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第6話・リュークの背に
しおりを挟む皆守神社は、ばあちゃんの家から少し離れた森の中にポツンと建っている。
当時から無人の小さな神社だった。
俺が小さかった頃、ばあちゃんがたまに行って神社の周辺を掃除したり、お供え物を持って行ったりしてたけど、現在は誰が管理しているのか分からない。
ばあちゃんの自宅はすでに取り壊された後だし、俺も施設に入ってからはその地へ一度も足を踏み入れてなかった。
「皆守神社って…ここから結構距離があるんだけど」
「そうなのか。 こういう時に飛べないのが困るな。 …おいリューク、聞こえていたら姿を消して私の元まで来い」
公園を抜けようとした足が止まり、アシルは空に向かってそう声を張った。
こんな所を近所の人に見られてたら、それこそ怪しい人だと通報されかねない。
ただしここは、そんな心配も要らないほど人間関係は希薄だ。
ばあちゃんと死に別れてから都会にやって来た俺は、此処の人間の冷たさに何度も寒々しい思いを抱いている。
「誰だよリュークって」
「手下その一だ」
「…ちなみに手下はその何まで居るの」
「数えた事がない。 百いかないくらいではないか」
「手下多いな!」
話を合わせてやるつもりでいたのに、俺がマジで驚いてどうすんだよ。
雨上がりのジメっとした空気の中、手下のリュークを待っているらしいアシルからさり気なく肩を抱かれた。
アシルは俺より頭二つ分はデカいから、こうされると囚われた宇宙人の気持ちになる。
「来たか」
「え!? な、何にも見えないけど!」
「姿を消しているからな。 さぁ乗れ、龍の背は意外と乗り心地の良いものだぞ」
「え、え、え、え、っうわ、っ…えぇっ…!? 俺何かに跨ってるー!」
来たかって、何にも来てねぇよ!
姿の見えないそれに、アシルに手を引かれて跨ってはみたけど…。
透明だから、傍目から見るとアシルと俺が単に密着して変な格好してるヤバイ二人組だ。
乗り心地は確かに安定してる。
ふわふわしてるこれはたてがみなのかな。
よく分かんないけど、姿は透明で見えないのに感触だけ感じるって…薄気味悪いんですけど…!
「こいつがリュークだ。 水景、皆守神社まで案内を頼む」
「うわわわっ怖いぃぃーー!! 俺浮いてるよアシルー! 落ちたら確実に死ぬじゃん!」
「空を飛ぶのは二度目だろう、水景。 それほど騒ぐとは何とも可愛らしいな」
地面に付いていた足がふわっと浮き上がったと同時に、全身が浮遊感に見舞われた。
怖くて怖くて、ガッシリとしたアシルの体にしがみついて下を見ないように瞳をかたく閉じる。
透明なリュークはどんどん上昇し、絶対に下を見ちゃいけない地点まで到達すると、少しずつ跨っているモノの正体が現れ始めた。
それは銀色に黒が交じった、まさに俺が三度目撃した龍と思しき姿が明らかになる。
どうしよう!
さすがにこれは夢だなんて思えなくなってきたよ…!
「怖いのか、可愛いな。 水景、脳に皆守神社までの順路を思い描け。 私が読み取る」
「そうして…! 空の道案内なんてした事ねぇから…!」
「なんと小さな体躯よ。 心許ないほどだな」
「俺が人並じゃねぇって事は今はどうでもいいだろー!!」
スピードを上げたリュークの背に乗って空を飛んでいる俺は、とても目なんか開けられなかった。
脳裏に皆守神社をよぎらせて、真っ暗な夜空に俺の絶叫がこだまする。
抱き寄せられた腕から、アシルがクスクス笑っているような振動を感じた。
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