奴隷の少女がどうやら伯爵令嬢みたいです

えながゆうき

文字の大きさ
34 / 50

再会

しおりを挟む
 無事に奴隷契約の一時的な解除を済ませると、すぐにライネック伯爵領に向かうことにした。家の戸締まりと、防犯の魔法をしっかりと施したことを確認すると、転移魔法で一気に目的地へと向かった。
 その間ずっとパメラは腕にしがみついていた。そんなに信用無いか、俺。ちょっとへこむ。しがみつかれた腕は幸せな感じになってはいたが。

 パメラの両親も心配していることだろう。この辺りで里帰りするのはちょうど良かったかもかも知れない。
 ライネック伯爵領へは一度行ったことがある。そのときは通過しただけだったが、それでも転移魔法を使う上では役に立つ。何せ転移魔法は一度行ったことがある場所にしか転移することができないからね。

 依頼書が俺のところに直接来たからといっても、いきなりライネック伯爵のところに行くのはまずいだろう。一度、この近くの冒険者ギルドからの紹介を受けてから訪ねようと思っていたのだが、そう言えばパメラがいる。そのまま行っても大丈夫かな?

「大丈夫ですわ。私が帰ってきたことを告げればすぐに取りなしてくれますわ」
「そうか。それなら話が早いな。よろしく頼む」

 パメラはキリリと眉を引き締めてうなずく。これなら大丈夫かな。俺たちは領都のライネック伯爵家の屋敷へと向かった。
 たどり着いたそこは屋敷と言うよりかは砦と言っても差し支えなかった。
 成人男性の二倍近くありそうな石造りの城壁に囲まれており、門には槍を持った門番が油断なく辺りに目を光らせていた。

「ずいぶんと立派な砦だな」
「その昔、この辺りは隣国との国境の最前線だったそうで、その名残でこのような立派な砦になっているみたいですよ。それでも居住性はしっかりと考えられていたみたいで、住み心地はとても良いですよ」

 うれしそうな声でパメラが説明を加えてくれる。実家を紹介できるのがうれしい様子だ。スキップでもしそうな勢いでパメラが俺の手を引っ張ってゆく。
 だがしかし、引っ張られる俺はちょっと引き気味になっていた。だってこれからパメラのご両親に会うんだよね? 怖くない? 多分、俺とパメラの関係は了承済みだとは思うけど、確実、なんて保証はどこにもないからね。

 門番がこちらに気がつき警戒態勢をとった。どうやら見かけだけではなく、しっかりと仕事をしているようである。パメラが近づくと、どうやらお姫様が帰って来たことに気がついたようである。
 驚きのあまり大きく目を見開いて、叫び声をあげた。

「お嬢様! パメラお嬢様が帰って参りました!」

 その声を皮切りに、何だ何だと騒ぎが巻き起こった。その情報は城内にも伝わったらしく、その場は騒然となった。城内からはワラワラと人が湧き水のように出てきた。

「パメラ、大丈夫なのか、これ?」
「多分……」

 パメラもまさかこのような事態になるとは思っていなかったらしく、眉を垂らし、困惑した表情でこちらを見た。
 俺たちが顔を見合わせていると、慌てた様子で一人の男性が躍り出てきた。白髪をオールバックにし、黒いお仕着せを身にまとっている。「いかにも執事長」のような人物が周囲の状態を素早く確認すると、何やら後ろに合図を送った。

 その合図と共に、数人の使用人を引き連れた豪奢な衣装をまとった女性が現れた。淡いブルーのブロンドはパメラと全く同じであり、深い海のような青い瞳を持つ女性。間違いなくパメラの母親だろう。

 あの容姿とあの胸部は間違いない。パメラも凄いと思ったが、さらにその上があったとは。まさかパメラの胸はまだ発展途上なのか? 世の中の胸の大きさに悩む女性陣を敵に回しそうで怖い。

「パメラ!」
「お母様!」

 二人がしっかりと抱き合った。挟まれた胸がその形を大きく変える。あんな風になるのか。眼福、眼福。そう思っているのは俺だけではなかったらしく、何事かと砦から出てきた兵士たちも思わずガン見していた。
 言っておくが、片方は俺のおっぱいだぞ。

 二人の邪魔をしないように俺たち一人と二匹は遠目から見守っていた。
 そうこうしているうちに、再び門の周辺が騒がしくなった。何事かと目を向けると、栗毛色の髪に、鼻の下に髭を生やした人物が現れた。それに気がついた兵士や使用人たちがその場がシンと静まり返った。存在するだけでその場を掌握するほどの空気を持つ人物。おそらくライネック伯爵だろう。
 それに気がついたパメラがそちらの方に顔を向けた。

「お父様!」
「パメラ、元気そうで何よりだ」

 その声は大変安堵したものだった。両親に心配をかけていたことに気がついたパメラは、眉をハの字に曲げて顔をゆがめた。

「心配をおかけしてしまって申し訳ありませんわ」
「なに、気にすることではない。大事な娘を心配するのは親の務めだ」

 う、心が痛い。そんな大事な娘に、俺はあんなことやこんなことをさせていたのだ。
 一緒に風呂に入ったり、寝ぼけていたとはいえ破廉恥なことをしたり、裸エプロンや裸リボンをしてもらったことを知ったら、間違いなく怒られるだろう。
 これは墓場まで黙っておかなければならない案件だろう。

「ほら、パメラ、紹介したい人がいるのではないですか?」

 目に涙をうっすらと浮かべたパメラの母親が緩やかな笑顔をこちらに向けた。……どうやら怒っている感じではなさそうだ。その言葉につられてこちらを見たライネック伯爵の顔も怒ってはいない。どちらかというと、口角が上がっている。

「そうでしたわ。こちらはプラチナ級冒険者のエルネスト様ですわ。それからこちらの白い白虎がエル様の召喚獣のシロちゃんで、その隣のフェンリルが私の召喚獣のオルトですわ。冒険者ギルドからの依頼で私たちは……」
「ストップ、パメラ。今、何だか聞いてはいけないような単語が聞こえたような気がしたんだが?」

 ですよね! さすがは伯爵、お目が高い。伯爵夫人もサッと扇子で口元を隠しながら大きく目を見開いている。久しぶりに帰って来た娘が伝説の生き物であるフェンリルを従えて帰って来たらそうなるよね。

「え? この依頼をプラチナ級冒険者のエル様に依頼したのはお父様ではないのですか?」
「違う、そっちじゃない。エルネスト殿に依頼したのは間違いなく私だ。ああもう。とにかく、ここでこれ以上話すのは良くない。まずは中に入ろう」

 それもそうだ。ここではたくさんの人がこちらに注目している。そこかしこからも「プラチナ級冒険者?」とか「白虎?」とか「フェンリル?」とか「お嬢様……」とか聞こえている。これ以上は良くない。
 伯爵と軽くお互いに自己紹介を済ませると、俺たちは砦の中にある来客室へと案内された。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】

田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。 俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。 「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」 そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。 「あの...相手の人の名前は?」 「...汐崎真凛様...という方ですね」 その名前には心当たりがあった。 天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。 こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。

まずはお嫁さんからお願いします。

桜庭かなめ
恋愛
 高校3年生の長瀬和真のクラスには、有栖川優奈という女子生徒がいる。優奈は成績優秀で容姿端麗、温厚な性格と誰にでも敬語で話すことから、学年や性別を問わず人気を集めている。和真は優奈とはこの2年間で挨拶や、バイト先のドーナッツ屋で接客する程度の関わりだった。  4月の終わり頃。バイト中に店舗の入口前の掃除をしているとき、和真は老齢の男性のスマホを見つける。その男性は優奈の祖父であり、日本有数の企業グループである有栖川グループの会長・有栖川総一郎だった。  総一郎は自分のスマホを見つけてくれた和真をとても気に入り、孫娘の優奈とクラスメイトであること、優奈も和真も18歳であることから優奈との結婚を申し出る。  いきなりの結婚打診に和真は困惑する。ただ、有栖川家の説得や、優奈が和真の印象が良く「結婚していい」「いつかは両親や祖父母のような好き合える夫婦になりたい」と思っていることを知り、和真は結婚を受け入れる。  デート、学校生活、新居での2人での新婚生活などを経て、和真と優奈の距離が近づいていく。交際なしで結婚した高校生の男女が、好き合える夫婦になるまでの温かくて甘いラブコメディ!  ※特別編7が完結しました!(2026.1.29)  ※小説家になろうとカクヨムでも公開しています。  ※お気に入り登録、感想をお待ちしております。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

貞操逆転世界に転生したのに…男女比一対一って…

美鈴
ファンタジー
俺は隼 豊和(はやぶさ とよかず)。年齢は15歳。今年から高校生になるんだけど、何を隠そう俺には前世の記憶があるんだ。前世の記憶があるということは亡くなって生まれ変わったという事なんだろうけど、生まれ変わった世界はなんと貞操逆転世界だった。これはモテると喜んだのも束の間…その世界の男女比の差は全く無く、男性が優遇される世界ではなかった…寧ろ…。とにかく他にも色々とおかしい、そんな世界で俺にどうしろと!?また誰とも付き合えないのかっ!?そんなお話です…。 ※カクヨム様にも投稿しております。内容は異なります。 ※イラストはAI生成です

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ご褒美人生~転生した私の溺愛な?日常~

紅子
恋愛
魂の修行を終えた私は、ご褒美に神様から丈夫な身体をもらい最後の転生しました。公爵令嬢に生まれ落ち、素敵な仮婚約者もできました。家族や仮婚約者から溺愛されて、幸せです。ですけど、神様。私、お願いしましたよね?寿命をベッドの上で迎えるような普通の目立たない人生を送りたいと。やりすぎですよ💢神様。 毎週火・金曜日00:00に更新します。→完結済みです。毎日更新に変更します。 R15は、念のため。 自己満足の世界に付き、合わないと感じた方は読むのをお止めください。設定ゆるゆるの思い付き、ご都合主義で書いているため、深い内容ではありません。さらっと読みたい方向けです。矛盾点などあったらごめんなさい(>_<)

中身は80歳のおばあちゃんですが、異世界でイケオジ伯爵に溺愛されています

浅水シマ
ファンタジー
【完結しました】 ーー人生まさかの二週目。しかもお相手は年下イケオジ伯爵!? 激動の時代を生き、八十歳でその生涯を終えた早川百合子。 目を覚ますと、そこは異世界。しかも、彼女は公爵家令嬢“エマ”として新たな人生を歩むことに。 もう恋愛なんて……と思っていた矢先、彼女の前に現れたのは、渋くて穏やかなイケオジ伯爵・セイルだった。 セイルはエマに心から優しく、どこまでも真摯。 戸惑いながらも、エマは少しずつ彼に惹かれていく。 けれど、中身は人生80年分の知識と経験を持つ元おばあちゃん。 「乙女のときめき」にはとっくに卒業したはずなのに――どうしてこの人といると、胸がこんなに苦しいの? これは、中身おばあちゃん×イケオジ伯爵の、 ちょっと不思議で切ない、恋と家族の物語。 ※小説家になろうにも掲載中です。

処理中です...