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52 恋人たちのクリスマスは聖なる幸せをもたらす③ R15~
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「シンディ、シンディ……! どうしたの? 返事をして……」
「ヨウルプッキ様、いえ、ヨークトール殿下……。その、突然すぎて……わたくしどうしたらいいのか……」
ヨークトールは、やっと応えてくれたシンディの戸惑う気持ちを表した言葉を聞き、びくりと大きな体を震わせた。
「……殿下とか言わないで……。僕はどうしても、シンディに釣り合う身分が欲しかった。だから、万が一の可能性を信じてオット殿についていった。僕だって、未だに王子とか信じられない。本当はさ、僕は身分とかどうでもいいんだ。でも、平民だと君が遠くに行ってしまうから。だから、王子でもなんでも身分があるなら政略結婚を申し込むなり、君を妻に出来るなら、どんな手段も使おうと思った! 僕は、シンディ、君が欲しい。君を別の男に渡したくなんてないんだっ!」
「ヨークトール様……?」
呼吸ができないほどきつく締めあげられるように、彼の胸と腕に捕らわれた。シンディは、小さく囁くように、どちらの名を呼べばいいのかわからず、彼の本当の名を口にした。
「シンディ、愛しているんだ。好きなんだ。僕には君だけなんだ……! わ、別れるなんて嫌だ……!」
シンディの肩に顔を埋める彼の目から涙が溢れる。シンディに見られたくなくて、それを隠すように露わになっている彼女の首筋を唇で食む。
「ん……」
ちゅぅ
ヨークトールが、白く細い首筋を吸い上げると、チクリと痛みが生じた。
「シンディ……シンディッ!」
「あ……、あっ!」
激しく求めるように、首筋にいくつもの彼の所有印が刻まれていく。
『政略に心を求めてはいけません』
──これは、政略結婚で……。だから、断れなくって……
呪いのように染み込んだ母の言葉がよみがえる。
『政略に心を求めてはいけません』
「シンディ、愛している、愛しているんだ……」
──お母様、この政略結婚に、心を求めてはいけませんか……?
去年、心を求めた政略結婚の相手に裏切られた事を思い出す。また、あんな風に心変わりされたら、今度はもう立ち上がれないくらい傷つくだろう。
『あんたの母が言っていたのは、政略に心を求めてはいけません、だったかい? 案外、そうでもないさ』
『たまには俺を見習ってなりふり構わずに行けよ!』
──ターニャ様、オット様……、わたくしも、彼の心が欲しい。彼の全てをわたくしだけのものにしたい……
「シンディ……」
ヨークトールが、彼女の耳に直接心を贈るように何度も囁く。身じろぎするようなくすぐったさがシンディを襲い、逃れたくなるような感覚に、もっと囚われたいとも思った。
「ヨークトール様……。愛しています。愛しているんです。わたくしも、貴方の全てが欲しいんです」
「シンディ、とっくに僕は君の、君だけのものだ」
「ずっと、ずっと。ずうっと側にいてくださいませ。ヨークトール様」
「言われなくても。君こそ、僕のここにいてくれる?」
「はい、どうぞこの胸の中にいさせてくださいませ」
「シンディ……」
ヨークトールが、そっとシンディの瞳を見つめる。
「今夜、僕と過ごして欲しいんだ」
「……! それって……」
「僕の、妻になってください。いいね? 今年中に僕たちの仲を知らせて、他の貴族たちを黙らせる必要もあるらしいけど。でも、僕がもう待てない。だから……」
シンディは、初夜について簡単に説明を聞いている。体験した事のないその誘いに、少しの不安が心に生まれた。けれど、愛しい人とならきっと幸せな時間になるに違いないのだ。
コクリと、小さく頷き、恥ずかしさのあまり彼の胸に隠れるように縋った。
承諾のその動きを見て、ヨークトールは瞬きの時間すらもどかしいとばかりに転移魔法を呟く。ふわっと体が浮くような感覚に見舞われたのも一瞬で。
「ここは……」
たどり着いた場所は、一年前、二人が過ごした彼の家だった。
「酔っている間の事は思い出せないまま?」
「はい」
「じゃあ、今日が初めてここに君が来た日にしようか」
「え?」
「あの時は不測の事態だったし。僕だけしか覚えていないでしょう? だから、シンディがしっかり覚えて、僕の妻になってくれる今日が、二人で過ごす初めての夜になるんだ。明日になったらすぐにでも、結婚の正式な手続きをしようね」
「ヨウル……、ヨークトール様……」
「いきなり名前が変わるなんてややこしいよね。僕はどっちでもいいよ。シンディが呼んでくれる名前が、僕の名前だと思うから」
「では、ヨウ……、ヨール様とお呼びしてもいいですか? 安直ですが、わたくしにとってヨウルプッキ様という名が大事で、貴方の産まれた国の両陛下にとってはヨークトール様という名が大切だと思うのです」
「ヨールか。うん、いいね。もっと僕をそう呼んで」
「ヨール様……」
「様はいらないけどね」
会話の途切れる隙間を狙って、彼がシンディに口づける。徐々に深く、長くなるキスの熱が上がっていった。
「シンディ、シンディ……。ちゅっ、ずっと、こうしたかった。僕のシンディ」
「あ、ん……。ヨール、ヨールゥ」
