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よく見えてくる_ダレル視点
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ダレル視点
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朝の街は、やけに明るかった。
石畳に反射する光が眩しく、
眼鏡越しでも、輪郭がくっきりしている。
……今日も、世界は、よく見える。
それは、いつも通りのはずなのに。
最近は、ほんの少しだけ、俺にも優しい。
――まだ慣れない、落ち着かない。
隣を歩くハルは、まだ少し足取りが覚束ない。
昨夜の名残を、体の芯が、正直に覚えているのだろう。
俺は、歩調を合わせ、隙間なく密着して、隣を歩く。
無意識の動きだった。
「……おや」
通り沿いの店主が、こちらを見て、にやりと笑う。
「お二人さん、朝から仲がいいね」
声色は軽い。
だが、視線は――鋭い。
俺ではない。
ハルの首筋に、向けられている。
「……?」
ハルが、不思議そうに首を傾げる。
よく見えない。
いや、彼自身には、見えない位置だ。
……当然だ。
俺は、一瞬、思考を止める。
――話したほうがいいか。
――隠すべきだったか。
そんな考えが、
遅れて、胸の奥に浮かぶ。
だが。
「若いって、いいねえ」
別の通行人が、通りすがりに言う。
「……大事にしなよ」
その言葉に、
俺の中で、何かが静かに確定した。
守る。
それだけだ。
「……ダレルさん?」
ハルが、小さく呼ぶ。
「皆さん……何を見てるんでしょう」
困ったような声。
俺は、答えない。
答えられない、ではない。
答える必要が、ない。
代わりに、少しだけ位置を変え、
自然に、彼の背後に立つ。
隠すためではない。
触れるためでもない。
ただ――
俺の手の届く場所に、置くためだ。
「……?」
それでも、ハルは気づく。
首の後ろに、指を伸ばし、きょとんとする。
その仕草が、
あまりにも無防備で。
「……あ」
何かに思い至ったように、
小さく息を吸う。
そして。
振り返って、
俺を見上げて。
二人が出会ったとき、俺に眼鏡をかけてくれたときと同じ声、
あの優しげな声で、言う。
「……よく見えるところでも、いいんですよ」
一瞬。
世界が、止まったように感じた。
拒絶ではない。
恥じらいでもない。
ただの――
許可。
それは、
俺が一人で抱えていたものを、
彼が、世界に開いた瞬間だった。
「……」
言葉が、すぐに出てこない。
隠す理由は、もうない。
誇る理由も、必要ない。
ただ、俺はもう一人じゃない。
「……では」
低く、静かに。
「俺が、きちんと…よく見て、守ります」
それだけを、告げる。
誓いでも、命令でもない。
選択だ。
ハルは、少しだけ目を丸くしてから、
ふっと、笑った。
「……お願いします」
その一言で、十分だった。
ほかの視線は、もう気にならない。
俺は、ここにいる、
彼の、よく見える場所に。
ダレル視点
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朝の街は、やけに明るかった。
石畳に反射する光が眩しく、
眼鏡越しでも、輪郭がくっきりしている。
……今日も、世界は、よく見える。
それは、いつも通りのはずなのに。
最近は、ほんの少しだけ、俺にも優しい。
――まだ慣れない、落ち着かない。
隣を歩くハルは、まだ少し足取りが覚束ない。
昨夜の名残を、体の芯が、正直に覚えているのだろう。
俺は、歩調を合わせ、隙間なく密着して、隣を歩く。
無意識の動きだった。
「……おや」
通り沿いの店主が、こちらを見て、にやりと笑う。
「お二人さん、朝から仲がいいね」
声色は軽い。
だが、視線は――鋭い。
俺ではない。
ハルの首筋に、向けられている。
「……?」
ハルが、不思議そうに首を傾げる。
よく見えない。
いや、彼自身には、見えない位置だ。
……当然だ。
俺は、一瞬、思考を止める。
――話したほうがいいか。
――隠すべきだったか。
そんな考えが、
遅れて、胸の奥に浮かぶ。
だが。
「若いって、いいねえ」
別の通行人が、通りすがりに言う。
「……大事にしなよ」
その言葉に、
俺の中で、何かが静かに確定した。
守る。
それだけだ。
「……ダレルさん?」
ハルが、小さく呼ぶ。
「皆さん……何を見てるんでしょう」
困ったような声。
俺は、答えない。
答えられない、ではない。
答える必要が、ない。
代わりに、少しだけ位置を変え、
自然に、彼の背後に立つ。
隠すためではない。
触れるためでもない。
ただ――
俺の手の届く場所に、置くためだ。
「……?」
それでも、ハルは気づく。
首の後ろに、指を伸ばし、きょとんとする。
その仕草が、
あまりにも無防備で。
「……あ」
何かに思い至ったように、
小さく息を吸う。
そして。
振り返って、
俺を見上げて。
二人が出会ったとき、俺に眼鏡をかけてくれたときと同じ声、
あの優しげな声で、言う。
「……よく見えるところでも、いいんですよ」
一瞬。
世界が、止まったように感じた。
拒絶ではない。
恥じらいでもない。
ただの――
許可。
それは、
俺が一人で抱えていたものを、
彼が、世界に開いた瞬間だった。
「……」
言葉が、すぐに出てこない。
隠す理由は、もうない。
誇る理由も、必要ない。
ただ、俺はもう一人じゃない。
「……では」
低く、静かに。
「俺が、きちんと…よく見て、守ります」
それだけを、告げる。
誓いでも、命令でもない。
選択だ。
ハルは、少しだけ目を丸くしてから、
ふっと、笑った。
「……お願いします」
その一言で、十分だった。
ほかの視線は、もう気にならない。
俺は、ここにいる、
彼の、よく見える場所に。
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