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17. 傷と癒やし【R18】
しおりを挟むソルもアルガも、互いにひどい傷を負っていた。当たり前だ。最恐と恐れられる魔王と戦ったのだ。
ミレーナは魔王の逝去に、最初は動揺していたが—————彼女も、やはり魔王の独裁に支配されていた1人。やがて、微かに息をつくと、2人の傷を介抱しくれた。
きっと、彼女にはわかっていたのかもしれない。いつか魔王が倒されること。そして、ソルが現れたことによって、それが近いうちに現実になることを。
「俺さ、今めっちゃ勇者っぽくね?人生で一番勇者だったわ」
包帯を巻かれたソルは、簡易ベッドに身体をもたせかけながら、ふと呟く。
「あの最後の一撃見た?剣が手に戻るとか、勇者の覚醒演出、効きすぎだろ」
と、ソルはワクワクした顔で言うので、同じく包帯を巻かれたアルガも、ベッドに身を預けながら、呆れたようにため息をついた。
「……子どもか、お前は」
「いや、俺今まであんなことできるって知らなかったんだよ。ずっと憧れてた—————」
ソルはそこで一旦言葉を切り、そして横のアルガを見つめた。
「お前を助けたい、って本気で思ったから力が湧いたのかも」
その笑顔とまっすぐな瞳に、アルガは思わず顔を背ける。
「っ…お前は、いつもそういうことを直球で言い過ぎなんだよ!!」
「え?でもあの時、お前俺のこと『ソルは真の勇者』って言ってたじゃん」
……っ!何で、そんなとこだけはっきり覚えてるんだと、アルガは自分が勢いで言った台詞を後悔し始める。
「ま、魔王を守るために魔王を討伐する勇者がいるか!!」
ソルはハハッと笑って「まあ確かにな」と呟く。少し間があったあと、ソルは自分に背を向けるアルガを見つめ、ぽつりと漏らした。
「……なあ、父ちゃんが死んで、悲しい?」
静かな問いに、アルガは一瞬ぴくりと反応する。—————悲しくないと言えば、嘘になる。
「………彼が、俺の唯一の父さんだったことに変わりはない」
アルガの低く小さな声を聞きながらも、しかしソルは真面目な顔で返した。
「でも俺は、後悔してない。父を殺した俺が憎くなったら、迷わず俺を討伐しろよ。全力で迎え撃つ」
—————ったく、こいつはどこまで真っ直ぐなんだよ。軽口を叩いたかと思えば、急に真面目に騎士道めいたことを言って、「正々堂々」、俺に向き合う。
「お前、言ってること矛盾してんだよ」
「え、そう?」
「つーか……わかってんだろ、俺が、お前を倒せないこと」
「いや、あの時お前、魔力でお父さんを制してたじゃん。俺が強くなったのと同じで、お前も覚醒してた」
「ボス戦で一気にレベルアップ……か」
アルガは言いながらも、皮肉めいた自嘲を溢した。確かに王道ではあるが、ボスがボスを撃つなんて聞いたことないぞ。
「なあ、怪我が治ったら、手合わせしねえ?」
ソルはふといいことを思いついたように、微かに瞳を煌めかせる。
「元気か」
体力バカめ。こちとらまだ魔力が戻ってねえんだよ。
「一度本気で、やり合いたいんだよ」
アルガは呆れたように眉を寄せる。意味がわからない。仮にもこいつは……
「……お前、俺に恋してたんじゃないのかよ」
ボソリと呟いてみると、ソルは「ああ」と元気に頷く。
「だからやり合いたい!お前を負かして、勝った暁には存分に抱いて、わからせたい」
「変な性癖目覚めさせてんじゃねえ!!」
そっちをレベルアップさせてどうする、変態が。
「ちなみに、お前が勝ったら、お前の言うことなんでも聞いてやるよ」
ニカっと笑うソルに、アルガはしばらく真顔でいたが、「へえ?」と不意に笑みを浮かべた。
「お前が俺にしてきた恥ずかしいこと、やり返されてもいいのか?」
「出来るもんならな。でもお前、責められたら一瞬で崩れるじゃん」
「ハッ、馬鹿言うな。理性崩れてんのはそっちだろ、魔弾で制圧してみっともなく喘がせてやるから覚悟しろ」
いつになく強気に歯向かうアルガに、ソルはなぜかゾクゾクとした奇妙な感覚が湧くのを感じた。
「あー、そういうこと言われると、わからせたくなってくるなあ」
ニヤリ、と不適な笑みを浮かべるソルに、アルガは思わず息を呑む。
いやいや、意味深な言葉で揺るがせようとしてるだけだろ。どうせただの冗談——————と思っていたら、ソルがいつの間にかベッドから起き上がって、アルガに近づいてた。
「おまっ…!!安静にしろって言われただろ!」
「ごめん、体力だけは自信あるからさ。こんなの屁でもないんだよな」
「脳筋馬鹿が!離れろっつの!」
「そんな煽っていいの?……数分後には甘~く喘いでるお前しか想像できないんだけど?」
思わず、かあっとなる。どんどん距離を詰めてくるソルを押し戻すように、腕を伸ばして抵抗する。
「や、やめろ、俺はまだ傷が癒えてなっ……」
と、抗議の声が途切れる。優しく顎を上に向かされ、流れる動作で唇が重なる。
「っ、ふ……ん」
温かくて柔らかい舌が早くも口内に入ってきて、息が奪われる。しかし、身体中にまだ残る痛みのせいで、うまく抵抗することもできない。
「光の魔法習得してから気づいたんだけど。これ、治癒が出来んの。知ってた?」
唇を離したソルが、小声で囁く。もしかして……だからコイツ、傷の治りが早いのか?人間は魔族より傷の修復が遅いはずなのに、ソルは既にピンピンしている。
「癒して、温めて、ついでに気持ち良くさせてやる…って言ったら?」
と、ソルは誘うような笑みを浮かべて、アルガの顔を覗き込む。
「い、いらない!こんなの自分で治す!」
「絶対、俺の治癒魔法の方が早いって」
言いながら、ソルは有無を言わせない感じで、包帯の上からそっと、アルガの腹部に触れた。
「っ……!」
一瞬ビクリとしたが、なぜか不思議な感触に包まれていく。ソルが手を置いたところからじんわりと、徐々に痛みが和らいでいくように感じる。ほんとに、こいつ……
「あー、それとも、お前、痛い方が好きだったりする?」
「はあ…!?」
「噛まれるのとか、ちょっと強引にされんの好きじゃん」
「そんなわけ—————」
すぐに否定できくて顔が赤くなる。まるで、自分の身体と反応を全部見透かされているようだ。こいつ、マジで動物的本能と直感でしか動いてないのか?
と、ソルのもう片方の手が、包帯に触れて、スルスルと丁寧に剥がしていく。
「な、何して…」
「肌に直接触れた方が、早く効くから」
ソルはそんなことを言いながら、あっという間に、アルガの腹部に巻かれた包帯を取り除き、白い布はベッド上に落ちる。
父の爪によって抉られた、まだ黒い痣が残る傷口。ソルは、そこにゆっくりと口づけを落としていく。
「……っん、」
修復中の肌は、いつもより敏感になっている気がした。ソルの温かい吐息を直接感じて、思わず息が漏れる。ペロリ、とそこを舐められた。柔らかい舌の感触と、微かなひりつきとともに、変な感覚がやってくる。
「や、やめっ……そこ、触るな…」
思わず顔を歪めて拒もうとするが、いつの間にか腰を抑えるソルの手に、もう逃げ道はなくなっている。
「いつもより、敏感になってんじゃん」
「ちがっ……ッ」
と口では否定しながらも、ピリつく痛みがいつの間にか快感に溶けていく。
腹部だけではなく、アルガの身体に残るあらゆる傷に、ソルは順番に口づけを落とし、指を這わせながらも、アルガの身体を優しく抱えるように、ベッドに乗って押し倒す。
「ば、馬鹿、安静にしてろって、言われただろッ」
ソルの胸を押し返そうとすると、ソルの片手がゆっくりと、下半身に移動していく。
「でも、もうここ安静になってないんだけど?」
「……っ!」
ソルの意地悪な言葉と挑発的な笑みに、言い返すこともできずに、顔がぶわっと赤くなる。布ごしに感じる指の感触に、熱くなった部分が否応なく反応してしまう。
「いたっ、やめ…ソルッ」
身体を揺らすたび、あちこちに痛みが走るのに、それは逆になぜか身体中を敏感にさせる。
「あっ…、ッ……んん」
「そうやって反応されるとさ、マジで性癖曲がりそう————」
耳元で響いたそんな声に、ゾクン、と身体が熱くなる。この変態……!魔族より歪み始めてるぞ。
しかし、ソルの手は決して自分を傷つけることはなかった。彼の言った通り、治癒効果のある光の魔法で傷を癒して痛みを調節しながら、しかし同時に快感を与えてくる。
「はあ、あ、はぁ、……もぉ、やめっ……」
数分後には、アルガの身体はもう溶けきって、焦らされたせいで下半身は限界まで熱くなっている。早く解放してほしい、もう、おかしくなりそうだ。
「気持ち良くなりたい?」
もう答えがわかっているのに、わざと訊いてくる。ソルの意地悪な瞳。痛みと快楽を同時に与えられたおかげで、普段より火照った身体。すでにアルガの羞恥と理性は瓦解寸前で。
アルガは浅い呼吸をつきながらも、コクコクと静かに頷いた。物欲しそうに濡れる唇と瞳、ソルの首元を引き寄せるような細い手。
「やっと素直になったじゃん」
ニッ、と勝ち誇ったように言うソルに、すでに抵抗の意志のなくなったアルガは、震える小声を漏らしていた。
「早く、しろ、よ、変態勇者……」
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