魔王サマの光堕ち 〜父の期待に応えて魔王をやってますが、勇者が俺を倒さないどころか溺愛してくる〜

宇地流ゆう

文字の大きさ
18 / 25

17. 傷と癒やし【R18】

しおりを挟む

ソルもアルガも、互いにひどい傷を負っていた。当たり前だ。最恐と恐れられる魔王と戦ったのだ。

 ミレーナは魔王の逝去に、最初は動揺していたが—————彼女も、やはり魔王の独裁に支配されていた1人。やがて、微かに息をつくと、2人の傷を介抱しくれた。

 きっと、彼女にはわかっていたのかもしれない。いつか魔王が倒されること。そして、ソルが現れたことによって、それが近いうちに現実になることを。



「俺さ、今めっちゃ勇者っぽくね?人生で一番勇者だったわ」

 包帯を巻かれたソルは、簡易ベッドに身体をもたせかけながら、ふと呟く。

「あの最後の一撃見た?剣が手に戻るとか、勇者の覚醒演出、効きすぎだろ」

 と、ソルはワクワクした顔で言うので、同じく包帯を巻かれたアルガも、ベッドに身を預けながら、呆れたようにため息をついた。

「……子どもか、お前は」

「いや、俺今まであんなことできるって知らなかったんだよ。ずっと憧れてた—————」

 ソルはそこで一旦言葉を切り、そして横のアルガを見つめた。

「お前を助けたい、って本気で思ったから力が湧いたのかも」

 その笑顔とまっすぐな瞳に、アルガは思わず顔を背ける。

「っ…お前は、いつもそういうことを直球で言い過ぎなんだよ!!」

「え?でもあの時、お前俺のこと『ソルは真の勇者』って言ってたじゃん」

 ……っ!何で、そんなとこだけはっきり覚えてるんだと、アルガは自分が勢いで言った台詞を後悔し始める。

「ま、魔王を守るために魔王を討伐する勇者がいるか!!」

 ソルはハハッと笑って「まあ確かにな」と呟く。少し間があったあと、ソルは自分に背を向けるアルガを見つめ、ぽつりと漏らした。

「……なあ、父ちゃんが死んで、悲しい?」

 静かな問いに、アルガは一瞬ぴくりと反応する。—————悲しくないと言えば、嘘になる。

「………彼が、俺の唯一の父さんだったことに変わりはない」

 アルガの低く小さな声を聞きながらも、しかしソルは真面目な顔で返した。

「でも俺は、後悔してない。父を殺した俺が憎くなったら、迷わず俺を討伐しろよ。全力で迎え撃つ」

 —————ったく、こいつはどこまで真っ直ぐなんだよ。軽口を叩いたかと思えば、急に真面目に騎士道めいたことを言って、「正々堂々」、俺に向き合う。

「お前、言ってること矛盾してんだよ」

「え、そう?」

「つーか……わかってんだろ、俺が、お前を倒せないこと」

「いや、あの時お前、魔力でお父さんを制してたじゃん。俺が強くなったのと同じで、お前も覚醒してた」

「ボス戦で一気にレベルアップ……か」

 アルガは言いながらも、皮肉めいた自嘲を溢した。確かに王道ではあるが、ボスがボスを撃つなんて聞いたことないぞ。

「なあ、怪我が治ったら、手合わせしねえ?」

 ソルはふといいことを思いついたように、微かに瞳を煌めかせる。

「元気か」

 体力バカめ。こちとらまだ魔力が戻ってねえんだよ。

「一度本気で、やり合いたいんだよ」

 アルガは呆れたように眉を寄せる。意味がわからない。仮にもこいつは……

「……お前、俺に恋してたんじゃないのかよ」

 ボソリと呟いてみると、ソルは「ああ」と元気に頷く。

「だからやり合いたい!お前を負かして、勝った暁には存分に抱いて、わからせたい」

「変な性癖目覚めさせてんじゃねえ!!」

 そっちをレベルアップさせてどうする、変態が。

「ちなみに、お前が勝ったら、お前の言うことなんでも聞いてやるよ」

 ニカっと笑うソルに、アルガはしばらく真顔でいたが、「へえ?」と不意に笑みを浮かべた。

「お前が俺にしてきた恥ずかしいこと、やり返されてもいいのか?」

「出来るもんならな。でもお前、責められたら一瞬で崩れるじゃん」

「ハッ、馬鹿言うな。理性崩れてんのはそっちだろ、魔弾で制圧してみっともなく喘がせてやるから覚悟しろ」

 いつになく強気に歯向かうアルガに、ソルはなぜかゾクゾクとした奇妙な感覚が湧くのを感じた。

「あー、そういうこと言われると、わからせたくなってくるなあ」

 ニヤリ、と不適な笑みを浮かべるソルに、アルガは思わず息を呑む。
 いやいや、意味深な言葉で揺るがせようとしてるだけだろ。どうせただの冗談——————と思っていたら、ソルがいつの間にかベッドから起き上がって、アルガに近づいてた。

「おまっ…!!安静にしろって言われただろ!」

「ごめん、体力だけは自信あるからさ。こんなの屁でもないんだよな」

「脳筋馬鹿が!離れろっつの!」

「そんな煽っていいの?……数分後には甘~く喘いでるお前しか想像できないんだけど?」

 思わず、かあっとなる。どんどん距離を詰めてくるソルを押し戻すように、腕を伸ばして抵抗する。

「や、やめろ、俺はまだ傷が癒えてなっ……」

 と、抗議の声が途切れる。優しく顎を上に向かされ、流れる動作で唇が重なる。

「っ、ふ……ん」

 温かくて柔らかい舌が早くも口内に入ってきて、息が奪われる。しかし、身体中にまだ残る痛みのせいで、うまく抵抗することもできない。

「光の魔法習得してから気づいたんだけど。これ、治癒が出来んの。知ってた?」

 唇を離したソルが、小声で囁く。もしかして……だからコイツ、傷の治りが早いのか?人間は魔族より傷の修復が遅いはずなのに、ソルは既にピンピンしている。

「癒して、温めて、ついでに気持ち良くさせてやる…って言ったら?」

 と、ソルは誘うような笑みを浮かべて、アルガの顔を覗き込む。

「い、いらない!こんなの自分で治す!」

「絶対、俺の治癒魔法の方が早いって」

 言いながら、ソルは有無を言わせない感じで、包帯の上からそっと、アルガの腹部に触れた。

「っ……!」

 一瞬ビクリとしたが、なぜか不思議な感触に包まれていく。ソルが手を置いたところからじんわりと、徐々に痛みが和らいでいくように感じる。ほんとに、こいつ……

「あー、それとも、お前、痛い方が好きだったりする?」

「はあ…!?」

「噛まれるのとか、ちょっと強引にされんの好きじゃん」

「そんなわけ—————」

 すぐに否定できくて顔が赤くなる。まるで、自分の身体と反応を全部見透かされているようだ。こいつ、マジで動物的本能と直感でしか動いてないのか?

 と、ソルのもう片方の手が、包帯に触れて、スルスルと丁寧に剥がしていく。

「な、何して…」

「肌に直接触れた方が、早く効くから」

 ソルはそんなことを言いながら、あっという間に、アルガの腹部に巻かれた包帯を取り除き、白い布はベッド上に落ちる。

 父の爪によって抉られた、まだ黒い痣が残る傷口。ソルは、そこにゆっくりと口づけを落としていく。

「……っん、」

 修復中の肌は、いつもより敏感になっている気がした。ソルの温かい吐息を直接感じて、思わず息が漏れる。ペロリ、とそこを舐められた。柔らかい舌の感触と、微かなひりつきとともに、変な感覚がやってくる。

「や、やめっ……そこ、触るな…」

 思わず顔を歪めて拒もうとするが、いつの間にか腰を抑えるソルの手に、もう逃げ道はなくなっている。

「いつもより、敏感になってんじゃん」

「ちがっ……ッ」

 と口では否定しながらも、ピリつく痛みがいつの間にか快感に溶けていく。
 腹部だけではなく、アルガの身体に残るあらゆる傷に、ソルは順番に口づけを落とし、指を這わせながらも、アルガの身体を優しく抱えるように、ベッドに乗って押し倒す。

「ば、馬鹿、安静にしてろって、言われただろッ」

 ソルの胸を押し返そうとすると、ソルの片手がゆっくりと、下半身に移動していく。

「でも、もうここ安静になってないんだけど?」

「……っ!」

 ソルの意地悪な言葉と挑発的な笑みに、言い返すこともできずに、顔がぶわっと赤くなる。布ごしに感じる指の感触に、熱くなった部分が否応なく反応してしまう。

「いたっ、やめ…ソルッ」

 身体を揺らすたび、あちこちに痛みが走るのに、それは逆になぜか身体中を敏感にさせる。

「あっ…、ッ……んん」

「そうやって反応されるとさ、マジで性癖曲がりそう————」

 耳元で響いたそんな声に、ゾクン、と身体が熱くなる。この変態……!魔族より歪み始めてるぞ。

 しかし、ソルの手は決して自分を傷つけることはなかった。彼の言った通り、治癒効果のある光の魔法で傷を癒して痛みを調節しながら、しかし同時に快感を与えてくる。

「はあ、あ、はぁ、……もぉ、やめっ……」

 数分後には、アルガの身体はもう溶けきって、焦らされたせいで下半身は限界まで熱くなっている。早く解放してほしい、もう、おかしくなりそうだ。

「気持ち良くなりたい?」

 もう答えがわかっているのに、わざと訊いてくる。ソルの意地悪な瞳。痛みと快楽を同時に与えられたおかげで、普段より火照った身体。すでにアルガの羞恥と理性は瓦解寸前で。

 アルガは浅い呼吸をつきながらも、コクコクと静かに頷いた。物欲しそうに濡れる唇と瞳、ソルの首元を引き寄せるような細い手。

「やっと素直になったじゃん」

 ニッ、と勝ち誇ったように言うソルに、すでに抵抗の意志のなくなったアルガは、震える小声を漏らしていた。

「早く、しろ、よ、変態勇者……」

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

[BL]憧れだった初恋相手と偶然再会したら、速攻で抱かれてしまった

ざびえる
BL
エリートリーマン×平凡リーマン モデル事務所で メンズモデルのマネージャーをしている牧野 亮(まきの りょう) 25才 中学時代の初恋相手 高瀬 優璃 (たかせ ゆうり)が 突然現れ、再会した初日に強引に抱かれてしまう。 昔、優璃に嫌われていたとばかり思っていた亮は優璃の本当の気持ちに気付いていき… 夏にピッタリな青春ラブストーリー💕

こわがりオメガは溺愛アルファ様と毎日おいかけっこ♡

なお
BL
政略結婚(?)したアルファの旦那様をこわがってるオメガ。 あまり近付かないようにしようと逃げ回っている。発情期も結婚してから来ないし、番になってない。このままじゃ離婚になるかもしれない…。 ♡♡♡ 恐いけど、きっと旦那様のことは好いてるのかな?なオメガ受けちゃん。ちゃんとアルファ旦那攻め様に甘々どろどろに溺愛されて、たまに垣間見えるアルファの執着も楽しめるように書きたいところだけ書くみたいになるかもしれないのでストーリーは面白くないかもです!!!ごめんなさい!!!

過保護な義兄ふたりのお嫁さん

ユーリ
BL
念願だった三人での暮らしをスタートさせた板垣三兄弟。双子の義兄×義弟の歳の差ラブの日常は甘いのです。

借金のカタに同居したら、毎日甘く溺愛されてます

なの
BL
父親の残した借金を背負い、掛け持ちバイトで食いつなぐ毎日。 そんな俺の前に現れたのは──御曹司の男。 「借金は俺が肩代わりする。その代わり、今日からお前は俺のものだ」 脅すように言ってきたくせに、実際はやたらと優しいし、甘すぎる……! 高級スイーツを買ってきたり、風邪をひけば看病してくれたり、これって本当に借金返済のはずだったよな!? 借金から始まる強制同居は、いつしか恋へと変わっていく──。 冷酷な御曹司 × 借金持ち庶民の同居生活は、溺愛だらけで逃げ場なし!? 短編小説です。サクッと読んでいただけると嬉しいです。

魔王に飼われる勇者

たみしげ
BL
BLすけべ小説です。 敵の屋敷に攻め込んだ勇者が逆に捕まって淫紋を刻まれて飼われる話です。

美貌の騎士候補生は、愛する人を快楽漬けにして飼い慣らす〜僕から逃げないで愛させて〜

飛鷹
BL
騎士養成学校に在席しているパスティには秘密がある。 でも、それを誰かに言うつもりはなく、目的を達成したら静かに自国に戻るつもりだった。 しかし美貌の騎士候補生に捕まり、快楽漬けにされ、甘く喘がされてしまう。 秘密を抱えたまま、パスティは幸せになれるのか。 美貌の騎士候補生のカーディアスは何を考えてパスティに付きまとうのか……。 秘密を抱えた二人が幸せになるまでのお話。

従僕に溺愛されて逃げられない

大の字だい
BL
〈従僕攻め×強気受け〉のラブコメ主従BL! 俺様気質で傲慢、まるで王様のような大学生・煌。 その傍らには、当然のようにリンがいる。 荷物を持ち、帰り道を誘導し、誰より自然に世話を焼く姿は、周囲から「犬みたい」と呼ばれるほど。 高校卒業間近に受けた突然の告白を、煌は「犬として立派になれば考える」とはぐらかした。 けれど大学に進学しても、リンは変わらず隣にいる。 当たり前の存在だったはずなのに、最近どうも心臓がおかしい。 居なくなると落ち着かない自分が、どうしても許せない。 さらに現れた上級生の熱烈なアプローチに、リンの嫉妬は抑えきれず――。 主従なのか、恋人なのか。 境界を越えたその先で、煌は思い知らされる。 従僕の溺愛からは、絶対に逃げられない。

大学一軍イケメンにいちご狩りに誘われた陰キャの俺、なぜかいちごじゃなくて俺が喰われたんだが(?)

子犬一 はぁて
BL
大学一軍イケメン×大学九軍陰キャ 喰われるなんて聞いてないんだが(?) 俺はただ、 いちご狩りに誘われただけだが。 なのに── 誘ってきた大学一軍イケメンの海皇(21)に なぜか俺が捕まって食われる展開に? ちょっと待てい。 意味がわからないんだが! いちご狩りから始まる ケンカップルいちゃらぶBL ※大人描写のある話はタイトルに『※』あり

処理中です...