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第十一話 桜の邂逅(後) side.和仁
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しおりを挟む一瞬峰の言葉が吞み込めなかった。
染井の娘が、車に撥ねられた? まさか……。
「美桜じゃないよな!?」
峰の両肩をガシッと掴んで揺らす。その拍子に峰が持っていた傘が落ちる。
「美桜は!? 美桜は無事なのか!?」
「……」
目を逸らし、肩を落とす峰。
その表情で察してしまった。
「……っ!!」
嘘、だろ……?
そんなわけが……頼む、何かの間違いだと言ってくれ。
美桜は、昨日まで元気だったじゃないか。
いや元気とは言い難かったけど、電話越しの声は普通だった。
きっとまた俺に笑顔を見せてくれる。
そう信じて待っていたのに。
俺は覚束ない足で峰とともに病院へ向かう。ある病室の中で美桜の家族の泣き叫ぶ声が聞こえた。
美桜の両親の声だった。
「美桜!! 目を覚ましてぇっ!!」
「美桜ーーっ!!」
びしょ濡れのまま病室の前で立ち尽くす。
嘘だ、そんな。
美桜は――……。
「あんたのせいね……」
声を震わせながら、ゆらりと美咲が病室から出てきた。
「あんたのせいで、美桜は死んだのね……!!」
大粒の涙を溜めながら、激しい憎しみを込めた瞳で俺を睨みつける。
だがそれ以上に銃弾を受けたような衝撃が走った。
「美桜が、死んだ……?」
「そうよ!! あんたに会うために!! 家を抜け出して……トラックに撥ねられたのよっ!!」
そんな……美桜……!!
「あんたが美桜を殺したのよ!! あんたさえいなければ、美桜は……っ」
俺に詰め寄ろうとする美咲を鬼頭が止める。
「美咲お嬢さん!!」
「人殺し!! 私の妹を返してよっ!!」
美咲の悲痛な叫びが病院中に響く。
鬼頭は美咲を止めながら、憎悪に満ちた瞳で俺を睨み付けていた。
「……消えろ」
鬼頭はドスの効いた低い声で言った。
「今すぐ消えろ……でないと貴様をブッ殺しちまう」
怒りと憎しみに震える鬼頭。それでも美咲の肩をしっかりと抱きしめている。
「和仁、行こう」
「………」
峰に促され、逃げるようにその場を立ち去る。
美桜は死んだ? 俺のせいで?
俺があんなこと言わなければ……美桜は死なずに済んだのか……?
――和くん!
――和くん、怪我良くなった? 無茶したらダメだよ。
――和くん、大好き!
土砂降りの中、人目も憚らずに叫んだ。
どうしようもない絶望感が全身を蝕んだ。
「うわああああああああああああ」
どうして、なんでなんだ。
ただ美桜のことが好きで一緒にいたいだけだった。
それだけだったのに。
美桜がいなければ、何も意味がない。
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