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第四章
大森林
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何時間歩いただろうか。辺りに変化がなく、薄暗いお陰で時間の感覚がなくなってきた。それはアベルとマリアも同じようであり、陰気な表情になっていた。
「この辺りで休憩を入れよう。慣れないとつらいだろうからね」
ベンジャミンが気を利かせてそう言ってくれた。正直、助かる。
「ありがとうございます。似たような景色が続くので、参ってしまって」
アベルが申し訳なさそうに言った。隣にいたマリアはホッとした表情になっている。
「そうだったのか。遠慮なく言ってもらって構わないよ。野営地に着くまでの時間には、まだまだ余裕があるからね」
「分かりました」
こうして一旦休憩に入ることにした。少しだけひらけたスペースがあったので、そこに腰を下ろすことにした。
シートを敷くと、さっそくマリアが転がり込んだ。それをなだめながらお茶の準備をする。いつもと同じように、パパパッと俺たちは準備を終わらせた。
「さすがに手際がいいね」
感心そうにベンジャミンが言った。ベンジャミンとエリザ、捜索部隊のメンバーも腰を下ろした。
「いつものことですからね」
そう言いながら、お菓子をつまむ。ほどよい甘さが疲れを癒やしてくれた。
「それにしても、さすがは大森林。どこを見ても同じような木ばっかりだな」
「ダナイにはそう見えるかもね。でも良く見れば、色んな木が生えているわよ」
うーん、正直なところ、俺には分からんな。みんな同じに見える。もしかすると、本来のドワーフは見分けがつくのだろうか? もしそうなら、俺はドワーフの中でも異端児に見えるかも知れない。
「リリア、もしかして、天然のドワーフは見分けがつくのか?」
隣にいるリリアにソッと耳打ちした。その瞬間。「まあ!」という驚いたような声が聞こえた。声からすると、リリアママのエリザのようである。
もしかして、耳打ちはまずかったかな?
ギョッとしてエリザの方を向くと、エリザは目を大きくした状態で、口元に手を当てていた。
分かりやすいほどの驚きの表情である。思わず目が合ってしまったので、ますます気まずい。
それを知ってか、わざとなのか、リリアが俺に耳打ちをしてきた。
「ドワーフも自然との調和性が高い種族だから、見分けがつくかも知れないわ。でも、ドワーフは基本的に穴蔵の中に住んでいるから、どちらかと言うと、大地との調和性が高いわね」
なるほど。何だが納得するところがあるな。適当な土魔法で建築物を建てられるのは、どうやらドワーフの大地との調和性が高いという側面もあったようである。
ついでに言うと、金属加工が得意なのも関係しているのかも知れないな。
礼を言おうとリリアの方を見ると、実に良い笑顔をしていた。耳打ちがそんなにうれしかったのだろうか? それとも、何かもっと別の意味があるのか。
これは聞いた方が良さそうな気がする。俺は再びリリアに耳打ちした。
「リリア、リリアに耳打ちしたのが随分と注目を集めているみたい何だが、これってまずいことなのか?」
エリザの声に気を取られたが、良く見ると、ベンジャミンや他のエルフも目を丸くしている。
これは絶対に何かやらかしたあとだろう。
「あら、ダナイは知らなかったの? エルフにとって耳は敏感な器官だから、よほど大事な人でもない限り、触らせたりしないのよ。普通はね」
うん。これはまずい。そんな話、聞いていないよリリアちゃん。
リリアの耳を触ったり、ゴニョゴニョしたりして刺激したことは何回かあったけど、嫌そうな感じじゃなかった気にしてなかったよ。むしろ、気持ちが良いのかと思ってた……。もしかして、これ、アカンやつ!?
