完結R18 異世界に召喚されたら、いきなり頬を叩かれました。

にじくす まさしよ

文字の大きさ
13 / 21

水陸両用のバイクはサイドカーつき

しおりを挟む
 青い空、爽やかな風、優しい太陽の光と温もり。絶好の行楽日和だ。

 私は、フロントとインテークの魔法を使った大型のバイクに乗り、非公式でケープ国に来ている。おじいちゃんは、仕事が忙しくてこれないみたい。侍女さんたちも一緒にって思ったんだけど、大勢の移動だとケープ国も迎え入れが大変だし、フロントとインテークがいれば安全だからって三人だけだ。

 侍女さんたちとは、また改めて正式にケープ国にこようと約束した。


「わぁ……!」


 リクガメの住む温かいトータス国とは違い、ケープ国は若干ひんやりしている。この国は海に面しているから、冷たい海の風が流れて、トータス国よりも早く気温が下がったらしい。

 ビィノ様とカレン様のお陰で、国民が寒さに強い血脈を受け継いでいるし、もしも、それでも寒くて凍えそうなら、体の周囲の温度を適温に保つ魔法を組み込んだ機械を、ケープ国民は、収入や家族構成関係なく、全員無償で国から支給されているから大丈夫なんだって。壊れてもすぐに取り換えてもらえるらしい。


「すごなあ……私が住んでいた国は、そういう支給とか補助は限られた条件のある人たちだけだったよ。子供支援も所得制限あったし。でも不平等だから、それでも飢えてしまう子供や大人たちまでいたの」

「リアの住んでいた所は大変な国だね。ちょっと考えられないな……。子供は貧富の差関係なく大切な国の宝だから我が国でも学費にかかる費用は無料だし、無利子でお金を貸したりとかしているな。生憎ケープ国のように大国じゃないから、生活費まで補填するなんて限界があるけど」

「皆、のんびりおっとりしているから私利私欲を貪るような貴族が俺たちの国にはいないし、貧民街がないから今のところそれで問題ないな。それに、やはりバイクという世界唯一の大企業があるから、それで潤っている。ペンギンたちも好戦的ではないから、ここら辺の国は富の再分配がうまくいっているんだ」

「経済とかはよくわからないけど、平和が一番だよね」

 小さな路地裏まで、表通りみたいに綺麗で清潔感がある。どこにいても、治安がいいらしい。ビィノ様たちがこの世界に召喚された時期は、女の子の数が激減していたから、女の子は攫われたりしていたようだけど。

「リア、そろそろ到着するよ」

「うん」

 私は、フロントが運転するバイクのサイドカーに座っている。バイクにふたり、サイドカーにふたり乗れるみたい。時々、フロントの後ろに載せて貰ってスピードや景色を楽しんだ。だけど、魔法が使えないからすぐ疲れちゃって、4人くらい乗れる半分オープンカーみたいだ。地面に近いから、すごいスピード感があって、怖いくらいのドキドキする迫力があった。

 海を渡るのも、このまま海の上を高速艇のように進んだからびっくり。てっきり船に乗るんだと思った。でも、船酔いしやすいって言ったから、ふたりはわざわざこの旅行のためにケープ国から大金を使ってこのバイクを買ってくれた。
 バイクだし、高くても50万くらいなのかと思ったら、大きなお城が一つ建つくらいの値段らしい。改めて、王子様たちはお金持ちなんだなってマジマジふたりを見つめたから、ふたりともテレてしまった。

 今日は、ビィノ様とカレン様が神殿のパーシィ様という聖女様と待ってくれている。

「わあ、まさかとは思っていたけど……。どう見ても、本当に日本人よ、カレン!」

「先輩ったら。びっくりさせちゃったじゃないですか。可愛い子ですね」

 フロントとインテークに片手ずつとられて部屋に入ると、白い髪のハンサムな綺麗な女性と楽しそうにお話をしていた30歳くらいの綺麗な人と可愛らしい人が私を見てはしゃいだ。

「あ、ごめんね。初めまして。日本人なのよね? 懐かしいわねぇ。ビィノって呼んでね」

「初めまして、リアちゃん。カレンと言います。よろしくね」

「あ、よろしくお願いします。リア、です。日本人です」

「私たちの時代より進んでいるんでしょうねえ……とりあえず、座って座ってー」

 白い髪の人はパーシィ様といってこの国で聖女を務める方で、この神殿の総責任者らしい。なんと、三人とも、65歳を超えていると聞いてびっくりした。なんでも、ビィノさんの夫の元国王様が、アンチエイチングというか、肌を若く保つ魔法を使えるっぽい。

「うわぁ……私もその魔法してもらいたいです」

「ふふふ、ゼファーさんが作ったバイクに乗って来たんでしょう? 3時間くらいで来れるから、いつでも来て来て」

「それがいいですね、先輩! ジスクールお義兄さんも、リアちゃん可愛いし喜んでしてくれるんじゃないですか? それがなくても、頻繁に会いたいわ」

「そうね、なんだかもう一人の孫娘が出来たみたい。クスクス」

 なんでも、ビィノさんはカレンさんが合格した高校に通っていたみたい。出会いから今までの話を聞いて、時にびっくりしたし、時にどうしようもないほどの悲しさを覚えた。だけど、今はふたりとも幸せそう。
 見た目若いふたりに、孫娘とか言われてもちょっと違和感がある。でも、おふたりとも子育てを終えているからか優しさがいっぱいで。なんだかお母さんと話をしているようでこそばゆくて嬉しい。

「色々あったけど、結果オーライね。ひ孫も生まれたし。だけど、リアちゃんは来たばかりなのよね。しかも今の段階でフロント王子とインテーク君っていう夫候補がいるとか、他人事じゃないからこそ心配もしていたの」

「私も、夫が三人いるんだけど、今幸せなの……。当時は凄く悩んでね。辛くて悲しくて、でも夫たちが私を支えてくれたから今の私がいるの。あのね、もしもね、リアちゃんがまだ結婚したくないとか、やっぱりひとりの人がいいって思うなら。誰にも言えなくて悩んでいるのなら、先輩もパーシィ様も、頼りないかもしれないけど私だって力になるわ」


 日本での楽しい雑談や、この世界の、私がまだ知らない雑学なんかを聞いて驚いていた。すると、真剣な表情でビィノさんとカレンさんが頷き合ってからそんな風に言われる。

 勿論、その言葉はフロントたちも聞いていて、ふたりとも、びくりと大きく体を揺らした後、ひゅっと息を飲んだ。私も、なんとなく流されて今に至るから、真剣に考えずに目をそらしていた一番重要な事を言われて戸惑う。

「…………わ、私、は……」

 ビィノさんたちの心配も最もだと思った。誰にも言えないっていうのも、まるで私の心を読んだかのように、ズバンと言い当てられて、なんというか居心地が悪いというか、とにかくこの空気や話題を変えたり、いっそ、この部屋から走って出て行きたくなった。

 複数の夫を持つのは倫理的にどうなの? 

 だからと言って、今更どうなるというの?

 私が、ひとりがいいって言ったら、沢山の人に迷惑がかかるんじゃないの? 大丈夫なの?

 結婚なんてまだしたくないとか、ひとりがいいって……私のわがままなんじゃないの?

 フロントもインテークも良い人だから、嫌いじゃない。好き、だと思う……

 今のまま、優しいふたりに守られて、穏やかな日を過ごしたい、と思う。

 でも、結婚ってそもそも何なんだろう……? 子供を産む事? ずっと一緒にいる事?

 結婚してなくったって、それは出来る事だ。

 じゃあ、友達ってこと? ううん、それは、違うと思う。

 どっちかを選ぶ? そんなの、選ばれなかった人が悲しむ。そんなのは嫌。

 いっそふたりとも断る? そうしたら、もうふたりと今みたいに過ごせない。

 私は、ふたりの言葉に、ぐるぐる答えのでない迷宮に迷い込んでしまった。

 

 





リアたちの乗っているバイクは、HONDAのゴールドウイングGL1800 サイドカーをご覧いただければイメージしやすいかと思います。滅茶苦茶高いです。
作中のサイドカーの横幅は、こちらの世界のものよりも大きめ。小さなリアと大きなスポーツマンのインテークが乗っても若干余裕があるくらいだと思ってください。

