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10 テッポの愚考①
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『とてもきれいな色だね』
初めてシンディ・アールトネンに会った時、僕はこう言った。侯爵家の次男で、相手はたかが伯爵令嬢ではあるが、わが侯爵家は事業の失敗で多額の借金があり、援助と支援を申し出てくれた相手に逆らえない立場になっていた。
両親に、くれぐれもシンディに対して無礼や不誠実な事をするなと言い聞かされていた。兄も、伯爵家の女伯爵の婿になる僕に対して、貧乏で大変な侯爵家よりもいいなと羨ましがられたのである。なんなら代わりたいとも。
お見合いの日、僕は紹介された女の子を見て眉をしかめなかった事を誉めてもらいたかった。だって彼女は真っ黒な髪に真っ赤な瞳で不吉そのものだったから。
いわれのないものだとは知っていたけれど、皆そう言って怖がっていたし、僕だって嫌なものは嫌だ。
兄にそんなに代わりたいのなら代わってくれと、出来もしない望みを心の中で叫んでしまう。
なんて悍ましい色をしているんだろう。吐きそうになるけれど、なるべく彼女を見ないようにしつつ、必要最低限ではあるものの視線を合わせながら、女の子が喜んでいた言葉を次々彼女に吐き出した。
次男である僕にとって、女伯爵になる彼女の婿になる以上の良い縁談もない。
すると、それまで丁寧に庭を案内していた彼女が笑った。とても幸せそうに瞳を輝かせて白いふっくらした頬を桃色に染めたのだ。
なぜか、その時は不吉な色を感じる事がなく、僕はドキドキしてしまったけれどすぐに忘れた。
彼女と仲良くするフリという苦行のあとは、必ず可愛い令嬢と遊んだ。勿論シンディにバレないように慎重に。どうしても令嬢たちと会えない時は、可愛らしい侍女見習いと楽しい時間を過ごしたのである。
13歳の時に彼女の母が亡くなった。涙を流す彼女が美しく感じてしまう。髪の色と同じ喪服とベールが、いつも目を背けたくなる色を隠していたので、小さなたった一人の母を亡くした彼女に対して本気で憐れに思った。
彼女の父は家に全く帰らず愛人の所に入り浸って、そこがまるで家のように過ごしている。愛人との間に子も設けており、その家で使う莫大な資金を伯爵家から搾り取っているようだった。
『あのね、シンディちゃん。僕、立派な大人になってみせる。これからは僕がいるし、誰よりも幸せにしてあげる。どこの家よりもあたたかくて笑いの絶えない家にしようね』
そう言うと、壊れそうなほど悲しむ彼女の小さな手を握って寄り添ったのであった。
そこからは、なぜかシンディを放っておけなくなった。遊んでいた令嬢たちからは不吉な子なんて捨て置けばいいと言われていてもどうしても気になる。
頻繁に会うようにする事で、彼女の色が徐々に気にならなくなっていった。もともと脈絡なくただ単に気味が悪いなと感じていただけだ。周囲があれこれ言うのも、僕を手に入れた彼女への妬みがあったのだろう。
案外、僕たちはこのまま自分で言っていたような結婚生活を送れるんじゃないかなと思い始めた頃、彼女と出会ったのだ。
初めてシンディ・アールトネンに会った時、僕はこう言った。侯爵家の次男で、相手はたかが伯爵令嬢ではあるが、わが侯爵家は事業の失敗で多額の借金があり、援助と支援を申し出てくれた相手に逆らえない立場になっていた。
両親に、くれぐれもシンディに対して無礼や不誠実な事をするなと言い聞かされていた。兄も、伯爵家の女伯爵の婿になる僕に対して、貧乏で大変な侯爵家よりもいいなと羨ましがられたのである。なんなら代わりたいとも。
お見合いの日、僕は紹介された女の子を見て眉をしかめなかった事を誉めてもらいたかった。だって彼女は真っ黒な髪に真っ赤な瞳で不吉そのものだったから。
いわれのないものだとは知っていたけれど、皆そう言って怖がっていたし、僕だって嫌なものは嫌だ。
兄にそんなに代わりたいのなら代わってくれと、出来もしない望みを心の中で叫んでしまう。
なんて悍ましい色をしているんだろう。吐きそうになるけれど、なるべく彼女を見ないようにしつつ、必要最低限ではあるものの視線を合わせながら、女の子が喜んでいた言葉を次々彼女に吐き出した。
次男である僕にとって、女伯爵になる彼女の婿になる以上の良い縁談もない。
すると、それまで丁寧に庭を案内していた彼女が笑った。とても幸せそうに瞳を輝かせて白いふっくらした頬を桃色に染めたのだ。
なぜか、その時は不吉な色を感じる事がなく、僕はドキドキしてしまったけれどすぐに忘れた。
彼女と仲良くするフリという苦行のあとは、必ず可愛い令嬢と遊んだ。勿論シンディにバレないように慎重に。どうしても令嬢たちと会えない時は、可愛らしい侍女見習いと楽しい時間を過ごしたのである。
13歳の時に彼女の母が亡くなった。涙を流す彼女が美しく感じてしまう。髪の色と同じ喪服とベールが、いつも目を背けたくなる色を隠していたので、小さなたった一人の母を亡くした彼女に対して本気で憐れに思った。
彼女の父は家に全く帰らず愛人の所に入り浸って、そこがまるで家のように過ごしている。愛人との間に子も設けており、その家で使う莫大な資金を伯爵家から搾り取っているようだった。
『あのね、シンディちゃん。僕、立派な大人になってみせる。これからは僕がいるし、誰よりも幸せにしてあげる。どこの家よりもあたたかくて笑いの絶えない家にしようね』
そう言うと、壊れそうなほど悲しむ彼女の小さな手を握って寄り添ったのであった。
そこからは、なぜかシンディを放っておけなくなった。遊んでいた令嬢たちからは不吉な子なんて捨て置けばいいと言われていてもどうしても気になる。
頻繁に会うようにする事で、彼女の色が徐々に気にならなくなっていった。もともと脈絡なくただ単に気味が悪いなと感じていただけだ。周囲があれこれ言うのも、僕を手に入れた彼女への妬みがあったのだろう。
案外、僕たちはこのまま自分で言っていたような結婚生活を送れるんじゃないかなと思い始めた頃、彼女と出会ったのだ。
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