「そうだったのか。知らなかったとはいえ、すまなかったな……」
「え? ちょっとダナイ、気にしなくて良いのよ!? ちゃんと気持ちよかったから!」
「ファ!?」
思わず声が上がった方を見た。そこには顔だけでなく、全身を真っ赤に染めたエリザの姿があった。
ヤバい、何だかすっごく気まずい。
「二人とも、昼間から何エッチなことしてるのよ?」
「し、してないからな、そんなこと!」
何も知らないマリアはここぞとばかりに突いてきた。こんなことにだけは良く頭が回るようである。
とりあえずその柔らかいほっぺたをギュッとつまんで、ごめんなさいをさせておいた。
マリアには教育的指導が必要だな。これ以上はアベルに任せられない。
休憩のあと、また時間感覚が分からないくらい森を進んだところで、野営することになった。
そこにはまだ新しい、たき火とかまどの跡があった。周辺の木も、一部が切り倒されている。
「今日はここまでだ。すぐに野営の準備をしよう」
木々が生い茂り時間の感覚が分かりづらいが、夕刻前の時間のようである。完全に日が暮れるまではもう少しありそうだ。これなら余裕を持って野営の準備ができるだろう。
俺たちのパーティーは以前に作っておいた、「投げるだけで出来上がるテント」をポイポイと投げた。
簡単に出来上がったテントをしっかりと紐で地面と固定した。
「随分と手際がいいね。そんな便利なものがあるだなんて知らなかったよ」
ベンジャミンがやや顔を引きつらせてこちらを見ている。見たことも聞いたこともないだろうから困惑してるようだ。
「これは私の旦那様が作ったものなのよ。投げるだけだし、片付けるのも簡単なのよ」
「そ、そうなのか。ダナイは本当に色々な物を作り出しているんだね……」
どうにも微妙な目をされてしまったが、これはもう仕方がないと諦めよう。夕飯の準備もあるし、早いところ終わらせてしまおう。
先にテントを張り終えた俺たちは食事の準備に取りかかった。すると、すぐにマリアが寄ってきた。
「ねね、ディメンション・ルームを使えば、テントは要らなくなるわよね?」
「そうだな。それどころか、夜警戒する必要もなくなるかも知れないな」
それはそれで個人の野営スキルや、警戒スキルが下がりそうで問題だな。便利過ぎるのも考えものかも知れない。注意が必要だな。
「早いところ私の秘密基地を完成させないとね~」
そう言うと、鼻歌を歌いながら満足そうにアベルを手伝いに行った。アベルの仕事は薪を集めることだったのだが、ある程度はベンジャミンたちが用意してくれていたようである。
エリザのマジックバッグから紐でくくりつけられた薪が出てきた。
「あなたたちの分も用意してあるから、使ってちょうだい」
「ありがとうございます」
確かに薪セットをマジックバッグに入れておくのもいいな。そうすれば、薪を探しに行く手間が省けるからな。それどころか、あらかじめ食事を作って入れておくのも良いかも知れないな。今度試してみよう。
それにしても、このかまど、使いにくいな。作り直したらいやらしいだろうか?
「ダナイ、このかまどが使いにくいから作り直してちょうだい」
身も蓋もないことをリリアが言った。普段なら空気を読む子なのに、一体どうしちゃったんだ。あれか? エリザママがいるからか?
「お、おう。任せておけ。ダナイ忍法、土遁、かまど作成の術!」
ドドン! と目の前に立派なかまどが一瞬で出来上がる。いつもよりか大きめに作ったので、この人数でも大丈夫だ。
「さすが私の旦那様ね」
ウンウンと満足そうにうなずくリリア。本当に、単に俺を自慢したいだけなのかも知れない。
「リリアちゃんの旦那様は魔法もお上手なのね~」
「ハハハ、そんなことないですよ。リリアの魔法の教え方が上手だからですよ」
乾いた笑いをしながら、何ともないよと言った。しかし、またしてもエルフのみなさんの顔色が驚いたものになった。
今度は何だよ。
「リリアちゃん、あなたが魔法を教えたの?」
「そうよ。私の旦那様なんだから、別に良いでしょう?」
