮(まきの りょう) 25才
中学時代の初恋相手
高瀬 優璃 (たかせ ゆうり)が
突然現れ、再会した初日に強引に抱かれてしまう。
昔、優璃に嫌われていたとばかり思っていた亮は優璃の本当の気持ちに気付いていき…
夏にピッタリな青春ラブストーリー💕
こわがりオメガは溺愛アルファ様と毎日おいかけっこ♡
なお
BL
政略結婚(?)したアルファの旦那様をこわがってるオメガ。
あまり近付かないようにしようと逃げ回っている。発情期も結婚してから来ないし、番になってない。このままじゃ離婚になるかもしれない…。
♡♡♡
恐いけど、きっと旦那様のことは好いてるのかな?なオメガ受けちゃん。ちゃんとアルファ旦那攻め様に甘々どろどろに溺愛されて、たまに垣間見えるアルファの執着も楽しめるように書きたいところだけ書くみたいになるかもしれないのでストーリーは面白くないかもです!!!ごめんなさい!!!
借金のカタに同居したら、毎日甘く溺愛されてます
なの
BL
父親の残した借金を背負い、掛け持ちバイトで食いつなぐ毎日。
そんな俺の前に現れたのは──御曹司の男。
「借金は俺が肩代わりする。その代わり、今日からお前は俺のものだ」
脅すように言ってきたくせに、実際はやたらと優しいし、甘すぎる……!
高級スイーツを買ってきたり、風邪をひけば看病してくれたり、これって本当に借金返済のはずだったよな!?
借金から始まる強制同居は、いつしか恋へと変わっていく──。
冷酷な御曹司 × 借金持ち庶民の同居生活は、溺愛だらけで逃げ場なし!?
短編小説です。サクッと読んでいただけると嬉しいです。
美貌の騎士候補生は、愛する人を快楽漬けにして飼い慣らす〜僕から逃げないで愛させて〜
飛鷹
BL
騎士養成学校に在席しているパスティには秘密がある。
でも、それを誰かに言うつもりはなく、目的を達成したら静かに自国に戻るつもりだった。
しかし美貌の騎士候補生に捕まり、快楽漬けにされ、甘く喘がされてしまう。
秘密を抱えたまま、パスティは幸せになれるのか。
美貌の騎士候補生のカーディアスは何を考えてパスティに付きまとうのか……。
秘密を抱えた二人が幸せになるまでのお話。
従僕に溺愛されて逃げられない
大の字だい
BL
〈従僕攻め×強気受け〉のラブコメ主従BL!
俺様気質で傲慢、まるで王様のような大学生・煌。
その傍らには、当然のようにリンがいる。
荷物を持ち、帰り道を誘導し、誰より自然に世話を焼く姿は、周囲から「犬みたい」と呼ばれるほど。
高校卒業間近に受けた突然の告白を、煌は「犬として立派になれば考える」とはぐらかした。
けれど大学に進学しても、リンは変わらず隣にいる。
当たり前の存在だったはずなのに、最近どうも心臓がおかしい。
居なくなると落ち着かない自分が、どうしても許せない。
さらに現れた上級生の熱烈なアプローチに、リンの嫉妬は抑えきれず――。
主従なのか、恋人なのか。
境界を越えたその先で、煌は思い知らされる。
従僕の溺愛からは、絶対に逃げられない。
大学一軍イケメンにいちご狩りに誘われた陰キャの俺、なぜかいちごじゃなくて俺が喰われたんだが(?)
子犬一 はぁて
BL
大学一軍イケメン×大学九軍陰キャ
喰われるなんて聞いてないんだが(?)
俺はただ、
いちご狩りに誘われただけだが。
なのに──
誘ってきた大学一軍イケメンの海皇(21)に
なぜか俺が捕まって食われる展開に?
ちょっと待てい。
意味がわからないんだが!
いちご狩りから始まる
ケンカップルいちゃらぶBL
※大人描写のある話はタイトルに『※』あり
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる