魔王サマの光堕ち 〜父の期待に応えて魔王をやってますが、勇者が俺を倒さないどころか溺愛してくる〜

宇地流ゆう

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11. 溶けて【R18】

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 ソルの手は、ゴツゴツした見た目の割に、柔らかかった。それが、自分の頬を撫でる度たびに、まつ毛に縁取られたオレンジの瞳が、こちらを求めて煌めくたびに、心臓が高鳴った。

 また唇が重なる。ゆっくりと確かめるように、大切にするように。

「ん……」

 何だこれ、温かい————心臓の鼓動がうるさくて、でもそれさえ心地いい。

 段々と、それは深く熱くなっていき、その柔らかい舌が、ふとアルガの薄い唇をなぞった。びくり、と肩が震える。

「は、ぁ……、ソルっ…」

 一瞬、口を開いた隙に、それはするりと滑り込み、ゆっくりと口内を愛撫していく。余すことなく知りたい。そんな熱情に動かされるように、角度を変えて、ぐいぐいと深く潜る。

「ふっ…、んんッ———!♡」

 思考も息も奪われ、身体の奥がじんじんする。足が震えて、縋るように、ソルのシャツを掴んでいた。

 ……キスなんて、今までにもされてきた。でもそれは、与えられるよりも、奪われることに近かった。無理やり押し込まれるようなキス、貪欲な舌に容赦なく犯されて、息を呑まれていった。

 なのに、なのに—————

 ソルの舌は、どうしてこうも熱くて、柔らかくて、包み込むようでいて、全身が沸き立つのだろう。

「ッ……!」

 ふわりと、敏感な角部分を触られ、身体がビクつく。でも、ソルは逃がさないと言ったように首後ろを支えながらも、なおも深く舌を入れてくる。

 やば、い、息が—————!

「ん、んん!」

 思わず、ソルの胸板を、軽く叩くと、彼はハッとしたように唇を離す。お互いに、プハッと息を吸い込んだ。透明な糸を引きながら、荒い息を吐いて見つめあう。

 ソルの瞳は濡れていて、頬も唇は赤い。普段の爽やかな顔とは違って、どこか危険な色気を孕んでいた。

「やっべ、これ……止まんなくなりそう」

 すでに理性を失っているような、余裕のない掠れた声に、身体がゾワリと疼く。

 ゆ、……勇者がこんなに積極的なんて聞いてない!ってか、止まんないって————

 瞬間、ふわりと身体を持ち上げられた。

「え……」

 重力が消え、一瞬何が起こったかわからなかったが、すぐ耳元で、驚いたような声が落ちる。

「軽っ!お前、ちゃんと食べてんの?」

「子供扱いするなっ……!」

 ジタバタしたが、その逞しい腕はびくともしない。

「ハイハイ。でも、甘やかしてもいいよな?」

 は……?

 気づけば、柔らかいベッドのシーツに、沈み込んでいる。ギシッと、微かな軋みとともに、上に覆いかぶさってくる大きな身体。サラリ、と、短く編まれたそのオレンジの三つ編みがこちらに落ちてきて、微かに目の前で揺れる。

 ソルの顔がゆっくりと近づいてきた。また、キスをされると思いぎゅっと目を瞑ったが、それは唇ではなく顔横に寄せられる。

「なあ、お前の好きなところ全部言って?」

 耳元で低い声で囁かれ、思わず変な声が出た。

「身体だけじゃなくて、好きな食べ物とか、好きな場所、魔物じゃなくて、動物とかさ」

「闇の領土に、そっ、んな、たくさん、選択肢あるかよ……」

「でも、お前にはあると思う。好きなものは、ちゃんと大切にしてそうだから」

 ニコリ、と笑いかける笑顔が、どこまでも優しくて、包み込むようで。不覚にも、キュンとしてしまう。だめだ、こんなの、おかしくなる、綿飴みたいにフワフワに————

 そのまま、頬に手が添えられたかと思えば、流れるように顎を上に向かされ、また唇が重なる。

「んんッ……」

 ぎゅっと、優しく手首を握る手に固定されて、なぜか安心感が生まれてしまう。

「ソルッ————」

「やっと、名前呼んでくれた」

 耳に響く声が、どこまでも甘く、満足げで、思わず顔が火照る。

「ちが、それは、呼びやすいからッ—————」

「素直じゃねえの。耳、弱かったよな?」

 カプ、と甘噛みをされていた。魔族の耳は細長く、そして、一段と敏感だ。

「ふああッ」

 身体がビクビクと震えて、沸き立つ。

「全部、上書きしてやる。もう、あんなの永遠に忘れるくらい、俺が満たしてやるから」

 そんな囁き声に、もう、逃げられないことを悟る。

「なぁ、言えよ————首筋?耳?上半身?腿?」

「ぜ、全部やるつもりかよ……!」

「そのつもりだったけど。でもお前が保たなくなったら、今度にお預けしてやる」

「そんなの……」

 そっちの方が生殺しだよ!!

 心の中で叫んだのを、まるで見透かすように、ふっと細められる目。それを見ると、自然と顔が赤くなるのを感じて、シーツを手繰り寄せて隠そうとするが、静かに退けられた。

「お前のこと知りたいって言ったじゃん。お前のいろんな顔が見たい」

「お前、よくもそんな恥ずかしげもなく……!」

 こいつ、ピュアなふりして、実はとんだプレイボーイだったのか?村で侍らせてたのか?

「ごめん、俺真っ直ぐだから」

「自分で真っ直ぐって言うな」

「でも、お前のせいで今まさに歪みそう」

「は?」

「ちょっと虐めたりとか、もう後戻りできないくらい、蕩けさせたいとか、そんなこと考えた」

「っ……!」

「でも今は—————全部甘くなぞって、上書きしてやりたい」

 こいつ、やっぱり、初めて会った時とは、なんか違う……!

 言葉通り、彼の舌と指は、アルガの身体を優しく甘く、そして温かく包んでいった。

 先ほどまでの緊張や恐怖、違和感とはまるで違う。羽のように柔らかくて、湯船に浸かるように温かくて。「安心しろ」と言っているような手と、あちこちに優しく落とされる口づけ。

 段々と、境界が曖昧になっていく。夢の中にいるみたいだった。ぼうっとして、全てを預けてしまいたくなる。

 ただの快楽じゃない。これは、多分きっと———————壊れて、空っぽだった俺に、注がれる温かい何か。

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