498 / 541
〜八月某日〜(全六話)
ETOILE初歌番組❥⑥
しおりを挟む瞳をうるうるさせて見上げてきた葉璃の悲痛な叫びは、聖南にとってはニヤけしか生まない。
なんて可愛い事を言っているんだ。
聖南が居ないから、不安でたまらない。
緊張している葉璃を力いっぱい抱き締めてくれない聖南が居なければ、頑張れない。
聖南にはそう聞こえた。
「……先輩として言えることは、「慣れろ」しかない。 けど恋人としてはちょっと言いてぇ事ある」
「……なに?」
「俺が居なきゃ生きていけない♡って聞こえたから、「俺も同じ気持ちだぞ♡」って」
「え、……え?」
「愛されてんなぁ~俺。 あ、もちろん俺も愛してるよ? でも葉璃からそんな熱烈な事久々言われた気がする。 ちゅーしたい」
「えぇぇ? 聖南さん、話がかなり逸れてますよ……!」
葉璃の考えている事がすべて分かるわけではないから、こうして自分の気持ちを自分の言葉で伝えてくれるようになったのはありがたい成長である。
聖南は葉璃の事が大好きで、言葉でも態度でも全身でそれを伝えているけれど、葉璃はまだまだ照れ屋さんだ。
少しばかりニュアンスを曲げて聖南は受け取ったかもしれないが、そうとしか聞こえなかったのだからしょうがない。
指先で細い顎をクイと持ち上げると、葉璃が思っていたのと違う答えを返したせいか瞳がまん丸になっている。
「逸れてねぇよ。 葉璃は俺が居なきゃ頑張れねぇみたいだから、おまじない一個教えといてやる」
「おまじない……っ?」
「手のひら文字あんだろ。 あれな、「聖南」だけじゃなくて、その後に「好き」って書け」
「えぇぇっ!? そ、それはもっと緊張増しますよ!」
「別の緊張にすり替えちまえ。 俺見てドキドキすんなら、効果絶大よ? 離れてても心は一緒って、葉璃が言ったんだからな?」
「い、い、言ったけど……、でも……!」
「葉璃ちゃん、やって」
ピンクに染まった頬を撫でて、まん丸な瞳に吸い込まれるように顔を寄せていくと、さらに頬が色付いた。
「…………試してみます」
しばらく至近距離で見詰め合っていると、葉璃が小さく頷いて聖南の胸にギュッと顔を押し付けてきた。
キスしたい聖南が上向かせようとしたのだが、葉璃は袴に顔をグリグリと擦り付けてきて、照れ隠しをしているのだと分かるとつい甘やかしてしまう。
「試した成果、報告してよ」
「…………ん」
恥ずかしいのか、聖南の背中に回した腕に力を込めて顔を見られまいとしている。
葉璃が可愛過ぎて困る。
フッと笑った聖南は、葉璃が落ち着くまでたっぷり時間を使った。
頭を撫で、背中を撫で、時折お尻を撫でては払い落とされ、それらを繰り返していたがいよいよ待てなくなってきた。
……キスしたい。
「葉璃ー? そろそろ顔上げろよ、ちゅーは?」
「………………」
耳元で問い掛けると、葉璃はイヤイヤと頭を振った。
「まだ耳赤いじゃん。 そんな恥ずかしい?」
「………………」
今度はウンウンと何度も頷いている。
手のひら文字を工夫してみろとは言ったが、こんなに照れられるとは思わなかった。
───なんて可愛いんだ。
キスをしたい衝動を堪えたまま葉璃の髪を撫で続けていると、胸元で小さく何か呟いている。
「ん? 何か言った?」
「……聖南さんカッコいい……袴、カッコいい……」
「………………」
葉璃が照れていたのは、そういう事だったのか。
そんなに可愛い事を言われてはもう、キスだけでは止まらない。
聖南にしがみついている葉璃の腕を取り、耳まで真っ赤にして俯くその顔を覗き込んだ。
「葉璃ちゃん押し倒されてぇの?」
「えっ……? いや、そんな事な……」
「あ~間違えた。 俺が押し倒してぇ」
「あ、えっ、? 違っ、俺そんなつもりじゃ……!」
戸惑う葉璃の唇を素早く奪い、舌を絡ませていく。
だが葉璃は逃げ腰だ。
場所が場所だけに、集中出来ないらしい。
「何逃げようとしてんの。 衣装着てヤるって言った約束まだ果たせてないし、楽屋でヤんのも初めてじゃないし、ちょうどいいじゃん」
「えぇ!? ま、待って、聖南さんっ。 無理! だって聖南さんのこと見れないもん!」
「ありがと♡ マジでこの顔に生まれて良かったー」
「聖南さんっ」
「葉璃ちゃんっ」
「わわわ、ほんとに待って、聖南さん、……! 目が、目が……!」
「ダメだ、もうスイッチ入っちまった。 ……な?」
「…………っっ!!」
葉璃の手を取って自身の股間にあてがわせると、息を呑んだのが分かった。
衣装の上からでも分かるほど、聖南の中心部は元気に反り返り存在感を示している。
聖南は葉璃の後頭部だけで勃起しかけたのだ。
可愛い台詞を目白押しで聞かされて、ピタリと密着され、無防備に甘えてこられた日には、勃たなければ男じゃない。