う、その言い方……もしかして、エルフ族が他の種族に魔法を教えるのは御法度だったりするのだろうか? あとで確認しておいた方が良いな。無知は罪だからな。
ギョッとした顔をしていたものの、テントを張り終わった他のエルフたちも夕食の準備を手伝ってくれた。
「これほどのかまどを一瞬で作りあげるとは。ドワーフ族が土属性を好んで使うことは知っていたが、これほどまでとは」
出来上がったかまどを使いながら、感心しているのは捜索部隊のメンバーだ。前回の捜索のときよりもグレードの高い食事が食べられると喜んでいた。
出来上がったシチューを食べながら、これからのことを軽く話すと、明日からに備えて休むことになった。
「この辺りで休憩を入れよう。慣れないとつらいだろうからね」
ベンジャミンが気を利かせてそう言ってくれた。正直、助かる。
「ありがとうございます。似たような景色が続くので、参ってしまって」
アベルが申し訳なさそうに言った。隣にいたマリアはホッとした表情になっている。
「そうだったのか。遠慮なく言ってもらって構わないよ。野営地に着くまでの時間には、まだまだ余裕があるからね」
「分かりました」
こうして一旦休憩に入ることにした。少しだけひらけたスペースがあったので、そこに腰を下ろすことにした。
シートを敷くと、さっそくマリアが転がり込んだ。それをなだめながらお茶の準備をする。いつもと同じように、パパパッと俺たちは準備を終わらせた。
「さすがに手際がいいね」
感心そうにベンジャミンが言った。ベンジャミンとエリザ、捜索部隊のメンバーも腰を下ろした。
「いつものことですからね」
そう言いながら、お菓子をつまむ。ほどよい甘さが疲れを癒やしてくれた。
「それにしても、さすがは大森林。どこを見ても同じような木ばっかりだな」
「ダナイにはそう見えるかもね。でも良く見れば、色んな木が生えているわよ」
うーん、正直なところ、俺には分からんな。みんな同じに見える。もしかすると、本来のドワーフは見分けがつくのだろうか? もしそうなら、俺はドワーフの中でも異端児に見えるかも知れない。
「リリア、もしかして、天然のドワーフは見分けがつくのか?」
隣にいるリリアにソッと耳打ちした。その瞬間。「まあ!」という驚いたような声が聞こえた。声からすると、リリアママのエリザのようである。
もしかして、耳打ちはまずかったかな?
ギョッとしてエリザの方を向くと、エリザは目を大きくした状態で、口元に手を当てていた。
分かりやすいほどの驚きの表情である。思わず目が合ってしまったので、ますます気まずい。
それを知ってか、わざとなのか、リリアが俺に耳打ちをしてきた。
「ドワーフも自然との調和性が高い種族だから、見分けがつくかも知れないわ。でも、ドワーフは基本的に穴蔵の中に住んでいるから、どちらかと言うと、大地との調和性が高いわね」
なるほど。何だが納得するところがあるな。適当な土魔法で建築物を建てられるのは、どうやらドワーフの大地との調和性が高いという側面もあったようである。
ついでに言うと、金属加工が得意なのも関係しているのかも知れないな。
礼を言おうとリリアの方を見ると、実に良い笑顔をしていた。耳打ちがそんなにうれしかったのだろうか? それとも、何かもっと別の意味があるのか。
これは聞いた方が良さそうな気がする。俺は再びリリアに耳打ちした。
「リリア、リリアに耳打ちしたのが随分と注目を集めているみたい何だが、これってまずいことなのか?」
エリザの声に気を取られたが、良く見ると、ベンジャミンや他のエルフも目を丸くしている。
これは絶対に何かやらかしたあとだろう。
「あら、ダナイは知らなかったの? エルフにとって耳は敏感な器官だから、よほど大事な人でもない限り、触らせたりしないのよ。普通はね」
うん。これはまずい。そんな話、聞いていないよリリアちゃん。
リリアの耳を触ったり、ゴニョゴニョしたりして刺激したことは何回かあったけど、嫌そうな感じじゃなかった気にしてなかったよ。むしろ、気持ちが良いのかと思ってた……。もしかして、これ、アカンやつ!?
