僕の甘美な眠り姫

須藤慎弥

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僕の甘美な眠り姫⑭ ちーは獣人

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   ちーからだけじゃなくて、久遠からも、虜になっちゃうフェロモンって出るのかな。

   唇が触れ合う度に、舌が絡まる度に、体中が痺れてるみたいにピリピリして、緊張する。

   心臓がドキドキして、胸がザワザワするのに、…嫌じゃない。


「可愛い………ちー君、耳出てる」
「えっ?」


   う、嘘っ?   出てるの!?

   慌てて頭に手をやると、本当に耳が出てきてた。

   成長するごとに、上手にコントロール出来るようになったはずなのに。


「眠ってないのにね…。  どうして?  こんなに可愛い瞳で僕を見てくれるのに、どうしてイエスって言ってくれないの?」
「え…?  眠ってないのにって……え?」
「僕の前でお昼寝してる時は、耳と尻尾…出てくるもんね。  ……あー…キツイな。  ちー君、マスカット味食べて」
「むむっ…」


   久遠がポケットから何かを取り出して食べた。

   目を開けたらすぐにまた唇を塞がれて、甘い飴玉を押し込まれる。

   飲み込んでしまわないようにって、久遠がずっと舌を動かしてくるから、ちーはまた目を瞑ってドキドキと戦った。

   おかしいな……眠ってないのにねって、どういう事なんだろう。

   ちー、ちゃんとコントロールしてたつもりだよ。

   ───あ、……そうか。

   久遠、ちーの正体知ってたから、色々場所を変えて二人っきりになれるところでお昼寝させてくれてたんだ。

   ヒトとして生活してるのに、なんでお昼寝しよって言ってくるのかずっと不思議だったよ。

   みんなに、ちーが獣人だってバレないように、そうやって気遣ってくれてたんだ。

   ───なんて優しいんだろう。

   いつもいつも、ちーを構ってくれて、庇ってくれて、守ってくれて、ありがとう…久遠。

   ちーもヒトだったら…良かったのにね。


「大好きだよ、ちー君…」
「……マスカット味好き…」
「美味しい?  この飴玉が必要無くなるといいんだけどな。  次はやめてあげる自信ないからね、ちー君」
「………眠い」


   久遠の顔が優しくなった。

   さっきと同じで、久遠の口から貰った飴玉を舐めるとすごく眠たくなる。

   こわい顔じゃなくなった久遠の綺麗な顔をいつまでも見ていたいのに、とても強い眠気に襲われて視界がぼやけてきた。


「おいで、撫でてあげるから。  …おやすみ」


   目を瞑ると、久遠が腕枕をしてくれた。

   頭を撫でて、耳を撫でて、気持ち良くてうっとりしてたら尻尾も撫でてくれて……あ……尻尾も出ちゃってるのか。

   でもいいや、久遠にはもうバレちゃってるし。

   気味悪がらないで、撫でてくれてる事が嬉しい。

   ちーが結婚する人も、優しい人だといいな。

   うーん……久遠以上に優しい人なんているのかなぁ?


「ちー君は僕との子どもを産むんだよ。  運命に逆らっちゃダメだ。  ね、僕の眠り姫」


   夢と現実を行ったり来たりしてたら、久遠がおでこにキスしてくれた。

   久遠の子どもかぁ…きっと可愛いんだろうな。

   綺麗な亜麻色の髪と海より濃い青色の瞳を受け継いだ、とっても可愛い三つ子ちゃん…なんて、たまらないよね。




   ーーーちーはその日、夢を見た。

   手入れの行き届いた芝生の上を、小さな赤ちゃんチンチラが三匹、元気に走り回ってる。

   それを見てるちーと、その隣に居たのは………誰だったんだろう。






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