必然ラヴァーズ

須藤慎弥

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〜八月某日〜(全六話)

ETOILE初歌番組❥⑥




   瞳をうるうるさせて見上げてきた葉璃の悲痛な叫びは、聖南にとってはニヤけしか生まない。

   なんて可愛い事を言っているんだ。

   聖南が居ないから、不安でたまらない。

   緊張している葉璃を力いっぱい抱き締めてくれない聖南が居なければ、頑張れない。

   聖南にはそう聞こえた。


「……先輩として言えることは、「慣れろ」しかない。 けど恋人としてはちょっと言いてぇ事ある」
「……なに?」

「俺が居なきゃ生きていけない♡って聞こえたから、「俺も同じ気持ちだぞ♡」って」
「え、……え?」
「愛されてんなぁ~俺。 あ、もちろん俺も愛してるよ? でも葉璃からそんな熱烈な事久々言われた気がする。 ちゅーしたい」
「えぇぇ? 聖南さん、話がかなり逸れてますよ……!」


 葉璃の考えている事がすべて分かるわけではないから、こうして自分の気持ちを自分の言葉で伝えてくれるようになったのはありがたい成長である。

 聖南は葉璃の事が大好きで、言葉でも態度でも全身でそれを伝えているけれど、葉璃はまだまだ照れ屋さんだ。

 少しばかりニュアンスを曲げて聖南は受け取ったかもしれないが、そうとしか聞こえなかったのだからしょうがない。

 指先で細い顎をクイと持ち上げると、葉璃が思っていたのと違う答えを返したせいか瞳がまん丸になっている。


「逸れてねぇよ。 葉璃は俺が居なきゃ頑張れねぇみたいだから、おまじない一個教えといてやる」
「おまじない……っ?」
「手のひら文字あんだろ。 あれな、「聖南」だけじゃなくて、その後に「好き」って書け」
「えぇぇっ!? そ、それはもっと緊張増しますよ!」
「別の緊張にすり替えちまえ。 俺見てドキドキすんなら、効果絶大よ? 離れてても心は一緒って、葉璃が言ったんだからな?」
「い、い、言ったけど……、でも……!」
「葉璃ちゃん、やって」


 ピンクに染まった頬を撫でて、まん丸な瞳に吸い込まれるように顔を寄せていくと、さらに頬が色付いた。


「…………試してみます」


 しばらく至近距離で見詰め合っていると、葉璃が小さく頷いて聖南の胸にギュッと顔を押し付けてきた。

 キスしたい聖南が上向かせようとしたのだが、葉璃は袴に顔をグリグリと擦り付けてきて、照れ隠しをしているのだと分かるとつい甘やかしてしまう。


「試した成果、報告してよ」
「…………ん」


 恥ずかしいのか、聖南の背中に回した腕に力を込めて顔を見られまいとしている。

 葉璃が可愛過ぎて困る。

 フッと笑った聖南は、葉璃が落ち着くまでたっぷり時間を使った。

 頭を撫で、背中を撫で、時折お尻を撫でては払い落とされ、それらを繰り返していたがいよいよ待てなくなってきた。

 ……キスしたい。


「葉璃ー? そろそろ顔上げろよ、ちゅーは?」
「………………」


 耳元で問い掛けると、葉璃はイヤイヤと頭を振った。


「まだ耳赤いじゃん。 そんな恥ずかしい?」
「………………」


 今度はウンウンと何度も頷いている。

 手のひら文字を工夫してみろとは言ったが、こんなに照れられるとは思わなかった。

 ───なんて可愛いんだ。

 キスをしたい衝動を堪えたまま葉璃の髪を撫で続けていると、胸元で小さく何か呟いている。


「ん? 何か言った?」
「……聖南さんカッコいい……袴、カッコいい……」
「………………」


 葉璃が照れていたのは、そういう事だったのか。

 そんなに可愛い事を言われてはもう、キスだけでは止まらない。

 聖南にしがみついている葉璃の腕を取り、耳まで真っ赤にして俯くその顔を覗き込んだ。


「葉璃ちゃん押し倒されてぇの?」
「えっ……? いや、そんな事な……」
「あ~間違えた。 俺が押し倒してぇ」
「あ、えっ、? 違っ、俺そんなつもりじゃ……!」


 戸惑う葉璃の唇を素早く奪い、舌を絡ませていく。

 だが葉璃は逃げ腰だ。

 場所が場所だけに、集中出来ないらしい。


「何逃げようとしてんの。 衣装着てヤるって言った約束まだ果たせてないし、楽屋でヤんのも初めてじゃないし、ちょうどいいじゃん」
「えぇ!? ま、待って、聖南さんっ。 無理! だって聖南さんのこと見れないもん!」
「ありがと♡ マジでこの顔に生まれて良かったー」
「聖南さんっ」
「葉璃ちゃんっ」
「わわわ、ほんとに待って、聖南さん、……! 目が、目が……!」
「ダメだ、もうスイッチ入っちまった。 ……な?」
「…………っっ!!」


 葉璃の手を取って自身の股間にあてがわせると、息を呑んだのが分かった。

 衣装の上からでも分かるほど、聖南の中心部は元気に反り返り存在感を示している。

 聖南は葉璃の後頭部だけで勃起しかけたのだ。

 可愛い台詞を目白押しで聞かされて、ピタリと密着され、無防備に甘えてこられた日には、勃たなければ男じゃない。


「ローションあっかな……。 お、あったあった。 ベビーローションだ。 ……すげ、サラッとしてんぞ、コレ。 新感覚味わえそー」
「お願い、聖南さんのやらしいスイッチ切って! せめてお家でしましょうよ!」
「え? 家まで我慢出来ないけど? 車でする?  あぁ、マンションのエレベーターがいいか? 外で青姦もいいけど、落ち着かねぇと思うよ?」
「~~~~っっ聖南さん!!」
「フッ。 観念してかわいーお尻出しな、葉璃」


 口を動かしながらも徐々に葉璃を二人がけソファへ追い込んだ聖南は、ベビーローション片手に手銃を向け、いやらしく微笑んだ。

 追い込まれた葉璃はとうとうソファへ倒れ込んでしまい、手銃を向けた聖南をうっとりと見上げた。

 …………観念するしかなかった。









ーー八月某日ーー
・ETOILE初歌番組 終
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