優しい狼に初めてを奪われました

須藤慎弥

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クリスマスSS『ビックリ箱』

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 クリスマスだし、働き始めて毎日忙しそうな和彦に何かしてあげたいって恋人らしいことを思った俺は、カップルのクリスマス事情ってやつを検索してみた。

 そこで〝サプライズ〟という単語に惹かれた俺の心は動き、一ヶ月以上前から計画を練った。

 ……というのは建て前で、……うん、……短編だから……察してほしい。





 この日の有給取得のために、今月は休日返上で働いた。

 土日は会社に行かなくていいように、それを見越して平日仕事をバリバリこなす和彦は、俺が休みの日に出勤する事をあんまり快く思っていなさそうで……。

 「そんなに急ぎの仕事があるんですか」と問われれば、そうだと自信満々に答えた。今はまだ、和彦とは部署が違うからウソだとはバレなかった。

 「僕も行きます」とスーツに着替え始めようとしたら、昼には帰宅すると伝えて、さらに〝おかえりって言って〟口撃で宥めておいた。この口撃はかなり有効だった。

 「今日も出勤するんですか」と今週になって半泣きで引き止められた時は、もう隠せないと思い白状した。

 二十五日に有給取りたいから、今月は頑張るんだって。

 クリスマスに向けて一ヶ月前から準備してた俺って、結構ロマンチストじゃない?

 イベント事を楽しむ習慣の無かった和彦と恋人らしい時間を過ごすのは、俺の喜びでもあるし。

 浮世離れした和彦もさすがに、十二月二十五日が何の日か、その日に合わせて俺が健気に頑張ってたのはナゼなのか、分かってくれると思ってた。

 でも、和彦の返事は「へぇ、何でですか?」だった。

 だから俺もつい「何でって何ですか?」と若干キレ気味に聞き返して、変な空気になったのは俺達ならではだと思う。


「──そろそろ帰って来るかな」


 格好に合わない腕時計で時刻を確認して、身を縮ませた。

 俺は今、今日の日のために用意したミニスカサンタのコスチュームを着て、大人一人がゆったり入るほど大きな箱の中に居る。

 検索したところ、世の男達がクリスマスに彼女に求めるコスチューム第二位がコレで、俺は悩む間もなくそのまま購入ページに進んだ。

 ちなみに第一位は裸エプロンだったので却下した。そんなのどう考えてもクリスマスとは関係ないでしょ。

 そして何故、箱の中なのか。

 簡単に言うと、ビックリ箱だ。帰ってきた和彦が近付いてきたのを見計らって、「メリクリー!」と叫びながら登場する予定。

 ちゃんと〝サプライズ〟と掛かってるだろ?

 かなり勇気は要るけど。


「おっ、帰って来た」


 下で物音がした。

 絨毯の上をスリッパで歩くモソモソとした足音も聞こえる。

 外見だけは非の打ち所のない、大会社の次期社長のお帰りだ。


「七海さん、ただいま帰りました。……あれ? 七海さん?」


 向かい側の部屋のベッド(一応まだ俺の部屋は健在)で寝てると思ったのか、廊下から和彦の声がする。

 ふっふっふっふっ。俺はそっちには居ないよーだ。

 和彦のベッドルームでデッカいダンボール製の箱を組み立てて、その中で息を殺してスタンバイしてるんだよーん。


「七海さーん。七海さーん? ……うわぁ、なになに? 誕生日パーティーみたいで可愛いな。うわぁ、何このご馳走! 美味しそう~」


 えっ、先にそっち行っちゃったのか!

 俺を探して歩く和彦は、ベッドルームじゃなく特大のテレビがあるリビング風の部屋の方へ行ったらしい。

 午前中のうちに済ませた飾り付けも、一階のキッチンを借りて作った俺の手作り料理も、一応はサプライズプレゼントのつもりで、そっちにはあとで一緒に行って驚かせる予定だったのに。



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