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ころりん1/2 ※ 次回は、毎度おなじみご要望右手回です。この回にもちょっとR成分がちらっとあります。タグをご覧くださいませ。
しおりを挟む僕は、トウミョイヤーと呼ばれる、ケープ国から輸入した種で作った野菜を前に、口を閉ざしている。
程よく暖かい日中、僕は本性のリクガメになって甲羅干しを楽しんでいた。ティータイムならぬ、自分で育てた新鮮野菜を食べながらゆったり過ごすベジータイムの幸せなひととき。
ありがたいことに、僕の作った野菜は大好評で、たまに王室の食卓にのぼることもあるほど。まあ、つまりは家族が食べてくれるだけなんだけど。
なんにせよ、王室御用達のプレミアム商品として、輸出もするようになったから、僕のキャベトゥは1玉で平均的な平民の1日分の食費くらいで売れている。ポーションみたいな効果もあるからね。
魔法で土を整え、キャベトゥに最適なミネラルたっぷりの水にたどり着くのは大変だった。土に顔や手が汚れてしまい、じいには『偉大なるトータス国の王子が畑仕事など、ああ、じいは悲しいですじゃああ』と、何度も嘆かれた。
とはいえ、できたキャベトゥをじいも美味しそうに食べてるんだけど。
で、今回初めて作ってみたトウミョイヤーは、根さえ残っていたら、水につけておくだけで何度も食べられるという画期的な野菜だ。いずれ、庶民向けに改良して大量生産したい。これで雇用や貧困層への支援にも繋がると信じて、早2年。
カプ……も……しゃ
まずい……もしゃの、しゃをしたくない。
あり得ない。こんなにも苦いだなんて。苦いとも違うな。エグさと絡み合う、負のハーモニーが鼻を通り、言葉をなくすほどの衝撃のフレグランス。
ペッ
うえー。ちょっと噛んだから、味と臭いが口や鼻に残ってしまった。取ってー誰か取ってー。別の美味しい野菜をプリーズー!
ころりん
あまりの不味さに暴れていたらひっくり返ってしまった。足や頭、しっぽをバタバタさせるけど起き上がれない。
お腹の部分は日光浴するつもりはなかった。
自分でどうする事もできず、 まあ、そのうち誰かが来るだろうと呑気に思って、この際腹の部分の甲羅干しならぬ腹干しをしようと決めた。
人化すれば即解決なんだが、こっちの姿のほうが、思考がゆったりまったりするから好きだ。ひっくり返ったまま、僕のリア♡の事を思い出す。
トウミョイヤーと比べものにならないほど、とってもいい香りもする彼女は、半年後に僕の求婚を正式に受け入れてくれるかなぁ?
一番好きなのは、あのブラウンの瞳。僕は真っ黒だから、明るい色の彼女のそれに見つめられるだけでドキドキする。
僕より白い肌は柔らかそう。ちっこくて、でも胸元はふんわりして、もっと柔らかそう。
黒い髪は僕と同じ色だけど、艶やかで肩甲骨まであって柔らかそう。
何よりも、あのちっこい唇。僕の名前を呼んでくれたそれは、どこよりも柔らかそう。声も、まるで祝福を授ける女神様みたい。
あ、ダメだ!
しっぽの付け根から、いつもは隠している杭がにょきっと出て来た。今はお腹を上にしているから、モロ出しだ。マル出しでもある。
わーわー、どうしよう! 早く隠さなきゃ!
いつもは、リクガメの姿でにょきっと顔を出しても、床に擦りつければいいだけなんだけど無理。焦れば焦るほど、僕の杭は大きく硬くなって、こんにちはーって出てくるから困った。
それこそ、人化したらすぐに解決なんだけど、プチパニックの僕は思いつかなかった。
「おじいちゃん、大変大変。リクガメがひっくり返っちゃってるわ」
「リア様、なんですじゃ? おやまあ。あれは……」
助かった。あの声はじいだ。一瞬、助かったって思ったけど、リアがいるんじゃ困る。そう言えば、今日はじいと城の散歩がてら、この世界についてじいから教わっているんだった。
とにかく、こんな醜くていやらしい穢れたモノを彼女に見せるわけにはいかない。ちょっと自信あるけど。だけど、こんな汚らわしいモノは、彼女は見た事も聞いた事もないはずだ。純真な彼女は、これを見たら悲鳴をあげるかもしれない。
じい、じい! リアを連れてここから離れてー!
僕は必死に叫んだ。だが、僕の渾身の願いは、じいには絶対に聞こえているはずなのに、見事に打ち砕かれたのである。
「おやおや、フロント王子。どうなさったんですじゃ?」
じい……せめて、せめて僕の名前は出して欲しくなかった。杭は相変わらず太陽に向かってそそり立っているし、何よりもひっくり返ってみっともない姿を、リアには見られたくなかったのにぃ……。
「え? フロントなの? 大丈夫?」
「ここは、リア様が、愛♡の力でどうぞ未来の夫君を助けると良いのですじゃよ」
「愛って……もう、おじいちゃんたら。でも、そうね。起き上がれなきゃ辛いよね。フロントちょっと失礼するねー」
わ、わわ。
なんと、僕のリアが、優しく僕を持ち上げてころりんってひっくり返してくれた。僕の愛しいリアは女神の中でも一番優しくて一番素敵に違いない。運が良かったのか、僕の杭は見られていないと思う。だって、リアが平然としているから。
僕がリアの優しさと、出会えた奇跡に感動していると、じいが更に僕を地に突き落とさんばかりに鬼のような一言を放った。
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