完結  R18 転生したら、訳ありイケメン騎士様がプロポーズしてきたので、回避したいと思います

にじくす まさしよ

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2 遠巻きに見ていたい目の保養対象

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 学園では、成績優秀者として学業を修めることができた。ゲームヒロインや、きらびやかな人たちのおかげで、私程度の学生は目立つことなく過ごせてよかった。目立っていいことなんてないから。

 ちょっとした移動教室なんかに一緒にいく友達も出来たし、まずまずの青春時代というやつを送れたと思う。

 ただ、問題があるとすれば、私には決まった結婚相手がいないことだ。ここは、卒業までに8割がたは婚約者が決まるような世界で、私にはそういうお相手との縁ができなかったのである。

 まあ、両親も無理に見合いをさせたりしなかったし、おそらくは家族ぐるみのつきあいのあるイヨウくんと結婚するのかなーと漠然と思っていたけど。
 彼なら良く知っているし、私のことも嫌いじゃないと思う。しかもイケメンで、この間遺跡発掘調査でなんかの賞をとっていた。
 私にとって、彼との結婚を強く拒否する理由はない。見ず知らずの男性と、結婚後に愛人がいたとか、仮面夫婦なんていやだもの。彼が他の女性がいいとなれば大人しく身を引こうと思うけど。

 今日は学園の卒業式のあとの祝賀会。学園のカーストトップ連中が、ひとりの美少女を囲んでいる。ゲームも終盤かあと、王道ストーリーを順調にすすめたタンシちゃんとヌケドメさまの仲睦まじい様子を、皆微笑んで祝福している。幸い、王族のどろどろとした継承権争いもない。王子と聖女が結ばれたら、この国は安泰だろう。

 サブヒーローたちも、ふたりを心から祝福していて、ヒカケさまはご自分の婚約者と寄り添って微笑み合っている。あ、ヌケドメさまには婚約者がいたけれど、彼女は本命の執事とひっついたので、どろどろした婚約破棄騒動やら、タンシちゃんへのいじめはなかったらしい。

 私も群衆に紛れて、ゲームの世界の美男美女たちの大団円を近場で見せてもらって感無量になり、パチパチ手を叩いていた。

「キヨク嬢、ちょっといいか?」

 卒業だけでなく、様々な感動で胸がいっぱいな今、それに水をかけるように、何度も呼ばれた。私に声をかけてくる男性なんて、魔法学関連のことしかない。
 晴れやかな舞台で、そんな灰色のことなんてしたくなく、気づかないふりをして、隣にいる友人たちと涙で潤んだ目でふたりを祝福しつづけた。

 しかし、それを見過ごせなかった友人から肘で脇腹をつんつんつつかれた。すぐに離れるどころか、このままだとずっと名前を呼ばれそうだ。いい加減スルーするのも失礼かと思い、友人に促されるままそちらのほうを向いた。

 目の前には、今まで接触どころかクラスメイトにすらなったことのない、ボウウ・ウォータプルフさまがいた。きらびやかな一行のひとりが、王子たちから離れてどうしてここにいるのか。

 というか、さっきまで彼らの側にいましたよね?

 私は、感動のあまり自分の目か頭がおかしくなったのかと、ヒロインたちのほうを振り返る。するとそこには、すでに彼らの姿がなかった。

 ということは、今見た人は、正真正銘ボウウさまなのだろうか。未だに信じられず、まじまじと彼を見上げる。

 すると彼は、耳を赤くして大きなごつごつした手で顔の下半分を隠すように覆った。シャンデリアの光が、彼の艶やかな黒髪を輝かせ、黄金の琥珀色の瞳は緊張しているのかなんなのかややうるんでいる。
 攻略対象だけあって、少々武骨ながらもセクシーさをかもしだしているイケメンのそんな姿は、思わず見惚れてしまうほど恰好良い。

 今日の彼は、王子と聖女の護衛騎士として与えられた真新しい正式な騎士服に身を包んでいた。彼の髪と同じ軽くてなめらかで、生地の表面には上質なツヤのある生地に、ほどよく施された金糸の模様。ゲームシナリオ通りなら、彼はすでに何度もヒロインと王子を助けてきているはずで、その証拠に胸元には勲章がいくつか飾られている。
 いくら第三王子の側近で由緒あるウォータプルフ伯爵家とはいえ、4男で新米騎士の彼には考えられないほどの勲章の数と、肩章の色と形、そしてそこにある3つ星は、ちょっとした部隊長レベルであることを示している。

 つまり、彼は学生を卒業してすぐに、出世街道を他の新米騎士たちの遥か先を進んでおり、行く末は騎士団長とかそれに準ずる地位をやくされていて安定以外のなにものでもない。

 そして、その姿は、彼の立ち振る舞いや雰囲気、そして経歴に沿ったもので、とても似合っていた。どこからどうみても素敵な騎士さまの姿に、まだ相手の決まっていない令嬢たちが頬を染めて色のこもった視線を投げかけている。

 ここではなんだからと、ふたりきりになれる裏庭に連れていかれた。どっちかというと、遠巻きに見ていたい目の保養対象だ。もう疲れちゃったし、令嬢たちからにらまれるのはごめんだ。
 トイレに行くふりでもしてそのまま家に帰りたいなーなんて思っていると、人気のない場所までたどり着いてしまった。

「ご友人との別れの時間に水を差してすまない」
「いえ……」

 一体、私に何の用なのだろう。

 ヒロインは最初から最後まで王子一択でブレることなかったし、ヒカケさまも彼もタンシちゃんには、守護するべき女性だという感情以上のものを持っていたようには思えなかった。
 遠巻きに見て、噂を聞いていただけだけど、メインヒーローが最初から決まっているのなら、このゲームではサブキャラは当て馬の存在にもなっていないはずだし。

 うんうん悩んでいると、彼がいきなり片膝をついた。そして、私をじっと見つめながら手を差し伸べて、愕然とするようなことを言い出したのである。
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