完結 R18 絶縁の恥さらし公女は、厄介者の王子様にまとわりつかれる。

にじくす まさしよ

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7 毎日暗殺騒ぎでも?

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 キャブタ王子の、やや強引なレディーファーストに戸惑いつつ、しっかり立ち上がらせてもらったことに感謝した。

 まだしびれてるから、放っておいてほしかったけどね!

「俺の側近たちが失礼した。学園では襲撃者はいないだろうが、常に警戒していてね。可憐なレディに対して、いきなり無礼を働いてしまった。代わりに謝罪する。これからも、この学園に助力してくれ」
「いえいえ、殿下が謝罪する必要はありません! どうか、頭をお上げください。元はと言えば、転落した私が悪いのです。事故とはいえトラブルが起こったのですから、側近の方々のお気持ちも当然ですわ。これからも、国の将来を担う皆様のお力になれるよう陰ながら邁進いたします」

 私がそう言うと、側近たちも言い過ぎたと頭を下げてくれた。何度も言うが、いじめ現場を見ていなければ、「ばばあ」呼ばわりされていたり、「ばばあ」と怒鳴られたり、「ばばあ」と罵られたりしていなければ、普通に感心していたと思う。

 殿下一行が去り、やっと落ち着いた。私はふうっと小さくため息を吐き、背後にいる男子生徒に声をかけた。

「大丈夫でしたか?」
「……わざと落ちて、助けてくれなくても良かったのに」

 キャブタ殿下よりもふた周りほど大きいだろうか。まともにやりあったら、殿下に勝ちそうなんだけど、一切やり返さずに殴られっぱなしだったので、彼の唇が切れている。

「助けたつもりはないですわ。本当に事故だったの。立てますか?」

 助けたほうがいいだろうか悩んだだけで、積極的に「助けなきゃ!」というような気持ちはなかった。偶然だっただけ。

 でも、彼は私がわざと落下して、いじめをやめさせようと思ったみたい。

「僕に手を?」

 おや? 

 差し出した手を掴むことなく、私をびっくりして見上げている。

「? もしかして、落下した時にどこかにぶつかりましたか? 救護を呼んできましょうか?」

「いや、だ、だだ、大丈夫。大人は呼ばないで」

 救護の先生を呼んでこようとしたとき、彼が私の手を掴んだ。大きな手に、私の手がすっぽり収まる。

 自慢ではないが、私の手は大きい。工具を軽々持てるし、Lサイズの手袋だ。
 因みに、身長も高い。同年代の女性で、私以上の身長を見たことがなかった。靴のサイズは26センチ。

 立ち上がった彼は、178センチもある私の、まだ更に大きかった。男の人で見上げたのは、彼で何人目だろう。
 
 今騎士団に入って活躍中の卒業生のひとりが200センチだったはず。その彼よりも少し低いくらいか。

「あの、このことを相談したほうがいいのでは?」
「……」

 何か事情があるのだろうか。一方的にボコボコにされていたのだから、例え相手が王子であっても、相談するくらいはしたほうが良いと思う。

 錆色の髪に、アンバーの瞳。いじめられていることを周囲の大人に知られるのは嫌なのだろう。だからといって、放っておけない。

「あなた、ムキ王子様ですよね? どうして、黙ってやられているんです?」

 たしか、彼の母親は側室の末端くらいだった。王族にもカーストのようなものがあり、キャブタ殿下には逆らえないにしても、愛人ではなく側室の血筋なのだから、あれほどやられっぱなしにならなくてもいいと思う。

「知っているんなら、わかるでしょ? 僕がキャブタ様に逆らえるはずなんてない」
「側室のお子様だということは存じ上げております。序列があるかもしれませんが、愛人や遊び女の子じゃないんですから、ここまでされるいわれはないかと」

「……もしかして、知らないの?」
「? 側室がお生みになられた王子殿下ですよね?」
「他のことは?」
「何かおありで? 王宮では、昔にあったような血で血を洗うような継承権争いなどないと聞いていますが、もしかして毎日暗殺騒ぎでもあるのでしょうか?」
「知らないのか。あと、そんな物騒なことはないから!」

 私よりも大きくて、若干強面の彼だから、ついつい17歳の青少年だということを忘れてしまう。言葉と姿のギャップについていけないなあと思いながらも、彼の質問の意図がわからず首をかしげた。

「側室のお子様なのですから、陛下にご相談なさればよろしいかと」
「父上にこそ、相談なんかできるはずないっ! さっきのはただの喧嘩。何も知らないくせに、偉そうに言うなよ!」

 陛下と言った瞬間、彼が激昂した。すると、彼の足元の床が凍りだす。

「氷魔法?」

 この国は、炎の魔法を操る。温度を上げることができても、大理石の床を凍りつかせるほどの温度の下降ができる人がいるとは聞いたことがなかった。といっても、大理石そのものが凍っているわけではなく、含有している水分が凍っているだけだろうから、0度くらいか。

 できるとするならば、氷の国の人間のはず。もしかして、側室が氷の国の出身なのだろうか。

 それよりも、彼の様子がおかしい。顔を真っ青にして、今発動している魔法を必死に止めようとしても止まらずパニックになっているみたい。

「……っ。見るな!」

 90度までの温度はキャンセルできるけれど、0度以下は大丈夫なのかどうかわからない。氷は冷たいと感じるし、数分触っていたらしびれて痛むからキャンセル出来ないと思う。

 みるみる、彼の服まで凍り出した。このままでは、彼が危ないんじゃないかと、自分が凍りつくかもしれないけど手を差し伸べた。

「ムキ殿下、落ち着いてください。見ませんし、誰にもいいませんから。勿論、さっきのことも含めてです」

 彼の冷たい手を取りそう言うと、彼が驚いて凝視してきた。瞬時に私の手の表面についた氷だけでなく、彼の全身を覆っていた氷がどんどんなくなっていく。

「本当か? 本当に? ……いいか、このことは忘れるんだ。約束だからな! いいな? 誰かにしゃべったら承知しないからなー!」

 完全に氷がなくなった瞬間、王子は叫びながら走り去っていった。

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