完結 R18 BADーふたりを隔てるウォレス線

にじくす まさしよ

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1 ??  R18

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「うっ……はぁ、はぁ……」

 ありえない男性の声がして、ふと気がつくと、薄っすらな暗闇の中で仰向けで横になっていた。ただごろ寝していたわけではない。
 足は大きく広げられ、膝を折りたたまれている。その上から、体重をかけるように、そこそこ大柄な男性にのしかかられていた。

(……苦しい、痛い……え、何? なんなの?)

 状況がわからず、ただされるがままというか、ぴくりとも動かずに上にいる男性にプレスされている。足の付根がぴったりとくっついており、これがなんなのか知らないほどの年齢ではないので、今まさに彼とそういうことをしているのだとはわかった。

 ただ、わかるのはそれだけだ。

 一体、ここはどこなのだろう。そして、彼は誰なのか。

 ぐるぐる頭の中を、いろんな疑問が浮かんで消える。だが、いつまで経っても答えがでそうになかった。

「これで義務は果たした。はあ、跡継ぎを産むまでの辛抱だとはいえ私は……。さっさと離れろ、汚らわしい悪女め」

 すんごく嫌そうにしているイケメンが、離れろと言ってくる。どうやら彼は私のことがとても嫌いらしい。私といるよりも、ナメクジやゴキブリといるほうがマシだと言わんばかりに顔を歪めている。

 言われなくても、私も離れたい。そして、逃げて警察に駆け込みたい。

 が、いかせんそのイケメンに、上から羽交い締めされているようなものだ。彼がどいてくれなければ、離れることができない。
 そもそも、イケメンの若干ふにゃっとしたモノが中に入ったままなのだ。これで、どうやって離れろというのか。

 色々聞きたいことや言いたいことはある。そもそも、私が宅飲みのあと爆睡しているのを不法侵入してきて無理やりコトに及んだ、痴漢暴行犯に変なことを言われる筋合いはない。

 今、私は、白い服を着ている。苦しいほどぴったりした上半身に、下半身はふんわりしてた。レースがたくさん重ねられていて、ちょっとしたドレスのように思える。
 胸の部分は、無理やり下に引っ張ったのか、糸もボタンもヒモもレースも弾け飛んでボロボロだった。スカートもよれよれしわしわ。

 まだ寝る前に飲んだ酒気が残っているのか、恐怖や悲しみよりも怒りが湧いてきた。そもそも、現実的にこんなのありえない。リアリティがなさすぎる状況だからか、夢とも現実ともわからぬまま声をかけた。

「は? あんた誰?」

 向こうから睨んできたのだ。こっちも睨み返す。すると、ずるっと中から半分やわらかくなったモノが出ていき体が離れた。

(うう、気持ち悪い!)

 経験がはじめてというわけではない。酔っ払ったあげく、遊びを覚えはじめたサークルの先輩との朝チュンだって、合コンでいいなとも思っていなかった人と裸で目が覚めて「わぁびっくり」だって、同僚とワンナイト事故もしたことだってあった。
 だけど、知らないイケメン、しかも嫌そうな感じのイケメンとなどは。ないない、いくらイケメンでもあり得ない。酔っ払った挙げ句、悪夢を見ているのだろうか。

「わけのわからないことを……いいか? 王命だから、仕方なくオシェアニィ国で悪女と名高いお前を娶ったんだ。両国の契約のせいで、我がチョウツガイ家とお前のダンパー家の血を受け継ぐ子を数人設けねばならないなんて、屈辱以外の何物でもない。今日の義務は終わった。さっさと出ていけ!」 

 なんで、犯罪者のほうが偉そうにそんなわけのわからないことを言って追い出すのか。しかも、ここは私の家なのに。お前こそ出ていけと言いたかったけれど、うまく指先すら動かせず、ひきずられるように廊下に追い出された。

「おい、お前。ソレを連れて行けっ!」
「侯爵様? それに、奥様……これは、なんという……一体何があったのですか?」

 廊下には、私たち以外に数人いた。その中のひとりに、イケメンはんざいしゃが偉そうに命令している。言われた相手は、恐れおののきながらも戸惑っているようだった。
 
「俺の許可なく質問などするな。いいから、さっさとその悪女ごみ用意していた部屋ごみばこに捨ててこい。いいか? 来月の義務の日まで俺の視界にも耳にもそのゴミを入れるなよ?」

 力が入らない私は、廊下に座り込んでいた。頭をあげる元気すらなく、頭上でそのように吐き捨てる男の言う事を聞いていた。

 勢いよくドアが閉まる。苛立ちをぶつけるように、思い切りドアを閉めたのか、バタンという音が、嫌に大きかった。

「奥様、失礼いたします」

 廊下に座ったままの私の体に、ふわりとした大きな布がかけられた。

「その、立てますか? 大丈夫ですか?」

 かけられた布の下にいる私は、胸がぼろんと出ていて、白いレースのドレスが破られている。しかも、引きずられてここに放り出された。

 どこからどうみても、大丈夫ではない。

「ひっ」

 差し出された手は、とてつもない大柄で恐ろしい姿の男のものだった。私は、その手を取ることなどできず、布の下で自分自身を抱きしめるように丸く縮こまったまま。

「お嬢様! いえ、奥様っ! 大丈夫と仰ってここに向かわれたとはいえ、やっぱり心配で来てみたら。これは、一体……」
「くろーざ……ああ、来てくれたのね……」

 全く聞き覚えのない、でも、なんだか聞き覚えのあるようなホッとする女性の声が聞こえた。私は、無意識になにかを呟いたようだ。
 そして、近づいてくるその声に助けを求めるように手を伸ばし、そのままブラックアウトしたのである。
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