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  激しい動きをしつつも、愛しい人を傷つけないよう、そして気持ちよくさせようとしていた動きが変わった。
  
 ずっと、荒く熱い息を繰り返していたトーマスが、自身を解き放つため一際激しく腰を動かしたかと思うと、腰をこれ以上はないほど押し付けて来る。

  切羽詰まった、トーマスの言葉と、彼の色気にくらくらしながらタニヤは幸せの中で胸をときめかせた。

「タニヤ、受け止めてくれ……!」


「ああ……っ……」

 タニヤの声は快楽の絶頂によるものではない。だが、ついに彼の情熱の全てを吐き出されるのかと思うと、その興奮で高く啼いた。

「う、は……はぁ……、はぁ……」

 彼女の奥のさらに深くに届かせようと勢いよく吐き出される。永遠に止まらないかと思ったそれが、ようやく収まったのは、トーマスが息を詰めて幾度か体をぶるりと震わせ、ぐ、ぐ、と腰を押し付けてた後だった。

  まだ硬度と大きさを保ったまま引き抜く。

 タニヤの中から、彼の切っ先を追いかけるかのように少量の白く濁った粘液が追った。

 大きく息を吸い思い切り長く息を吐きだすと、トーマスは体を揺らされて疲労困憊で眠りに誘われ始めているタニヤをそっと抱きしめる。柔らかく壊れそうな彼女の呼吸を肌で感じ取ると目を閉じてこのひと時に浸ったのであった。

「トム、離れないで……行かないで……」

  夢現の、そっと出ただけの言葉だろう。だからこそ、何物にも隠されていない番の願いを聞き、そっと抱きしめて囁き続ける。

「タニヤ、俺はここにいる。ずっと離しはしない。安心して眠るといい」

  低い声が、彼女に届いたのか、目を閉じたままにこっと微笑みを浮かべ、そのまま眠りについたようだ。

  肌に張り付いた汗と液でどろどろになっている体を綺麗にしようと少し腕を動かす。すると、寝入ったはずの彼女が腕を絡めてくるのが嬉しくていとおしい。

「タニヤ、いい夢を」

  瞼と頬にちゅっと軽く唇をあてると、トーマスはべとつく体もそのままに、彼女と同じ夢の世界に入れたらと願いながら目を閉じたのであった。



※※※※


「ん……」

  タニヤが気だるく、節々とあり得ない場所の鈍い痛みと重さを感じて目を覚ます。
  心地よい重みと熱に包まれ、うっとりと広いその肌色に頬擦りをした。

「起きたか?」

  タニヤの頭の上で、愛しい人の声がする。はっきり目覚めていない頭が徐々にクリアになると、昨晩の記憶が甦った。

「~~~~!」

  自分が、ついにトーマスとひとつになったのだと、身体中の血液が沸騰するかのように熱くなる。ドキドキと、苦しいくらいに胸の中が乱れ打った。

「おはよう、愛しい人」

  狼狽え、肌を赤く染めつつも、自分から離れていかない彼女の様子を見て、嬉しさを含んだ笑顔で抱きしめる。

「お、おは、ようございます……」

  タニヤの後半の言葉は声にならないほど小さい。

  幸せな人の胸で目覚める、今日のこの日が来たことが嬉しくて、恥ずかしいけれど幸せだと、その声に込められている感情はきちんとトーマスに届いた。

  昨夜とはうって変わった優しい力で抱きしめながら

「タニヤ、辛くないか?」

  俯いて胸に顔を隠している頭と、滑らかな背中を撫でる。

「だ、大丈夫、ですぅ……」

  つい昨日までも優しい兄として、誰よりも素敵で頼もしい騎士団長として側にいてくれた彼。
  周囲の誰もが知っていた血の繋がりがないと分かり、想いを通じ合わせてから甘さが増すばかり。
  誰もが一度は恋すると言われるほどの青年が、自分の番だなんて、まだ夢のよう。だけど、確かに自分だけの唯一無二の存在なのがわかる。

「トム、わたくし幸せ……」

  自分よりもはるかに大きな体にぴとりとくっつく。

「ああ、俺もだ」

  トーマスの中心が、タニヤの動きで柔らかな肌に、硬く大きくなっている事を主張した。

「あ……トム……」

  タニヤは、トーマスがまだ物足りないのだと悟る。

「すまない。気にするな、時間はたっぷりあるからな。今日はゆっくり過ごそう」

  蜜月に入ったというのに、タニヤの体を気遣う彼の気持ちと言葉が嬉しい。

「……トム、わたくしでは満足されませんでしたか?」

  彼の優しさはわかっている。それでも、雄々しく求められない事が悲しい。ひょっとして、自分の体は彼には不満なのかもしれないなどという馬鹿げた考えが浮かんでしまう。さらに、自分もまた彼を求めて止まないのだ。

「タニヤ、そんな事はない。お前の体は素晴らしく気持ちが良い。ただ、もう一度触れれば歯止めが効かないだろう。俺はお前を壊したくないのだ」

「わたくしは、トムに抱かれたいです……。わたくしだってハムチュターン族なのです。簡単には壊れません」

  だから、ずっと求めてください……


  そう、盛り上がる胸板に唇をあててタニヤが囁いた瞬間、トーマスの理性は完全に無になったのであった。
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