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第二章
楽しそうね
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翌朝、昨日の風呂の帰りに買っておいたパンに、芳醇な香りのするバターをのせて食べるという優雅な朝食をキメたあと、さっそく当初の目的であったポーション作りを始めることにした。
必要な物は錬金術を行うための設備。それらを購入するべく街へ繰り出したダナイとリリア。ダナイは「別に無理して着いてこなくてもいいぞ」とリリアに言ったのだが、リリアは「着いて行く」と言って、錬金術の道具や素材を売っている店まで着いてきた。
その店では植物園のような独特な匂いがした。錬金術の材料となる物は草花が多いようであり、それが所狭しと積んである。他にも瓶詰めにされたよく分からない物や、厳重なケースに入れられた何かが雑多に置いてあった。
その中にはお目当ての錬金術の道具もあった。それらの多くは昔見た理科の実験で使うようなものばかりだった。フラスコやビーカーのような物や、乳鉢、片手鍋や薬さじ、薬包紙、各種小瓶などを買い込み、ついでに初心者向けの教本も買った。
店主の話によると、自分で作った薬を勝手に売るのは違法であり、もし売りたいのなら錬金術ギルドに届け出を出す必要があるとのことだった。しかし、自分達で使う分は自己責任で使ってくれ、とのことらしい。ダナイはそのありがたい情報に礼を言うと、ホクホク顔で家へと戻った。
購入した道具類を鼻歌交じりに並べるダナイ。リリアは椅子に座って興味深そうに見ていた。
「随分と楽しそうね」
「おうよ。リリアも錬金術をやってみるか?」
「遠慮しておくわ。私、不器用なのよ」
リリアが不器用!? その話にとても驚いた。心のどこかでリリアは万能、何でもできる完璧超人だと思っていたのだ。思わぬリリアの弱点を聞いて、何だか親近感が湧いていた。
「そ、そうか。なら無理しなくてもいいぞ。俺がリリアの分までポーションを作ってやるから、大船に乗ったつもりでいてくれ」
リリアに向かってサムズアップをキメると、ますます張り切った。ポーション作りの原料はこれまでの小銭稼ぎの間に集めていたのでそれなりにあった。塩も料理用に買ったものがある。設備の準備が終わるとさっそくポーションを作ってみることにした。
回復のポーションは薬草の根まで使うと効果が上がる。それを知っているので根ごと鍋に入れた。
回復ポーションの作り方は至って簡単。水に薬草を入れて煮込み、そこにひとつまみの塩を入れるだけ。だが単純なゆえに奥が深かった。素材をどれだけ入れるか、何分煮込むか、どの程度、手心を加えるか。それらによって大きく性能が異なり、出来上がったオリジナルレシピが公開されることは稀だった。オリジナルレシピは錬金術師にとっての切り札と言ってよかった。
作り方によってポーションの性能は大きく異なる。それでは冒険者達がどうやって効果の高いポーションなのかを見極めているのかと言うと、どの店にも必ず品質鑑定の魔道具が置いてあるのだ。もちろん素材を買うときにも品質チェックを行ってから購入している。
世間では魔道具に頼らずとも、ある程度の品質が分かる方法は知られている。それは品質が高いポーションほど澄んだ色をしているのだ。
ダナイは『ワールドマニュアル(門外不出)』から最高品質のレシピを探すという、他から言わせるとインチキな方法で回復ポーションを作っていた。店で買い込んだ初心者向けの教本はただのカモフラージュである。さすがに何も見ずにポーションを作ったら怪しまれるだろうと判断したのだった。
「ヒッヒッヒ、ヒーッヒッヒッヒ!」
「ダナイ、その声いるの?」
さすがのリリアもあきれて問いただした。だが『ワールドマニュアル(門外不出)』にはそう書いてあるのだ。ポーションは別名、魔法薬とも呼ばれていたらしい。その理由はその中に魔法も込めて作っていたから。魔法は思いを形にしたもの。ダナイにとって魔法を込めながら作るというのは、このイメージしか浮かばなかったのだ。
「こうすると効果が高くなるってばあちゃんが言っててな」
「……あなたのお婆様は何者なのよ」
リリアはポーションが完成するまで白い目でダナイを見ていたが、完成品を見ると大きく目を見開いた。
「何よこれ、信じられない!」
そこには光り輝く透き通ったブルーの回復ポーションが出来上がっていた。見ただけで最高品質クラスの物だと分かる。ダナイはどうだとばかりに胸を張った。
なおもリリアはブツブツ言っていたが、気にせず小瓶にポーションを移し替えた。全部で四本分作ることができた。そのうちの二本をリリアに差し出した。
「ほら、リリアの分だ」
「受け取れないわよ、こんな高価な物。売りに出したらいくらになると思っているのよ」
リリアはとんでもないとばかりに体の前で両手をブンブンと振った。
「店主が言っていただろう? 売るには錬金術ギルドに届け出を出す必要があるって。今のところそうするつもりはねぇから、売りには出さねぇよ。ほら、何かあったときに遠慮なく使え」
