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やんちゃ姫とわんこ②
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「イヴォンヌ」
二人がにっこりと笑い合っていると、頭上から彼女に似た女性が優しく名を呼んだ。
「おかあさま! おとうさまも!」
「あ! きょうは、ぼくのたんじょうびのおいわいにきてくださり、ありがとうございます」
「久しぶりだね。誕生日おめでとう。もう立派な騎士だ。ははは」
「まあまあ、サヴァイヴ君はとても素敵なナイトになったわねえ。なのに、ヴィー、あなたときたら……」
イヴォンヌを嗜めるように言いつつも、娘への愛情が隠れていない。
イヴォンヌは、肩を竦めて、舌をちろりと出してへへへと笑う。そして、ピンッと背筋を伸ばして、家で一生懸命練習した祝辞を述べた。
会場の灯りが、彼女の銀を輝かせ、ふわりとゆれる明るい青色が裾に向かって紺色になっていくグラデーションのスカートに小さな手がかかった。
「サヴァイヴさま、ほんじつは、せいたんのおいわいに、おまねきいただきありがとうございます。おたんじょうび、おめでとうございます。どうぞ、みんなをまもるすてきなきしさまに、おなりくださいませ」
「イヴォンヌじょう、きょうもあいらしく、とてもかわいいドレスですね。よくにあっています。おいわいと、すてきなプレゼントをありがとうございます。よりいっそうのけんさんにはげみ、だれよりもつよく、りっぱなきしに、なってみせます」
小さなレディの披露するカーテシーと、小さな騎士の挨拶は、先ほどまでの元気な様子を完全に成りを潜めさせた。
彼らをずっと温かな目で歓迎していた大人たちから小さな拍手が贈られる。
良くできましたと、二人は両親からも誉められ得意気だ。
大人たちは、大人の付き合いがあるため、あっという間に二人はかやの外になった。
「ちちうえ、ははうえ、あそびにいってもいいでしょう?」
「おとうさま、おかあさまぁ。おねがーい」
子供たちにとってパーティーは退屈なものである。
サヴァイヴとイヴォンヌは、許可を得た途端に、再び元気いっぱい駆けながら会場から出ていった。
「ヴィー、えっとね、いっぱいプレゼントをもらったんだ! おかしもあるから、いっしょにたべよう!」
「わあ、ヴァイス、いいの? ふふふ、たのしみー!」
窮屈なスーツも、綺麗なドレスも彼らの動きを疎外しない。あっという間に、サヴァイヴのプレゼントが山のように積み上げられた部屋にたどり着く。
「わあっ! すっごーい!」
「へへへ、きょうは、きしの、だいいっぽだから、いつもよりおおいんだって」
「ふふふ、かっこよかったもんね!」
「ヴィーにそういってもらえるように、がんばったんだ!」
「ほんとうに、かっこいいきしさまだったよ!」
「ほんと?」
「ほんとのほんとよーっ!」
満面の笑顔とキラキラ光る大きなライトグリーンの瞳が、小さな騎士への憧れにも似た輝きを放っている。
サヴァイヴは、少し照れながら、使用人が予め彼が開けていいと許可されたお菓子の箱を手に持った。
「ヴィー、いつものばしょにいこう!」
「うん!」
お菓子の箱は、二人にとってはまあまあ大きい。うんしょうんしょと落とさないように慎重に運ぶ。
途中、何人もの使用人や騎士たちが手伝おうとするが、サヴァイヴは、イヴォンヌに対してかっこよく見せたいため全て断った。
「よしっ! ヴィーちょっとここにいてね」
「ヴァイス?」
サヴァイヴは、やっとたどりついた二人だけの秘密の場所──といっても周囲からはバレバレの──である植木で囲まれた場所にあるベンチに、大きなハンカチを置いて彼女を座らせた。この場所の剪定や、ベンチの保存なども全て使用人が彼らにわからないように管理している。
