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ぼくのおかあさまと、おとうさまは、せかいいちなのよ?

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 たったったと、廊下を走る。息を切って目を輝かせながら、長い長い道を進むと、大きな大人の人たちぼくがぶつからないように避けてくれるんだ。

「おや、ベルンハルト様、どうしましたか?」
「あ、しゃちょーのじぃじ、あのね、ぼくね、おかあさまにプレゼントがあるの」
「おや、それはそれは。会頭が喜ばれますなあ」
「あ、しゃちょーのじぃじ、ぼくいかなくちゃ」
「では、お供しましょう」

 もう一度走り出すと、じぃじがゆっくりと後ろをついて来てくれる。すると、会社の人たちが慌てて頭を下げ始めるんだ。しゃちょーのじぃじは、この会社の一番偉い人らしい。

「おかあさま!」
「まあ、ベルンハルト! これはわたくしの夢? ああ、朝からこんな所に連れて来られて泣いているわたくしを憐れんだ神が奇跡をもたらしてくれたのかしら?」
「おかあさまー!」

 朝からじぃじたちにされてしまったおかあさまに会えてうれしくなる。にこにこと笑って、椅子から立ちあがり、手を広げて笑っているおかあさまに飛びついた。

「ふふふ、ベルンハルト―。会いたかったわ……。もう2時間も会えないなんて、お母様涙が出そうだったのよ?」
「ぼくもあいたかったー!」
「イザベル様……。ベルンハルト、力一杯抱きついたら危ないじゃないか」

 おかあさまは、ぼくが飛びついた拍子に後ろにコロンと倒れてしまった。でも、おとうさまがおかあさまの下敷きになってぼくごと抱えてくれるんだ。

「きゃっ、トールったら。なんて素敵なの!」
「うわあ、おとうさまかっこいい!」

 おかあさまとぼくを、ぐいっと抱きしめたまま立ち上がるおとうさまは、なんでもないようなお顔をするんだ。

  ぼくにも、じぃじたちにも誰にもこんなふうに力強く出来ないってお母様が目をにしておとうさまに惚れ直しちゃうんだって。

「ベルンハルト、ここに今日は来たらダメだと言っただろう?」
「ごめんなさい……」
「あら、そんな事はないわよ。ベルンハルトがここに来ちゃダメなら、わたくしが家に帰るだけよ」
「イザベル様……! それだけはっ」
「おかあさま、おしごとは、じぃじたちがこまるのよ? メ、よ?」
「だってぇ、この人たちったらいつまでもわたくしをこの執務室に拉致監禁しちゃって。わたくしは引退するって言ってるのにぃ。あなたたち、まんまとベルンハルトを誑かしちゃって……。どうしてくれようかしら」
「イザベル様、じぃじたち、いや、会社の皆さんがお困りだ」
「ううう、トールまで……。わかりました、わかったわよお、もう。ほら、さっさと次の書類!」

 おかあさまが叫びながら物凄い速さで仕事を終わらせるのをお膝の上で待っていた。そうしたら、おとうさまが抱っこしてくれるから、そこからはおかあさまのお仕事を上から覗きこむんだ。

 地方の綿花が水害で半数枯れたから、大きな国の税金があがるとか、塩が取れなくなって世界的に物価が変動しちゃって貧困が増えるとかなんとか。

「あ、おかあさま、さっきのしょるいは、すうじがひとけたまちがってるのよ?」
「あら? そうだったかしら?」
「うん。それ、そのしたのしょるい。ほら、このあいだ、ジャンヌおねえさまがいっていたでしょう? ここは、0がひとつたらないのよ?」
「あらほんと。すごいわ、ベルンハルト、イイコね」
「えへへ」

 こういうやり取りをしていると、じぃじたちが、天才だとか、次代も安泰だって涙を流して喜んでくれるんだ。じぃじたちは会社ので、本当のじぃじじゃないんだって。でも、ぼくを可愛がってくれるから大好き。