ダナイに押し切られた格好でリリアはそれを受け取ると、大事そうにポシェットの中にしまった。それを見て満足したダナイは腰からぶら下げている袋に無造作にそれを入れた。
必要な物は錬金術を行うための設備。それらを購入するべく街へ繰り出したダナイとリリア。ダナイは「別に無理して着いてこなくてもいいぞ」とリリアに言ったのだが、リリアは「着いて行く」と言って、錬金術の道具や素材を売っている店まで着いてきた。
その店では植物園のような独特な匂いがした。錬金術の材料となる物は草花が多いようであり、それが所狭しと積んである。他にも瓶詰めにされたよく分からない物や、厳重なケースに入れられた何かが雑多に置いてあった。
その中にはお目当ての錬金術の道具もあった。それらの多くは昔見た理科の実験で使うようなものばかりだった。フラスコやビーカーのような物や、乳鉢、片手鍋や薬さじ、薬包紙、各種小瓶などを買い込み、ついでに初心者向けの教本も買った。
店主の話によると、自分で作った薬を勝手に売るのは違法であり、もし売りたいのなら錬金術ギルドに届け出を出す必要があるとのことだった。しかし、自分達で使う分は自己責任で使ってくれ、とのことらしい。ダナイはそのありがたい情報に礼を言うと、ホクホク顔で家へと戻った。
購入した道具類を鼻歌交じりに並べるダナイ。リリアは椅子に座って興味深そうに見ていた。
「随分と楽しそうね」
「おうよ。リリアも錬金術をやってみるか?」
「遠慮しておくわ。私、不器用なのよ」
リリアが不器用!? その話にとても驚いた。心のどこかでリリアは万能、何でもできる完璧超人だと思っていたのだ。思わぬリリアの弱点を聞いて、何だか親近感が湧いていた。
「そ、そうか。なら無理しなくてもいいぞ。俺がリリアの分までポーションを作ってやるから、大船に乗ったつもりでいてくれ」
リリアに向かってサムズアップをキメると、ますます張り切った。ポーション作りの原料はこれまでの小銭稼ぎの間に集めていたのでそれなりにあった。塩も料理用に買ったものがある。設備の準備が終わるとさっそくポーションを作ってみることにした。
回復のポーションは薬草の根まで使うと効果が上がる。それを知っているので根ごと鍋に入れた。
回復ポーションの作り方は至って簡単。水に薬草を入れて煮込み、そこにひとつまみの塩を入れるだけ。だが単純なゆえに奥が深かった。素材をどれだけ入れるか、何分煮込むか、どの程度、手心を加えるか。それらによって大きく性能が異なり、出来上がったオリジナルレシピが公開されることは稀だった。オリジナルレシピは錬金術師にとっての切り札と言ってよかった。
作り方によってポーションの性能は大きく異なる。それでは冒険者達がどうやって効果の高いポーションなのかを見極めているのかと言うと、どの店にも必ず品質鑑定の魔道具が置いてあるのだ。もちろん素材を買うときにも品質チェックを行ってから購入している。
世間では魔道具に頼らずとも、ある程度の品質が分かる方法は知られている。それは品質が高いポーションほど澄んだ色をしているのだ。
ダナイは『ワールドマニュアル(門外不出)』から最高品質のレシピを探すという、他から言わせるとインチキな方法で回復ポーションを作っていた。店で買い込んだ初心者向けの教本はただのカモフラージュである。さすがに何も見ずにポーションを作ったら怪しまれるだろうと判断したのだった。
「ヒッヒッヒ、ヒーッヒッヒッヒ!」
「ダナイ、その声いるの?」
さすがのリリアもあきれて問いただした。だが『ワールドマニュアル(門外不出)』にはそう書いてあるのだ。ポーションは別名、魔法薬とも呼ばれていたらしい。その理由はその中に魔法も込めて作っていたから。魔法は思いを形にしたもの。ダナイにとって魔法を込めながら作るというのは、このイメージしか浮かばなかったのだ。
「こうすると効果が高くなるってばあちゃんが言っててな」
「……あなたのお婆様は何者なのよ」
リリアはポーションが完成するまで白い目でダナイを見ていたが、完成品を見ると大きく目を見開いた。
「何よこれ、信じられない!」
そこには光り輝く透き通ったブルーの回復ポーションが出来上がっていた。見ただけで最高品質クラスの物だと分かる。ダナイはどうだとばかりに胸を張った。
なおもリリアはブツブツ言っていたが、気にせず小瓶にポーションを移し替えた。全部で四本分作ることができた。そのうちの二本をリリアに差し出した。
「ほら、リリアの分だ」
「受け取れないわよ、こんな高価な物。売りに出したらいくらになると思っているのよ」
リリアはとんでもないとばかりに体の前で両手をブンブンと振った。
「店主が言っていただろう? 売るには錬金術ギルドに届け出を出す必要があるって。今のところそうするつもりはねぇから、売りには出さねぇよ。ほら、何かあったときに遠慮なく使え」
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