【完結・R18】迷子になったあげく、いかがわしい場面に遭遇したら恋人が出来ました

にじくす まさしよ

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「困ったわ……確かにこっちから来たと思ったのだけれど……」

 私の名前はビオラ。バイオレット子爵家の長女で、かわいい弟がひとりいる。我がバイオレット子爵家はもうすぐ没落しそうなほど貧乏だ。

 没落の原因となったのは、3代前の先祖にある。彼が、当時の高位貴族を軒並み虜にした希代の悪女と名高い女性に惚れ込んでしまったのが始まりだ。
  彼女は清楚・清純系の美少女で、彼女に恋をしない男子学生はいないと言われたほど。
 男子生徒にモテまくっていたため女子生徒から嫉妬をされていじめられていた美少女に入れこみ、そこまで裕福でもないのに多額の金品を渡していた。

  彼はイケメンでもないし、子爵家の後継とはいえそれほど権力もお金もない。全く相手にされていないというのに、散々貢いだあげくストーカー呼ばわりされ捨てられたのである。

  それからというもの、バイオレット子爵家は傾く一方。

 なぜなら、その美少女が高位貴族の男子生徒の婚約者たちを怒らせてしまったからだ。美少女と関わり手助けした人物は、彼女たちに対してナイト気取りで敵対していたのである。

  あからさまに、彼女たちに怒鳴ったり、人によっては肩を押すなど、紳士にあるまじき行動を起こす者もいたらしい。

  しかも、彼らが惚れ込んだ美少女の訴えた被害は全て事実無根であった。冤罪で侮辱や暴力を受けた婚約者たちは嘆き悲しむだけでなく、相手の責任を追及したようだ。

  祖先は、いわば詐欺にあったようなものだった。あからさまに婚約者たちに、どうこうは全くしていなかったものの、金品の援助をしたことから仲間とみなされ、権勢を誇る家から睨まれてしまった。

  事業をしても上手く行かず、代が変わってもその余波は未だに続いており、愚か者として有名になった先祖のせいで、もうすぐ子爵家が没落するだろうという危機に陥っていた。

 小さいとはいえ、領地や領民を守るために、父も大変苦労したようだ。そんな父を放っておけないと、お人好しの母が結婚してくれた。

  母の実家はそこそこ顔が広い。母のとりなしもあり、祖先が悪女の詐欺の被害者だと理解してくれた貴族たちがバイオレット子爵家に対しての攻撃を緩めてくれた。
  なんとか立て直しを図ったが、過去のダメージが大きすぎた。一筋縄ではいかず、毎日過労レベルで働かざるを得ない。

   過去の事を今更どうこう言っても仕方がない。幸い、母の実家のおかげで少しは上向きになれた事もあり、こつこつ領民のために父は懸命に仕事をしている。

 私に出来るのは、資金と実力のある家との縁を結ぶ事だ。その事を両親に伝えて協力を申し出たものの断られた。

『ビオラ、家の事はお父様たちが何とかするわ。だから、無理にお金持ちのおじいちゃんを結婚相手に選ばなくていいのよ?』

『そうだぞ、ビオラ。お金がなくとも愛する人がいてくれるのは素晴らしい事だ。そりゃ、理想は資金援助をしてくれる家と縁が出来たほうがいいがな?  娘が不幸になる事など私たちは望まない。ビオラは愛し愛される人と幸せになって欲しい』

『お母様、お父様。でも……わたくしだって、家を守るために……』

『ありがとう、ビオラ。その気持ちだけで十分だよ。それに大丈夫だ。運良く新しい事業が上手くいきそうなんだ。これでビオラの心配がなくなるさ』

  両親は、そう言ってくれた。だけど、その新事業の共同経営者が資金を持ち逃げしてしまった。会社は債務者に押さえられ、従業員への保障もしなくてはならず、ますます困窮したのである。

  私には心配かけまいとしているが、なんとなく、もうダメかなって思う。

 「どうせ、今まで男の子と縁なんてなかったもの。美人でもかわいくもないし……性格だって地味な私を、援助してくれるお金持ちのおじさまが貰ってくれるなら……。まだ8つの弟もいるし、案外、年の差婚で幸せになれるかも!」

  侯爵家の夜会で、誰か家や領地に住む人たちを救ってくれる人がいないものか……

  そう一縷の望みをかけて、身分も弁えずに侯爵令嬢のローズの好意で夜会に参加したものの、誰も声をかけてくれなかった。

  気安い知り合いなんて、ローズ以外にいない。結局悪目立ちしてしまい、会場は針のむしろとまではいかないが居心地が悪く庭に出てきたのが不味かった。

  考え込んで歩いたために、完全に迷ってしまう。

  暗く、広い庭は、どこからともなく怖い何かが出てきそうで足が震える。

  急いで足を一生懸命動かすが、風や動物の動きで生じる葉が揺れる音がますます恐怖と不安を増幅させた。

「あ、明かりが……」

  少し離れた場所に、ぼんやりと光が見える。まるで、救われたかのように感じた私はそちらに急いだ。

 「……? 何かの鳴き声……?」

 ところがそこに近づけば近づくほど、か細い、聞いた事のない声が耳に入って来たのである。もしや、目的の場所には、暗闇よりももっと恐ろしい何かがあるのかもしれない。

 そう思った私は、恐る恐るその場所を覗きこむ。すると、そこには見知った男女がいたのであった。



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