シンディの体から力が抜けて行く。思考が馬鹿になり、気が付くと柔らかなベッドに寝かされて、胸に大きな手の平が当たっていた。
「ヨウルプッキ様、いえ、ヨークトール殿下……。その、突然すぎて……わたくしどうしたらいいのか……」
ヨークトールは、やっと応えてくれたシンディの戸惑う気持ちを表した言葉を聞き、びくりと大きな体を震わせた。
「……殿下とか言わないで……。僕はどうしても、シンディに釣り合う身分が欲しかった。だから、万が一の可能性を信じてオット殿についていった。僕だって、未だに王子とか信じられない。本当はさ、僕は身分とかどうでもいいんだ。でも、平民だと君が遠くに行ってしまうから。だから、王子でもなんでも身分があるなら政略結婚を申し込むなり、君を妻に出来るなら、どんな手段も使おうと思った! 僕は、シンディ、君が欲しい。君を別の男に渡したくなんてないんだっ!」
「ヨークトール様……?」
呼吸ができないほどきつく締めあげられるように、彼の胸と腕に捕らわれた。シンディは、小さく囁くように、どちらの名を呼べばいいのかわからず、彼の本当の名を口にした。
「シンディ、愛しているんだ。好きなんだ。僕には君だけなんだ……! わ、別れるなんて嫌だ……!」
シンディの肩に顔を埋める彼の目から涙が溢れる。シンディに見られたくなくて、それを隠すように露わになっている彼女の首筋を唇で食む。
「ん……」
ちゅぅ
ヨークトールが、白く細い首筋を吸い上げると、チクリと痛みが生じた。
「シンディ……シンディッ!」
「あ……、あっ!」
激しく求めるように、首筋にいくつもの彼の所有印が刻まれていく。
『政略に心を求めてはいけません』
──これは、政略結婚で……。だから、断れなくって……
呪いのように染み込んだ母の言葉がよみがえる。
『政略に心を求めてはいけません』
「シンディ、愛している、愛しているんだ……」
──お母様、この政略結婚に、心を求めてはいけませんか……?
去年、心を求めた政略結婚の相手に裏切られた事を思い出す。また、あんな風に心変わりされたら、今度はもう立ち上がれないくらい傷つくだろう。
『あんたの母が言っていたのは、政略に心を求めてはいけません、だったかい? 案外、そうでもないさ』
『たまには俺を見習ってなりふり構わずに行けよ!』
──ターニャ様、オット様……、わたくしも、彼の心が欲しい。彼の全てをわたくしだけのものにしたい……
「シンディ……」
ヨークトールが、彼女の耳に直接心を贈るように何度も囁く。身じろぎするようなくすぐったさがシンディを襲い、逃れたくなるような感覚に、もっと囚われたいとも思った。
「ヨークトール様……。愛しています。愛しているんです。わたくしも、貴方の全てが欲しいんです」
「シンディ、とっくに僕は君の、君だけのものだ」
「ずっと、ずっと。ずうっと側にいてくださいませ。ヨークトール様」
「言われなくても。君こそ、僕のここにいてくれる?」
「はい、どうぞこの胸の中にいさせてくださいませ」
「シンディ……」
ヨークトールが、そっとシンディの瞳を見つめる。
「今夜、僕と過ごして欲しいんだ」
「……! それって……」
「僕の、妻になってください。いいね? 今年中に僕たちの仲を知らせて、他の貴族たちを黙らせる必要もあるらしいけど。でも、僕がもう待てない。だから……」
シンディは、初夜について簡単に説明を聞いている。体験した事のないその誘いに、少しの不安が心に生まれた。けれど、愛しい人とならきっと幸せな時間になるに違いないのだ。
コクリと、小さく頷き、恥ずかしさのあまり彼の胸に隠れるように縋った。
承諾のその動きを見て、ヨークトールは瞬きの時間すらもどかしいとばかりに転移魔法を呟く。ふわっと体が浮くような感覚に見舞われたのも一瞬で。
「ここは……」
たどり着いた場所は、一年前、二人が過ごした彼の家だった。
「酔っている間の事は思い出せないまま?」
「はい」
「じゃあ、今日が初めてここに君が来た日にしようか」
「え?」
「あの時は不測の事態だったし。僕だけしか覚えていないでしょう? だから、シンディがしっかり覚えて、僕の妻になってくれる今日が、二人で過ごす初めての夜になるんだ。明日になったらすぐにでも、結婚の正式な手続きをしようね」
「ヨウル……、ヨークトール様……」
「いきなり名前が変わるなんてややこしいよね。僕はどっちでもいいよ。シンディが呼んでくれる名前が、僕の名前だと思うから」
「では、ヨウ……、ヨール様とお呼びしてもいいですか? 安直ですが、わたくしにとってヨウルプッキ様という名が大事で、貴方の産まれた国の両陛下にとってはヨークトール様という名が大切だと思うのです」
「ヨールか。うん、いいね。もっと僕をそう呼んで」
「ヨール様……」
「様はいらないけどね」
会話の途切れる隙間を狙って、彼がシンディに口づける。徐々に深く、長くなるキスの熱が上がっていった。
「シンディ、シンディ……。ちゅっ、ずっと、こうしたかった。僕のシンディ」
「あ、ん……。ヨール、ヨールゥ」
シンディの体から力が抜けて行く。思考が馬鹿になり、気が付くと柔らかなベッドに寝かされて、胸に大きな手の平が当たっていた。
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