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お姉さまが、そんなっ!
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ヒーロニアンヌ視点です。
目の前で、何が起こったのか信じられず、ただ、呆然とお姉さまが連行されるのを見ているしかできなかった。大きな扉から、お姉さまの後ろ姿が消えて、重厚なそれが音をたてて閉じられた途端、我に返って愛しい人の腕を掴んだ。
「ア……、アルさま。なぜこのような……」
「ヒーロニアンヌ。私はそなたを妃にしたい。こうするしかなかったのだ」
「そ、そんな……。このような……。ああ、わたくしがいたから、わたくしがアルさまを愛してしまったから。だから、だからお姉さまがっ!」
わたくしは、自分という人間が存在した事がそもそもの元凶だと思った。小さな頃は、お父さまがいて、お母さまがいて、ただそれだけで幸せだった。
ようやく、お父さまがお母さまとわたくしを家に呼んでくださったときは、とても、とても幸せで。未来が輝いているような気がした。
家に入ると、美しく優しい少女がいた。なんと、一人っ子だと思っていたが、姉がいたなんて。そう感動してお姉さまのご厚意に、何も考えずに喜び手をとってしまった。
初めのうちは、優しい侍女や、下働きの子たちの笑顔に囲まれて、幸せだけを噛みしめていただけだった。
でも、なぜか違和感を感じた。お姉さまは、会えば優しく微笑んでくださり、そして頭を撫でてほめてくださる。勉強も、マナーも何もかも足らないわたくしに、根気よく、わかりやすいように様々な事をおしえてくださった。期待に応えるべく、わたくしも頑張って、そして、周囲の視線や、かすかに聞こえてくる「声」にようやく気付いた時。
お姉さまのこれまでの境遇や、使用人たちのお姉さまへのさげずんだような視線が、家のあちこちにあった。
わたくしは、正真正銘お父さまの娘ではあるが、対外的には連れ子ということになっていた。家の中では、血縁としてふるまっていいとは言われていたけれども。
本来であれば、亡くなられたとはいえ正妻の娘であるお姉さまこそ、皆に愛され、そして、わたくし以上に豪華なドレスに身を包み、かしづかれるはずなのに。
それとなく、母や、専属の侍女に訊ねた物の濁されて困らせるだけだった。お姉さま自身や、お父さまにはとても聞けない。
酷く暴力を振るわれたり、食事を抜かれたりするような虐待まではなさそうでほっとしたが、この認識も間違いだと気づいたのはごく最近だ。
お姉さまは、鞭を奮われ、ときには食事も出されず、出されても残飯のような物だった事もあるらしい。
目の前が真っ白になった。だって、お姉さまは、いつだって凛としていて、お父さまや使用人たちに多少冷遇されているとはいえ、毅然と堪えてなさそうな態度だったし、王子さまという史上最高の方を婚約者にもつのだ。
わたくしは、いくら日常で愛されているとはいえ、このままでは捨てられ未来がない、対外的には連れ子のわたくしよりも、ずっとお姉さまのほうが比べものにならないほど幸せのはずだ、そう思っていたのに……。
お姉さまは、きっとわたくしに対して複雑な思いをされているだろう。でも、とても優しく接してくださるのに、わたくしはなんと自分勝手で、与えられるいろんなものを当然のように受け取っていた愚か者だったのだろう。
わたくしの出来が悪ければ、お姉さまが叱責されてしまう。出来る限り、がんばって失敗しなようにしようと思った。
学園で、アルさまをひと目見た時に、雷に打たれたように時が止まった。何を言われたのかわからず、ふわふわとその日を過ごして、気が付けば自室のベッドの中だった。
こういった感情が、恋だと気づき、アルさまにも同じ思いを返され、あっという間に愛に変化した。ほどなく、最期は守っていたけれども、体を何度も重ね合わせ、幸せで、未来のない切なさで心を痛め、でも、アルさまが愛しくて、恋しくて……。
──お姉さまが消えていなくなればいいのに……。
こう思ってしまう自分が信じられず、涙で枕を濡らさない日はなかった。
お父さまや、お姉さまが、わたくしに内緒で何かを陛下たちと何かを調整している事は気づいていた。でも、わたくしには何も教えて下さらなかった。
今日、アルさまに彼の色のドレスやアクセサリーを贈られて、お姉さまでなくわたくしをエスコートしてくださり、明日には別れなのかもしれないと感じた。最期なら、今日のこのひと時を精一杯楽しもう、そう思っていた。
でも、アルさまは、お姉さまに一方的に婚約破棄を宣言された。驚愕と、大切なお姉さまへの酷い仕打ちにアルさまへの小さな怒りが湧き起こる。でも、でも……。
──嬉しい……。今まで悲しくて切なくて仕方がなかった。でも、それも今日で終わり。ごめんなさい、お姉さま。どうぞアルさまの隣からこのまま大人しく消えてくださいませ。代わりに、わたくしが幸せになりますから……!
