世界は残り、三秒半

須藤慎弥

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世界は残り、三秒半

第五話

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 リアムは、親族みんなお金持ちのいいとこのお坊ちゃんだった。
 小さい頃から色んな国を巡っていたらしいリアムとは、俺が中学に上がる前の半年間だけ同じ時を過ごした。
 リアムにとっては最後の社会勉強の地で、幼くして惹かれ合った俺たちは毎日朝から晩まで一緒に居た。

 あの頃はまだたくさんのヒトや飛行機が活発に動いていた飛行場に、どうしてもって言うから学校を休んで見送りに行った時の事……リアムは覚えてるのかな。



「……空が暗い」

 急ぎ足で飛び立った飛行機の小さな窓から、俺は首を傾けてさらに上空を見上げ太陽を探した。
 地上から何千メートルも上を飛んでるんだから、雲より高い位置に俺たちは居るはずなのに太陽光が届いてこない。
 少しでも振動を緩和させようとしてくれているのか、俺の腰をしっかりと抱いてくるリアムの腕時計の時刻が正しければ、今は昼の一時だ。

「核の乱用で大気が汚染されている。太陽系の磁場も狂い始めた。第三次世界大戦が要因だ」
「それニュースで見たけど、ほんとだったの? 世界って今どうなってんの?」
「私やユーリの国は直接的に争いには加担していないが、すでに二つの国が滅んで大国が支配した。だがな、軍事破壊兵器製造やら化学兵器製造に携わっている以上、協力国だと言われても仕方がない。何より国そのものが衰える」
「……俺の国も貧乏になったって事?」
「早い話が、そうだ。現代にはカーストが存在するからな。今一番被害を被っているのはベータ性の者達だろう。現にベータ性の世界人口推移は下降の一途だ」
「え!? そんな、ベータ性は何も……」
「カーストとはそういうものだ。ヒトを制圧出来るアルファと、繁殖能力のあるオメガが希少扱いされている」
「…………」
 
 リアムはそう言って、俺の髪に口付けた。
 とても思い出話を持ち出すような雰囲気じゃない。
 俺が囚われていた一年の間に、穏やかじゃなかった世界がさらに緊迫した状況になっていた。
 久しぶりに見た外の景色が荒れ放題だったのも、俺たち以外のヒトをまったく見かけなかった事も、遥か下の海が記憶とは違う色をしている事も、何だかすべてが恐ろしくなってきた。

「リアム、それで今……俺たちはどこに向かってる?」
「終末時計だ」
「────っ!」

 リアムがさらりと返してきた、ニュースで聞いた事のある単語。
 世界情勢に合わせて勝手に進んだり戻ったりする、摩訶不思議としか言いようのない世紀末の象徴。
 人類への警告として何者かがこの危機を知らせようとしていて、その針がてっぺんを指した時、地球の歴史は呆気なく終わってしまうと偉い人たちが神妙に語っていた。
 新世紀を迎える事なく、俺たちは何か巨大な力によって宇宙の塵となる。……らしい。

「ついに針がゼロ目前になった。私はそれを止めに行く」



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