「ローションあっかな……。 お、あったあった。 ベビーローションだ。 ……すげ、サラッとしてんぞ、コレ。 新感覚味わえそー」
「お願い、聖南さんのやらしいスイッチ切って! せめてお家でしましょうよ!」
「え? 家まで我慢出来ないけど? 車でする? あぁ、マンションのエレベーターがいいか? 外で青姦もいいけど、落ち着かねぇと思うよ?」
「~~~~っっ聖南さん!!」
「フッ。 観念してかわいーお尻出しな、葉璃」
口を動かしながらも徐々に葉璃を二人がけソファへ追い込んだ聖南は、ベビーローション片手に手銃を向け、いやらしく微笑んだ。
追い込まれた葉璃はとうとうソファへ倒れ込んでしまい、手銃を向けた聖南をうっとりと見上げた。
…………観念するしかなかった。
ーー八月某日ーー
・ETOILE初歌番組 終
12
あなたにおすすめの小説
ユキ・シオン
那月
BL
人間の姿をした、人間ではないもの。
成長過程で動物から人間に変わってしまう”擬人化種”の白猫青年と、16歳年上のオッサンとのお話。
出会ったのは猫カフェ。白猫従業員としての青年と客としてやってきたオッサン。
次に再会したのは青年が人間として通う大学。オッサンは保健室の先生だった。
青年が金のためにヤバいことをしていて、あるトラブルが起こる。
そこへ見計らったかのようにオッサンが飛び込んで救出したのをきっかけに2人の距離は縮まり……
※表紙絵は自作。本編は進むにつれてどんどん動物園と化します(笑)
巣ごもりオメガは後宮にひそむ【続編完結】
晦リリ@9/10『死に戻りの神子~』発売
BL
後宮で幼馴染でもあるラナ姫の護衛をしているミシュアルは、つがいがいないのに、すでに契約がすんでいる体であるという判定を受けたオメガ。
発情期はあるものの、つがいが誰なのか、いつつがいの契約がなされたのかは本人もわからない。
そんななか、気になる匂いの落とし物を後宮で拾うようになる。
第9回BL小説大賞にて奨励賞受賞→書籍化しました。ありがとうございます。
消えない思い
樹木緑
BL
オメガバース:僕には忘れられない夏がある。彼が好きだった。ただ、ただ、彼が好きだった。
高校3年生 矢野浩二 α
高校3年生 佐々木裕也 α
高校1年生 赤城要 Ω
赤城要は運命の番である両親に憧れ、両親が出会った高校に入学します。
自分も両親の様に運命の番が欲しいと思っています。
そして高校の入学式で出会った矢野浩二に、淡い感情を抱き始めるようになります。
でもあるきっかけを基に、佐々木裕也と出会います。
彼こそが要の探し続けた運命の番だったのです。
そして3人の運命が絡み合って、それぞれが、それぞれの選択をしていくと言うお話です。
記憶を無くしたら家族に愛されました
レン
BL
リオンは第三王子で横暴で傲慢で侍女や執事が少しでも気に入らなかったら物を投げたり怒鳴ったりする。家族の前でも態度はあまり変わらない…
家族からも煩わしく思われたていて嫌われていた… そんなある日階段から落ちて意識をなくした…数日後目を覚ましたらリオンの様子がいつもと違くて…
お弁当屋さんの僕と強面のあなた
寺蔵
BL
社会人×18歳。
「汚い子」そう言われ続け、育ってきた水無瀬葉月。
高校を卒業してようやく両親から離れ、
お弁当屋さんで仕事をしながら生活を始める。
そのお店に毎朝お弁当を買いに来る強面の男、陸王遼平と徐々に仲良くなって――。
プリンも食べたこと無い、ドリンクバーにも行った事のない葉月が遼平にひたすら甘やかされる話です(*´∀`*)
地味な子が綺麗にしてもらったり幸せになったりします。
エリート上司に完全に落とされるまで
琴音
BL
大手食品会社営業の楠木 智也(26)はある日会社の上司一ノ瀬 和樹(34)に告白されて付き合うことになった。
彼は会社ではよくわかんない、掴みどころのない不思議な人だった。スペックは申し分なく有能。いつもニコニコしててチームの空気はいい。俺はそんな彼が分からなくて距離を置いていたんだ。まあ、俺は問題児と会社では思われてるから、変にみんなと仲良くなりたいとも思ってはいなかった。その事情は一ノ瀬は知っている。なのに告白してくるとはいい度胸だと思う。
そんな彼と俺は上手くやれるのか不安の中スタート。俺は彼との付き合いの中で苦悩し、愛されて溺れていったんだ。
社会人同士の年の差カップルのお話です。智也は優柔不断で行き当たりばったり。自分の心すらよくわかってない。そんな智也を和樹は溺愛する。自分の男の本能をくすぐる智也が愛しくて堪らなくて、自分を知って欲しいが先行し過ぎていた。結果智也が不安に思っていることを見落とし、智也去ってしまう結果に。この後和樹は智也を取り戻せるのか。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる