11 / 20
僕の甘美な眠り姫⑪ ちーの正体
しおりを挟む
─ 千里 ─
最近、久遠がすぐこわい顔をする。
いつも優しそうな笑顔でちーを見てくれて、昔からどこか抜けたちーの世話をなんやかんやと焼いてくれる。
ちーはチンチラ属の獣人だ。
家族以外の誰にも、もちろん久遠にも、この事は話してない。
お父さんとお母さんから、どんな事があっても他人にバラしちゃダメだって言われてる。
幼馴染みの久遠には話しておきたいなって思ってたのに、ちーが獣人だってバレたら、それを今まで隠してきたお父さんの会社での立場が悪くなる…そう言われたら、話したくても秘密にしておかなきゃいけない。
獣人にもヒトみたいな性別があって、ちーも小さい頃からβだって言われて生きてきた。
だけど………そうじゃない、みたい。
なんで久遠がその事に気付いたのか分からないけど、 お母さんに詰め寄る久遠はまた怖い顔をしている。
「きちんとお母様の口から伝えてあげないと、ちー君が危ない目に遭ってしまいますよ? 何か起きてからでは遅いです」
「そ、そうは言ってもね…。 αの久遠くんには分からないかもしれないけど、生きにくいのよ、千里の性別は」
「それは重々承知しています。 ですから、僕がちー君をお守りします。 どんな事があっても、僕が守ります」
久遠はお母さんの前で正座して熱弁していた。
今までの二人の会話で分かった事は、ちーはβじゃなくてΩだったって事。
先週からかな。 寝ても寝ても寝足りなくて、起きてる間中ずっと体がだるくて、気分も悪いからご飯も食べられないし、何かの病気なのかもって不安だったけど違ったみたい。
βとして社会に出た方が何かと都合がいいって事くらいは知ってる。
でもちーがΩだとしたら…発情期?っていうものがあるらしいから、それは対処できるようにしておかないと本当に困るんだけど。
「久遠くんには感謝しているわ。 パパも会社でかなり恩恵を受けているようだし、感謝してもしきれない。 でもね、久遠くんに千里は守れないのよ」
久遠から視線を逸らしたお母さんが、お茶を一口飲んだ。
正座したままピクリとも動かない久遠の綺麗な亜麻色の髪が、開け放した窓から入ってくる心地良い風に揺れている。
横顔を覗いてみたら、久遠はまだ怖い顔をしていて、ちーの心がザワザワした。
久遠が守ってくれるなら、こんなに嬉しい事はないけど……久遠は生粋のαだ。
久遠とちーがどんなに望んでも、その血筋は絶やしてはいけない。
しかもちーはチンチラ属。
Ωである事もだけど、獣属だって事が一番の難点だ。
「お母様、僕が何も知らないとお思いですか?」
「…………もしかして……知っているの?」
「はい。 かなり前から」
「そうだったの…」
え? え? 久遠が何を知ってたって??
ちーが久遠の横顔に見惚れて話を聞き逃していて、二人の重苦しい溜め息の意味が分からなかった。
お母さんは伏し目がちにお茶を飲み続けてて、久遠はそんなお母さんをジッと見ている。
何だか入っちゃいけない空気だ。
………でも喉が渇いたな…今立ち上がったらこの空気壊しちゃうかなぁ…。
ちーは熱いお茶が苦手だから、冷蔵庫にある冷たい水を欲した。
いいや、ちょっとだけ……。
「…っ、どこ行くのっ?」
「お水飲みたい」
「あ、あぁ、そう。 行っておいで」
「うん?」
立ち上がろうとしたら、今まで少しも動かなかった久遠にギュッと腕を掴まれて、ビックリした。
お家の中なんだから、どこ行くのって言われてもたかが知れてるのに。
久遠は過保護だ。
毎朝お迎えに来てくれるし、授業の合間に必ず様子を見に来てくれるし、いつもウトウトしてて一人ぼっちのちーを気にかけてくれてる。
久遠は優しくてカッコ良くて、おまけに何でも出来る。
対してちーは何にも得意なものなんてないし、日中が苦手だから動きもトロいし、話すのも遅いし。
昔からこんなちーを構ってくれてるのは、久遠だけだ。
友達だと思ってたのに、キス、された時なんか全身がピリピリってした。
ここまで構ってくれなくていいよってドキドキして避けてたら、怒った顔の久遠から飴玉で誘われちゃって、ーーー。
あ…いけない。
思い出しちゃうな。
初めてのキスは、いきなりで驚いたけど温かかった。
二回目のキスは大好きなグレープの飴玉の味で、すごく甘くて美味しかった。
三回目はマスカット味がいいなって言ったら、久遠はまたあの怒った顔をするのかな。
「ちー君、………出てる、フェロモン…」
最近、久遠がすぐこわい顔をする。
いつも優しそうな笑顔でちーを見てくれて、昔からどこか抜けたちーの世話をなんやかんやと焼いてくれる。
ちーはチンチラ属の獣人だ。
家族以外の誰にも、もちろん久遠にも、この事は話してない。
お父さんとお母さんから、どんな事があっても他人にバラしちゃダメだって言われてる。
幼馴染みの久遠には話しておきたいなって思ってたのに、ちーが獣人だってバレたら、それを今まで隠してきたお父さんの会社での立場が悪くなる…そう言われたら、話したくても秘密にしておかなきゃいけない。
獣人にもヒトみたいな性別があって、ちーも小さい頃からβだって言われて生きてきた。
だけど………そうじゃない、みたい。
なんで久遠がその事に気付いたのか分からないけど、 お母さんに詰め寄る久遠はまた怖い顔をしている。
「きちんとお母様の口から伝えてあげないと、ちー君が危ない目に遭ってしまいますよ? 何か起きてからでは遅いです」
「そ、そうは言ってもね…。 αの久遠くんには分からないかもしれないけど、生きにくいのよ、千里の性別は」
「それは重々承知しています。 ですから、僕がちー君をお守りします。 どんな事があっても、僕が守ります」
久遠はお母さんの前で正座して熱弁していた。
今までの二人の会話で分かった事は、ちーはβじゃなくてΩだったって事。
先週からかな。 寝ても寝ても寝足りなくて、起きてる間中ずっと体がだるくて、気分も悪いからご飯も食べられないし、何かの病気なのかもって不安だったけど違ったみたい。
βとして社会に出た方が何かと都合がいいって事くらいは知ってる。
でもちーがΩだとしたら…発情期?っていうものがあるらしいから、それは対処できるようにしておかないと本当に困るんだけど。
「久遠くんには感謝しているわ。 パパも会社でかなり恩恵を受けているようだし、感謝してもしきれない。 でもね、久遠くんに千里は守れないのよ」
久遠から視線を逸らしたお母さんが、お茶を一口飲んだ。
正座したままピクリとも動かない久遠の綺麗な亜麻色の髪が、開け放した窓から入ってくる心地良い風に揺れている。
横顔を覗いてみたら、久遠はまだ怖い顔をしていて、ちーの心がザワザワした。
久遠が守ってくれるなら、こんなに嬉しい事はないけど……久遠は生粋のαだ。
久遠とちーがどんなに望んでも、その血筋は絶やしてはいけない。
しかもちーはチンチラ属。
Ωである事もだけど、獣属だって事が一番の難点だ。
「お母様、僕が何も知らないとお思いですか?」
「…………もしかして……知っているの?」
「はい。 かなり前から」
「そうだったの…」
え? え? 久遠が何を知ってたって??