「おしごとおつかれさま。おかあさま、はいどうぞ」
「あら? ベルンハルトこれはなあに?」
「ふふふ、いつもおしごとをがんばる、おかあさまに、げんきのでるいしをあげる」
「ベルンハルト? これはどうやって手に入れたんだ? 魔石に見えるが……。誰かに貰ったのか?」
「えっとね、おにわで、のセバスチアーノとあそんでいたら、おっきなかっこいいトカゲがきてね、えっとね、みんなをいじめだしたから、おしおきでえいっておしたの。そうしたら、トカゲがきえて、これがおちていたのよ?」
「あらまあ、ベルンハルトったら。セバスチアーノは、しつじって言うのよ?」
「ひつじ…… し、し、し……。ひつじ!」
「ふふふ、なんてかわいいのっ! うちの子最高!」
「いや、ベル……。そうじゃないだろ?」
「んー? ベルンハルトはとってもかわいいしかっこいい。そうでしょう?」
「それはそうだが。いや、そうじゃなくて着眼点はそこじゃない。ほら、みなさんが顎が外れるほどびっくりしている」
「あら? 皆どうしたの?」

「あの、トカゲというのはもしかして、……、その石の大きさからして、ワイバーンの上位種の……ド、ドラゴンでは」
「うーんと、ひつじのセバスチアーノはそんなふうにいってた!」
「まあ。ベルンハルト、あなたドラゴンを倒したの? これがほんとのドラゴンスレイヤーベルンハルト? か、かっこいいわ!」
「ふふふ、ぼく、かっこいい?」
「ええ、世界一かっこいいわ! あ、トールと同じくらいね?」
「わーい、おとうさまとおんなじ!」
「いや、俺でもドラゴンは少々手こずるが……」
「ナイトハルト殿はソードマスターの称号を得られたのでしたかな。うむ。うちの商会は不滅ですな」

 部屋中に笑い声が響く。

「もういいわよね?  今日のノルマ終わったからね? 普通の社員の10倍は働かされちゃったわ。ふぅ、あなたたち、わたくしだってそのうち引退だし、ナイトハルトもベルンハルトも渡しませんからね?」
「俺はベルと一緒にいられればそれでいい」
「ぼくも、ぼくもおかあさまとおとうさまといっしょ! だーいすきっ! でね、でね、じぃじたちもいっしょなのよ?」
「ふふふ、なんてかわいいのっ!」
「ベルンハルトはかしこい、いいこだな」

 おかあさまが、ぼくにちゅっちゅってキスをくれるんだ。もちろんおとうさまも。くすぐったくて、首をすぼめちゃう。

「ベルンハルト様……! じぃじはあなた様について行きますぞっ!」
「ふふふ、じぃじたちもだいすきなのよ?」

 そうやって執務室で楽しんでいたら、扉がバンっと勢いよく開いた。

「ベルンハルト―! あそぼうぜ~!」
「あ、おかあさま、おとうさま、おともだちがきてくれたの」
「これ、お前たち、会頭がお優しいからといってノックもなしに……!」
「ふふふ、子供はルールそっちのけでいいのよ。今の内だけなのだから」
「そうやって甘やかすから……。しょうがないですなあ……」
「大人になったらきちんと出来るようになるわよ。ねえ、みんな?」
「うん!」
「ほら、皆、仲良くいっぱい遊んでらっしゃい。ケガはしないようにねえ」
「はーいっ!」

 ぼくは、とってもしあわせ。この会社にはぼくと同じように、家にいられない社員さんたちの子供が、希望があれば預ける事が出来る。

  これは、おかあさまが、特に家で子をみられない事情がある場合、親が子と、子が親とやむを得ない状況で離され孤独にならないように託児所を作ったから。
  こんな風に社員の家族を考えるおかあさまは、とってもすばらしいんだって。自分だけ、ぼくとの時間を持てるなんて気が引けるのと、やっぱり親子は、出来る限り一緒じゃないとというおかあさまの考えに賛同する人たちが何気に多いんだって。

 ぼくは、そこにいる子たちといっぱい遊ぶんだ。そうすれば、時々寂しい時もあるけれど楽しい時間を過ごせる。



 まだ皆には内緒なんだけど、次のお誕生日には、もっとしあわせが増えてるんだって。男の子かな? 女の子かなあ? ふふふ、早く、幸せが増えますよーにっ!













ここまでお付き合いいただき、また、ベルとトールたちを応援してくださりありがとうございました。
またの機会がありましたらよろしくお願いいたします。

らぶえっちの回は別の物語、別のキャラ達で、ご縁ががありましたら、またご覧くださいませ。

現行の作品ではない、筋肉と愛欲シリーズ第二弾はタイトルとあらすじ、数話は出来ています。体験授業が終わる頃の進捗状況次第でアップさせていただきますね。

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