「そうだったのか。知らなかったとはいえ、すまなかったな……」
「え? ちょっとダナイ、気にしなくて良いのよ!? ちゃんと気持ちよかったから!」
「ファ!?」
思わず声が上がった方を見た。そこには顔だけでなく、全身を真っ赤に染めたエリザの姿があった。
ヤバい、何だかすっごく気まずい。
「二人とも、昼間から何エッチなことしてるのよ?」
「し、してないからな、そんなこと!」
何も知らないマリアはここぞとばかりに突いてきた。こんなことにだけは良く頭が回るようである。
とりあえずその柔らかいほっぺたをギュッとつまんで、ごめんなさいをさせておいた。
マリアには教育的指導が必要だな。これ以上はアベルに任せられない。
休憩のあと、また時間感覚が分からないくらい森を進んだところで、野営することになった。
そこにはまだ新しい、たき火とかまどの跡があった。周辺の木も、一部が切り倒されている。
「今日はここまでだ。すぐに野営の準備をしよう」
木々が生い茂り時間の感覚が分かりづらいが、夕刻前の時間のようである。完全に日が暮れるまではもう少しありそうだ。これなら余裕を持って野営の準備ができるだろう。
俺たちのパーティーは以前に作っておいた、「投げるだけで出来上がるテント」をポイポイと投げた。
簡単に出来上がったテントをしっかりと紐で地面と固定した。
「随分と手際がいいね。そんな便利なものがあるだなんて知らなかったよ」
ベンジャミンがやや顔を引きつらせてこちらを見ている。見たことも聞いたこともないだろうから困惑してるようだ。
「これは私の旦那様が作ったものなのよ。投げるだけだし、片付けるのも簡単なのよ」
「そ、そうなのか。ダナイは本当に色々な物を作り出しているんだね……」
どうにも微妙な目をされてしまったが、これはもう仕方がないと諦めよう。夕飯の準備もあるし、早いところ終わらせてしまおう。
先にテントを張り終えた俺たちは食事の準備に取りかかった。すると、すぐにマリアが寄ってきた。
「ねね、ディメンション・ルームを使えば、テントは要らなくなるわよね?」
「そうだな。それどころか、夜警戒する必要もなくなるかも知れないな」
それはそれで個人の野営スキルや、警戒スキルが下がりそうで問題だな。便利過ぎるのも考えものかも知れない。注意が必要だな。
「早いところ私の秘密基地を完成させないとね~」
そう言うと、鼻歌を歌いながら満足そうにアベルを手伝いに行った。アベルの仕事は薪を集めることだったのだが、ある程度はベンジャミンたちが用意してくれていたようである。
エリザのマジックバッグから紐でくくりつけられた薪が出てきた。
「あなたたちの分も用意してあるから、使ってちょうだい」
「ありがとうございます」
確かに薪セットをマジックバッグに入れておくのもいいな。そうすれば、薪を探しに行く手間が省けるからな。それどころか、あらかじめ食事を作って入れておくのも良いかも知れないな。今度試してみよう。
それにしても、このかまど、使いにくいな。作り直したらいやらしいだろうか?
「ダナイ、このかまどが使いにくいから作り直してちょうだい」
身も蓋もないことをリリアが言った。普段なら空気を読む子なのに、一体どうしちゃったんだ。あれか? エリザママがいるからか?
「お、おう。任せておけ。ダナイ忍法、土遁、かまど作成の術!」
ドドン! と目の前に立派なかまどが一瞬で出来上がる。いつもよりか大きめに作ったので、この人数でも大丈夫だ。
「さすが私の旦那様ね」
ウンウンと満足そうにうなずくリリア。本当に、単に俺を自慢したいだけなのかも知れない。
「リリアちゃんの旦那様は魔法もお上手なのね~」
「ハハハ、そんなことないですよ。リリアの魔法の教え方が上手だからですよ」
乾いた笑いをしながら、何ともないよと言った。しかし、またしてもエルフのみなさんの顔色が驚いたものになった。
今度は何だよ。
「リリアちゃん、あなたが魔法を教えたの?」
「そうよ。私の旦那様なんだから、別に良いでしょう?」
う、その言い方……もしかして、エルフ族が他の種族に魔法を教えるのは御法度だったりするのだろうか? あとで確認しておいた方が良いな。無知は罪だからな。
ギョッとした顔をしていたものの、テントを張り終わった他のエルフたちも夕食の準備を手伝ってくれた。
「これほどのかまどを一瞬で作りあげるとは。ドワーフ族が土属性を好んで使うことは知っていたが、これほどまでとは」
出来上がったかまどを使いながら、感心しているのは捜索部隊のメンバーだ。前回の捜索のときよりもグレードの高い食事が食べられると喜んでいた。
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