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クリスマスSS『ビックリ箱』
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しおりを挟む「七海さーん」と呼ぶ声がどんどん近付いてくる。
リビングからここまでは扉が二枚。
ガチャ、ガチャ、と開閉音が二回続いたその時、やっとメインのサプライズが出来そうな位置にまで和彦の気配が来た。
ただし、見覚えのないデカい箱がベッドの隣にデーン! と在ると、ちょっとやそっとじゃ驚かない和彦もやっぱり狼狽えているみたいで……。
「……え、……何コレ」
和彦は呟いて、立ち止まった。
そしてまたスリッパを踏み鳴らす足音が時計回りに聞こえる。箱の正体を探ろうと、グルッと一周まわったんだろう。
えーっと……これ、いつが「メリクリ!」の登場タイミング?
「……七海さん宛なのかな。……あ、もしもし後藤さん? 今日郵便物の到着に立ち合いました? ……はい、………あぁ、いえ。何だか得体の知れない巨大な箱が僕の部屋にありまして。えぇ、そう。……開けて空気に触れたら爆発するとか、その手の危険なものではないかを確かめたいので、至急金属探知機を用意してください」
──金属探知機!? ちょっ、待ってよ!
このデッカい箱が怪し過ぎて、俺、自爆テロ扱いされてる!
後藤さんにそんなものを用意させようとしている和彦は、きっと今めちゃくちゃ怪訝な顔をしてるんだと思う。
「メリクリ!」と飛び出したところで、サプライズに驚くよりもテロじゃなかった事に安堵しそうだ。
完全に出るタイミングを逃し、どうしようどうしようと考えあぐねて数分。
箱に入った俺を爆弾と勘違いした和彦が、外からジッと見張るという奇妙な構図を想像してほしい。
──なんとも出にくいでしょ?
「これは……僕の出世を妬む輩の仕業かな? やはり警察に電話を……」
警察!? 何を言ってるんだ、和彦!
そんなのダメダメダメダメ!!
焦った拍子に中腰だった俺は尻もちをつき、箱の中でゴソゴソッと音を立ててしまう。
「う、動いた!?」
めったに大声を出さない和彦が、五年近く付き合ってきて初めてというくらいの驚いた声を上げた。
それと同時に、俺はだんだんと意識が遠退いてくる。
かれこれ二時間はこの中に居るからだ。
ヘンな汗が出てきて、気分も悪い。
浅い呼吸が乱れていく。
「な、何っ? 何が入ってるの!? ワンちゃんっ?」
この大きさだとセントバーナードかな!? って、呑気に推理を始めるんじゃないよ。
箱の中で倒れ込んだ俺は、力尽きる一歩前。
もはやサプライズがどうとか関係ナシに、酸素を求めて腕を伸ばしてみるも蓋部分までが何メートルにも感じて全然届かない。
「かず、……ひこ、……フタ、あけて……」
金属探知機が到着する前に、俺は投降した。
いやだってもう……爆弾が入ってるんじゃとか中身は犬じゃないかとか、俺という可能性を少しも考えてないのが和彦らしくて。
悲しくて可笑しいぜ……まったく。
「えっ、七海さん!? 何してるんですか、これ! どんな遊びですか!」
「……おかえり、和彦。メリクリ……」
遊び? 冗談じゃない。
酸欠でぶっ倒れるとは思わなかったけど、俺は和彦にサプライズをしたかっただけ。
賑やか且つロマンチックなクリスマスの雰囲気、美味しいご飯と背伸びして買った高級なワインを二人きりで楽しみたかった。
第二位のこの格好だって、和彦なら喜んでくれるって分かってたから着ることを迷わなかった。
だからさ、和彦……説明して。
俺を引っ張り上げてくれるんじゃなく、いそいそと入ってきた理由を……。
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