悪役令息に転生したけど、静かな老後を送りたい!

えながゆうき

文字の大きさ
61 / 99

これは……温泉!

しおりを挟む
 みんなのお陰であっという間に畑の区画整理が終わった。ついでに邪魔になりそうな森の木も切り倒し、ずいぶんと開けた土地が眼下に広がった。これで当分は大丈夫だろう。
「ありがとうございます。なんとお礼を言ったらいいものか。まさか一日で終わるとは思っても見ませんでしたよ」
 村長息子が村人を代表して言った。冷静に考えると、一日でやる必要はなかったような気がする。
「いえ、お役に立てて何よりですよ。それで次は井戸、の前に、先に熱いお湯の確認をしたいのですが、いいですか?」
「もちろんですよ。畑が使えるようになるまではまだ時間がかかりますから、井戸についてはしばらくは大丈夫でしょう」
 ささ、こっちです、と村長息子は案内してくれた。
「先に例の温泉を作るの? そんなに温泉に入ってみたかったの?」
「入ってみたかったのもあるけど、自分達の姿を見て見なよ。汗と土と埃まみれだよ。温泉に入ってスッキリしたいと思わない?」
「思う、思う! 早く温泉に入ろうよ~」
 いや、フェオさんや、その前に温泉施設を作らないといけないんだよ。まあ、材料の木は先ほどたくさんの用意したし、丸太小屋くらいなら木を重ねてすぐに作れるのではなかろうか。ログハウスとか作ったことないけどね。
 脱ぎ出しそうな勢いのフェオを止め、村長息子について行くと、村の外れに湯気がモウモウと立ち上っているのが見えた。
「これは・・・温泉ですね」
 溜め池には温泉が満たされていた。本来ならば井戸から湧き出た水を一旦溜め池に溜めておき、必要に応じて使うつもりだったのだろう。しかし、無惨にも温泉が湧き、そのまま放置されているようだ。
「う~ん、効用は腰痛、肩こり、美肌効果があるみたいね」
 ほんとに温泉の効用が分かるんだ。ちょっと馬鹿にしてわ。ごめんねフェオちゃん。しかし、かなかないい効用である。
「整備すれば十分に使えそうだね。早速始めよう」
 まずは湯船を作り、次に溜め池から水路で温泉を送り込む。湯船は木で作ろうかと思ったが、水漏れが怖かったので土を固めて作ることにした。
『ガイアコントロール』の魔法で穴を掘り、壁になる部分をしっかりと固めておいた。これでよし。
 同じように水路も作り、湯船に流した。どうやら思ったよりもいい感じに出来上がった。
「もうできたの? 早くない?」
「作りは適当だけどね。温泉に入るだけなら申し分ないでしょ。あとは囲いだな。露天風呂にしたいし、天井部分はなしにしておこうかな?」
 先ほど切り出した木を適当な数もらって、丸太小屋を作っていった。魔法のお陰で簡単にログハウスができていく。『ムーブ』の魔法と風魔法は偉大だ。
 自分達で切り出したことをいいことに、結構な数の木材を消費していく。丸太小屋ってこんなに木を使うのか。やはり加工して使った方が無駄な消費がなくて良さそうだな。次から気をつけます。
 そんなこんなで湯船を囲むログハウスが完成した。天井はないが、上から覗かれないようにログハウスの外側の材質はツルツルに滑るように細工しておいた。空を飛ばれたらおしまいだが、今のところ、鳥類とフェオ以外に空を飛んでいるのを見たことがないので、大丈夫だろう。
「ようやくできたぞ。早く温泉に浸かりたい」
 すでに日は傾き始めていた。もちろんみんなにも手伝ってもらったが、丸太の加工に結構な時間を取られた。もし、また作ることがあれば、そのときは土魔法で壁を作ってサクッと終わらせようと思う。
 建物を作るのには土魔法が最適だ。使えて良かった土魔法。
 露天風呂の構造はまだ作っている途中という体で、ログハウスの中で服を脱ぐ構造になっている。ゆくゆくは外に脱衣場を村の人達で作ってもらいたい。あまりでしゃばると、俺達専用の風呂、みたいになるので、村のみんなに使ってもらうためにも、村のみんなを巻き込んで作りあげたい。
しおりを挟む
感想 42

あなたにおすすめの小説

前世は不遇な人生でしたが、転生した今世もどうやら不遇のようです。

八神 凪
ファンタジー
久我和人、35歳。  彼は凶悪事件に巻き込まれた家族の復讐のために10年の月日をそれだけに費やし、目標が達成されるが同時に命を失うこととなる。  しかし、その生きざまに興味を持った別の世界の神が和人の魂を拾い上げて告げる。    ――君を僕の世界に送りたい。そしてその生きざまで僕を楽しませてくれないか、と。  その他色々な取引を経て、和人は二度目の生を異世界で受けることになるのだが……