次回からラブエッチに向けて、舞台は監禁先へ変わります
目の前で、何が起こったのか信じられず、ただ、呆然とお姉さまが連行されるのを見ているしかできなかった。大きな扉から、お姉さまの後ろ姿が消えて、重厚なそれが音をたてて閉じられた途端、我に返って愛しい人の腕を掴んだ。
「ア……、アルさま。なぜこのような……」
「ヒーロニアンヌ。私はそなたを妃にしたい。こうするしかなかったのだ」
「そ、そんな……。このような……。ああ、わたくしがいたから、わたくしがアルさまを愛してしまったから。だから、だからお姉さまがっ!」
わたくしは、自分という人間が存在した事がそもそもの元凶だと思った。小さな頃は、お父さまがいて、お母さまがいて、ただそれだけで幸せだった。
ようやく、お父さまがお母さまとわたくしを家に呼んでくださったときは、とても、とても幸せで。未来が輝いているような気がした。
家に入ると、美しく優しい少女がいた。なんと、一人っ子だと思っていたが、姉がいたなんて。そう感動してお姉さまのご厚意に、何も考えずに喜び手をとってしまった。
初めのうちは、優しい侍女や、下働きの子たちの笑顔に囲まれて、幸せだけを噛みしめていただけだった。
でも、なぜか違和感を感じた。お姉さまは、会えば優しく微笑んでくださり、そして頭を撫でてほめてくださる。勉強も、マナーも何もかも足らないわたくしに、根気よく、わかりやすいように様々な事をおしえてくださった。期待に応えるべく、わたくしも頑張って、そして、周囲の視線や、かすかに聞こえてくる「声」にようやく気付いた時。
お姉さまのこれまでの境遇や、使用人たちのお姉さまへのさげずんだような視線が、家のあちこちにあった。
わたくしは、正真正銘お父さまの娘ではあるが、対外的には連れ子ということになっていた。家の中では、血縁としてふるまっていいとは言われていたけれども。
本来であれば、亡くなられたとはいえ正妻の娘であるお姉さまこそ、皆に愛され、そして、わたくし以上に豪華なドレスに身を包み、かしづかれるはずなのに。
それとなく、母や、専属の侍女に訊ねた物の濁されて困らせるだけだった。お姉さま自身や、お父さまにはとても聞けない。
酷く暴力を振るわれたり、食事を抜かれたりするような虐待まではなさそうでほっとしたが、この認識も間違いだと気づいたのはごく最近だ。
お姉さまは、鞭を奮われ、ときには食事も出されず、出されても残飯のような物だった事もあるらしい。
目の前が真っ白になった。だって、お姉さまは、いつだって凛としていて、お父さまや使用人たちに多少冷遇されているとはいえ、毅然と堪えてなさそうな態度だったし、王子さまという史上最高の方を婚約者にもつのだ。
わたくしは、いくら日常で愛されているとはいえ、このままでは捨てられ未来がない、対外的には連れ子のわたくしよりも、ずっとお姉さまのほうが比べものにならないほど幸せのはずだ、そう思っていたのに……。
お姉さまは、きっとわたくしに対して複雑な思いをされているだろう。でも、とても優しく接してくださるのに、わたくしはなんと自分勝手で、与えられるいろんなものを当然のように受け取っていた愚か者だったのだろう。
わたくしの出来が悪ければ、お姉さまが叱責されてしまう。出来る限り、がんばって失敗しなようにしようと思った。
学園で、アルさまをひと目見た時に、雷に打たれたように時が止まった。何を言われたのかわからず、ふわふわとその日を過ごして、気が付けば自室のベッドの中だった。
こういった感情が、恋だと気づき、アルさまにも同じ思いを返され、あっという間に愛に変化した。ほどなく、最期は守っていたけれども、体を何度も重ね合わせ、幸せで、未来のない切なさで心を痛め、でも、アルさまが愛しくて、恋しくて……。
──お姉さまが消えていなくなればいいのに……。
こう思ってしまう自分が信じられず、涙で枕を濡らさない日はなかった。
お父さまや、お姉さまが、わたくしに内緒で何かを陛下たちと何かを調整している事は気づいていた。でも、わたくしには何も教えて下さらなかった。
今日、アルさまに彼の色のドレスやアクセサリーを贈られて、お姉さまでなくわたくしをエスコートしてくださり、明日には別れなのかもしれないと感じた。最期なら、今日のこのひと時を精一杯楽しもう、そう思っていた。
でも、アルさまは、お姉さまに一方的に婚約破棄を宣言された。驚愕と、大切なお姉さまへの酷い仕打ちにアルさまへの小さな怒りが湧き起こる。でも、でも……。
──嬉しい……。今まで悲しくて切なくて仕方がなかった。でも、それも今日で終わり。ごめんなさい、お姉さま。どうぞアルさまの隣からこのまま大人しく消えてくださいませ。代わりに、わたくしが幸せになりますから……!
次回からラブエッチに向けて、舞台は監禁先へ変わります
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