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僕の甘美な眠り姫⑯ ちーと結婚する人
しおりを挟む原っぱに横になった千歳…くんが、空を見上げてる。
あったかい気候にほだされて、ちーも眠たいから同じくころんと横になった。
「いつも久遠が見張ってるから、なかなか声掛けられなかったんだよね。 もうじき婚姻の儀の日程も決まるし、焦ってはいなかったけど」
「婚姻の儀?」
「ヒトで言う、両家の食事会みたいなもんかな。 俺、突然変異のαだから、将来どんな人と結婚するんだろうって思ってたけど、その相手が千里くんだなんて最高だ」
そんな…最高って、おだててくれなくてもいいのに。
ちーは何の取り柄もないただのチンチラだよ。
……でも、千歳くん優しそう。
久遠ほど優しいのかは分からないけど、まず見た目が優しそうで良かった。
いけないって分かってても、どうしても千歳くんと久遠を比べてしまうな…だからちーは、悪い子って言われるんだ。
「飴玉持ってますか?」
「飴玉?」
口寂しくて聞いてみると、首を傾げられた。
やっぱり持ってなさそうだ。
千歳くんは久遠じゃないから当然なんだけど、結婚するからには、ちーの事分かっておいてほしい。
「ちーは、美味しい飴玉持ってる人が好きです。 あと、優しい人」
「飴玉かぁ、今は持ってないなぁ」
「…………」
「久遠はいつも持ってる?」
「はいっ。 美味しい飴玉、毎日くれます! 飽きないように、味いっぱい変えてくれます!」
「そう…」
毎朝両手いっぱいに飴玉をくれる綺麗な笑顔が目に浮かんで、今ここに久遠が居ない事がとっても寂しくなってきた。
ちーが自分から逃げてきちゃったのに、悪い子だから仕方ない。
何だか久遠に会いたくてたまらなくなってきて、眠気もピークだったから、ちーはゴソゴソと移動した。
他のヒトに見付からないよう、茂みに隠れてお昼寝して、夢の中で久遠と遊ぶんだ。
茂みから顔だけ出して、千歳くんに断っておく事は忘れない。
「ちー、眠たいので寝ますね。 ちゃんとチャイムで起きるので、千歳くんは先に教室行って、ください…」
言いながらも瞼はどんどん閉じていく。
外でお昼寝するのが久しぶりだったからとても気持ち良くて、堕ちるのはあっという間だった。
「いや、そんな事はしない…って、もう寝てるし。 ……あーぁ、出ちゃってるよ、耳と尻尾。 コントロールが下手なんだ、眠り姫は」
ちーが寝てる茂みを覗いてくる千歳くんの声が、遠くに聞こえる。
葉っぱを踏むガサガサという音と共に近寄ってくる気配がしたけど、久遠に会いたいちーは起きられない。
コントロール下手だって言われちゃったなぁ、ってガッカリしていると、ほっぺたに何かが触れた。
手のひらだって分かったその直後、鎖骨辺りがチクッて痛くなった。
「もうすぐ俺のものだね、千里くん」
───この台詞も、痛みも、ちーの夢かと思った。
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