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 ようやく彼らが落ち着くと、エミリアはタニヤが使用したカプセルの説明をし始めたのである。

「うーん。それ獣人なら3時間、人間なら半日で消えるはずなんですよね。なんでこんな事になったんだろ……、ちょっと失礼しますね」

  エミリアは、タニヤの耳と尻尾に触らせてくれないかなーと思いつつ、性感帯と聞いたし彼女の番のトーマスの手前あきらめて彼女の全身をサーチする。
  そして、お腹のおへそのした辺りにある存在に気づくとバグの原因が分かった。

「まあ、なるほどー。新しい命が3時間経たないうちに出来たからバグったのね。協会にトラブルの報告しなくちゃなあ……〈タニヤお義姉様からガチャのアイテムは消えなさい〉」

 エミリアが、原因がわかってチートを唱えると、瞬時にタニヤの頭とお尻に生えていたティーグレの耳と尻尾が消えた。タニヤとトーマスは、エミリアの魔法よりもその前の言葉に驚愕して言葉も出さずにフリーズしてしまっていたのである。

「え?  エミリア、それって姉上が……? 本当に?」

「ふふふ。おめでとうございます!  ハムチュターン国も安泰ですね。性別はまだはっきりしませんが……」

「おー、兄上、姉上おめでとう!  エミリア、俺たちも早く欲しいね」

「やっだー、ダンったら」

 ダニエウがエミリアに問いかけると、エミリアが満面の笑顔で懐妊した事を祝う。ダニエウが優しくて愛しい妻の胸に顔を埋めて甘えた。

 二人のそんなバカップルぶりを目の前にしていても視界に映っていない、電気が切れて動かなくなった機械のようになっていたトーマスがようやく再起動した。

「タニヤ、ここは冷える。俺たちの子のためにも早く帰ろう。二人ともありがとう、では失礼する」

 そう言うや否や、タニヤを横抱きにして額にキスを落とした。彼に比べると小さく見えるタニヤがすっぽりその逞しい胸に抱えられると、未だ状況がつかめていないのか狼狽している。

「え?  え?」


 あっという間に、気が付けば自室に連れられてベッドに寝かされていた。トーマスが、彼女の側仕えや侍女たちに懐妊を知らせると、離宮は一際華やいで次期女王の妊娠を祝う。

 即時に女王たちにも伝えられ、ついこの間クリスマスが終わり新年を迎えたばかりの晴れ晴れとした日に、国中が大歓声で覆われるほど祝賀ムードになったのである。

 半月ほど飲めや歌えや踊れと、平民もお祭り騒ぎを楽しんだ。近隣諸国からも続々慶事のメッセージが届けられる。

 タニヤがイブにサンタクロースからプレゼントを贈られた事も周知され、ますますサンタクロースの幸せをもたらすという伝説並みの信仰が深まったという。



 そして、

  冬が過ぎた頃、愛らしく元気な女の子のハムチュターン族の王位継承者が生まれると、またもや平和そのもののように国中が沸いたのであった。

  

【R18】素敵な騎士団長に「いいか?」と聞かれたので、「ダメ」と言ってみました──完
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