彼は、お菓子の箱をイヴォンヌの隣にそっと置いて、どこかに去って行ったのである。
二人がにっこりと笑い合っていると、頭上から彼女に似た女性が優しく名を呼んだ。
「おかあさま! おとうさまも!」
「あ! きょうは、ぼくのたんじょうびのおいわいにきてくださり、ありがとうございます」
「久しぶりだね。誕生日おめでとう。もう立派な騎士だ。ははは」
「まあまあ、サヴァイヴ君はとても素敵なナイトになったわねえ。なのに、ヴィー、あなたときたら……」
イヴォンヌを嗜めるように言いつつも、娘への愛情が隠れていない。
イヴォンヌは、肩を竦めて、舌をちろりと出してへへへと笑う。そして、ピンッと背筋を伸ばして、家で一生懸命練習した祝辞を述べた。
会場の灯りが、彼女の銀を輝かせ、ふわりとゆれる明るい青色が裾に向かって紺色になっていくグラデーションのスカートに小さな手がかかった。
「サヴァイヴさま、ほんじつは、せいたんのおいわいに、おまねきいただきありがとうございます。おたんじょうび、おめでとうございます。どうぞ、みんなをまもるすてきなきしさまに、おなりくださいませ」
「イヴォンヌじょう、きょうもあいらしく、とてもかわいいドレスですね。よくにあっています。おいわいと、すてきなプレゼントをありがとうございます。よりいっそうのけんさんにはげみ、だれよりもつよく、りっぱなきしに、なってみせます」
小さなレディの披露するカーテシーと、小さな騎士の挨拶は、先ほどまでの元気な様子を完全に成りを潜めさせた。
彼らをずっと温かな目で歓迎していた大人たちから小さな拍手が贈られる。
良くできましたと、二人は両親からも誉められ得意気だ。
大人たちは、大人の付き合いがあるため、あっという間に二人はかやの外になった。
「ちちうえ、ははうえ、あそびにいってもいいでしょう?」
「おとうさま、おかあさまぁ。おねがーい」
子供たちにとってパーティーは退屈なものである。
サヴァイヴとイヴォンヌは、許可を得た途端に、再び元気いっぱい駆けながら会場から出ていった。
「ヴィー、えっとね、いっぱいプレゼントをもらったんだ! おかしもあるから、いっしょにたべよう!」
「わあ、ヴァイス、いいの? ふふふ、たのしみー!」
窮屈なスーツも、綺麗なドレスも彼らの動きを疎外しない。あっという間に、サヴァイヴのプレゼントが山のように積み上げられた部屋にたどり着く。
「わあっ! すっごーい!」
「へへへ、きょうは、きしの、だいいっぽだから、いつもよりおおいんだって」
「ふふふ、かっこよかったもんね!」
「ヴィーにそういってもらえるように、がんばったんだ!」
「ほんとうに、かっこいいきしさまだったよ!」
「ほんと?」
「ほんとのほんとよーっ!」
満面の笑顔とキラキラ光る大きなライトグリーンの瞳が、小さな騎士への憧れにも似た輝きを放っている。
サヴァイヴは、少し照れながら、使用人が予め彼が開けていいと許可されたお菓子の箱を手に持った。
「ヴィー、いつものばしょにいこう!」
「うん!」
お菓子の箱は、二人にとってはまあまあ大きい。うんしょうんしょと落とさないように慎重に運ぶ。
途中、何人もの使用人や騎士たちが手伝おうとするが、サヴァイヴは、イヴォンヌに対してかっこよく見せたいため全て断った。
「よしっ! ヴィーちょっとここにいてね」
「ヴァイス?」
サヴァイヴは、やっとたどりついた二人だけの秘密の場所──といっても周囲からはバレバレの──である植木で囲まれた場所にあるベンチに、大きなハンカチを置いて彼女を座らせた。この場所の剪定や、ベンチの保存なども全て使用人が彼らにわからないように管理している。
彼は、お菓子の箱をイヴォンヌの隣にそっと置いて、どこかに去って行ったのである。
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