完結  R18 転生したら、訳ありイケメン騎士様がプロポーズしてきたので、回避したいと思います

にじくす まさしよ

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いつまでも、引きこもりニートじゃ困るんだけど?

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 それからは、両親の言葉に甘えて、派遣会社に登録して単発バイトをしながら、ほぼ部屋で過ごした。単発だったバイトの日数が徐々に少なくなり、ここ半年ほどはもうバイトもせず部屋でひきこもり状態。

 こんなことをしている場合じゃないのも、早くなんでもいいから、バイトだけでもしなきゃとは思うものの、いざとなると何もできなかった。

 元上司にそれほど怖い思いもないし、人間自体が無理とかではない。ただ、どうしても頭でナニカしなきゃと思えば思うほど、心も体も動かなくなり、一日のほとんどを部屋で過ごすようになってしまう。

 母が、看護師さんの知り合いのアドバイスを受けて、心が思った以上に傷ついているかもしれないし、その人の伝手があるいい精神科の先生がいるから傷を治しに行ってみようって言われたけど、私はごく普通で、精神病なんかじゃないって突っぱねた。

「お姉ちゃん、いい加減にしたらどう? ずーっと部屋にこもってさ。ちょっとは働いたらどうなの?」
「短詩か。勝手に入って来ないでよ。で、なんの用? 今いそがしいの」

 いきなり入ってきたのは、双子の妹の短詩。私よりも快活で、いつも両親とも仲が良くて、友達も多い。おしゃれで笑顔の絶えない人気者。
 短詩は、私と違って専門学校に行ったあと、専門分野の仕事先でずっと働いている。

 短詩は短詩で、私に思うところがあるのか、尊敬されたり好かれたりはしてないと思う。体たらく状態の今ならわかるけれど、小さなころからずっとだ。
 事あるごとに張り合ってマウントを取りに来られたのもあって、短詩の学力では入れない国公立大学を受験した。大学生活では、短詩に煩わされることなく、平穏な4年間を過ごせたなと、昔の栄光と平和を懐かしむ。

 そんな妹を、鬱陶しく妬ましく思ったこともあるけれど、どっちかというと、羨ましい気持ちのほうが強いと思う。

 今はこんなだけど、いつかもっといいところに就職して、心配や面倒をかけている両親や、小さな頃から私に張り合ってくる妹に、ちょっとした旅行をプレゼントしたいなあなんて気持ちが頭によぎる。

 だからといってバイトをしようとは思えなかった。

 私は、画面を見て手を動かす。キーボード操作だと、指を動かす範囲が広いけれど照準が合わせやすい。声を掛けられて、照準がズレてしまい、制限時間となってミッションが失敗に終わった。

「ああーほらぁ。短詩が声をかけてくるから、ミスったじゃない。あと一歩だったのに。ここまで来るのに大変なんだからね」

 ミッション達成報酬は、イベントでもらえる限定キャラとガチャを回すための石だ。
 天井は100回で、レアキャラ確定。もう100回で、ピックアップのレアキャラ確定だから、無課金の私にとっては、イベントやデイリーでのコツコツとした石集めは重要な任務であった。

「どこが忙しいのよ。どう見てもゲームしかしてないじゃん。学生の頃は優等生のいい子ちゃんだったのにねぇ。入った会社が悪かったのか、どこに入っても一緒だったのかわからないけどさぁ」

 言葉だけだと心配と小言かと思えるが、短詩の口元がにやついているのが、ゲームの画面の端にうつっている。私がゲームばっかりしているのが嬉しいのだろう。

 両親は、私のことを腫れ物を扱うかのような態度になった。一方、短詩は、一気に堕落した私を、ここぞとばかりに馬鹿にしてくる。

「もうちょっとしたら働くもの」
「もうちょっとっていつなのよ」
「それは……色々探してて、もうちょっとったらもうちょっとよ!」
「3年にもなると、もうちょっとって言わないんだけどねぇ。3年見つからないものが、もうちょっとで見つかるのぉ? いつまでも、引きこもりニートじゃ困るんだけど? あ、バイトもしてないから、ただの引きこもりだったぁ。あはは」
「うるさいなー!」

 短詩とは、会話をするたびに大声で言い争ってしまう。学生のころはともかく、今の状況では、両親は短詩の肩を持っている。それがさらに私を追いつめた。

 案の定、帰ってきた両親がここにやってきた。そして、短詩の言う通り、いつになったら引きこもりをやめるんだと顔を歪める。

「清玖、あなたね、約束の3年はこの間過ぎたのよ」
「わかってる」
「学生じゃないんだから、いつまでもお父さんの扶養のままじゃ困るんだぞ」
「わかってる」
「わかってる、わかってるって、わかってないから未だに面接の申し込みすらしないんじゃない」
「わかってるってば!」

 私は、3人の姿も見ずに、ヘッドホンを付けたままパソコンデスクを叩く。痛くはなかったけれど、思いのほか音が大きくて自分が一番びっくりした。

 こういう風にすれば、いつもはここから去っていくのに、なかなか向こうに行かなくて、胸のどこかで、嫌な予感が産まれてざわめいた。



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