奴隷の少女がどうやら伯爵令嬢みたいです

えながゆうき

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気になる話

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 パメラを左腕にくっつけて伯爵家を案内してもらう。パメラの足下にはオルトが、俺の肩にはシロが乗っている。ほかの貴族の家でやると間違いなく怒られるだろう。パッと見ただけではペットを連れて歩いているだけだしね。

 さすがは伯爵家の屋敷なだけはあって、部屋数は多く、置かれている調度品も一級品ばかりだった。見慣れているため特に驚くことはなかったが、どこの国に行っても貴族という生き物は見栄を大事にする生き物なのだなあとつくづく思った。
 どこもかしこも貴族の間でマウントの取り合い。とても楽しそうには見えないけどな。

 それよりも、魔物をバシバシ倒す方がよっぽど楽しいと思う。最近ではパメラと一緒にいる時間も楽しい。初めて隣にいても疲れないご令嬢に出会ったな。今さら実感したけどね。

 廊下を歩いていると、正面から一人の男性が使用人を従えてやってきた。あれはおそらくパメラの兄だな。次期伯爵、か。どんな人物なのだろう。ちょっと気になる。

「お兄様! 今挨拶にうかがおうとしていたところですわ」
「お帰り、パメラ。そろそろ挨拶に行っても大丈夫かな、と思っていたんだけど、少し出遅れたみたいだね」
「そんなことはありませんわ。こちらはプラチナ級冒険者のエルネスト様ですわ。今回の騒動の依頼を受けておりますわ。エル様、こちらは私の兄、ルーファスですわ」

 緩やかな笑みを浮かべる青年に頭を下げる。年齢は二十歳前後かな? 若々しくエネルギッシュな印象を受けた。容姿も整っており、非常にモテそうである。見た目は父親にそっくりだな。

「初めまして、エルネストです」
「ルーファスです。兄、と呼んでもらってもかまいませんよ?」

 ニンマリと口角を上げて笑うルーファス。からかい半分、といったところか。こちらも冗談交じりで「そのときが来たら、そう呼ばせていただきます」と返事をした。

 その返事に驚喜したのはパメラだった。どうやらパメラの中では冗談半分ではなく「本気(マジ)」に聞こえたらしい。
 おっぱいをブルンブルン揺らして飛び跳ねた。ルーファスの目が、つい、といった感じで引き寄せられる。男ならしょうがないよね。

 俺が生暖かい目で見ていることに気がついたのだろう。ルーファスがほほを薄紅色に染めてオッホンとわざとらしく咳をした。

「エルネスト殿、依頼の件、どの程度まで聞いていますか?」
「ドラゴンらしき生き物を見た、という領民がいるという話を聞きました。ですが、調査団からの報告では確認されなかったそうですね」

 コクリとルーファスが首を縦に振った。その神妙な様子から、何か別の事情を知っているような気がした。伯爵があの場で言わなかったところを見ると、おそらくパメラ絡みのことなんだろうな。パメラを狙っている貴族がいるということかな?

「そのようです。いくら調べても痕跡すらまだ見つかってません。エルネスト殿が強いことは知っていますが、十分に気をつけて下さいね」
「ありがとうございます。用心します」

 ルーファスは一つうなずくとすれ違って行った。あとからルーファスと二人で話をしよう。情報は少しでも多いことに越したことはない。パメラが風呂に入っている時間帯にでも訪ねるとしよう。
 その後もパメラに屋敷を案内してもらい、俺が泊まることになる部屋と、パメラの部屋の場所を教えてくれた。

 パメラの部屋を教えてくれたと言うことは部屋まで来ても大丈夫ということなのだろうか。中に招き入れようとしてきたがさすがにそれはまずい。庭も案内してもらえないだろうかと頼むと、ちょっと残念そうな顔をしながらも心地良く引き受けてくれた。

 伯爵家自慢の庭には色とりどりの花が咲いており、庭師が頻繁に、丁寧に手入れしていることがすぐにわかった。少々長く歩き続けていたこともあり、テーブルの置いてある噴水の近くで休憩することになった。

 使用人が準備してくれたお茶とお菓子をつまむ。ほろりと口の中で崩れた焼き菓子から蜜の味が広がった。甘くてとても美味しい。ついつい手が進んでしまう。

「エル様は甘いものがお好きだったのですね」

 急にそんなことを言いだしたパメラに、思わず苦笑いをしてしまった。俺が甘いもの好きなことなど、別に隠すほどのことでもないんだけどね。
 そういえばなぜか、パメラと一緒に住むようになってから甘いものをあまり食べなくなっていたな。食べたとしても、果物ばかりだ。あまり外で食べ物を買わなくなったからかな?

「甘いものは好きだよ。そういえば、最近はあまり口にしてなかったね」
「うふふ、私も甘いものは好きですわ。ですが……」

 そう言ってパメラは自分の体を見た。甘いものを食べると太ると思っているのかな? でもそれは甘いものだけを食べ続けた場合の話だ。

「甘いものを食べても、しっかりと運動すれば太らないよ。女性冒険者を見てみろ。たくさん食べても太っていないだろう? しかもお菓子に目がない人も多いみたいで、カフェで大量にパフェを食べている姿をよく見かけるぞ」
「……よく観察しておりますわね」

 あ、何だかまずい空気。ちょっとパメラ以外の女性の話をしただけでこれだよ。ずいぶんと嫉妬深いのか、それとも自分に自信がないのか。後者だとしたら、それはとんでもない勘違いだ。パメラが自信がないなんて言っていたら、ほぼ全員が自信がないことになってしまう。

「たまたまだよ、たまたま。店の中にいた客の視線が同じ方向を向いていたので気になっただけだよ。そしたら大量のパフェをテーブルに並べて平らげていた」
「あら、そうなのですね」

 パメラは機嫌を戻してくれたようだ。バラの装飾が施された、白い陶器のカップを優雅に持つと、ゆっくりと楽しむように飲み出した。やれやれ。

「そうだ、戻ったら一緒にその店に食べに行こう。パメラもきっと気に入ると思うよ」
「そ、そうですわね」

 と言いながらも、再び自分の体を見つめた。よっぽど気になるのか。別に太っても、ぽっちゃりもしていないんだけどな。
 そのとき、俺の探知の魔法に反応があった。
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