ビィノの夫は、カレンの第一夫の兄なんで義兄です。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

獣人の世界に落ちたら最底辺の弱者で、生きるの大変だけど保護者がイケオジで最強っぽい。

真麻一花
恋愛
私は十歳の時、獣が支配する世界へと落ちてきた。 狼の群れに襲われたところに現れたのは、一頭の巨大な狼。そのとき私は、殺されるのを覚悟した。 私を拾ったのは、獣人らしくないのに町を支配する最強の獣人だった。 なんとか生きてる。 でも、この世界で、私は最低辺の弱者。

こわいかおの獣人騎士が、仕事大好きトリマーに秒で堕とされた結果

てへぺろ
恋愛
仕事大好きトリマーである黒木優子(クロキ)が召喚されたのは、毛並みの手入れが行き届いていない、犬系獣人たちの国だった。 とりあえず、護衛兼監視役として来たのは、ハスキー系獣人であるルーサー。不機嫌そうににらんでくるものの、ハスキー大好きなクロキにはそんなの関係なかった。 「とりあえずブラッシングさせてくれません?」 毎日、獣人たちのお手入れに精を出しては、ルーサーを(犬的に)愛でる日々。 そのうち、ルーサーはクロキを女性として意識するようになるものの、クロキは彼を犬としかみていなくて……。 ※獣人のケモ度が高い世界での恋愛話ですが、ケモナー向けではないです。ズーフィリア向けでもないです。

おばさんは、ひっそり暮らしたい

蝋梅
恋愛
30歳村山直子は、いわゆる勝手に落ちてきた異世界人だった。 たまに物が落ちてくるが人は珍しいものの、牢屋行きにもならず基礎知識を教えてもらい居場所が分かるように、また定期的に国に報告する以外は自由と言われた。 さて、生きるには働かなければならない。 「仕方がない、ご飯屋にするか」 栄養士にはなったものの向いてないと思いながら働いていた私は、また生活のために今日もご飯を作る。 「地味にそこそこ人が入ればいいのに困るなぁ」 意欲が低い直子は、今日もまたテンション低く呟いた。 騎士サイド追加しました。2023/05/23 番外編を不定期ですが始めました。

前世で私を嫌っていた番の彼が何故か迫って来ます!

ハルン
恋愛
私には前世の記憶がある。 前世では犬の獣人だった私。 私の番は幼馴染の人間だった。自身の番が愛おしくて仕方なかった。しかし、人間の彼には獣人の番への感情が理解出来ず嫌われていた。それでも諦めずに彼に好きだと告げる日々。 そんな時、とある出来事で命を落とした私。 彼に会えなくなるのは悲しいがこれでもう彼に迷惑をかけなくて済む…。そう思いながら私の人生は幕を閉じた……筈だった。

異世界から来た娘が、たまらなく可愛いのだが(同感)〜こっちにきてから何故かイケメンに囲まれています〜

恋愛
普通の女子高生、朱璃はいつのまにか異世界に迷い込んでいた。 右も左もわからない状態で偶然出会った青年にしがみついた結果、なんとかお世話になることになる。一宿一飯の恩義を返そうと懸命に生きているうちに、国の一大事に巻き込まれたり巻き込んだり。気付くと個性豊かなイケメンたちに大切に大切にされていた。 そんな乙女ゲームのようなお話。

私に番なんて必要ありません!~番嫌いと番命の長い夜

豆丸
恋愛
 番嫌いの竜人アザレナと番命の狼獣人のルーク。二人のある夏の長い一夜のお話。設定はゆるふわです。他サイト夏の夜2022参加作品。

混血の私が純血主義の竜人王子の番なわけない

三国つかさ
恋愛
竜人たちが通う学園で、竜人の王子であるレクスをひと目見た瞬間から恋に落ちてしまった混血の少女エステル。好き過ぎて狂ってしまいそうだけど、分不相応なので必死に隠すことにした。一方のレクスは涼しい顔をしているが、純血なので実は番に対する感情は混血のエステルより何倍も深いのだった。

義弟の婚約者が私の婚約者の番でした

五珠 izumi
ファンタジー
「ー…姉さん…ごめん…」 金の髪に碧瞳の美しい私の義弟が、一筋の涙を流しながら言った。 自分も辛いだろうに、この優しい義弟は、こんな時にも私を気遣ってくれているのだ。 視界の先には 私の婚約者と義弟の婚約者が見つめ合っている姿があった。

処理中です...