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R_伝わる甘さ
しおりを挟む最初に感じたのは、
ダレルの呼吸だった。
次に、硬くて太い腕の筋肉。
僕の、小さな手は、彼の分厚い胸板に沈んでいる。
近い。
あまりにも。
意識が浮上する途中で、
鼻先に、柔らかいものが触れる。
「……っ」
思わず目を開けると、
そこには――ダレルさんの顔があった。
瞬きひとつ分の距離。
眼鏡は外していて、
その分、表情がはっきり見える。
……近すぎる。
「……おはようございます」
低く、落ち着いた声。
それだけで、
胸の奥が、きゅっと縮んだ。
「……お、おはよう、ございます……」
声が、ひどく情けない。
体を起こそうとして――
気づく。
腰に、力が入らない。
「……?」
ぬるつく腰の違和感、
生暖かい腹の奥、湿っぽさが残るシーツ。
これは――
覚えが、ありすぎる。
「……ハル」
ダレルさんが、すぐに察して、
そっと距離を取る。
「……立てますか」
「……たぶん……」
やってみる。
……だめだ。
「……っ」
情けない音が、喉から漏れる。
よほど奥まで注ぎ込まれたのだろう、身動きすると、太ももまで、溢れる。
「……無理そうですね……」
そう言うと、
ダレルさんは、ほんの少しだけ、困ったように笑った。
「……昨夜も、可愛かった」
一瞬、言葉を切る。
「……随分、鳴き喚かせてしまいましたから」
――やめてほしい。
そういう言い方。
「……言わないでください……」
顔が、熱い。
耳まで、熱い。
「ついに……前触らなくても、出せたね」
ぽつり。
優しくて、
逃げ場のない声。
「……!」
胸が、跳ねる。
「……そ、そういうの……」
言い返そうとして、
言葉が出てこない。
ダレルさんは、静かに手を差し出した。
「……掴まってください」
「……?」
「俺は、可愛らしい恋人を、
放っておくような男じゃない」
その言い方が、
あまりにも自然で。
……ずるい。
恐る恐る、手を取る。
大きな手。
温かい。
ぐっと、引き寄せられて――
気づけば、抱き留められていた。
「……!」
「……大丈夫です」
低い声が、すぐそば。
「抱えて動いたって、落としません、その身体は、よく知ってるでしょう」
それは、
ただの、断言。
「……しばらく…このままで」
ダレルさんは、抱きあげたまま、僕を離す気はないらしい。
「……」
「……昨夜の続きは、
体が元気になってからにしましょう」
――続き。
首筋が舐め上げられる、
耳たぶが甘噛みされる、
頭が、真っ白になる。
「……っ、だ、ダレルさん……!」
「はい」
「…良すぎる……」
そう言うと。
「……それは」
少しだけ、声が低くなる。
「あなたが、
受け入れてくれるからです」
すべてが、静かに満たされる。
首輪は、もうない。
命令も、ない。
それでも。
こうして、
支えられている。
「……今日は、
ゆっくり、過ごしましょう」
「……はい……」
逆らう理由なんて、
どこにもなかった。
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