ちーが久遠の横顔に見惚れて話を聞き逃していて、二人の重苦しい溜め息の意味が分からなかった。
お母さんは伏し目がちにお茶を飲み続けてて、久遠はそんなお母さんをジッと見ている。
何だか入っちゃいけない空気だ。
………でも喉が渇いたな…今立ち上がったらこの空気壊しちゃうかなぁ…。
ちーは熱いお茶が苦手だから、冷蔵庫にある冷たい水を欲した。
いいや、ちょっとだけ……。
「…っ、どこ行くのっ?」
「お水飲みたい」
「あ、あぁ、そう。 行っておいで」
「うん?」
立ち上がろうとしたら、今まで少しも動かなかった久遠にギュッと腕を掴まれて、ビックリした。
お家の中なんだから、どこ行くのって言われてもたかが知れてるのに。
久遠は過保護だ。
毎朝お迎えに来てくれるし、授業の合間に必ず様子を見に来てくれるし、いつもウトウトしてて一人ぼっちのちーを気にかけてくれてる。
久遠は優しくてカッコ良くて、おまけに何でも出来る。
対してちーは何にも得意なものなんてないし、日中が苦手だから動きもトロいし、話すのも遅いし。
昔からこんなちーを構ってくれてるのは、久遠だけだ。
友達だと思ってたのに、キス、された時なんか全身がピリピリってした。
ここまで構ってくれなくていいよってドキドキして避けてたら、怒った顔の久遠から飴玉で誘われちゃって、ーーー。
あ…いけない。
思い出しちゃうな。
初めてのキスは、いきなりで驚いたけど温かかった。
二回目のキスは大好きなグレープの飴玉の味で、すごく甘くて美味しかった。
三回目はマスカット味がいいなって言ったら、久遠はまたあの怒った顔をするのかな。
「ちー君、………出てる、フェロモン…」
10
あなたにおすすめの小説
もふもふ聖獣様に拾われた不遇オメガは、空に浮かぶ島で運命の番として極上の溺愛を注がれる
水凪しおん
BL
「オメガがいるから、村に災いが降りかかったのだ」
理不尽な理由で村人たちから忌み嫌われ、深い雪の森へと生贄として捨てられた十九歳の青年、ルカ。
凍える寒さの中、絶望に目を閉じた彼の前に現れたのは、見上げるほど巨大で美しい「白銀の狼」だった。
伝説の聖獣である狼に拾われたルカが目を覚ましたのは、下界の汚れから切り離された雲海に浮かぶ美しい島。
狼は人間の姿——流れるような銀髪と黄金の瞳を持つ壮麗なアルファの偉丈夫、レオンへと変化し、ルカにこう告げる。
「君は、俺の運命の番だ」
これまで虐げられ、自分を穢れた存在だと思い込んでいたルカは、レオンの甘く深いアルファの香りと、恐ろしいほどの優しさに戸惑うばかり。
温かい食事、美しい庭園、そして決して自分を傷つけない大きな手。
極上の溺愛に包まれるうち、ルカの心に固く巻きついていた冷たい恐怖の糸は、少しずつほどけていく。
そして、ルカを捨てた村人たちが強欲にも島へ足を踏み入れたとき、ルカは自らの意志とオメガとしての本当の力に目覚める——。
これは、孤独だった不遇のオメガが、伝説の聖獣の番として永遠の幸せと自分の居場所を見つけるまでの、心温まる溺愛ファンタジー。
欠陥αは運命を追う
豆ちよこ
BL
「宗次さんから番の匂いがします」
従兄弟の番からそう言われたアルファの宝条宗次は、全く心当たりの無いその言葉に微かな期待を抱く。忘れ去られた記憶の中に、自分の求める運命の人がいるかもしれないーー。
けれどその匂いは日に日に薄れていく。早く探し出さないと二度と会えなくなってしまう。匂いが消える時…それは、番の命が尽きる時。
※自己解釈・自己設定有り
※R指定はほぼ無し
※アルファ(攻め)視点
生意気Ωは運命を信じない
羊野迷路
BL
小学生の時からかっていた同級生と、進学校(自称)である翠鳳高校で再会する。
再会した元同級生はαとなっており、美しさと男らしさを兼ね備えた極上の美形へと育っていた。
*のある話は背後注意かもしれません。
独自設定ありなので1話目のオメガバースの設定を読んでから進んでいただけると理解しやすいかと思います。
読むのが面倒という方は、
1、Ωは劣っているわけではない
2、αかΩかは2つの数値によりβから分かれる
3、Ωは高校生以上に発覚する事が多い
この3つを覚えておくと、ここでは大体大丈夫だと思われます。
独自設定部分は少しいじる事があるかもしれませんが、楽しんで頂けると幸いです。
追記
受けと攻めがくっつくのはまだ先になりますので、まったりお待ちください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる