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26 女伯爵の帰還①
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すると背後から、助けた女性から声がかかる。
「あの、あなた様は一体……?」
「あ、初めまして。僕はヨウルプッキ。サンタクロース協会の職員でシンディ様のお手伝いをしにここに来たんだ。君は、右手を失ったという侍女さんでしょう? シンディ様はすでに屋敷に到着しているから安心してね」
「……」
「あ、そうだ。こういう時に言うように言われていたんだ。〈政略に心を求めてはいけません〉。彼女がいない時に貴女たちに会ったらこう言えって。よくわかんないけど、これでいい?」
「ああ……! 本当にお嬢様、いえ、主様がお戻りに……! ええ、ええ!」
そう彼女に向かって言うと、嬉しそうに涙を流しながら愛しい人の無事を喜んだ。僕の事を訝しんで睨みつけていたけれど、愛する人から聞いた合言葉を言うと、僕が味方だと信じてくれた。
「んと、今はどんな状況なんですか?」
「使用人たちの制圧がもうすぐ完了するはずなのですが……。ただ、伯爵代理たちのこもる部屋に、屋敷が作り出した守護結界が張られ、足踏みをしている状況です」
僕は、愛する人がなぜ最初にあの部屋に入り、屋敷の主として認められる必要があるのかを彼女の言葉で知った。そのあと、侍女さんを仲間がいるという本邸の一部屋に送ると、愛しい人と別れた場所に戻った。
すると、部屋の中から眩い光が放たれ屋敷全体を覆いだした。
「……! シンディ!」
僕は、愛する人に何かがあったのかと思い、部屋に入ろうと窓に手を掛けた。
すると、窓がゆっくりと動き、部屋の中心で光を纏いながら佇む美しい女性の姿を見つけたのであった。
※※※※
魔法陣から光と風が現れ、やがてそれが収まると、目の前に愛らしいふっくらとしたもこもこの小さなピュヨコがいた。
「まあ、なんてかわいらしいのかしら……」
亡き母が言っていた。この屋敷には主にしか姿を見せないとてもかわいい守護者がいると。産毛のような細くてふんわりした羽が虹色に輝いている。つぶらな瞳も様々に色を変えていて、コテンと首を傾げてこちらを見ている。
『わたくしもかわいいのを見たいです』
『ふふふ、女伯爵としてこの部屋に来て儀式をすれば、その時から貴女だけのお友達になるのよ?』
『ほんと? お友達?』
『ええ、そうよ。お母さまに、シンディが優しくて強くて良い大人になったら友達になってあげるって言ってくれているわ』
『わぁい! えっと、わたくし立派な主になるから、仲良くしてね!』
見えない場所に向かって、まだ見ぬお友達にお願いをした幼い日。やっとこの目で確かめ、そして友達になれる日が来たのだと思うと胸が熱くなった。
「やあ、シンディ。君がこうしてここに来るのを待っていたよ。あの時と違ってちゃんと見えるでしょう?」
かわいらしい小さな嘴を動かして宙に浮くお友達の姿を見て、そっと先ほど傷をつけた指先を差し出す。
「わたくしのお友達。どうか、わたくしとわたくしの大切な人をお守りください」
「うん、シンディはとってもいい子に育ったね。悪い子だったらやっつけちゃうけど、シンディならいいよ、お友達になろう! お友達は守ってあげるね」
指先に、ありったけの魔力を込めると、傷から湧き出た朱を守護者がペロリと舐めとる。わたくしと守護者が混ざり合うような感覚が体中をめぐり、とても気持ちがいい。温かくて、優しくて、怖いほどの強大な力を感じるけれど安心する。
先ほどまでとは比べものにならないほどの力が体中、髪の毛一本一本にまで行き渡っていた。
「シンディ、ほら、目を開けてごらん。君を待ち望んでいる人がいるよ」
うっとりと閉じていた目を開ける。
そこには、なんの得もないだろうに不安で焦るわたくしを信じてついて来てくれると言ったヨウルプッキが微笑んで手を差し伸べてくれていたのであった。
とんでもない事をしたというのに、彼はわたくしを一切責めはしなかった。
身分もあっただろう。だけど、恐縮はしていたようだが、本心からわたくしの粗相を許して笑ってくれていたと思う。
彼に謝罪すべきはわたくしだ。けれども、彼はそれを望んでいないように思える。
わたくしは、彼の差し出した手にそっと手を置く。
「無事で良かったです」
彼のオッドアイの揺らめきが熱く何かをわたくしに訴えかけている気がする。
それが何かを知りたくなってしまい、じっと見つめ返したのであった。
「あの、あなた様は一体……?」
「あ、初めまして。僕はヨウルプッキ。サンタクロース協会の職員でシンディ様のお手伝いをしにここに来たんだ。君は、右手を失ったという侍女さんでしょう? シンディ様はすでに屋敷に到着しているから安心してね」
「……」
「あ、そうだ。こういう時に言うように言われていたんだ。〈政略に心を求めてはいけません〉。彼女がいない時に貴女たちに会ったらこう言えって。よくわかんないけど、これでいい?」
「ああ……! 本当にお嬢様、いえ、主様がお戻りに……! ええ、ええ!」
そう彼女に向かって言うと、嬉しそうに涙を流しながら愛しい人の無事を喜んだ。僕の事を訝しんで睨みつけていたけれど、愛する人から聞いた合言葉を言うと、僕が味方だと信じてくれた。
「んと、今はどんな状況なんですか?」
「使用人たちの制圧がもうすぐ完了するはずなのですが……。ただ、伯爵代理たちのこもる部屋に、屋敷が作り出した守護結界が張られ、足踏みをしている状況です」
僕は、愛する人がなぜ最初にあの部屋に入り、屋敷の主として認められる必要があるのかを彼女の言葉で知った。そのあと、侍女さんを仲間がいるという本邸の一部屋に送ると、愛しい人と別れた場所に戻った。
すると、部屋の中から眩い光が放たれ屋敷全体を覆いだした。
「……! シンディ!」
僕は、愛する人に何かがあったのかと思い、部屋に入ろうと窓に手を掛けた。
すると、窓がゆっくりと動き、部屋の中心で光を纏いながら佇む美しい女性の姿を見つけたのであった。
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魔法陣から光と風が現れ、やがてそれが収まると、目の前に愛らしいふっくらとしたもこもこの小さなピュヨコがいた。
「まあ、なんてかわいらしいのかしら……」
亡き母が言っていた。この屋敷には主にしか姿を見せないとてもかわいい守護者がいると。産毛のような細くてふんわりした羽が虹色に輝いている。つぶらな瞳も様々に色を変えていて、コテンと首を傾げてこちらを見ている。
『わたくしもかわいいのを見たいです』
『ふふふ、女伯爵としてこの部屋に来て儀式をすれば、その時から貴女だけのお友達になるのよ?』
『ほんと? お友達?』
『ええ、そうよ。お母さまに、シンディが優しくて強くて良い大人になったら友達になってあげるって言ってくれているわ』
『わぁい! えっと、わたくし立派な主になるから、仲良くしてね!』
見えない場所に向かって、まだ見ぬお友達にお願いをした幼い日。やっとこの目で確かめ、そして友達になれる日が来たのだと思うと胸が熱くなった。
「やあ、シンディ。君がこうしてここに来るのを待っていたよ。あの時と違ってちゃんと見えるでしょう?」
かわいらしい小さな嘴を動かして宙に浮くお友達の姿を見て、そっと先ほど傷をつけた指先を差し出す。
「わたくしのお友達。どうか、わたくしとわたくしの大切な人をお守りください」
「うん、シンディはとってもいい子に育ったね。悪い子だったらやっつけちゃうけど、シンディならいいよ、お友達になろう! お友達は守ってあげるね」
指先に、ありったけの魔力を込めると、傷から湧き出た朱を守護者がペロリと舐めとる。わたくしと守護者が混ざり合うような感覚が体中をめぐり、とても気持ちがいい。温かくて、優しくて、怖いほどの強大な力を感じるけれど安心する。
先ほどまでとは比べものにならないほどの力が体中、髪の毛一本一本にまで行き渡っていた。
「シンディ、ほら、目を開けてごらん。君を待ち望んでいる人がいるよ」
うっとりと閉じていた目を開ける。
そこには、なんの得もないだろうに不安で焦るわたくしを信じてついて来てくれると言ったヨウルプッキが微笑んで手を差し伸べてくれていたのであった。
とんでもない事をしたというのに、彼はわたくしを一切責めはしなかった。
身分もあっただろう。だけど、恐縮はしていたようだが、本心からわたくしの粗相を許して笑ってくれていたと思う。
彼に謝罪すべきはわたくしだ。けれども、彼はそれを望んでいないように思える。
わたくしは、彼の差し出した手にそっと手を置く。
「無事で良かったです」
彼のオッドアイの揺らめきが熱く何かをわたくしに訴えかけている気がする。
それが何かを知りたくなってしまい、じっと見つめ返したのであった。
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