迅雷上等♡─無欠版─

須藤慎弥

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⑪情交

─迅─⑤

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 雷を横抱きしてる俺の忍耐力なんか、あって無いようなもんだった。

 金髪の隙間から覗くおでこにキスして、溜め息を吐く。

 コイツの先走るクセ、どうにかしてほしい。 なんの前触れもなくいきなり動転するのも勘弁だ。

 直情的な雷だからこそ好きになったんだけど、シチュエーションとムードに拘って気張ってる俺がマジでちんけに思えてくる。


「迅……ッ、ちょっ……♡」
「お前一人で突っ走るのやめろよ」
「あぅッ、……うッ?」
「俺の好きって言葉、雷にゃんが思ってるほど軽くねぇ。 ……上がるぞ」
「うわわわ……ッ!?」


 水圧に逆らって、雷を抱えたままバスルームを出る。

 メソメソしたりジタバタしたり、感情の起伏が激しいコイツには慣れてるつもりだが、無意識に俺の計画を次々台無しにしやがるのは納得いかねぇ。

 俺の前で盛大に凹んだかと思えば、涙ながらにクソ可愛く告ってくるとかそういう反則行為するなよ。


「迅! お、落ち着け! 一回落ち着こうぜ!」
「俺は落ち着いてる。 パニクってんのは雷にゃんの方だろ」
「そうだけどー!! それは間違いありませんけどー!!」


 見るからに清潔で分厚いバスタオルは、びしょ濡れで喚く雷の体から即座に水分を吸い取ってくれる。

 同じタオルで自分の体も拭いて、ドキドキを再稼働させた雷の手を取るとひとまず脱衣所からも出た。

 だがそこで手を離し、雷を取り残す。

 乾いたタオルを腰に巻きながらベッドに腰掛けた俺は、すぐに本題から逸れる雷の本音を聞き出そうと、軌道修正を図った。


「雷にゃん、俺らが今日やる事分かってるよな? 覚悟出来てるって言うなら、そのまま来い。 嫌ならバスローブ着ろ」
「……えッ……?」
「ここからは雷にゃんの意思に任せる。 土壇場で逃げちまうかもってのは想定内だ。 覚悟して来たのも、楽しみだって言ってたのも信じるけど、イチジク頑張ったからって雷にゃんの気が乗らねぇうちは無理強いしたくねぇんだ」
「……そ、そ、そんなぁ……ッッ」
「俺、ヤリチン伝説は捨てたんだよ。 雷にゃんの事すげぇ大事にしてぇから」
「うぅぅ~~ッッ!」


 いちいち試すような真似しなくても、二メートル先で可愛く唸ってる雷がその気になってる事くらい、恋愛初心者の俺だって分かった。

 これは元ヤリチンから童貞男子への最終確認だ。 または、伏線とも言う。

 ただ性欲を満たせればいいって今までの考えが覆されたんだから、慎重にもなるだろ。

 それに予定が狂った事だし、俺も遠慮なく反撃させてもらう。


「一応言っとくけど、俺は今日どっちに転ぼうが告るぞ」
「こッ、こ、ッ、こッ……!」
「ニワトリ?」
「違げぇよ!!」
「体冷えてまた腹が痛くなる前に、早くどっちか決めろ」
「うぅぅッッ!!」
「雷にゃん」
「うぅッッ! うぅッッ!」


 唇を尖らせて地団駄を踏む雷は、めちゃめちゃ可愛い。

 照れまくって一歩を踏み出せない雷の上半身全部が、ピンクに見える。

 また〝俺様迅様〟だって揶揄われんだろうな。

 分かりきった事を自分で決断させて、それまでリードしてやらねぇんだから。


「~~ッッ、に、逃げねぇよ!」


 気が済むまで唸った後、雷が勢いよく俺の胸に飛び込んできた。

 抱きついてきた薄い体を両腕に捕らえると、照れ隠しなのか俺に向かって盛大に鳴きだす。


「逃げるわけねぇだろ! ここまで来て、迅にもてなされて、イチジクまでがんばったんだぞ、俺! 男にニゴンは無え!」
「フッ……男らしいな」
「キザ~! イケメン~!」
「揶揄ってんの?」
「ンなわけねぇだろッ。 本心だバカヤロー!」
「プッ、……あはは……っ」


 コイツ、マジで最高。

 雷の性格じゃ、どれだけエロい事に興味があっても選択肢が増えた時点で天秤にかけたはずだ。

 唸るだけ唸って足が竦んでた雷は、おそらく頭ン中に焼き付いた動画三部作を再生していた。 「じゃあ次の機会で!」と言っても良かったし、そのチャンスを与えられた事で心がグラついてたんだと思う。

 でも雷は、指一本レッスンを選んだ。

 俺の飼い猫はとにかくヤンチャで、いつどんな時でも声がデケぇ。 おまけに、今からタイマンでもすんのかってくらいの威勢の良さ。

 ニャーニャー鳴き喚いてるが、力一杯俺に抱きついてきたツラを見れば、最終確認しといて良かったと頬が緩む。


「マジでいいのか? 体いじりまくるけど」
「いじ、いじ……ッ」
「舐めたり噛んだり揉んだりもするけど」
「目白押し……!」
「ラストは太ももエッチで締めくくりたい」
「ブハッッ……!!」
「雷にゃんの覚悟、見せてくれよ。 男に二言は無えんだろ?」
「お、おぅよ! 俺、迅にならどんだけいじくられてもいいぞ! 覚悟は出来てる!」
「フッ……、可愛い」
「かわッ……」


 膝の上に乗せて見つめ合うと、俺も少し照れた。

 放課後と変わんねぇ光景なのに、お互い裸ってだけでこんなに緊張するもんなのか。

 最近俺の口癖が〝可愛い〟になってるし。

 ま、可愛いヤツが延々と可愛いんだから、可愛いとしか言いようがねぇだろ?


「体冷えてんじゃん。 暖房付けとくか」
「……う、うん……ちょっと寒いっす……」
「来いよ。 温めてやる」
「うわ、……イケボ……ッ♡」
「それ言うなって」
「いいじゃん、イケボ! 迅が話すといちいちドキッてすんだよな」
「お前それ墓穴掘ってんの気付かねぇ?」
「またバケツの話かよ!」
「……懐かしいな」


 そういや、墓穴とバケツを聞き間違えてた事あったな。 安定のバカさ加減だが、そこがまた可愛い。

 俺の声に弱えって事を露呈する雷に、しつこく言葉責めしたらどんな反応すんのかって考えただけで勃ちそうだ。

 ……ていうか、そんな会話の切れ端を覚えていた俺って、一体いつからコイツの飼い主だったんだろ。






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