迅雷上等♡─無欠版─

須藤慎弥

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⑯仕返し……!?

─雷─⑤

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 長年誰かの監視下にあった、行動範囲の狭い俺にとっての贅沢は〝チーズ倍のせピザ〟。

 そんなのいつでも食わしてやる、と言ってくれる迅からこれを奢られるのは、二回目だ。

 普段から何かと俺に奢りたがる迅。

 秘密基地でのおやつ、学校帰りの買い食い、休みの日の遊びからメシまで、何もかも。

 いくらバイトしてるからって、迅は俺を甘やかしすぎな? ……と言ってみたこともあるけど、「俺がしたいからしてるだけ。甘やかしてぇんだからしょうがねぇだろ」とか言ってなぜか半ギレされた。

 そんなふうに思ったのは、今までのヤリチン人生の中で俺だけなんだって。

 だから甘やかし方が分かんねぇんだって。

 俺が喜ぶんなら何でもしてやりてぇんだって。

 いや、いたれりつくせりか。

 ぶっちゃけ俺のどこにそんな、迅をメロメロにする魅力があんのかガチ不明。

 チビと女顔がコンプレックスで、誰にでも食ってかかる生意気なおてんばボーイなのに、〝そこが可愛い〟って……迅の趣味が謎だ。

 さっき告ってきたギャルもそうだし、俺が知ってる限り元祖達はみんな今風の〝女〟。

 俺が迅にメロメロキュンで大しゅきなように、迅も俺に疑いようのねぇ愛情注いでくれるから、さすがにもうチクチクはしねぇけど。

 でも、あんな拒否り方を見ちまうと心配だ。

 知らず知らずのうちに、無数の敵を作ってるような気がする。


「──なんで俺が仕返しに遭うんだよ。てか誰にだ」


 俺はチーズ倍のせピザ(Sサイズ)、迅はミートソースパスタを食べてる時、いつものように考えてることが口に出ちまってた。

 迅の部屋がチーズの匂いで充満してるから、もっさん達は違う部屋に避難している。


「よく分かんねぇけど、ギャルには仲間がいっぱい居そうじゃん」
「十人までなら一人でやっちまえる。それ以上増えても別に問題無え。俺強えし」
「大した度胸ですな……」


 店以外でのパスタは箸で食うタイプの迅が、フッと勝者の笑みを浮かべた。

 そりゃあ、迅が強えのは知ってるよ?

 相手が三人、四人、五人の時の喧嘩を目の当たりにして、ぜんぶ五分もかかんねぇでケリをつけたのも、ちゃーんとバッチリ目撃してたよ?

 だけど、心配なもんは心配だ。

 「ごちそうさまでした」と手を合わせた迅が、ピザ片手に唸ってる俺の頭を撫でてくる。


「惚れ直した?」
「ほ、ほれ……ッ? 惚れ……うーん……」
「おい、そこで悩むなよ」


 最後の一口を頬張ったと同時に、迅らしくねぇ期待に満ちたキラキラな視線を寄越される。……が、俺は即答しなかった。

 それが気に入らなかったらしい末っ子迅クンが、舌打ちして不機嫌を顕にする。

 まったく……俺に夢中なのは分かったから、そんなすぐキレんなっての。

 即答しなかったのには、ちゃーんと理由がある。「そうじゃなくて」と、俺は濡れたおしぼりで手と口を拭きながら迅をチラッと見た。


「迅にはずっとメロメロキュンだから、別に惚れ直す必要は無えかなーって」
「…………ッ」
「うわッ! な、なに……ッ!?」


 カッと目を見開いた迅から、その場に押し倒されてドギマギした。

 握ってたおしぼりが、フローリングにフワッと落ちてしまったがそれどころじゃねぇ。

 右耳に髪をかける仕草までエロい、迅の面が近付いてくる。

 目が離せねぇ……。コイツはいつ見てもとんでもねぇイケメンだ……。


「計算ナシでそういうこと言うから、俺もお前にメロメロキュンなんだよ」
「あ……ッ♡ ちょっ、ピザまだ残っ……ンッ♡」


 押し当てられた唇から、ぬるっとベロが入り込んでくる。

 いつそんな気分になったのか、童貞処女な俺にはまったく分かんなかったんだけど……。

 流されてしまう俺は、迅のベロの動かし方を一生懸命真似した。

 ねちっこいキスは苦手だ……。考えてることとかぜんぶぶっ飛ぶし、ぬるぬるしたベロが重なると股間も疼くし、気持ちよくてすぐ喘じまうし……。


「すげぇ。口ン中がチーズの味だな」
「そりゃ……ンン……ッ♡ あたり、まえ……ふんッ♡」
「いつも思うんだけど」
「ん、えッ? にゃに、……ん、く……ッ♡」
「雷にゃん口が小せぇよな」
「ふぁ……ッ♡」


 最後の仕上げとばかりに唇を舐められただけで、簡単に喘ぐ俺。……恥ずか死ぬ。

 ねちっこいキスを突然、何分も仕掛けられたから酸素不足で苦しいんですけど。

 長い指で下唇をフニフニ触られても、もう好きにしてくれって感じ。


「この口……マジ可愛い。ピザ一切れ食うのにめちゃめちゃ時間かけてんだもん。あんま量食わねぇはずだよ」
「俺そんなに口小せぇ……? 量食わねぇのと何の関係があんの? あッ♡ ちょっ、くすぐったいって……ッ♡」


 ゆっくり抱き起こされた俺は迅の胡座の中に収まった。それはいつものことだから別にいんだけど、甘々カレシから無数のキスを受けて照れまくった。

 髪、おでこ、ほっぺた、鼻、唇、耳、首筋……その他迅の唇が届くとこぜんぶ。


「一口が小せぇうえに咀嚼が多いからじゃね? 咀嚼は満腹中枢刺激するって言うじゃん」
「……な、何を刺激するって? まんぷくちゅうしゃ……?」
「いいや、なんでもねぇよ。ただ可愛いなって言ってるだけ」
「ふぁ……♡」


 咀嚼が多いって、それのどこが可愛いんだ……!?

 そんなにいっぱいキスしたくなっちまうほど!?

 俺と付き合ってるせいで、もしかして迅までバカになってきちゃったんじゃ……!

 そ、そうだとしたらマジでごめんな、迅!



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