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疑惑 ─和彦─
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しおりを挟む僕は嫉妬の鬼だ。
初めてをやり直すなんて言いながら、内部から沸々と湧き上がる黒くて重たいものがどうしても拭えない。
僕と出会う前の事なんだから仕方ないのに。
七海さんは、キラキラした「恋」を探し求めていただけなのに。
見事なまでに男達は口を揃えて言っていた、「好きかどうか分からないけど頭から離れない」。
僕もそうだった。
目を引く明るい髪色のせいなのか、女性のように小柄で華奢だから興味本位で追ってしまうのか、なぜ七海さんから目が離せないのか分からなくて、はじめはあの飲みの席で葛藤していた。
男の子だ。彼は、こんなに可愛くて気が利くけれど男の子なんだ。
そう分かっているのに、「頭から離れない」。
男達の台詞に激しく苛付きはしたが、分かる分かると頷いてしまいそうになったのも事実で、僕は七海さんの無意識の魔性が本当に怖くなった。
僕に恋してくれた七海さんが、これから先、その魔性で僕よりももっと素敵な人を落としてしまうんじゃないかって。
僕は変で、優しくないから、いつ七海さんに愛想を尽かされてもおかしくない。
七海さんを手に入れてしまうと、僕から離れていってしまうかもしれない恐怖と新たな嫉妬が、脆い心を呆気なく揺らした。
「和彦……っ、ほどい、て……っ、ぎゅってしたい……、から……っ」
こんな事を言ってる今だって、縛り上げた手首を解放したら一目散に僕から逃げるつもりなんでしょ。
甘えた口調が僕の鼓膜を震わせて犯し、七海さんの内に在る性器がずくずくと疼いて貫くのを止められない。
僕の事をぎゅってしたいの? それとも、僕から逃げたくてそう言ってるの?
責め立てるように何度も腰を打ち付けると、中から溢れ出てくるドロドロとした液体があちこちに弾け飛んで七海さんの下腹部をたくさん汚した。
「……んぁっ……ん、んっ……んっ……!」
──嫉妬に支配された僕を許して。
……でも、謝りたくない。
七海さんは僕のものなのに、七海さんに恋心を寄せる男があんなに大勢居たら、僕は心配で心配で気が狂いそうになるよ。
僕の心を初めて奪って行った七海さんは、僕のものだ。僕だけのものだ。
逃げても追う。捕らえて、閉じ込める。
僕が居なくて「寂しかった」と拗ねていた七海さんなら、僕の気持ち、分かってくれるよね……?
「……七海さん、あと少し。あと少しです」
「嫌だ……っ、なんで、……なんで俺の話、っ、聞いてくれないんだよ……っ! こんなの、……こんなの、っ、恋人同士のエッチじゃないよ……っ!」
「…………」
「おねがい……っ、ほどいて、……? 俺どこにも、んっ……、行かないっ! 怒ってるなら、謝るっ……約束も、ちゃんと守る……っから……!」
……七海さんが、いっぱい泣いている。
最初は気持ちよくて泣いてたはずなのに、今たくさん流れてる涙はそれとは別物な気がする。
これは恋人同士のエッチじゃないって、どうしてそんな事を言うの?
僕が手首を拘束したから?
すぐにこんな手を使う優しくない僕を、七海さんは許さない……?
「……七海さん……?」
グリグリと最奥をつついて一度動きを止めた僕は、七海さんの唇を舐めようとしたのに顔を背けて拒否された。
「ほどいてくれないなら、もう知らない!! 俺、優しい人が好き! 俺のこと好きって思ってくれる人が好き!」
「七海さんを好きな気持ちは誰にも負けませんよ! どうしてそんな事を言うんですか。恋人同士のエッチじゃないって、どういう意味なんですか」
顔を真っ赤にして叫ぶ七海さんはとっても可愛い。
けれど、僕にはない優しさを持った人が好きだなんて聞かされたら、また良からぬ不安が心を侵してゆく。
今の僕に「優しい」は無理だよ。
七海さんの事が好きで、好きで、狂おしいほどに愛しくて、でも僕なんかじゃ繋ぎとめておけないかもしれないって不安でたまらないんだよ。
僕は、七海さんが身を捩っても離れられないように、ぐちゅ、とさらに奥を抉った。
下腹部がぴたりと密着し、最奥に到達した先端の刺激に少しだけ啼いた七海さんは、僕をキッと睨み上げてくる。
「和彦にこういう趣味があるんなら、俺は頑張って覚える! 痛いのも苦しいのも、和彦がやってって言うなら耐えるよ! でも俺は初心者なんだよっ。しかも、しかも、……っ初めてのやり直しがこんなのなんて……俺……嫌だ……!」
「…………っ」
「和彦が何に怒ってるのか、俺は分かってるつもりだよ? 全部は分からないけど、大体は分かる。だから、……ぎゅって、……させて……?」
ちょっと誤解されてしまったけれど、怒った顔で僕にこう言ってくれた七海さんの言葉は、優しさに溢れていた。
縛って嫉妬をぶつけても真には怒らない七海さんの器量は、僕を好きでいてくれているが故だって……そう思っていいのかな。
これを外したら、本当に、ぎゅって抱き締めてくれるのかな。
よがって必死にしがみついてくるのではなく、愛情を持って大事に抱き締めてくれるのかな。
──逃げたり、しないかな。
「僕がおかしいのは、七海さん知ってますよね」
「知ってる……! こんな事するしっ」
「……ほどいたら、ぎゅってしてくれるんですか? 本当ですか? 暴れても罵倒しても構いませんが、逃げる事だけは許しませんよ?」
「つ、繋がってるのに逃げられるはずないだろ! さっきから何回も言ってるじゃんっ……てかこれ以上言わせるなよっ、恥ずかしいんだから……!」
自分で何言ってんだと、七海さんはこの状況下にも関わらず頬を染めて一人でツッコミを入れている。
真っ直ぐな瞳を信じて、縛っていたシャツに手をかけた。
締まりが緩まった瞬間、七海さんは素早い動きでするりと腕を抜いたから、咄嗟に「逃げられる、追わなきゃ」と僕は臨戦態勢をとった。
「…………!」
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