必然ラヴァーズ

須藤慎弥

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 たまに出演させてもらっているこの生放送番組では、最近の流行りものや映画のランキングのVTRを観て「へぇ~」「ふーん」と頷いていれば良かったのだが、今日は違った。

 裏でやっている情報番組のように、昨日のCROWNのラジオ音源が流され、その後は出演タレントから聖南への質問が止まらなかった。


「今交際宣言した理由は?」
「どんな人?」
「お相手はセナさんの過去を知った上で付き合いを了承したの?」


 等々、ここは記者会見場かというほどの質問の嵐だった。

 アキラとケイタも度々フォローを入れてくれるが、埒が明かなかった。


「今まで散々迷惑掛けてきたから、社長を安心させてやりたくて」


 ……などと半分冗談交じりに答えてみても出演者は誰一人納得せず、だがそれでも聖南は余裕で微笑んでいた。


『この人等とか世間とかどーでもいいんだよ。 葉璃さえ分かってくれてたらそれで』


 今聖南の家でこれを観てくれてるかな、と出掛けの眠そうな葉璃を思い出すと、ついつい意識なく優しく笑んでしまう。

 その優しげな微笑みを司会者に見られてしまい、また散々いじられてしまったが聖南は幸せだった。

 恋人の存在を明らかにしただけで、こんなにも心が晴れ晴れとするのだと身に染みている。

 好きなタイプや、どんな人と結婚したいかなど、ファンが喜ぶような妄想で答えなければならなかった事が、たった一つの正直な返答で済む幸福。


「セナさん、今すごくお幸せそうですね!」


 聖南とそう変わらないくらいの若い女性タレントが顔を覗き込んできた。

 次のVTRにいくとカンペが出たので、聖南は目一杯微笑んで、


「最高っすよ」


と短く答えると、その場にいた出演者のみならずスタッフからも冷やかしの野次が飛んできたが、そんな事すらも悠々と受け止められる。

 両隣のアキラとケイタはというと、終始どんな顔でいたらいいんだと、内心では昨日の葉璃の心境そのものであった。

 無事に生放送を乗り切ると、聖南達は一度楽屋に戻って着替えを済ませ、来週撮りの同じ局の歌番組の打ち合わせのためにエレベーターに乗り込んだ。


「セナ、交際宣言するのちょっと早かったんじゃねぇの?」


 アキラが五階へのボタンを押しながら聖南を振り返る。


「なんで?」
「スキャンダルから半年も経ってないし」
「だからいいんだろ。 俺もう誘われんのヤなんだよ。 鬱陶しい」
「え、未だに誘いあるの?」


 聖南の言葉に、スマホをいじっていたケイタが驚いて顔を上げた。

 あの事件とスキャンダルはかなり大きなニュースとなっていたので、さすがにもう聖南へ近寄る者はいないだろうと思っていた。


「ガンガンあるよ。 麗々が一番しつこかったけど、あいつ以外もかなり」
「セナって女惹きつけるフェロモン的な何か放ってんの?」
「そうとしか考えられないね」
「なんだフェロモンって。 んなの出せるなら葉璃にしか出さねぇよ」


 五階に到着し、二人は聖南の何度目か分からない惚気を聞いて唖然とする中、当の本人は満ち足りた清々しい顔でエレベーターを降りた。



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