元皇子の寄り道だらけの逃避行 ~幽閉されたので国を捨てて辺境でゆっくりします~

下昴しん
ファンタジー
武力で領土を拡大するベギラス帝国に二人の皇子がいた。魔法研究に腐心する兄と、武力に優れ軍を指揮する弟。 二人の父である皇帝は、軍略会議を軽んじた兄のフェアを断罪する。 帝国は武力を求めていたのだ。 フェアに一方的に告げられた罪状は、敵前逃亡。皇帝の第一継承権を持つ皇子の座から一転して、罪人になってしまう。 帝都の片隅にある独房に幽閉されるフェア。 「ここから逃げて、田舎に籠るか」 給仕しか来ないような牢獄で、フェアは脱出を考えていた。 帝都においてフェアを超える魔法使いはいない。そのことを知っているのはごく限られた人物だけだった。 鍵をあけて牢を出ると、給仕に化けた義妹のマトビアが現れる。 「私も連れて行ってください、お兄様」 「いやだ」 止めるフェアに、強引なマトビア。 なんだかんだでベギラス帝国の元皇子と皇女の、ゆるすぎる逃亡劇が始まった──。 ※カクヨム様、小説家になろう様でも投稿中。

伯爵令息は後味の悪いハッピーエンドを回避したい

えながゆうき
ファンタジー
 停戦中の隣国の暗殺者に殺されそうになったフェルナンド・ガジェゴス伯爵令息は、目を覚ますと同時に、前世の記憶の一部を取り戻した。  どうやらこの世界は前世で妹がやっていた恋愛ゲームの世界であり、自分がその中の攻略対象であることを思い出したフェルナンド。  だがしかし、同時にフェルナンドがヒロインとハッピーエンドを迎えると、クーデターエンドを迎えることも思い出した。  もしクーデターが起これば、停戦中の隣国が再び侵攻してくることは間違いない。そうなれば、祖国は簡単に蹂躙されてしまうだろう。  後味の悪いハッピーエンドを回避するため、フェルナンドの戦いが今始まる!

竜の国のカイラ~前世は、精霊王の愛し子だったんですが、異世界に転生して聖女の騎士になりました~

トモモト ヨシユキ
ファンタジー
辺境で暮らす孤児のカイラは、人には見えないものが見えるために悪魔つき(カイラ)と呼ばれている。 同じ日に拾われた孤児の美少女ルイーズといつも比較されていた。 16歳のとき、神見の儀で炎の神の守護を持つと言われたルイーズに比べて、なんの神の守護も持たないカイラは、ますます肩身が狭くなる。 そんなある日、魔物の住む森に使いに出されたカイラは、魔物の群れに教われている人々に遭遇する。 カイラは、命がけで人々を助けるが重傷を負う。 死に瀕してカイラは、自分が前世で異世界の精霊王の姫であったことを思い出す。 エブリスタにも掲載しています。

知識スキルで異世界らいふ

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
他の異世界の神様のやらかしで死んだ俺は、その神様の紹介で別の異世界に転生する事になった。地球の神様からもらった知識スキルを駆使して、異世界ライフ

お前には才能が無いと言われて公爵家から追放された俺は、前世が最強職【奪盗術師】だったことを思い出す ~今さら謝られても、もう遅い~

志鷹 志紀
ファンタジー
「お前には才能がない」 この俺アルカは、父にそう言われて、公爵家から追放された。 父からは無能と蔑まれ、兄からは酷いいじめを受ける日々。 ようやくそんな日々と別れられ、少しばかり嬉しいが……これからどうしようか。 今後の不安に悩んでいると、突如として俺の脳内に記憶が流れた。 その時、前世が最強の【奪盗術師】だったことを思い出したのだ。

異世界リナトリオン〜平凡な田舎娘だと思った私、実は転生者でした?!〜

青山喜太
ファンタジー
ある日、母が死んだ 孤独に暮らす少女、エイダは今日も1人分の食器を片付ける、1人で食べる朝食も慣れたものだ。 そしてそれは母が死んでからいつもと変わらない日常だった、ドアがノックされるその時までは。 これは1人の少女が世界を巻き込む巨大な秘密に立ち向かうお話。 小説家になろう様からの転載です!

悪役顔のモブに転生しました。特に影響が無いようなので好きに生きます

竹桜
ファンタジー
 ある部屋の中で男が画面に向かいながら、ゲームをしていた。  そのゲームは主人公の勇者が魔王を倒し、ヒロインと結ばれるというものだ。  そして、ヒロインは4人いる。  ヒロイン達は聖女、剣士、武闘家、魔法使いだ。  エンドのルートしては六種類ある。  バットエンドを抜かすと、ハッピーエンドが五種類あり、ハッピーエンドの四種類、ヒロインの中の誰か1人と結ばれる。  残りのハッピーエンドはハーレムエンドである。  大好きなゲームの十回目のエンディングを迎えた主人公はお腹が空いたので、ご飯を食べようと思い、台所に行こうとして、足を滑らせ、頭を強く打ってしまった。  そして、主人公は不幸にも死んでしまった。    次に、主人公が目覚めると大好きなゲームの中に転生していた。  だが、主人公はゲームの中で名前しか出てこない悪役顔のモブに転生してしまった。  主人公は大好きなゲームの中に転生したことを心の底から喜んだ。  そして、折角転生したから、この世界を好きに生きようと考えた。  

処理中です...