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13 お嬢様が帰って来ません②
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私は、下町の小さな家で保護された。下町は治安が悪く、道端で倒れている人がいても知らんぷりされるか身ぐるみはがされて嬲り殺しにされている事が常だ。私は運が良かった。
『可哀そうに……。ごめんね。お金がないからその手を治すための回復魔法を使える神官様をお呼びする事ができないのよ……』
神官を呼べるのは大金持ちと貴族だけだ。一般どころか貧民には縁のない存在である。
『いえ……、あり、がと……。ござ、ま……、す』
私はしばらくの間、ぐるぐるに包帯を巻かれている右手首から先の、何もない空間を見て泣いていた。
助けてくれた人がかいがいしく世話を焼いてくれていなければ食事どころか水さえ飲めずにいただろう。
無気力に過ごしていたある日、執事のセパスチさんが私を見つけてくれた。お嬢様が彼に依頼して、今までに伯爵家を追い出された私たちの救出に乗り出したという。
その後の行動は早かった。私と、私を守ってくれていた彼女や、他にも私と同じようにアイツらに痛めつけられた使用人たちを別邸に運び治療を施してくれた。徐々に回復していくと同時に、お嬢様の危機と決意を聞く。
救出されてすぐ、お嬢様がこっそり明け方前に私たちの所にやって来て涙を流され謝り続けられた。
「わたくしの力がないばっかりに……。こんな……。ごめんね、ごめんなさい……ごめん、ごめんね……」
悪いのはアイツらなのに。まるで自分が傷つけられたかのように、床に膝をついて涙を流す私たちのお嬢様を守ろうと、皆で誓った。そのためにはまずは体を治さねばならない。
「わたくしには、この別邸は広すぎるから、隣のあの家で暮らすわね?」
お嬢様は、私たちにそう言ったが、セパスチさんから違う理由を聞いた。
「お嬢様が、ここで過ごすとアイツらがここにやってくる。そうしたら、君たちが見つかり、今度こそ殺されると心配されていてね……。絶対近寄ろうともしないボロボロの小さな庭師の小屋に行ったとアイツらに報告したら笑い合っていたよ……! くそ!」
別邸は、わざと放置して草木が伸び放題になり荒れ果てているように見せかけた。玄関にはセパスチさんが大きなカギをかけ、裏口の一つから出入りをした。夜も灯りを外に漏らさないようにする。
すると、庭師の家で暮らすお嬢様の元に用事があり呼びに来る仲間の侍女以外、本邸から誰もが来なくなり安全に暮らせるようになった。
私たちがアイツらに見つからないようにするために、粗末な庭師の家で暮らしてくれている女神のような少女。
それ以降も、自分が虐げられ続けているのに、私たちや新たにアイツらに酷い事をされる使用人たちを守ろうと頑張り続けた私たちの光。
──そんな彼女が婚約者に婚約を破棄された、だと?
許さないと、皆が立ち上がる。
もともと、お嬢様を裏切り蔑ろにして、よりにもよってあの悪魔と肉体関係を持ったテッポという男を良く思っていなかった。お嬢様が止めるから、しぶしぶ生きながらえさせていたというのに。
──身の程知らずの愚か者どもめ……
「お嬢様は、本日無事に女伯爵となられたとの知らせが来ている。伯爵代理たちや本邸の裏切り者どもには耳に入れていない」
「では……!」
「ああ、やっと……!」
執事のセパスチ筆頭に、力を合わせて乗っ取られている本邸を掌握するべく動きながら戦闘の訓練をしていた。
──今こそ、立ち上がる時……!
あいつらにしっぽを振りお嬢様をいたぶり続けた使用人たちも全て把握済みだ。
「いくよ」
「おお!」
「ええ!」
「勿論!」
本邸の使用人たちは50名ほど。こちらは15名。多勢に無勢だが……。だけど、決して負けはしない! この日のために血反吐をはく思いで訓練してきたのだから。
私は、他の仲間と違い魔法が使えない。あの日から愛用しているショートソードを右手でしっかり持った。
精鋭部隊となった私たちは、雪のちらつく闇を抜けて、天井裏や隠し通路まで全て把握している本邸へ乗り込んだのだった。
──お嬢様、いえ、女伯爵様! どうかご無事で……! お帰りになられる前に、必ずやこの本邸を、正当な主である貴女様のために取り返してみせます!
『可哀そうに……。ごめんね。お金がないからその手を治すための回復魔法を使える神官様をお呼びする事ができないのよ……』
神官を呼べるのは大金持ちと貴族だけだ。一般どころか貧民には縁のない存在である。
『いえ……、あり、がと……。ござ、ま……、す』
私はしばらくの間、ぐるぐるに包帯を巻かれている右手首から先の、何もない空間を見て泣いていた。
助けてくれた人がかいがいしく世話を焼いてくれていなければ食事どころか水さえ飲めずにいただろう。
無気力に過ごしていたある日、執事のセパスチさんが私を見つけてくれた。お嬢様が彼に依頼して、今までに伯爵家を追い出された私たちの救出に乗り出したという。
その後の行動は早かった。私と、私を守ってくれていた彼女や、他にも私と同じようにアイツらに痛めつけられた使用人たちを別邸に運び治療を施してくれた。徐々に回復していくと同時に、お嬢様の危機と決意を聞く。
救出されてすぐ、お嬢様がこっそり明け方前に私たちの所にやって来て涙を流され謝り続けられた。
「わたくしの力がないばっかりに……。こんな……。ごめんね、ごめんなさい……ごめん、ごめんね……」
悪いのはアイツらなのに。まるで自分が傷つけられたかのように、床に膝をついて涙を流す私たちのお嬢様を守ろうと、皆で誓った。そのためにはまずは体を治さねばならない。
「わたくしには、この別邸は広すぎるから、隣のあの家で暮らすわね?」
お嬢様は、私たちにそう言ったが、セパスチさんから違う理由を聞いた。
「お嬢様が、ここで過ごすとアイツらがここにやってくる。そうしたら、君たちが見つかり、今度こそ殺されると心配されていてね……。絶対近寄ろうともしないボロボロの小さな庭師の小屋に行ったとアイツらに報告したら笑い合っていたよ……! くそ!」
別邸は、わざと放置して草木が伸び放題になり荒れ果てているように見せかけた。玄関にはセパスチさんが大きなカギをかけ、裏口の一つから出入りをした。夜も灯りを外に漏らさないようにする。
すると、庭師の家で暮らすお嬢様の元に用事があり呼びに来る仲間の侍女以外、本邸から誰もが来なくなり安全に暮らせるようになった。
私たちがアイツらに見つからないようにするために、粗末な庭師の家で暮らしてくれている女神のような少女。
それ以降も、自分が虐げられ続けているのに、私たちや新たにアイツらに酷い事をされる使用人たちを守ろうと頑張り続けた私たちの光。
──そんな彼女が婚約者に婚約を破棄された、だと?
許さないと、皆が立ち上がる。
もともと、お嬢様を裏切り蔑ろにして、よりにもよってあの悪魔と肉体関係を持ったテッポという男を良く思っていなかった。お嬢様が止めるから、しぶしぶ生きながらえさせていたというのに。
──身の程知らずの愚か者どもめ……
「お嬢様は、本日無事に女伯爵となられたとの知らせが来ている。伯爵代理たちや本邸の裏切り者どもには耳に入れていない」
「では……!」
「ああ、やっと……!」
執事のセパスチ筆頭に、力を合わせて乗っ取られている本邸を掌握するべく動きながら戦闘の訓練をしていた。
──今こそ、立ち上がる時……!
あいつらにしっぽを振りお嬢様をいたぶり続けた使用人たちも全て把握済みだ。
「いくよ」
「おお!」
「ええ!」
「勿論!」
本邸の使用人たちは50名ほど。こちらは15名。多勢に無勢だが……。だけど、決して負けはしない! この日のために血反吐をはく思いで訓練してきたのだから。
私は、他の仲間と違い魔法が使えない。あの日から愛用しているショートソードを右手でしっかり持った。
精鋭部隊となった私たちは、雪のちらつく闇を抜けて、天井裏や隠し通路まで全て把握している本邸へ乗り込んだのだった。
──お嬢様、いえ、女伯爵様! どうかご無事で……! お帰りになられる前に、必ずやこの本邸を、正当な主である貴女様のために取り返してみせます!
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